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SPEEDIはSBO事故から1時間で使えなくなる設計 加筆 東電の準ストレステスト-④ [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

1月16日に東京電力が柏崎刈羽原発の1号機、7号機のストレステストの報告書を国・原子力保安院に提出しました。その中で、ストレステストの評価方法の妥当性を確かめるとして、東電福島第一(フクイチ)の1号と2号機、第二原発のストレステスト、津波での影響を評価しています。
報告書はこちらから→保安院、フクイチは1号機の報告書に添付されてます。
放射能が何時、何処へ、どれくらいの量・濃度という拡散情報は事故時の避難、防災の要です。
日本はそのために緊急時対策支援システム(ERSS)と緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を国費で開発しました。
緊急時対策支援システム(ERSS)のサブシステムの予測システム(APS)やプラント事故挙動データシステム(PBS)で、原子炉から大気中に放出される放射性物質、その核種ごとに何時から放出されるか、放出量の増減を予測算出します。

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その放出源情報と気象庁のアメダスなどから原発周辺の風向き情報や地形データから放射能の大気中の拡散シミュレーションを行い、大気中の放射性物質の濃度や線量の分布を予測するのが緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)です。

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ERSSの予測システム(APS)は原発から伝送されてくる外部電源・非常用電源・安全注入系の作動状況、原子炉および格納容器の圧力/雰囲気温度(複数ポイント)/放射線量、原子炉圧力/水位/温度、安全注入系流量、格納容器スプレイ流量などのパラメータの数値などの情報をもとに予想計算をします。そして予測システム(APS)は放射性物質の放出量や炉心出口温度、原子炉および格納容器の温度・圧力等を予測計算の結果として出力します。
 使用する伝送パラメータが来ない場合は、電話、FAX 等によってパラメータの数値情報を得て、プラント事故挙動データシステム(PBS)をつかって予測します。PBSでは、予め、種々の事故に対するプラント挙動を解析し、これら解析結果をデータベース化しておきます。電話などで得たパラメータの数値情報から似かよった事故をデータベースから検索・表示することにより、おおよその事故進展を把握することができます。計測できないプラントの状態(燃料破損、水素発生、燃料溶融等)や放射性物質の放出などを将来予測結果を短時間で出力します。電話などで得たパラメータの情報の入力作業を含めて、1 日・24時間の進展を 1 時間程度で計算で得られるそうです。得られた放射性物質の放出量をSPEEDI に受け渡し、放射能の流れ・拡散予想も出せます。

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東電福島第一原発核事故では、3箇所の不備、被害で原子炉の状態を示すパラメータの伝送が途絶えています。
PK2012011902100109_size0.jpg①原子炉の圧力、温度、放射線量などの計測機器は、交流電源のものと直流のものがある。交流電源のものは全交流電源喪失(SBO)でダウン直流電源の計測機器は、1号機、2号機は直流電源(蓄電池)が津波被水などで喪失したのでのダウン。3号機は蓄電池が無事だったのでバッテリー切れまで使えました。
②パラメータを収集しプラントの運転状態を監視・記録しているプロセス計算機が非常用交流電源喪失で停止
③パラメータ情報を伝送する装置を非常用電源に接続していなかったため伝送経路が地震直後に途絶したためです。
 ③の伝送経路を非常用電源に未接続は、フクイチだけでなく他の原発でもありました。その責任を東京電力、規制機関の原子力安全保安院、保安院の下請けのJNES・原子力安全基盤機構で責任の押し付け合いは、みっともないもので、原発の危険性の根源の一つを示しています。しかし、これは非常用電源に接続すれば解決します。

非常用交流電源がなくなると

②のパラメータを収集し運転状態を監視・記録するプロセス計算機の非常用交流電源は、蓄電池の直流を交流に変換して供給する電源です。1号機、2号機は津波で蓄電池が被水しているので直ちに機能喪失。3号機は蓄電池が生き残ったので稼動しています。
しかし3号機も約1時間後には非常用交流電源が停止してプロセス計算機も停止しています。
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 約1時間後にはプロセス計算機は停止しています。非常用交流電源装置から切り離されるのです。パラメータを収集し運転状態を監視・記録するプロセス計算機が停止するのですから、緊急時対策支援システム(ERSS)へのパラメータの伝送がとまります。
 蓄電池からの直流電源は、原子炉に注水するRCIC(原子炉隔離時冷却系) 及びHPCI(高圧注水系)を稼動させメルトダウンを防ぐるために必要です。それで電源を長持ちさせるために、設計段階から全交流電源喪失(SBO)時には、約1時間後迄に非常用交流電源装置は停止または蓄電池から切離すのです。それで、SBO後約8時間はRCICなどを運転継続し注水できるよう設計しています。「切離しを行わない場合の給電可能時間は概略的2~4時間である。」

 3号機の非常時の事故時運転手順書では、「バッテリー用量の確保のためにCVCF(無停電交流電源装置)を事故後1時間でバッテリーから切り離す」(事象ベース、12-4-1)と書かれています。3号機の運転当直は決められた手順どおりに11日に夕方に操作しています。それで原子炉のパラメータを収集しERSSに送り出すプロセス計算機も停止しています。
事故時運転操作手順書は11/16公表分12/20公表分
 つまり、全交流電源喪失(SBO)時には約1時間後迄に原子炉のパラメータが来くなりERSSの予測システム(APS)は“お飾り”と化す設定で設計されています。それは、SPEEDIも放射能の放出源情報が得られなくなり、放射能濃度や線量の分布を時刻的地理的に緻密に予測する本来の機能を交流電源喪失(SBO)から約1時間以降は失うということでもあります。

 ですから原子力安全委員会の見解「SPEEDIについては、今回のように、放出率、放出の場所や高さの条件設定が非常に不確かで、放出の初期の放射性物質の拡散はその場所の局所的な建家形状や地形に左右されることを考慮し、元々、気象パラメータも連続的に変化すると、核種濃度を予測することは極めて困難と言わざるを得ない」という原子力安全委員会・防災指針検討WGの見解は非常に無責任です。(防WG第1-5号)
 もともと全交流電源喪失(SBO)事故では約1時間後からERSSの予測システム(APS)は“お飾り”と化し、APSでは放射能の種類、放出率、放出の場所や高さなどが全く分からなくなるのです。原子力安全委員会の「そうしたデータが無ければSPEEDIでの放射能拡散や被曝影響を予測できない」という見解は、ERSSやSPEEDIはSBOから1時間後にはガラクタになるという事です。1987年から税金を約155億円投じたERSS、約125億円投じたSPEEDIは玩具、お飾りという事です。
 防災指針検討WGの委員らは直接・間接にこれらの関りがある人たちです。いわばERSS、SPEEDIの約280億円を飯のタネにしてきた人たちです。先ほどの見解は、彼らが直接・間接に負っている責任、イザという時に役に立たない高級電子玩具を原子力防災の要にしてきた責任を取ろうとしたものでしょうか。
 しかしERSSにはPBS・プラント事故挙動データシステムというリアルタイムの送信デーがなくても炉の状態を推測し進展を予測するサブ・システムがあります。SPEEDIはPBSやAPSの予測値だけでなく、実測値をもとに修正し精度の高い放射能拡散や被曝影響を予測する運用法も開発されています。つまり、放射能の種類、放出率、放出の場所や高さなどのデータが不十分でも、原子力防災、被曝防護に有用な役立つ予測情報は出せたのです。
 東電核災害では、そのような運用をしなかった、情報を活用しなかったという責任が、直積的に間接的に原子力安全委員会・防災指針検討WGのメンバーにはあります。先の見解は、そうした責任を認めているでしょうか。居直っているのではないでしょうか。
ERSSに約155億円、SPEEDIは約125億円の税金を投じて1987年から開発、運用してきました。防災指針検討WGの委員らは直接・間接にこれらの関りがある人たちです。いわばERSS、SPEEDIの約280億円を飯のタネにしてきた人たちです。先ほどの見解は、彼らが直接・間接に負っている責任、イザという時に役に立たない高級電子玩具を原子力防災の要にしてきた責任を隠そうとするものです。
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彼らが立案した新しい原子力防災計画指針ではSPEEDIをお払い箱にしています。新防災計画指針はSweep it under the carpet 「ほうきでごみをカーペットの下に入れる」「問題を隠して知らん顔をする」のカーペットです。しかし、放射性ヨウ素による子供ら、胎児の甲状腺被曝を避けるにはSPEEDIのような拡散予想システムが必要です。ゴミにはできません。彼らの責任逃れで、子供らを被曝から守る手段を奪われてはならないと思います。(詳しくは核災害への備え⑮
事故挙動データシステム(PBS)は使われた?
原子炉パラメータが伝送されないならプラント事故挙動データシステム(PBS)の出番です。パラメータ情報を電話等によって得て、似かよった事故をデータベースから検索し、おおよその事故進展を把握するPBS の出番です。3号機手順書によれば全交流電源喪失(SBO)から約8時は、原子炉の水位と圧力は直流電源の計測機器で監視可能な設計です。パラメータ情報が入手できるのは12日1時頃までです。
SBO時に非常用蓄電池で維持されるパラメータは下図。なお図に計測電源とあるのは120V交流電源でSBOで電源喪失しています。(詳しくは手順書・事象ベースの13-4交流120v/240v計測用主母線盤)

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 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故進展解析結果について(解説)によれば、次のようです。
11日夜午後9時半頃に2号機のPBS結果がでる。12日0時17分頃に官邸の危機管理センターに送付。
12日未明午前2時ごろ1号機のPBS結果、それを使った放射能拡散のSPEEDI結果が午前6時頃に出る。官邸の危機管理センターには、送られていない。
13日午前6時半頃に3号機のPBS結果が出る。6時50分頃、官邸危機管理センターに送付。
http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110902005/20110902005-6.pdf
 しかし、これらの予測結果は活用されませんでした。SPEDIによる放射能拡散予想は福島の人々の避難や被曝低減には役立ちませんでした。その理由、使われなかった理由は不明です。 続く

規制委は、ハザードマップ試算結果を全て示せ 追記5/31 [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

放出量は適切か?

原子力規制委の試算は、東京電力福島第一原子力発電所の事故と同程度、1~3号機の3基分の総放出量で日本国政府がIAEAへ報告した放出量、ヨウ素131とセシウム137の合計をヨウ素換算して77万テラ(兆)ベクレルとなる多様な核種の放出を想定した試算・シュミレーションをしている。さらに発電所の出力比に応じた量、1~3号機の3基分で203万kw.、柏崎刈羽は821万kWだから約4倍した量でもやっている。

原子力安全委員会の防災WGでの試算では、110万kw級で工学的安全機能で放出量が減る工学的安全設備による放射性物質の除去を考慮し、放出量は10分の1=10分の9は格納容器内に留まるとして試算している。ヨウ素131とセシウム137だけをみると、放射性ヨウ素131は2.1E+16、放射性セシウム137はで6.7E+14で試算している。放射性セシウムを放射性ヨウ素に換算するIAEAの評価法では、放射性セシウム137の6.7E+14を40倍して2.6E+16になる。4.7E+16、4.7万テラベクレルである。1~3号機の3基分の出力203万kw.なら8.7万テラベクレル。 防災WG資料① 資料②

工学的安全機能が働かない場合つまり10分の10の最大放出ではIAEAの換算評価法では47万テラベクレル。1~3号機の3基分の出力203万kw.なら87万テラベクレル。

1~3号機の3基分の総放出量77万テラベクレルは、工学的安全機能が働かない場合つまり最大放出の約88%で、工学的安全機能が防災WGの見込みのDF=10の場合の8.8倍。

核災害の防災計画では、想定すべきなのは工学的安全機能が働かない場合つまり最大放出です。従って想定量は小さい。

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これを核種別に見てみます。上の表は政府発表の東電福島第一原発1~3号機の放出量と防災WGでの想定放出量の比率を核種別に見たものです。

これをみると、防災WGが「耐圧強化ベント及び格納容器スプレイの作動が期待できる場合は、大気中への放射性物質の放出量が抑制される。」「耐圧強化ベントを適切に実施することによって、圧力抑制プ-ルでの除染係数(DF)は、低圧シーケンスにおいてDF>1000、全交流電源喪失においてもDF>100が期待できる。」「これらを踏まえて、DF~10を見込むことができると考えられる。」として工学的安全設備による放射性物質(希ガスを除く)の除去をDF=10(10分の9は格納容器内に留められ、10分の一が放出)という設定が、DF=10の値の数倍出ているのですから非現実的であることがわかります。防災WGはDF=10を前提とし、避難地域などを議論をしていますが、これは希望的観測・happy assumption(ハッピー・アサンプション/おめでたい仮定)による wishful thinking(お祈り思考)です。工学的安全機能が働かない場合つまり最大放出を想定して。核災害の防災計画は立案すべきだと改めて思います。
希ガスは化学的性質から工学的安全設備では除去されません。放出開始が想定よりも1日ほど遅れているため、格納容器内で崩壊し減少していますので、その分減った量がでています。これに対しセシウム137は、防災WGの想定を超えた130%でています。セシウム137は半減期が30年ですから、事故から時間がたってからでも量はへりませんし、計測の数も多いので、政府報告の放出量は実際に近いと思われます。ですから、防災WGの最大放出量の想定が低いのだとおもいます。

また、セシウムと同じ揮発性元素のヨウ素やテルルの放出量が小さすぎると思います。放射性ヨウ素131の半減期は約8日、テルル132の半減期は約3日ですから、発災から時間が経つと崩壊して減少し無くなってしまいます。しかし、事故直後の計測例が少ない、計測値があてにならない。。そのため甲状腺のヨウ素被曝線量が推定できない。したがって、政府発表の放出量は、実際からかけ離れている可能性が高い。

放射性のヨウ素やセシウムの大部分はヨウ化セシウム・CsIの化学形で原子炉にあります。放射性セシウム137とヨウ素131でできたヨウ化セシウムでは、セシウム137で1ベクレル分はヨウ素131では1370ベクレルになります。1ベクレルのセシウム137は13.7億個の原子でヨウ素131は100万個だからです。セシウム134とヨウ素131のヨウ化セシウムではセシウム134で1ベクレル分はヨウ素131では94ベクレルになります。出てくる化学形がヨウ化セシウムだけではないので、セシウム137の放出量は15だからヨウ素131は15の1370倍は出ているはずとはいいません。防災WGの専門家は約30倍としています。政府発表の放出量では約11倍です。余りに少なすぎると思います。

少なくとも発表値の倍は出ているとした方が実際に近いと考えられます。セシウムの放出量比は130%、テルルが104%(176千兆ベクレル)、ヨウ素が88%(320千兆ベクレル)です。

揮発性の低いストロンチウム90などは、大気中に拡散よりも汚染水で地下や海へ出て行くルートと見られます。地下水や海の測定例は少ないので、政府発表の放出量値は信頼性が低いと考えられます。

ヨウ素131の半減期は約8日で時間が経つと崩壊して減少し無くなってしまいます。しかし、発災直後の計測例が少ないのです。それで政府発表の放出量は、実際からかけ離れている可能性が高いですが発表値が間違いであると断定できません。

核災害の防災計画は最大放出を想定して立案すべきですから、試算で政府発表の放出量を用いるのは不適切です。放射性ヨウ素の放出量、その吸入による内部被曝量は避難準備区域(UPZ)に、ヨウ素甲状腺ブロックを主な対策とする屋内退避計画地域(PPA)を設定するのに重要です。今回の規制委の試算の目的、UPZやPPA設定に資するという点から見ると、試算の想定放出量=政府発表値では過小です。UPZやPPAをかなり小さく設定する怖れが高いのです。


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防災WGでは、「福島第一発電所の事故においても、津波という共通要因にも拘らず、炉心損傷開始の時期は、1号から3号までで相違がある。」「風向の変化を踏まえると、複数基サイトにおいても、単純な放出量の重ねあわせにはならないと考えられる。」として、原子力発電所全体の出力規模に比例して放出量が増えるとしていません。今回の規制委シュミレーションは、この点最悪の同時放出を想定している点は防災上評価できます。

隠されている顕示されていないシュミレーション結果

今回の結果は、7日間で被曝する実効線量が100mSv・ミリシーベルトで線引きしています。これはIAEAの基準、包括的判断基準で避難の目安とされている値です。避難や室内退避を主な対策とする避難準備区域(UPZ:Urgent Protective action Zone 緊急時防護措置準備区域)の設定に用いるように示されました。100mSvは、発癌確率が1%、癌死亡が0.5%上がるとされる被爆です。これが避難開始基準で妥当か、周辺に住む者としては受け入れにくい基準です。

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また、100mSvの内34%、週で34mSvはグランドシャイン(地表照射)・地表に沈着した放射性ヨウ素や放射性セシウム(Cs134、Cs137)など放射能がだす放射線による外部被ばくとされています。これは、放射能別に沈着量が出されグランドシャインの線量、被曝量が導かれ、その総合計値です。

各放射能別にグラウンドシャイン値が示されるとその地で暮らす場合の外部被曝線量の見通しが概略つけられます。事故時の身の振り方の見通しが予め得られます。

放射性ヨウ素は半減期8日ですから、一月後には10分の一以下、3ヵ月後には千分の一以下になります。セシウム134は半減期が約2年ですから、半年後に84%、1年後に71%、2年後は51%、10%以下になるのは7年後、1%以下になるのは14年後。セシウム137は半減期が約30年ですから、半年後に98.8%、1年後に97.7%、2年後は95.5%、10%以下になるのは101年後、1%以下になるのは301年後。

週で34mSvのグランドシャインがあり、内訳は放射性ヨウ素131で33.18mSv/週、セシウム134で0.60mSv/週、セシウム137で0.22mSv/週で減衰は物理的な崩壊だけと仮定して検討すると

半年後には約0.72mSv/週、放射性ヨウ素131は五百万分の1以下になり、セシウム134で0.50mSv/週、セシウム137で0.22mSv/週。

1年後には約0.64mSv/週、年間で33.2mSv/年、セシウム134で0.43mSv/週、セシウム137で0.21mSv/週。

2年後には約0.51mSv/週、年間で26mSv/年、セシウム134で0.30mSv/週、セシウム137で0.21mSv/週。

5年後には約0.3mSv/週、年間で15.6mSv/年、セシウム134で0.11mSv/週、セシウム137で0.19mSv/週。

10年後には約0.19mSv/週、年間で9.8mSv/年、セシウム134で0.02mSv/週、セシウム137で0.17mSv/週。

15年後には約0.15mSv/週、年間で7.9mSv/年、セシウム137で0.15mSv/週。

25年後には約0.12mSv/週、年間で6.4mSv/年、セシウム137で0.12mSv/週。

35年後には約0.09mSv/週、年間で5.0mSv/年、セシウム137で0.09mSv/週。

106年後には約0.02mSv/週、年間で0.99mSv/年、セシウム137で0.019mSv/週。

 週で1mSvのグランドシャイン(避難対象外)があり内訳は放射性ヨウ素131で0.56mSv/週、セシウム134で0.30mSv/週、セシウム137で0.11mSv/週で減衰は物理的崩壊のみと仮定し検討します。

半年後には約0.36mSv/週(年で18.72)、放射性ヨウ素131は五百万分の1以下になり、セシウム134で0.25mSv/週、セシウム137で0.11mSv/週。

1年後には約0.32mSv/週、年間で17.6mSv/年、セシウム134で0.21mSv/週、セシウム137で0.11mSv/週。

2年後には約0.25mSv/週、年間で13mSv/年、セシウム134で0.15mSv/週、セシウム137で0.10mSv/週。

5年後には約0.15mSv/週、年間で7.8mSv/年、セシウム134で0.06mSv/週、セシウム137で0.09mSv/週。

10年後には約0.1mSv/週、年間で5.0mSv/年、セシウム134で0.01mSv/週、セシウム137で0.09mSv/週。

15年後には約0.08mSv/週、年間で4.0mSv/年、セシウム137で0.08mSv/週。

25年後には約0.06mSv/週、年間で3.2mSv/年、セシウム137で0.06mSv/週。

35年後には約0.05mSv/週、年間で2.5mSv/年、セシウム137で0.05mSv/週。

77年後には約0.018mSv/週、年間で0.97mSv/年、セシウム137で0.018mSv/週。


このように外部被曝線量の見通しが概略つけられます。

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またプルーム(放射能雲)の吸入による内部被ばくが57%を占めるとしています。この多くが放射性ヨウ素によるものです。この内部被曝量もブルームを作る放射能、放射性ヨウ素や放射性セシウムの距離的に変化する核種ごとの濃度、吸入量を試算しています。放射性ヨウ素の内部被曝量は、安定ヨウ素剤の投与によるヨウ素甲状腺ブロックを決める重要なデータです。ブロックや屋内退避を主な対策とする屋内退避計画地域(PPA、Plume Protection Planning Area プルーム防護措置実施地域)を設定するのに必要なデータですが、示されていません。

防災WGでの試算では、IAEA基準のヨウ素甲状腺ブロックを実施する距離・範囲は100mSvの避難の3から7倍になっています。今回の規制委の試算でも同様の傾向だとすれば、規制委は避難準備区域(UPZ)を半径30kmといっているのですから、屋内退避計画地域(PPA)は100km程度にしないと不合理です。本年8月29日決定の新潟県の防災対策は、屋内退避計画地域(PPA)を「半径おおむね3 0~5 0 キロメートル」にしておりますから、全くの不足になります。100kmで円を描くと、佐渡はすっぽり入り、富山県境まで、長野県方面は長野市まで、新潟市、新発田市はもちろん胎内市も半分ほど入り、群馬県境、福島県境を超えます。
また、新潟県は50km以遠の県内を放射線量監視地域としています。安定ヨウ素剤の備蓄などの計画をあらかじめ策定する地域です。これには、新潟県内だけでなく隣接する山形県、福島県、群馬県、長野県、富山県が入ります。このように核災害の防災計画、防災体制を立地県だけに限定するのは不合理です。

地形を勘案すべき。

今回の規制委シュミレーション・ハザードマップでは、山など放射能の拡散に大きな影響を与える地形が無視されています。越後の山々がない平原で試算しています。地形を考慮した拡散試算はSPEEDIで可能ですが、規制委は「SPEEDIを用いた解析では地形情報・風向分布等の様々なパラメータを用いるため、年間を通じた全サイトの解析を行うには膨大な時間が必要。」としています。

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立地県、原子力施設立地関係道府県(19道府県)は平成22年度、23年度に県が選択・指定した日時の条件に基づくSPEEDI予測図形(各原発毎に年に24件)及び原子力防災訓練で使用したSPEEDI予測図形をもっています。これと同じ日時・天候条件で試算の放出量で、SPEEDIを稼動して原発から150~200km範囲の図形をだし、地形などの影響を考慮できるようにすべきです。



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以下2014/5/31 追記
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2014年5月28日、原子力規制委員会は「緊急時の被ばく線量及び防護措置の効果の試算について」を公表しました。
http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/h26fy/data/0009_03.pdf
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この試算は「仮想的な事故における放出源からの距離に応じた被ばく線量と予防的防護措置による低減効果について、全体的な傾向を捉えていただくための試算」だそうです。同種の試算は原子力規制委員会から、平成24年11月30日にも公表されています。(第2回原子力災害事前対策等に関する検討チーム 資料(1))
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/pre_taisaku/data/0002_01.pdf


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ここでは、中長期的な防災計画の視点で検討してみます。発災後に直ちに避難や屋内退避する地域は、1週間単位での予想被曝量で設定されています。その基準値は全身の実効線量で100mSvとか甲状腺で50mSvとかです。中長期的な避難、移住、除染といった環境の原状回復は、年単位での予想被曝量です。1年は52週ですから、年間で20mSvは0.37mSv/週です。週に0.5mSvは年で21mSvです。
先ほどの5/28の規制委の試算は、被曝を「放射性ヨウ素など放射性プルームを呼吸で吸入することによる内部被曝」「放射性プルーム(放射能雲)による外部被ばく」、「地表など周辺環境に沈着した核種による外部被ばく」を合計しています。吸入での内部被曝、プルームでの外部被曝は、プルーム通過後は、新たな被曝をもたらしません。発災から2週間目、8~14日を同様に試算すれば、被曝経路は専ら地表など周辺環境に沈着した核種による外部被ばく(グラウンドシャインgroundshine・GS)です。
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周辺環境に沈着した核種による外部被ばく(グラウンドシャイン・GS)東電核災害では発災1週間での被曝量の約34%とされています、11/30試算では40%です。また、放射性ヨウ素は環境中に沈着する核種でもありますが、放射線を出して崩壊して減っていきます。中長期的な年単位での被曝量では、その沈着核種の崩壊による減少を考慮して予想するべきです。規制委試算では、各臓器に対する被曝量を核種毎に被曝ルート毎に算出して、合計線量で評価しています。その詳細な試算値があれば、きちんと減衰を入れて予想できますが、公表されていません。また5/28試算は原子炉80万kWで11/30試算は110万kWと約1.4倍の差が元々の量であります。柏崎刈羽原発6、7号機は135.6万kW、1~5号機は110万kWです。中長期的被曝には重要な核種であるセシウムの放出、発災時に炉心にあった量に対する放出割合が5/28試算は1万分の3、11/30試算は百分の2.8で、約100倍大きな設定です。東電核災害では1号機は千分の2.9、2号機は百分の5.8、3号機は千分の2.7です。これらの点を、頭に入れて検討します。
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UPZ・30km圏
5/28試算では、UPZ30km圏の30km地点での初週の線量は、95%値で5mSv、中央値(50%)で1mSvでグラウンドシャイン・GSは1.5~0.4mSv程度。11/30試算では90~3mSvでグラウンドシャイン・GSは30~1.2mSv程度。次週以降のGSの減衰を50%とした場合は30km地点でのGSの被曝線量は年あたりで、5/28試算値からは39~10.4mSv、11/30試算値で780~31.2mSv。GSの減衰を90%とすると、5/28試算値からは7.8~2.08mSv、11/30試算値で156~6.24mSv。

柏崎刈羽6、7号機は135.4万kWで、5/28試算の設定の約1.7倍、11/30試算の約1.2倍あります。5mSv/年以上で強制移住のチェルノブイリ基準なら、柏崎刈羽のUPZ30km圏はほぼ全域強制移住、家財・土地・地域社会を全て廃棄の地帯。20mSv/年以上で居住禁止の東電フクシマ基準なら、大部分が数年単位の長期避難や移住を已む無くする地帯。
最大既往 
大飯原発差止め裁判の地裁判決で採用された「既往最大」の考え方を取り入れて、発災時に炉心にあった量に対する放出割合を東電核災害での値にしたら、周辺環境に沈着した核種による外部被ばく・グラウンドシャインGSの値はどうかわるでしょうか。セシウム類は2号機で百分の5.8ですから、5/28試算は約190分の一の過々小の設定です。11/30試算は約半分です。これに応じて、試算値は小さくなっています。「既往最大」で設定しなおすと、発災の週や次週以降のGS予想値も大きくなると思います。
 函館市の「原発事故は生きている町そのものを破壊してしまう。函館市が自治体の生存を賭けて、大間原発の建設差し止めを求めることは住民の生命と生活を守ることを任務とする地方自治体として当然のことであり、また正当な要求である。」というのは当然です。
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 何百回の事故シュミレーションの結果
プラント事故挙動データシステム・PBSを開発し、それで何百回も事故シュミレーションをした永嶋國雄さんによれば、「1つの原子炉で格納容器が破裂すると、1つの原子炉で(避難範囲は)100キロメートル超えちゃうんですよ。」「原子炉にある放射能全部出るって仮定しちゃうと、1000キロメートル超えちゃうんです」「いくらなんだって(原子炉内の放射性物質が)全部出るなんてのはおかしな話です。物質にもよるけど、プルトニウムとかストロンチウムなんかはなかなか出にくい。実際に格納容器が破裂したって放射性物質の大部分はそこに留まってるんです。」「そういうのを正確に計算していくと、1000キロメートルの10分の1で成りたっている。100キロメートル超えるくらいに(避難範囲は)収まる」
参照・・フクシマから学ぶ・・実用的な原子力防災計画を作るにはPBS活用
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2012-10-22

 1mSv/年以上になる地帯
さて、追加被曝が1mSv/年以上になる地帯はどれ位に拡がっているでしょうか。追加被曝の一部になるグラウンドシャイン・GSで検討してみます。30kmを超えた地域ですが5/28試算は30km以上はやっていません。11/30試算は100kmまで試算しています。それでは95%値で10mSv/週、中央値(50%)で0.6、GSでは3~0.24程度。GSの減衰を90%では15.6mSv/年~1.2mSv/年。
 先ほどの出力=炉内の放射能量の違い、放出比率などを考慮に入れると、追加被曝が1mSv/年以上になり環境の原状回復、除染などを準備しておくべき地域は、どれくらいでしょう?柏崎刈羽原発から100km圏でしょうか。



SPEEDI無用論・・SBO時にSPEDDIを使えなくしている、規制委・電力会社 [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

10月24日に原子力規制委員会の田中委員長は「防護対策は実際には測定とSPEEDIのようなシミュレーションをあわせてやっていこうというのが今回の骨子」といっています。しかし、シビアアクシデント、核燃料の損傷がおきる事故では、SPEEDIを使えないように規制委員会はしています。これまでのシビアアクシデントの研究では、BWRではSBO全交流電源喪失がシビアアクシデント発生に関わる、9割以上で関与するとされています。そのSBOの際に、SPEDDIが必要なデータ、放射能の発生源情報が得られない状態を規制委員会は黙認しています。


SPEEDI(スピーディ・緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)が適切な汚染予測を出すためにはためには、ERSS(緊急時対策支援システム)が稼動し妥当な放射能の放出源情報をだしその手入力が必要です。ERSSの「プラント情報収集表示システム・ICS」が原発からオンラインで伝送されてくる原子炉や発電所の情報を国の広域の防災ネットワークから一括して収集してます。2006年10月以来、常時伝送される情報は、PWR(加圧型)で約70項目、BWR(沸騰水型)で約140項目です。その情報から「解析予測システム(APS)」が放射能の放出源情報、現状と予想を算出します。

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このERSSの原発から送られてくる原子炉の状態を示すプラント炉パラメータ情報は、全交流電源喪失SBOになるとパラメータを集約・管理しているコンピュータ、プロセス計算機の蓄電池電力が落とされ停止するために、沸騰水型BWRで約1時間後、加圧型PWR約30分後にERSSに伝送されなくなります。「解析予測システム(APS)」はダウンし、SPEEDIはERSSからの放出源情報が入力されなくなります。

3.11東電核災害では、集まったプラントパラメータ情報を送り出す装置が地震時にダメになり、また蓄電池や配電盤が津波を被ってダメになって完全電源喪失しプラント原子炉炉パラメータ情報の収集や防災ネットワークへの伝送が止まっています。それで、保安院がまとめた福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する30の安全対策では、27番目に「事故時における計装設備の信頼性確保」を上げています。具体的には電源の確保、計装専用蓄電池の確保、予備計測器の設置や予備品の確保です。

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加圧型PWRの関西電力は、①蓄電池を追加設置してプロセス計算機などの電力が落とさないで8時間の稼動を可能とする。8時間は「事態の正確な把握、冷静な判断、作業の準備・実施に必要な時間」として設定。
ただし「電源車や別途の非常用発電機など外部から給電に時間を要する事態を考慮」しプロセス計算機など負荷を切り離せば24時間稼動の蓄電池容量を確保。

②そうした場合は、監視上特に重要な原子炉パラメータを計測するために電源供給ができる予備の可搬型計測器などを配備する。

③増設しない場合、設計の容量では切り離さないとは約2時間で枯渇する。プロセス計算機などの電力が落とさないで8時間の稼動を可能とするように増設した容量では、蓄電池に切り替わって約30分後に切り離すとその後に23時間ほど稼動が可能になる。緊急対策ではSBO全交流電源喪失から5時間以内に電源供給を再開する予定ですが、それが予定通りにできるのか「時間を要する事態」かという見究め・判断は、30分後にしなければならない。保守的に考えれば非常用給水系が24時間稼動することが大切だから、30分以内に電源回復、給電回復がなければプロセス計算機など切り離す、つまり防災ネットワークから事故炉を切り離すことになる。

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加圧型PWRの北海道電力、中国電力、四国電力、九州電力はストレステスト資料では蓄電池の増設を計画していません。電源車の配備と繋ぎこみでの電源回復です。現有の蓄電池は約30分後にプロセス計算機や殆どの計測器の電力がカットされます。それから電源車などによる電源回復まで、特に重要な原子炉パラメータ情報は運転員が収集しますが、防災ネットワークへは自動的に伝達されません。この状態を約4時間30分だけ維持できる電力しかありません。SBOから約5時間後に蓄電池が枯渇します。
関西電力が蓄電池増設で蓄電池枯渇を5時間後から24時間後に伸ばしていますが、切り離しは実質的にSBOから30分後、北海道電力、中国電力、四国電力、九州電力は電源車頼みで、SBOから30分後に防災ネットワーク離脱です。

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沸騰型BWRの東北電力も同様です。事故炉情報の防災ネットワーク離脱になる電源切り離しが約1時間後、蓄電池枯渇は約8時間後です。切り離しをしない場合は約2~4時間後に枯渇します。
同じBWRでも、東京電力はちょっと違います。蓄電池の増設はないので、約1時間で事故炉の炉パラメータ情報は防災ネットワークに伝送されなくなります。その後に手順どおりに電源車などで電源回復がおこなわれても、その電力は計測系には送られません。計測のための電力は別に蓄電池を用意して供給、読み取りはデジタルレコーダを繋ぎます。

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監視するのは34項目です。ERSSへ伝送は140項目で、その内環境放射線管理の項目が約30ほどです。単純に数上では約三分の一です。デジタルレコーダ監視には、ERSS伝送には入っていない使用済み核燃料プールの水温が10項目あります。ですから、絞り込んだ監視項目です。そしてこの34項目は、発電所の共用構内LANを利用して、発電所の対策本部、免震重要棟の監視用パソコンで見ることが出来るようにします。これを津波=SBOから3時間以内に実施する計画です。

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事故炉の炉パラメータ情報は、SBOから1時間後から設計で設定されている重要な原子炉パラメータ情報(8項目?)以外は、得られなくなります。東電がデジタルレコーダを設置されると34項目に増えます。そのパラメータ情報は発電所内では共有されますが、国の防災ネットワークには伝送されません。これが東電の対策です。

なぜ、東電はSBOから1時間後からズーと、東北電力は1時間後から電源回復まで、関西電力、北海道電力、中国電力、四国電力、九州電力は30分後から電源回復まで国や国民をツンボ桟敷状態に置くのでしょうか?国つまり原子力規制委員会や規制庁は、そうした情報を出すよう是正をもとめないでしょうか? 例えば、SBO全交流電源喪失から5時間以内に電源供給を再開する緊急対策ですから、切り離しせずに6時間、切り離し後は18時間は枯渇しないように蓄電池を増設するといった対策を電力会社らに求めないのでしょうか?

つづく



フクシマから学ぶ・・実用的な原子力防災計画を作るにはPBS活用 [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

1986年のチェルノブイリ事故のあと、「世界各国が事故対策を検討し始めた。技術開発もした。緊急時対策の研究をやるのは良いことだということで、国がかなりの予算をつけた。日本は比較的他の国より金を持ってたんです。大蔵省に言ったら『これは大事だ』って言うんで、開発資金は多分アメリカの10倍ぐらいつけてくれたんです。フランスの5倍くらいかな。1990年から2000年ぐらいで、そのシステムの開発だけで100億ぐらい。年間10億です。あとデータベースを作るのに20億円かけたんです」。

そのお金で開発されたデータベースがPBS、プラント・ビヘイビア・データ・システム、プラント事故挙動データシステムです。これを使うと、約1時間で安全系統が一切作動しない場合での24時間の事故進行表が得られるそうです。3.11に15条通報、原子炉が危なくなった時に課せられている通報を東京電力は16時36分に行っています。それを用意ドンでPBS・プラント事故挙動データシステムを動かすと17時40分頃に、12日の夕刻までの事故進展模様が分かりました。

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PBS開発に当たった永嶋國雄さんによれば「それを見ると『今の状態だったらいつになったら燃料破損する』『いつになったら格納容器が壊れる』っていうのが出てくるんです。」「格納容器ベントする場合とか、最終的に格納容器が破壊される場合とかの放射能放出量をPBSにより出すことができます」「壊れるのと同時に、中の放射能がどれぐらい出るか計算してある。だからいろんな放射性物質、例えば希ガスとか、ヨウ素、ストロンチウム、プルトニウム、ほとんどすべて種別に全部計算できるんですよ」「PBSが出した放射能放出量をSPEEDIに入れる。SPEEDIは、住民がどのくらい被曝するかって計算もできちゃう。簡単にできちゃうんです」

事故時の原子炉の挙動を模擬、シュミレーションする計算プログラムには、MAAP・マープというシビアアクシデントコードを使用しています。MAAP・マープは米国電力研究所開発したもので、「アメリカは、原子炉破壊実験とか格納容器破壊実験を実際にやっています。つまり単なる演算上の演習ではなくて、実際にシビアアクシデントの実験をやった結果からコードを開発しています。そうしないと、計算があてになる確証ができないんです。(永嶋)」と妥当性が確認されています。日本版は2000年に完成しました。

 これを稼動させるには「まずプラントのデータを入れれないといけない。それには膨大なデータ使いますからね。何週間もかかっちゃう。(永嶋)」それで予め原子炉の特性などの膨大なデータを入れておいて、準備しておく。さらに「事前に事故シナリオが分からないといっても、だいたい5つか6つぐらいのシナリオに分類できるんですよ。」「電源が永久になくなった場合とか、海水ポンプが永久になくなった場合とか 。冷却系配管の破断が起こった場合とか。」の事故シナリオで予めシュミレーションし、その結果の事故経過データのデータベースを作ることにしました。

 事故炉の状態、水位とかのパラメータが入手できない3.11東電核災害のような場合でも、炉操作を1~2時間の準備時間を余裕もって行ったり住民保護する避難などの指示を遅滞なく出せるようにするためです。日本の原子炉は54基ありますが、「同じ出力、同じ原子炉の型だったら同じ特性」「福島第一発電所だったら2、3、4号機はまったく同じです。1号機は出力が小さい」「だから54基全部やってたわけじゃなくて、代表するとなると20基以下ぐらいなんです」それを全部シュミレーションしました。「1つずつについていろんな事故診断をやってきました。」それをデータベース化したものがPBSプラント事故挙動データシステムです。それに20億円と約3年の時間が費やし2003年頃にできています。

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 原子力安全・保安院に担当部局がおかれました。各オフサイトセンターに担当する原子炉ごとにその事故経過データベースがDVD-ROMで配備してあり、普通のパソコン(ウィンドウズ)で使えるようにしてありました。「実際に使う時には、それまでにこういう系統で復旧するから、復旧すればその状況に入れて事故が収まるかどうかということを計算でできるんですけどね」例えば「非常用復水器戻りました」とか「電源戻りました」とかを入力して、その場で計算し直す。「データを準備して、検討して、(何時間後に復旧するなどの)大体計算結果が出るのは2時間。実際計算は1時間でできちゃうんです。(永嶋)」。

3.11にも使われています。1号機は非常用復水器が稼動と誤認され3号機は非常用注水機能が作動していて、2号機が一番危ないと認識されていました。
原子力安全・保安院は、「2号機の炉心露出は22時50分、燃料被覆管破損は23時50分、燃料溶融は24時50分、原子炉格納容器設計最高圧到達(527.6kPa)は27時20分、その場合原子炉格納容器ベントによる放射性物質の放出が必要」と22時に事故進展の予測結果をだしています。それを「福島第一2号機の今後の進展について」というペーパーにして官邸の危機管理センターに22時44分に報告しています。 時系列報告

この予測では、PBSの仕様から放出される放射能の量・種類の予測量、予測時刻が一緒に出ています。それをSPEEDIに入力すれば、被曝=汚染予測値図が出ます。ところがそうした様子は窺えません。20億円の費用と3年の時間が無駄にされました。そしてフクシマの人々は避けられた被爆を、無駄に受けさせられました。

PBSでハザードマップを作れる

さて、新潟県の原子力防災での被害規模の想定にはPBSが使えます。防災計画なのですから、考えうる最悪の事態を想定しなくては意味がありません。PBSで安全系統が一切作動しない最悪の場合での事故進行表と放出放射能の種類・量・事故発生からの放出時刻が得られます。

柏崎刈羽原発は、沸騰水型(BWR) GE社設計Mark-2というタイプで110万kw.の1号機、GE社設計Mark-2改というタイプで110万kw.の2、3、4、5号機と改良型沸騰水型(ABWR)というタイプで135.6万kw.の6、7号機があります。この3種の事故進行表と放出放射能の種類・量・放出時刻が得られます。それを新潟県の代表的気候という条件でSPEEDIに入力すれば、汚染=被曝予想いわば柏崎刈羽原発のハザードマップが得られます。長岡市から避難を終了すべき目標の事故発生から時刻や、新潟市で子供達に安定ヨウ素剤を事故発生から何時間後までに飲ませなければならないかといった情報が得られます。これを達成するように防災計画を立案しなけば、意味がありません。福島県の二の舞です。また、セシウム等地表に沈着する放射能の量も予測算出できますから、避難から自宅に職場に戻れるかも目安が付けられます。

何百回もシュミレーションをした永嶋國雄さんによれば、「1つの原子炉で格納容器が破裂すると、1つの原子炉で(避難範囲は)100キロメートル超えちゃうんですよ。」「原子炉にある放射能全部出るって仮定しちゃうと、1000キロメートル超えちゃうんです」「いくらなんだって(原子炉内の放射性物質が)全部出るなんてのはおかしな話です。物質にもよるけど、プルトニウムとかストロンチウムなんかはなかなか出にくい。実際に格納容器が破裂したって放射性物質の大部分はそこに留まってるんです。」「そういうのを正確に計算していくと、1000キロメートルの10分の1で成りたっている。100キロメートル超えるくらいに(避難範囲は)収まる」

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100kmで円を描くと、佐渡はすっぽり入り、富山県境まで、長野県方面は長野市まで、新潟市、新発田市は入り胎内市も半分ほど入り、群馬県境、福島県境を超えます。

原子力規制委員会や規制庁は、原子力防災でもPBSを活用していません。規制庁は東電核災害での放出量を使ったハザードマップで県などに防災計画を立てさせようとしています。PBSでより実際的なものにせず、東電核災害という架空の規模で誤魔化そうとしています。これは、規制委員会の意向に沿っています。

田中俊一委員長は18日、ロイターのインタビューで「シビアアクシデントを起こさないというのが基本だ。(防災計画など)事故が起きた後の対策は時間的には柔軟に考えていきたい」。 インタビュー

3.11前は事故は発生しない安全神話で、防災計画が形骸化しており福島県で避難できない、子供らにヨウ素剤は投与されない事態になりました。米国のショーラム原発は、住民が納得する避難計画が立案できず運転せずに閉鎖されてます。田中委員長は全く反省がないのです。 ショーラム原発

シビアアクシデント対策は、「起こさない」と「影響緩和」、100kmを出来るだけ小さくするなど二部構成です。田中委員長は影響緩和=国民の被曝減少の優先順位が低いのです。シビアアクシデント事故を起こさない工学的対策は万全という新安全神話の創造と定着が最優先。そういう方が監督する防災計画は、我々を護る??


SPEEDI無用論・・PBS(下) 産湯とともに赤子を流すべからず [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

これらの事から
A)沸騰水型・BWRで最も備えなければならないのは、SBO・全交流電源喪失。それは原子力災害対策特別措置法15条通報(全交流電源喪失)で、国に通報される。その場合、非常用蓄電池が生き残ってもBWRでは1時間後、加圧型・PWRでは30分後に、原子炉のパラメーターはERSSに伝送されなくなる。ASPは使えなくなる。ASPは沸騰水型ではSBO/全交流電源喪失以外の要因で起きるシビアアクシデントの1割以下の場合に、有効に使える。

B)15条通報(全交流電源喪失)では、遅かれ早かれ、ERSS、APSは使えなくなる。つまり、15条通報があればPBS・プラント事故挙動データシステムの出番であり、3.11に保安院はPBSを起動し使っている。

C)PBS起動から約1時間で、何も復旧操作もない場合の「何時間後に燃料が溶けて、何時間後に原子炉圧力容器が破損して、格納容器の破損が何時間後」その「格納容器ベントする場合とか、最終的に格納容器が破壊される場合とかの放射能放出量」の予測値が得られる。それをSPEEDIに手入力すれば、約15分で放射能の大気中や地面の沈着する濃度、住民がどのくらい被曝するか線量を予測算出する。それを使い国・自治体は住民の保護、安定ヨウ素剤の投与や避難の指示をだせる。PBSやSPEEDIの予測の妥当性は、モニタリングポスト・MPや緊急モニタリングでの放射線、放射能の実測値で検証し、補正する。

D) SBO・15条通報時には、発電所は事故炉でベントの配管ラインの構成や圧力容器の減圧と消化ポンプによる圧力容器・炉心への注水作業を先ず済ませる、予測される核燃料が熔ける、損傷する時刻前に行うように、電力会社がシビアアクシデント対策・AMを深化、更新すべき知見が得られていた。

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PBSの隠蔽は「不作為」の隠蔽

このような仕組み、核防災フレームが3.11前に2004年頃には整備されていた。従って、政府や原子力安全委員会の「ERSSやSPEEDIの動作が不完全だったので、住民を適切に避難させることができず、被曝してしまった」とか「緊急時にSPEEDIは信頼性に欠ける。予測システムで何かができるというのは幻想だった。」(本間俊充氏・日本原子力研究開発機構安全研究センター長)のいう「システムの不備論」は大嘘です。3.11に保安院はPBSを起動し使っているが、そのPBS予測でSPEEDIを稼動させなかった官僚組織の「不作為」を隠蔽するものです。
そして斗ヶ沢秀俊氏、毎日新聞の科学記者で東京本社科学環境部長や福島支局長を務めた斗ヶ沢秀俊氏の、SPEEDIは不要、無用論は無知に拠るものです。氏の「SPEEDIは放出後の拡散予測には使えます。」「放射性物質大量拡散がいつ起こるかは予測できないから、SPEEDIは使いようがなかった」とSPEEDIは不要、無用論と論じています。しかし、PBS・Plant Behavior Data System・プラント事故挙動データシステムで何時間後にどれ位の放射能が放出されるか予測値が得られます。氏の論はERSS/PBS/SPEEDIの仕組み、フレームを全く理解していない無知者の論です。
またD)のSBO・15条通報時に先ずすべき、実行すべきシビアアクシデント対策・AMを明らかにして、マニュアルや消防団が所有しているライトバンの大きいやつ程度の消防車など機器を整備しておけば、東電核災害の進展は随分違ったものになり、現在よりも被害規模は小さくなったと思われます。

べントラインが12日未明までに構成されていれば、サプレッションプールを通したプールスクラビング(水フィルター)により除去係数・DF1000(1/1000)程度に放射性物質を低減する効果が期待できるウェットウェルベントになりました。3号機は、非常用蓄電池が一部生きていて減圧操作が行われていますから、地元の消防団から消防車・ポンプを借用する等してポンプを用意して炉心注水を早期に開始して、メルトダウンが防げた可能性が大きい。1号機、2号機は減圧操作をする非常用蓄電池が失われていたので、それ用の蓄電池の調達後に炉心注水が可能になります。メルトダウンは防げないでしょうが、メルトスルー・圧力容器損傷や格納容器損傷は防げた可能性が大きいと思います。

産湯とともに赤子を流すべからず 
Don't throw the baby out with the bath water.

PBSの限界を原子力安全基盤機構(JNES)防災対策部審議役の斉藤実氏は、次のように述べています。

「解析のプログラム(コード)が、事故のシーケンスをどのくらい正確に追うことが出来るかは、限界がある。今般の事故では、原子炉の炉心溶融開始の時間は、比較的正しく(数時間の違いで)予測できたと思われる。しかし、最も重要な、放射性物質の種類(核種)と放出の量と時刻(放出率)と経路については、全く予測できなかったと言える。解析コードは、格納容器の圧力の上昇または温度の上昇によって、格納容器にリークが生じ、リーク箇所から漏れた放射性物質は、直接、あるいは原子炉建屋及び排気筒を通じて、環境に放出されるという、予め、入力で指定したシナリオに対応した経路について解析を行う。一方、事故時に、予め、リーク経路を同定することは難しい。今般の事故では、原子炉建屋が水素爆発で崩壊し、格納容器の特定出来ないリーク箇所から放射性物質が直接放出されるなど、予測の範疇を超えた。」「格納容器の破損は予測できない場所で起こるので、前述した格納容器破損のモードとして、圧力の上昇または温度の上昇によって破損されることを解析して、核種や量、時間を算出することは出来ても、予測として使用することは、実際には不可能と思う。」

(原子力安全委員会、原子力施設等防災専門部会防災指針検討ワーキンググループ、2011年7月27日(水)会合の資料 防WG第1-5号

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3.11には原子炉の状態のデータ・パラメータが伝送されてきていませんから、予測システムAPSは稼動できません。斉藤JNES防災対策部審議役のいう「解析のプログラム(コード)」はこの場合使えるのはPBSです。斉藤氏は「今般の事故では、原子炉建屋が水素爆発で崩壊し、格納容器の特定出来ないリーク箇所から放射性物質が直接放出されるなど、予測の範疇を超えた。」から「最も重要な、放射性物質の種類(核種)と放出の量と時刻(放出率)と経路については、全く予測できなかったと言える。」としています。
 私は、斉藤氏は班目春樹・原子力安全委員会・委員長と同じ過ちを斉藤氏はしていると思います。管総理(当時)に1号機の水素爆発の危険性を尋ねられて、班目委員長は「格納容器内は窒素ガスが封入してあるから、水素爆発の恐れはない」旨答えました。その数時間後に1号機で水素爆発、班目委員長は頭を抱えてしまいました。

 核燃料損傷・炉心溶融が始まれば、核燃料からの放射能・放射性ヨウ素やセシウムなどの放射能、燃料被覆管のジルコニウムと水蒸気の化学反応によって生成する水素ガス、崩壊熱による高圧水蒸気で圧力容器、格納容器が満たされる。その格納容器の圧力の上昇または温度の上昇によって、格納容器にリークが生じる。そのリークで出てくるものが、放射能だけ、水素ガスだけ、水蒸気だけと想定するのは馬鹿げている。3者がすべて出てくると想定するのが妥当。水素ガスが窒素ガスが不入された格納容器内から酸素ガスのある環境中に出てくれば、条件が整えば爆発するだろうと予想できますが班目さんは予想しなかった。1号機が爆発する日の早朝に放射性ヨウ素が検出されていますから、水素ガスのリークも当然想定できたのに、班目委員長は考えもつかなかった。

 「原子炉建屋が水素爆発で崩壊し、格納容器の特定出来ないリーク箇所から放射性物質が直接放出」されているのは確かですが、その前にそれ以前の時刻に、格納容器の構造から弱い部分、それは事前に割り出され想定した箇所からのリークが始まっていた。放射能と水素ガスのリークは始まっていた。班目委員長は放射能の検出から水素ガスの漏洩を思いつかなかった。斉藤氏は逆に水素ガスの漏洩・爆発から、それ以前の時刻での放射能の漏洩を思いついていない。

斉藤氏は水素爆発による格納容器の破損は予測できない場所で起こるから、「予め、リーク経路を同定することは難しい。」としているが、水素爆発前や水素爆発がなかった場合は予測が可能ではないか?格納容器内の圧力の上昇または温度の上昇にる破損モードで予測可能ではないか。水素爆発は格納容器の破損が起きてから次におこるのだから、格納破損前や直後の初期段階での避難や安定ヨウ素剤投与などを決めるには、この破損モード、つまりPBSでの予測計算は使えるのではないか。

PBSは、「何時間後に燃料が溶けて、何時間後に原子炉圧力容器が破損して、格納容器の破損が何時間後って、そういうのを計算してるんです。」「壊れるのと同時に、中の放射能がどれぐらい出るか計算してある。だからいろんな放射性物質、例えば希ガスとか、ヨウ素、ストロンチウム、プルトニウム、ほとんどすべて種別に全部計算できるんですよ」。だから、斉藤氏が全く予測できないとしている放射性物質の種類(核種)、放出の量と時刻(放出率)は、PBSで予測可能である。

「PBSが出した放射能放出量をSPEEDIに入れる。SPEEDIは、住民がどのくらい被曝するかって計算もできちゃう。簡単にできちゃうんです」(永嶋)

勿論、圧力上昇や温度上昇や水素爆以外の要因で破損が早期によって破損される事への対策は必要。PBSの予測が実際とどれだけの整合しているか、それはモニタリング結果などとつき合わせて見なければ分からない。この問題は理論を実際で検証する科学技術全般での問題で、ERSS/APS/PBSに限らない。その手順は当然あり、PBSの破損モードが限られていることをもって、格納破損前や直後の初期段階での避難や安定ヨウ素剤投与などを決めるのに全く使えないというのは、産湯ごと赤ちゃんをながすようなもの。

また斉藤氏はSPEDDIに直接次のように述べています。
「SPEEDIについては、今回のように、放出率、放出の場所や高さの条件設定が非常に不確かで、放出の初期の放射性物質の拡散はその場所の局所的な建家形状や地形に左右されることを考慮し、元々、気象パラメータも連続的に変化すると、核種濃度を予測することは極めて困難と言わざるを得ないと思う。」

気象パラメータの連続的に変化は、気象庁、日本気象協会の予報データGPVを使うことで、変化に対応している。天気予報が100%当たらないのは誰もが知っている。それで困難というのは、朝の天気予報を見て傘を持っていくか否か決めるのは「極めて困難」というのと同じだ。
その場所の局所的な建家形状や地形に左右されというが、建家形状や地形はそう変化はしない。今のSPEEDIは、地形情報を入れて演算している。放出の初期条件で演算に織り込むように改良すれば済む話ではないか。PBSが各原発、原子炉の特性を織り込んでいるのだからSPEEDIでここの原発の建家形状や地形を織り込めないとは思えない。

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放出の高さは、確かに影響を与える。それは原子力安全基盤機構(JNES)安全研究センター長の本間俊充氏の試算では、事故炉から10km以内では大きな違いをもたらすが、それ以遠、特に20kmを超えると顕著な差はない。したがって、格納破損前や直後の初期段階での避難や安定ヨウ素剤投与などを決めるのに全く使えないほど、核種濃度の予測を困難にするとは考え難い。また、SPEEDIに直接に格納容器からでる高さ、原子炉建屋の高さ、排気筒の高さなどを設定して、もっとも実際に近い高さでSPEEDIを使えばよいのではないか。

ERSS、APS、PBS、SPEEDIは、避難や安定ヨウ素剤投与などを決めるのに使う防災のための道具であって、100%正確な科学的予測をする研究の道具ではない。斉藤氏は防災対策部審議役でありながら、科学的正確さに拘泥し産湯ごと赤ちゃんをながしている。

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