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SPEEDI無用論・・プラント事故挙動データシステム(PBS) 上 [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

SPPEDI(スピーディ・緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)は、ERSS(緊急時対策支援システム)から提供される放出源情報を入力することで汚染予想の地図を算出します。その予測値図は、モニタリングポストMPや緊急モニタリングでの実測値で補正されて使われます。

ERSS(緊急時対策支援システム)を構成する、「プラント情報収集表示システム・ICS」が原発からオンラインで伝送されてくる原子炉や発電所の情報を一括して収集してます。その情報から「解析予測システム(APS)」が放射能の放出源情報、現状と予想を算出します。このERSSは原発から送られてくる原子炉の状態や、発電所内のMPの放射線の実測値などもデータが無ければ稼動しません。

原発本来のもともとの設計や手順では、SBO・全交流電源喪失、外部から送電される交流電力と非常用発電機の交流電力が共にダウンし非常用蓄電池だけになると蓄電池の電力を非常時の注水機能RCIC(原子炉隔離時冷却系)やHPCI(高圧注水系)維持に使うために、約1時間~30分後にERSSへの原子炉の状態を示すデータの送信を切ります。伝送が途絶えます。


また地震などで通信回線が途絶え、データが送受できなく事もあります。

そうした時のバックアップが「プラント事故挙動データシステム(PBS・Plant Behavior Data System)」です。

ERSSを所管している原子力安全基盤機構・JNESは、「PBSでは、予め、種々の事故事象に対するプラント挙動を解析し、これら解析結果をデータベース化しておきます。 事故が発生した際は、似かよった事象をデータベースから検索・表示することにより、APSよりも早い段階で、おおよその事故進展を把握することができます。また放射性物質の放出量をSPEEDIに受け渡すことも可能です。」 と紹介しています。

烏賀陽 弘道氏がERSSやPBSの開発に携わった方へインタビューしています。
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松野元氏インタビュー 第1回 第2回 第3回

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永嶋國雄氏インタビュー 3回連載予定だが、現在は1回目のみ


この2氏のインタビューと資料の私なりの要約。

(1)APS・解析予測システムの予測計算の所用は約30分。
APSはシビアアクシデントコード(MAAP・マープ)を使用している。MAAP・マープは米国電力研究所(EPRI・エプリ)がFAI(Fauske and Associates Inc.)に委託開発したシビアアクシデントコードで、「アメリカは、原子炉破壊実験とか格納容器破壊実験を実際にやっています。つまり単なる演算上の演習ではなくて、実際にシビアアクシデントの実験をやった結果からコードを開発しています。そうしないと、計算があてになる確証ができないんです。(永嶋)」と妥当性が確認されている。2000年に完成。
(2)APSが間に合わない事態やERSSに使用する伝送パラメータが来ないでERSSが稼動しない事態に備えてPBS・Plant Behavior Data System・プラント事故挙動データシステムが開発された。
プラントの状態(燃料破損、水素発生、燃料溶融等)を演算し出力する。「それを見ると『今の状態だったらいつになったら燃料破損する』『いつになったら格納容器が壊れる』っていうのが出てくるんです。」「格納容器ベントする場合とか、最終的に格納容器が破壊される場合とかの放射能放出量をPBSにより出すことができます」
「PBSが出した放射能放出量をSPEEDIに入れる。SPEEDIは、住民がどのくらい被曝するかって計算もできちゃう。簡単にできちゃうんです」(永嶋)
(3)PBSもMAAP/マープを使っている。国内すべてのプラントデータが組み込まれている。それで、各原子炉の特性に合わせて計算ができる。
「いやいや、事前に事故シナリオが分からないといっても、だいたい5つか6つぐらいのシナリオに分類できるんですよ。」「電源が永久になくなった場合とか、海水ポンプが永久になくなった場合とか 。冷却系配管の破断が起こった場合とか。」の事故シナリオデータで、予めシュミレーションした事故経過データがデータベースにしてある。

「何も復旧操作もないという条件で計算すると、何時間後に燃料が溶けて、何時間後に原子炉圧力容器が破損して、格納容器の破損が何時間後って、そういうのを計算してるんです。」「壊れるのと同時に、中の放射能がどれぐらい出るか計算してある。だからいろんな放射性物質、例えば希ガスとか、ヨウ素、ストロンチウム、プルトニウム、ほとんどすべて種別に全部計算できるんですよ」
 オフサイトセンターに、そのセンターが対応する原発の事故経過データのデータベースがDVD-ROMで配備してあり、普通のパソコン(ウィンドウズ)で使える。1日・24時間の将来予測の所用演算時間は1時間程度。

「実際に使う時には、それまでにこういう系統で復旧するから、復旧すればその状況に入れて事故が収まるかどうかということを計算でできるんですけどね」
電話、FAX等で入手した情報、例えば「非常用復水器戻りました」とか「電源戻りました」とかを入力して、その場で計算し直す。「データを準備して、検討して、(何時間後に復旧するなどの)大体計算結果が出るのは2時間。実際計算は1時間でできちゃうんです。(永嶋)」。途中経過はグラフィック表示。

(4)ERSS、PBS開発で得られた知見・運転操作

①ゆっくりしているが崩壊熱の威力は凄まじく、燃料溶融、圧力容器貫通、格納容器破損を簡単に引き起こす。
②水素爆発の威力は凄まじく原子炉建屋を簡単に破壊する。
以下の運転操作を燃料棒破損前に実施する。
③非常用炉心冷却系等のプラントに設置された全ての冷却系が喪失した場合は、原子炉=圧力容器の減圧操作を行い、消防ポンプで注水し、炉心を冷却する。
「消防団が所有しているポンプ車があるんです。普通免許で動かせるようなライトバンの大きいやつかな。それぐらいで運転できる消防車なんですよ。それでも十分原子炉は冷やせたんですよ。」「注水用としてはそれで十分。 数値で言うと、1時間に100トン注水できれば冷えるんです」「それは500万くらいで買えます。」(永嶋)
④ベントする場合は、通常の換気である非常用ガス処理系の破損防止対策が必要。
この操作は現場で行うため、燃料棒破損前に実施する。


(5)アメリカの原子力委員会(NRC)が1990年12月に「5つの原発についてシビアアクシデントが起きる確率」を計算して公表しています。(NUREG-1150)それでは「福島第一原発のような沸騰水型では炉心溶融になるようなシビアアクシデントの9割以上はSBO/全交流電源喪失で起きる」としている。

(6)福山官房副長官の著書「原発危機 官邸からの証言」46ページには、原子力安全・保安院がPBSを起動して2号機のメルトダウンの時間を予測、首相官邸に届けたこと「(3月11日午後10時44分、保安院が)『福島第一2号機の今後の進展について』と題するペーパーを官邸の危機管理センターに報告した。それはプラント解析システムによって今後、2号機がどうなっていくのかを予測していた」と明記されている。

続く



SPEEDI無用論・・3.11にSPEEDIは「連鎖倒産」でシステムダウン [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

3.11の東電核災害で、SPEEDI(スピーディ・緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)が役に立たなかったことから、「緊急時にSPEEDIは信頼性に欠ける。予測システムで何かができるというのは幻想だった。」(本間俊充氏・日本原子力研究開発機構安全研究センター長)という議論がでています。

斗ヶ沢秀俊氏、毎日新聞の科学記者で東京本社科学環境部長や福島支局長を務めた斗ヶ沢秀俊氏は、「金食い風向き予測装置SPEEDI」であり「放射性物質大量拡散がいつ起こるかは予測できないから、SPEEDIは使いようがなかった」「SPEEDIは放出後の拡散予測には使えます。しかし、モニタリングポストが充実していれば、拡散予測よりも実データの方が意味があるので、SPEEDIに金をかけるより、モニタリングシステムの整備に金をかけようというのが、私の主張です。」とSPEEDIは不要、無用との論陣を張っています。

3.11東電核事故で露呈したSPEEDIシステムの問題点や対策を、原子力規制庁の官僚は「自然災害等により情報が途絶することがないよう、適切に整備、維持及び管理することが必要である。」とまとめています。

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SPEEDIの仕組みを知らなければ、当否は考えられません。SPEEDIの放射能の拡散予測には、主に3つのデータが使われます。一つは、大気・風にのって放射能が流れる土地の山や谷などの地形データ。一つは風向き、風速と降水量などの気象条件データ。一つは、事故炉からの放射能の放出開始時刻、放出継続時間、放出核種名、放出量、放出高さなどの放出源データ。

地形データは、国土地理院データをもとに整備されてデータベースに格納されています。この情報は災害で途絶えません。

SPEEDIは天気予報はしない

気象条件データは、気象庁、日本気象協会や地方自治体から提供されます。GPVデータ及びアメダスデータを常時収集しています。アメダス・AMeDASはご存知のようにオンタイムの実測データです。
GPVはGrid Point Valueで、20km間隔の格子点での予報値です。気温、風向き、降水量等の1時間間隔で最大51時間後までの予報値です。このGPVの予報値をもとに原発の設置されている地域の局地の地形を反映した風向・風速、気温等を2km間隔の格子点の予測データを算出し、これをアメダスデータや地方自治体から提供される実測値で補正する処理をして、500m間隔の格子点の予測データの風速場、1時間間隔で最大44時間後までの予報値を算出します。SPEEDIは気象条件の細密化処理をし、それが妥当かチェックできますが、風向き予報はしません。予報はという行為は気象庁・日本気象協会が行っています。つまりSPEEDIは斗ヶ沢氏の言うような風向きの「予測装置」ではありません。

3.11東日本大震災では、GPVデータ及びアメダスデータは提供され、受信できていました。

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モニタリングの実測値とSPEEDIの予測値は相補う

この500m間隔の格子点の予測データの風速場結果と放射能の放出開始時刻や放出量などの放出源データを使って、RWDA21というプログラムで放射能の大気中や地面の沈着する濃度・線量を算出します。それは、発電所に設置してあるモニタリングポストMPや自治体が発電所周辺に設置しているモニタリングポストMPや緊急モニタリングの実測値で補正します。
SPEEDIの取り扱いマニュアルでは、事故の発災当初は放出源データがないので放出量1ベクレルBq/時で拡散予測をして、MPの実測値で補正して使う。A地点のMPの実測値が予測値のN倍なら、全予測値をN倍で読み替えて使うといった補正をして使います。逆に、実測値と比較し、実際の放出量を推定することもできます。

気象条件の予測値が実測のアメダスや自治体の観測値で補正されるように、放射能の大気中や地面の沈着する濃度・線量の予測値もモニタリングポストMPや緊急モニタリングの実測値で補正する仕組みになっています。モニタリングポストMPや緊急モニタリングの実測値は点の情報で、地域の面での放射能濃度・線量は補正されたSPEEDIの地図状の図形情報が優れています。斗ヶ沢氏のように「MPかSPEEDIか」と対立したものとはいえません。

SPEEDIダウンは、ERSSダウンとMPダウンの”連鎖倒産”

放出源データは、ERSS(Emergency Response Support System、緊急時対策支援システム)から、その一部の「解析予測システム(APS)」から提供されます。それを手入力します。
ERSS・緊急時対策支援システムは、「プラント情報収集表示システム・ICS」、「事故状態判断支援システム・DPS」、「解析予測システム・APS」 から構成されています。原発からオンラインで伝送されてくる原子炉や発電所の情報を一括して収集し、分かりやすい視覚情報としてモニターの画面上に表示する「プラント情報収集表示システム・ICS」。

解析予測システム(APS)は、ICSから提供される原発から伝送される炉の状態などのパラメータを入力情報にして、 炉心出口温度、原子炉および格納容器の温度・圧力等のプラント主要パラメータ値 の推移トレンドグラフや放射性物質の放出量を算出表示します。解析予測システム(APS)は約30分稼動で算出します。この放射性物質の放出量などをSPEEDIでは手入力します。6時間予測を約15分で、この入力された放出源情報と500m間隔の格子点の予測データの風速場結果をつかってPRWDA21というプログラムで放射能の大気中や地面の沈着する濃度・線量を算出し、表示、配信します。

3.11東電核災害では、福島の東電の原発から炉の状態などのパラメータが送られて来なくなりました。「情報が途絶」しました。原子炉のリアルタイムのデータが取れなくて解析予測システム(APS)はダウンしました。SPEEDIに放出源情報が提供されなくなっていました。それでは、SPEEDIは放射能の拡散や線量の予測は難しくなります。放出量1ベクレルBq/時の単位放出で拡散予測をして、モニタリングポストMPの実測値で補正して使う。また、実測値と比較し、実際の放出量を推定して、それを加算して積算放出量をだして入力に使うといった変則的使い方になります。ところが、地震・津波で東電のMP、福島県のMPがダウンし、モニタリングシステムが発災当初はダウンしました。

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ですから、3.11東電核災害でSPEEDIが単独でダウンというよりも、ERSS(緊急時対策支援システム)ダウンとモニタリングポストMPダウンによる”連鎖倒産”です。「緊急時にSPEEDIは信頼性に欠ける。」(本間俊充氏・日本原子力研究開発機構安全研究センター長)ではなく、緊急時の信頼性に欠けていたのは、ERSSとモニタリングシステムです。

ERSSは「国が原子力災害応急対策を実施するに当たり、必要となる事故進展予測を支援するために、電気事業者 から送られてくる情報に基づき、事故の状態を監視し、専門的な知識データベースに基づいて事故の状態を判断し、その後の事故進展をコンピュータにより解析・予測する」システムです。それがシステムダウンしたのです。ERSSのダウンで、国の3.11東電核災害の応急対策は、先が見えない五里霧中で行われたことになります。

今後の対策では、プラント情報収集表示システム・ICSが稼動できるように発電所からの原発から炉の状態などのパラメータとモニタリングポストMPなどモニタリングシステムの実測データが「自然災害等により途絶することがないよう」する情報の筆頭です。斗ヶ沢秀俊氏の「SPEEDIに金をかけるより、モニタリングシステムの整備に金をかけよう」という主張は、金をかける場所を間違っています。

隠蔽されているPBS・プラント事故挙動データシステム

ERSSは、「プラント情報収集表示システム・ICS」、「事故状態判断支援システム・DPS」、「解析予測システム・APS」 から構成されています。ERSSを所管している原子力安全基盤機構・JNESは、ERSSに関連するシステムとして「プラント事故挙動データシステム(PBS)」を紹介しています。「PBSでは、予め、種々の事故事象に対するプラント挙動を解析し、これら解析結果をデータベース化しておきます。 事故が発生した際は、似かよった事象をデータベースから検索・表示することにより、APSよりも早い段階で、おおよその事故進展を把握することができます。また放射性物質の放出量をSPEEDIに受け渡すことも可能です。」 JNES

PBS・プラント事故挙動データシステムはオフライン型なので、通信が途絶しようが起動すれば使えるシステムです。3.11東電核災害で、PBSは、起動できなかったのでしょうか?動かさなかったのでしょうか?それで出された放射性物質の放出量をSPEEDIに手入力して、動かさなかったのでしょうか?放射能汚染の予測をしなかったのでしょうか? 続く



SPEEDI無用論・・官僚・規制庁はSPEEDIをなくせない [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

3.11の東電核災害で、SPEEDI(スピーディ・緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)が役に立たなかったことから、無用論が出ています。火元は原子力安全委員会の事務局、今の原子力規制庁の官僚たちです。これに乗って、様々な人たちがSPEEDIは不要、無用との論陣を張っています。ここでは毎日新聞の科学記者で東京本社科学環境部長や福島支局長を務めた斗ヶ沢秀俊氏に不要、無用論陣の代表をお願いします。

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IAEAの安全要件は予測システムを要求

官僚たちは、SPEEDIが不要とは考えていません。官僚が日本が原子力規制の拠所としているのは、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency、略称:IAEA)です。IAEAが2002年に定めている安全要件で、放射能影響を予測するシステムを開発しておくこと、それを「模擬した緊急時条件で試験を行い、使用前に妥当性を検証」しておくように求めており、これに応じて整備された日本版予測システムがSPEEDIだからです。IAEAの安全要件は「GS-R-2 原子力又は放射線の緊急事態に対する準備と対応」が正式名称ですが、他にも環境に出る放射能の範囲と程度(量)を早期予測するシステムも求められていて、日本版がERSS(Emergency Response Support System、緊急時対策支援システム)です。 {GS-R-2の4.24、5.18、5.21、5.22の各項目参照}

日本がIAEAと袂をわかって独自路線を行く道を選ばない限り、SPEEDIやERSSは必要です。IAEAは核拡散防止条約(NPT)の保障措置、査察を担っています。IAEAを脱退するということは、核拡散防止条約(NPT)の査察を拒否するということです。お隣の北朝鮮と同じ道を歩むことです。核爆弾の原料のプルトニウムを約35トンも保有している現状では、各国に核武装の強い疑惑を持たせることです。IAEAを脱退して国際的孤立を選ぶのでしょうか?IAEAに加盟している=安全要件・GS-R-2 を受け入れ遵守するのなら、SPEEDIやERSSは必要で、3.11の東電核災害で使えなかっ原因を明らかにして改良・改善する必要があります。その責任が国内的にも国際的にもあります。斗ケ沢さんは、SPEEDIは「原子力研究者がシミュレーション装置をほしいと願い、『重大事故対策』という大義名分があったため、つくられたと考えます。」と随分人間臭い、生臭い国内事情で推測をしていますが、新聞記者なのに日本の原子力体制を包む国際的枠組みには目が届いていないと思います。見ないようにしているのでしょうか。

このようにSPEEDIをお払い箱にできないので、原子力安全委員会の事務局(現材は原子力規制庁)は原子力施設等防災専門部会防災指針検討ワーキンググループ(防災WG)での議論のたたき台になる事務局案で、核事故防災でのSPEEDI”不使用”を打ち出しています。IAEA向けに、床の間に飾っておこうという方針です。防災WGで論議していた専門家からは、「予測手法を否定すべきでない。」「SPEEDI を削除するのは極端。」といった修正意見が出されています。各委員の意見を反映した修正案の2ページ)
福島での避難を省見ると、数時間かけてたどり着いた所が数時間後に高濃度に汚染されたり、高濃度の放射能雲の間を彷徨って避難しています。これらは、予測システムで回避できます。IAEAの安全要件は「緊急事態においても、人、財産及び環境への影響を最小にとどめることを意図」して策定されてますから、SPEEDIのような予測システムを要求しています。しかしIAEAは、こうした予測システムだけでは不十分であると見ていました。
予測システムの限界・・IAEAの見立て
IAEAはチェルノブイリ等のシビアアクシデント(核燃料・炉心損傷事故)経験や研究を踏まえて考えるとシビアアクシデント「炉心損傷自体は予測可能な場合もある」つまり核燃料から放出される放射能の量や時期は予測できるが、放射能を封じ込める最後の砦「格納容器が破損することなどについての予測は非常に難しく、」格納容器から放射能が環境中にでる時期や放出量を左右する破損口の大きさ等は予測が困難だから「事故発生後、防護措置の判断が必要なごく初期の段階で、放出量や線量を正確に予測することはほとんど不可能」との見解をもっていました。(国会事故調 4.3.1の3)のa) 国会事故調 (防災WG第1回・2006年3月29日の速記録
シビアアクシデント時の発災後の放射能の環境放出時刻は、研究ではBWR(沸騰水型、東京電力など)では概ね10時間後ですが核分裂を止める制御棒の全挿入に失敗した場合つまりチェルノブイリと同じ反応度事故(暴走事故)で、1本だけ挿入失敗したと仮定して試算すると約1時間後。
PWR(加圧型、関西電力など)でも概ね10時間後ですが蒸気発生器破損で約1時間15分後に始まります。 
こうした事故開始から短時間に環境放出する場合があることから、IAEAはこれに備えて避難など防護措置をとるモニタリングの実測値や発電プラントの状態等など「運用上の介入レベルをあらかじめ決めて緊急時計画に挿入すべきであるというのがこの(IAEAの)早期防護における基本的な考え方」例えば放射能の放出を待たずにプラント状態に基づいて「近傍の住民は主要な放出の前か直後に避難するか、堅固な建物に屋内退避すべきである。さらに屋内退避の住民には主要な放出の前か直後に安定ヨウ素剤が配付されるべき」で、「広範囲にわたる食物汚染の可能性による被ばくを避けるため、主要な放出の前か直後に警告が発せられるべきである。」
(防災WG第1回・2006年3月29日の速記録

安全神話の呪縛、事故後に臭いものに蓋
それでSPEEDIなど予測システムだけに頼らない防災体制の構築を以前から求めていました。日本もこうした一定の緊急事態を契機として自動的に防護措置を発動させる体制の構築に着手していましたが、「安全神話」に呪縛で遅々としていたのです。
原子力保安院は、従来の説明の変更により住民の不安の増大や混乱を招く恐れを言いつのりました。
「電事連は、安全委員会に対し、防災指針の見直しに関して『訴訟等でインパクトが大きい』『防災業務計画を策定する範囲が広がってしまい収拾がつかなくなる』『新たな自治体への対応が増えてしまう』などの懸念を表明」
結局「安全委員会は、新たな国際基準を導入すべき場面において、従来の原子力安全規制の前提にこだわり、これを抜本的に見直すことができなかった。」国会事故調 4.3.1

こうしたIAEAの国際的論議などの背景を知っている専門家が、官僚のSPEEDI不使用・床の間のお飾り論に反対し、「予測手法を否定すべきでない。」「SPEEDI を削除するのは極端。」と意見するのは当然です。3.11東電核災害でSPEEDIが活用されなかった事情には、避難指示を出す権限を持つ首相、官邸にSPEEDI情報を上げなかった官僚の怠慢・不作為、「国民がパニックになることを懸念」し公表し活用をさけた官邸(政治)というシステム自体よりも、SPEEDI情報を使う行政・政治のほうに大きな問題があったことは明らかになっています。

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保身第一の官僚は、臭いものに蓋、Sweep it under the carpet(ほうきでごみをカーペットの下に入れる)で、これまで棚晒しにしてきたモニタリングの実測値などで自動的に防護措置を発動させる方式をカーペット・蓋にしてSPEEDIを人目から隠そうと、東大卒業の偏差値の高い賢い頭脳でひねり出したのがSPEEDI不使用・床の間のお飾り化の方針です。事務局(官僚)は、「緊急時にSPEEDIは信頼性に欠ける。予測システムで何かができるというのは幻想だった。」という本間俊充氏(日本原子力研究開発機構安全研究センター長)を防災WG主査に据えて、議論を進めようとしました。

しかし他の専門家から「予測手法を否定すべきでない。」「SPEEDI を削除するのは極端。」といった修正意見がだされ、原発立地自治体からは、「本来、今般の教訓を踏まえても、予測的手法の信頼性向上に努めることが大前提であり、その上で万が一予測的手法による対応ができない懸念への対応として、計測可能な手法も併せて判断基準に用いることが、住民の無用な被ばくを防ぐために目指すべき方向ではないか。」「たとえ低線量であるとしても結果的には居住する住民の被ばくを許容することとなり、これまでの予測積算線量に基づく考え方と大きく異なるものである。低線量被ばくの健康影響に関する国の考え方がしっかりと示されておらず国民の理解が進まない状況では、周辺住民の理解を得ることは難しい。」といった意見が出されました。

原子力規制庁は先送り
それで、10/3に原子力規制庁の官僚が規制委員会に示した対策指針の案では、次のようになっています。
(6)の⑤緊急時予測支援システムの整備・維持
気象情報や緊急時モニタリングの結果など放射性物質又は放射線量の面的な広がり、放出源の状況の推定などが計算できる緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDIネットワークシステム:System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)、ERSS等の整備を進めることが重要である。
その際、自然災害等により情報が途絶することがないよう、適切に整備、維持及び管理することが必要である。
計算結果や予測情報の活用方策については、今後、原子力規制委員会において、その詳細を検討する必要がある。

また、あらかじめ、国、地方公共団体、原子力事業者等の間で十分に協議し、平常時から各種システムのネットワーク化や、緊急時の際の協力体制を整えておくことが必要である。

「活用方策については、今後、原子力規制委員会において、その詳細を検討する」とSPEEDIは不使用という結論は出していません。先送りしています。
SPEEDI情報を使う行政・政治の問題は、「十分に協議し、平常時から各種システムのネットワーク化や、緊急時の際の協力体制を整えておくこと」と脇におくとして、
3.11東電核事故で露呈したSPEEDIシステムの問題点は「情報が途絶」なのでしょうか?どのような情報の途絶が起こったのでしょうか? 斗ヶ沢秀俊氏は「金食い風向き予測装置SPEEDI」と言っていますが、そういう事なのでしょうか? 
続く

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子供らを守るツールがなくなる・・国会事故調、現時点での論点整理(第二回)の論点5のSPEEDIの扱いは不当 [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

国会事故調(国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)現時点での論点整理(第二回)の論点5のSPEEDIについて ,意見を6/15に送付しました。


SPEEDIのような放射能の拡散予想視システムは、ブルーム通過時の放射性ヨウ素から子供らの甲状腺内部被曝の防護には不可欠。

 現在の測定器で放射性ヨウ素の濃度がリアルタイムに測定できません。線量計では、地面に沈着した放射能から放射線、空中のブルームからの放射線など全ての放射線を測ります。そこからブルーム中の放射性ヨウ素だけをリアルタイムに割り出すのは出来ない。放射性ヨウ素の大気中の濃度情報は、大気を吸引してフィルターを通して、フィルターに付着したものを測定するダストモニタリングで測られるが、「実際の事故の時というのはダストモニタリングの結果というのは2日遅れぐらいになって」しまう。
 放射性ヨウ素に汚染されていない食品や水の確保、安定ヨウ素剤の小児への投与などの防護措置は、ダストモニタリングの結果が出てから獲られても手遅れ。論点整理のようにモニタリング手法の多様化及び測定地点の多数化・分散化という実測方式では、小児の甲状腺内部被曝の防護には実効性が低いので、SPEEDIのような放射能の拡散予想視システムが必要になる。

緊急時対策支援システム(ERSS)のSOB時には、約1時間後には使えなくなる。

放出源情報をもたらす緊急時対策支援システム(ERSS)が、十全に機能しなかった経緯を検証されたい。
ERSSのプラント側のシステムは、①原子炉などに設置されている観測機器、②その観測データを集約するプロセス計算機、③プロセス計算機からデータをERSS用に変換する装置、④そのデータを伝送する通信経路に大きく分けられれる。どの部分が、何時、どのような原因で機能しなくなったのか明らかにされたい。

福島第一原発の事故時の手順書では、全交流電源喪失SBOになり電源が非常用蓄電池のみになると、約1時間後に蓄電池の電力をもたす為にプロセス計算機の電源が落とされる手順になっている。原子力安全委員会の資料によれば、他の原発でも同様である。ERSSシステムの主要なサブシステムの②の観測データを集約するプロセス計算機、が停止するのだから、ERSSは約1時間後に原子炉データが届かなくなり、放出源情報をSPEDDIに出力できなくなる。そうした全交流電源喪失SBO事故時の対応手順になっている。
このようなERSSの限界は、「関係各省庁にも共有されて」いたのか、検証し明らかにされたい。

シビアアクシデントの研究によれば、加圧型PWRでは事故開始から1時間以内に放射能が環境放出されるシーケンスはない、概ね10~100時間後。沸騰水型BWRでは、制御棒の挿入に失敗、スクラム失敗したシーケンスで1時間以内に環境放出が始まるが、概ね5~100時間後に放出が始まる。(原子力安全委員会の防WG第6-1号資料、防WG第5-2号)
つまりシビアアクシデント事故のほとんど場合、全交流電源喪失SBOが重なると、放射能が環境放出される時刻には、プロセス計算機が停止して、ERSSは原子炉データが届かなくなっており、放出源情報をSPEDDIに出力できない。

「SPEEDIは、確度の高い放出源情報と気象予測情報が得られることを前提とするシステムであり、これらの情報が得られない場合には、SPPEDIを効果的に活用することは困難である。(論点整理)」というのなら、シビアアクシデント事故で且つ全交流電源喪失SBO時には、今回の事故に限らず「SPPEDIを効果的に活用することは困難である」ことになる。

「このようなSPEEDIの限界は、関係各省庁にも共有されて」いたのか、検証し明らかにされたい。


確度の高い放出源情報が得られない場合、原子力防災のマニュアル(原子力安全委員会・緊急時環境放射線モニタリング指針)では、「単位放出」で予測計算。放出率を 1Bq/h とした相対的な濃度分布、被曝線量の広がりを計算し予測図形(地図)などで出力する。算出には約20分(6時間予測計算)である。この予測地図があれば、ヨウ素剤投与などが当面不要な地域、必要な地域、避難先にできない地域などがわかり、防護対策が採れる。

この「単位放出」の予測地図は、関係自治体への提供されることになっている。「モニタリングセンター長は、地方公共団体が設置した現地災害対策本部に予測線量の推定結果等必要な事項を迅速かつ的確に報告するとともに取るべき対策に関し意見を具申する。」(原子力安全委員会・緊急時環境放射線モニタリング指針)

今回、この手順が守られたか。その検証を明らかにされたい。
その「単位放出」の予測地図が、一般市民・国民に公表されなかった経緯を明らかにしていただきたい。
「単位放出」の予測地図が一般に公表されていれば、原子力安全委員会が平成23年3月23日に公表した計算図形が、逆推定による過去の再現情報であり、予測情報ではないことは自明なので、「政府の情報公表に対する住民の信頼を失墜」させることもなかったと思われる。

関係各省庁で「活用方法について十分な検討が行われないまま」であったという実態を明らかにされたい。


モニタリングについて

「放射性物質の拡散状況の把握に最も効果的なのは、モニタリング手法の多様化及び測定地点の多数化・分散化である」とあるが、どのようなモニタリング手法が提起されていたのか、それが実用化されなかった経緯を明らかにされたい。

また、福島県が設置していたモニタリングポストが、発災の後、何時まで稼動していたのかなど明らかにされたい。そのデータは「平常時からSPEEDIネットワークシステムに固定式モニタリングポスト等のシステムを接続して、定常的に気象観測情報等を提供し、緊急時に備えるものとする。」(原子力安全委員会・緊急時環境放射線モニタリング指針)モニタリングポストからのデータの伝送経路などが地震対策されていたか、検証を明らかにされたい。

新潟県は、中越沖地震後に①停電対策・・無停電電源装置(UPS)や非常用発電装置を設け、災害時に停電が発生しても測定が自動継続、②通信回線多重化・・通常は局舎内に備えたテレメータ子局から、主系と従系の 2 系統により、広域イーサーネット回線を使って放射線監視センターへ 2 分値及び 10 分値を伝送する。さらに、災害等によりこの回線が通信不能になった場合はバックアップ通信手段として衛星回線(NTT ドコモ,ワイドスターデュオ)を使って伝送、③遠隔監視・・監視カメラを設けて夜間については照明を付け、測定器や屋外設備の外観に異常がないかを放射線監視センターに居ながら見ることができるの 3 点の強化措置を行っている。

こうした対策の有無、その実効性を検証されたい。それがなくては、測定地点を多数化・分散化しても、観測データが入手できない事態が再来する。



柏崎刈羽原発でメルトダウンが起きた時の、放射能の拡がり方 SPEEDI予測から [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

大飯原発の原子炉直下を通る破砕帯があり、動けば地面がずれ、原子炉建屋が割れる、配管が破損する可能性が指摘され、調査を専門家が6/6に訴えました。しかし、野田首相は、「電源が失われるような事態が起きても炉心損傷に至らない」大飯原子力発電所の「安全性を確認した」として、再稼動を6/8に打ち出しました。免震重要棟もベント時のフィルーターも無しで、政治家の首相が安全宣言できるのか。これは、新たな安全神話では?なにより、政治家、行政の長として首相がやるべき発電所の外での対策、新たな安全規制機関や、万が一の事態が生じた場合の防災対策に目鼻もつけていません。

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 新潟県は、3.11東電核災害の1年前2010年に地震と原子力災害の同時発生を想定した複合災害型の原子力防災訓練を計画しました。原子力安全・保安院から「震度5弱の地震発生と原子力災害の同時発生という想定での複合災害訓練は、住民に不安と誤解を与えかねない」といわれ、雪害との複合に変更しています。

 防災対策、原子力防災対策は、起こりうる災害・災厄の規模、程度を客観的に予想しなければ実効性を望めません。そのためにはSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)による放射能の拡散・汚染の予測、それを地図にした予想図形が有力な道具です。従来は23km×23kmの狭域図でしたが、3.11後に92km×92kmの広域図も使用可能になりました。文科省が要請されてシブシブ変更しました。
東電核災害をみれば広域図がより適切ですが、原発など核施設の立地関連19道府県では新潟県、静岡県、京都府(県境から約5キロにある福井県の関電高浜原発)だけが広域図を文科省に請求・依頼しています。
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福井県が大飯原発を92km×92kmの広域の予想図形で文科省に依頼すれば、若狭湾沿岸(嶺南)一帯だけでなく京都府や滋賀県への汚染予測も分かるのですが、福井県は狭域図です。この隣県無視は、風向きが西風や西南なら京都府や滋賀へ避難する方が合理的なのに、わざわざ放射能が流れてくる越前(嶺北)に逃げる避難計画にまで貫徹しています。東電核災害から何を学んだのでしょう。住民・県民の安全よりも、滋賀県や京都府に発言権を与えない政治的裨益が福井県当局には重要なのでしょう。

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 広域図は放射能の放出の設定に制限があり、単位放出で予想されています。放出時刻に1時間に1Bq、放射性ヨウ素131なら100万個の原子が放出されたという想定です。それが地形に沿って観測された風向きで、拡散していく様、地点ごとの濃度、それによる被曝線量などを計算します。
SPEDI 読み方

事故時には、実際に出た量、200万ベクレルなら、予想濃度などを200万倍します。
放出量を原子力安全委員会での新たな原子力防災対策の審議で用いられた値で、放射性ヨウ素131で210千兆ベクレル(約46グラム)で、5/15に公表された広域図を見直しました。


 風速が小さい、概ね3m/秒(時速約10km)以下だと広範囲が高い被曝量になります。

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逆に概ね5m/秒(時速約18km)以上だと風下方向に帯状に高々被爆の地域になります。

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また、いったん海に出ても、陸側へ戻り海岸部だけでなく山間部にも高い地域が散在する予想図形もあります。

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放射性ヨウ素による小児甲状腺被曝
 放射性ヨウ素による小児甲状腺被曝は、将来、甲状腺ガンや機能異常につながります。基礎対策は、放射性ヨウ素で汚染されていない水、食料を用意し、外出を控える。呼吸による吸収・内部被曝がIAEAの基準では7日間で50mSv以上、日本の防災指針では100mSv以上の被曝が予想される場合は、安定ヨウ素剤の予防服用です。日本も50に変更が検討中です。

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 それで、この50mSv濃度地帯が原発からどれ位離れた地点まであるか?みてみると、ほとんどの場合、広域図の外側、原発から50km以上離れた地点まで広がっていることが読み取れます。県境を越えて、長野県、群馬県、富山県、福島県まで広がっていると思います。

原子力安全委員会で審議中の新原子力防災対策案では、これを50kmとしています。不十分です。

また、広域図でも能力不足です。新潟県の北端まで柏崎刈羽原発から約160kmありますから、100~数千km幅の広範囲を扱える世界版SPEEDI(WSPEEDI)の使用が不可欠です。6/7に防災局放射能対策課に問合せたら、その点は新潟県も認識しており、WSPEEDIの使用を文科省に求めているそうです。しかし、文科省は良い返事をしません。トップの野田首相が、増税に懸命で防災対策に全く取り組まないのですから、当然です。

安定ヨウ素剤の服用は、放射性ヨウ素が到達する前が最善で到達直後が次善。朝、昼、晩、夜間、深夜、いつ事故が起きても、放射能が到達するまでの間に、放射性ヨウ素で汚染されていない水、食料を用意し、安定ヨウ素剤を配布・入手し子供が服用ができる態勢を整えておく必要があります。風速3m/秒なら長岡市街まで約3時間、5m/秒だと広域図の角まで約3時間半。柏崎刈羽原発を論議するにしても、その自治体の態勢や各家庭での対応策ができてからです。

放射性セシウムによる長期避難、移住

 静岡県は放射性セシウム137による外部被曝線量の予測図形を出しています。この外部被爆は、原発から放出されたセシウム137で大気中を漂う粒子状の物からの放射線と地表に降下し沈着したものからの放射線の合計です。

 ですから、SPEDDIでセシウム137の地面への降下し沈着した量・Bq/㎡の予想図形が得られます。セシウム137が1万Bq/㎡(約10億分の3グラム)沈着すると、その放射線で年間0.175mSvの被曝になります。

 放出から24時間以内の外部被曝を支配するのは、クリプトン85などの希ガス類です。それでの被曝が「直ちに影響」するので、緊急の避難は希ガスの拡散模様で決まります。沈着したセシウムは、数ヶ月かけての退避と、移住か避難か、避難期間を決める要因です。

 セシウム137が6万Bq/㎡の地域は、物理的減衰だけでは、それによる外部被曝が5年後に0.9mSv/年。10万Bq/㎡の地域は、25年後に1mSv/年。共に出るセシウム134は1万Bq/㎡沈着(約100億分の2g)で0.479 mSv/年です。セシウム134の沈着量の予想と合わせ、じっくり考えておくべきです。


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