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SPEEDI無用論・・PBS(下) 産湯とともに赤子を流すべからず [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

これらの事から
A)沸騰水型・BWRで最も備えなければならないのは、SBO・全交流電源喪失。それは原子力災害対策特別措置法15条通報(全交流電源喪失)で、国に通報される。その場合、非常用蓄電池が生き残ってもBWRでは1時間後、加圧型・PWRでは30分後に、原子炉のパラメーターはERSSに伝送されなくなる。ASPは使えなくなる。ASPは沸騰水型ではSBO/全交流電源喪失以外の要因で起きるシビアアクシデントの1割以下の場合に、有効に使える。

B)15条通報(全交流電源喪失)では、遅かれ早かれ、ERSS、APSは使えなくなる。つまり、15条通報があればPBS・プラント事故挙動データシステムの出番であり、3.11に保安院はPBSを起動し使っている。

C)PBS起動から約1時間で、何も復旧操作もない場合の「何時間後に燃料が溶けて、何時間後に原子炉圧力容器が破損して、格納容器の破損が何時間後」その「格納容器ベントする場合とか、最終的に格納容器が破壊される場合とかの放射能放出量」の予測値が得られる。それをSPEEDIに手入力すれば、約15分で放射能の大気中や地面の沈着する濃度、住民がどのくらい被曝するか線量を予測算出する。それを使い国・自治体は住民の保護、安定ヨウ素剤の投与や避難の指示をだせる。PBSやSPEEDIの予測の妥当性は、モニタリングポスト・MPや緊急モニタリングでの放射線、放射能の実測値で検証し、補正する。

D) SBO・15条通報時には、発電所は事故炉でベントの配管ラインの構成や圧力容器の減圧と消化ポンプによる圧力容器・炉心への注水作業を先ず済ませる、予測される核燃料が熔ける、損傷する時刻前に行うように、電力会社がシビアアクシデント対策・AMを深化、更新すべき知見が得られていた。

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PBSの隠蔽は「不作為」の隠蔽

このような仕組み、核防災フレームが3.11前に2004年頃には整備されていた。従って、政府や原子力安全委員会の「ERSSやSPEEDIの動作が不完全だったので、住民を適切に避難させることができず、被曝してしまった」とか「緊急時にSPEEDIは信頼性に欠ける。予測システムで何かができるというのは幻想だった。」(本間俊充氏・日本原子力研究開発機構安全研究センター長)のいう「システムの不備論」は大嘘です。3.11に保安院はPBSを起動し使っているが、そのPBS予測でSPEEDIを稼動させなかった官僚組織の「不作為」を隠蔽するものです。
そして斗ヶ沢秀俊氏、毎日新聞の科学記者で東京本社科学環境部長や福島支局長を務めた斗ヶ沢秀俊氏の、SPEEDIは不要、無用論は無知に拠るものです。氏の「SPEEDIは放出後の拡散予測には使えます。」「放射性物質大量拡散がいつ起こるかは予測できないから、SPEEDIは使いようがなかった」とSPEEDIは不要、無用論と論じています。しかし、PBS・Plant Behavior Data System・プラント事故挙動データシステムで何時間後にどれ位の放射能が放出されるか予測値が得られます。氏の論はERSS/PBS/SPEEDIの仕組み、フレームを全く理解していない無知者の論です。
またD)のSBO・15条通報時に先ずすべき、実行すべきシビアアクシデント対策・AMを明らかにして、マニュアルや消防団が所有しているライトバンの大きいやつ程度の消防車など機器を整備しておけば、東電核災害の進展は随分違ったものになり、現在よりも被害規模は小さくなったと思われます。

べントラインが12日未明までに構成されていれば、サプレッションプールを通したプールスクラビング(水フィルター)により除去係数・DF1000(1/1000)程度に放射性物質を低減する効果が期待できるウェットウェルベントになりました。3号機は、非常用蓄電池が一部生きていて減圧操作が行われていますから、地元の消防団から消防車・ポンプを借用する等してポンプを用意して炉心注水を早期に開始して、メルトダウンが防げた可能性が大きい。1号機、2号機は減圧操作をする非常用蓄電池が失われていたので、それ用の蓄電池の調達後に炉心注水が可能になります。メルトダウンは防げないでしょうが、メルトスルー・圧力容器損傷や格納容器損傷は防げた可能性が大きいと思います。

産湯とともに赤子を流すべからず 
Don't throw the baby out with the bath water.

PBSの限界を原子力安全基盤機構(JNES)防災対策部審議役の斉藤実氏は、次のように述べています。

「解析のプログラム(コード)が、事故のシーケンスをどのくらい正確に追うことが出来るかは、限界がある。今般の事故では、原子炉の炉心溶融開始の時間は、比較的正しく(数時間の違いで)予測できたと思われる。しかし、最も重要な、放射性物質の種類(核種)と放出の量と時刻(放出率)と経路については、全く予測できなかったと言える。解析コードは、格納容器の圧力の上昇または温度の上昇によって、格納容器にリークが生じ、リーク箇所から漏れた放射性物質は、直接、あるいは原子炉建屋及び排気筒を通じて、環境に放出されるという、予め、入力で指定したシナリオに対応した経路について解析を行う。一方、事故時に、予め、リーク経路を同定することは難しい。今般の事故では、原子炉建屋が水素爆発で崩壊し、格納容器の特定出来ないリーク箇所から放射性物質が直接放出されるなど、予測の範疇を超えた。」「格納容器の破損は予測できない場所で起こるので、前述した格納容器破損のモードとして、圧力の上昇または温度の上昇によって破損されることを解析して、核種や量、時間を算出することは出来ても、予測として使用することは、実際には不可能と思う。」

(原子力安全委員会、原子力施設等防災専門部会防災指針検討ワーキンググループ、2011年7月27日(水)会合の資料 防WG第1-5号

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3.11には原子炉の状態のデータ・パラメータが伝送されてきていませんから、予測システムAPSは稼動できません。斉藤JNES防災対策部審議役のいう「解析のプログラム(コード)」はこの場合使えるのはPBSです。斉藤氏は「今般の事故では、原子炉建屋が水素爆発で崩壊し、格納容器の特定出来ないリーク箇所から放射性物質が直接放出されるなど、予測の範疇を超えた。」から「最も重要な、放射性物質の種類(核種)と放出の量と時刻(放出率)と経路については、全く予測できなかったと言える。」としています。
 私は、斉藤氏は班目春樹・原子力安全委員会・委員長と同じ過ちを斉藤氏はしていると思います。管総理(当時)に1号機の水素爆発の危険性を尋ねられて、班目委員長は「格納容器内は窒素ガスが封入してあるから、水素爆発の恐れはない」旨答えました。その数時間後に1号機で水素爆発、班目委員長は頭を抱えてしまいました。

 核燃料損傷・炉心溶融が始まれば、核燃料からの放射能・放射性ヨウ素やセシウムなどの放射能、燃料被覆管のジルコニウムと水蒸気の化学反応によって生成する水素ガス、崩壊熱による高圧水蒸気で圧力容器、格納容器が満たされる。その格納容器の圧力の上昇または温度の上昇によって、格納容器にリークが生じる。そのリークで出てくるものが、放射能だけ、水素ガスだけ、水蒸気だけと想定するのは馬鹿げている。3者がすべて出てくると想定するのが妥当。水素ガスが窒素ガスが不入された格納容器内から酸素ガスのある環境中に出てくれば、条件が整えば爆発するだろうと予想できますが班目さんは予想しなかった。1号機が爆発する日の早朝に放射性ヨウ素が検出されていますから、水素ガスのリークも当然想定できたのに、班目委員長は考えもつかなかった。

 「原子炉建屋が水素爆発で崩壊し、格納容器の特定出来ないリーク箇所から放射性物質が直接放出」されているのは確かですが、その前にそれ以前の時刻に、格納容器の構造から弱い部分、それは事前に割り出され想定した箇所からのリークが始まっていた。放射能と水素ガスのリークは始まっていた。班目委員長は放射能の検出から水素ガスの漏洩を思いつかなかった。斉藤氏は逆に水素ガスの漏洩・爆発から、それ以前の時刻での放射能の漏洩を思いついていない。

斉藤氏は水素爆発による格納容器の破損は予測できない場所で起こるから、「予め、リーク経路を同定することは難しい。」としているが、水素爆発前や水素爆発がなかった場合は予測が可能ではないか?格納容器内の圧力の上昇または温度の上昇にる破損モードで予測可能ではないか。水素爆発は格納容器の破損が起きてから次におこるのだから、格納破損前や直後の初期段階での避難や安定ヨウ素剤投与などを決めるには、この破損モード、つまりPBSでの予測計算は使えるのではないか。

PBSは、「何時間後に燃料が溶けて、何時間後に原子炉圧力容器が破損して、格納容器の破損が何時間後って、そういうのを計算してるんです。」「壊れるのと同時に、中の放射能がどれぐらい出るか計算してある。だからいろんな放射性物質、例えば希ガスとか、ヨウ素、ストロンチウム、プルトニウム、ほとんどすべて種別に全部計算できるんですよ」。だから、斉藤氏が全く予測できないとしている放射性物質の種類(核種)、放出の量と時刻(放出率)は、PBSで予測可能である。

「PBSが出した放射能放出量をSPEEDIに入れる。SPEEDIは、住民がどのくらい被曝するかって計算もできちゃう。簡単にできちゃうんです」(永嶋)

勿論、圧力上昇や温度上昇や水素爆以外の要因で破損が早期によって破損される事への対策は必要。PBSの予測が実際とどれだけの整合しているか、それはモニタリング結果などとつき合わせて見なければ分からない。この問題は理論を実際で検証する科学技術全般での問題で、ERSS/APS/PBSに限らない。その手順は当然あり、PBSの破損モードが限られていることをもって、格納破損前や直後の初期段階での避難や安定ヨウ素剤投与などを決めるのに全く使えないというのは、産湯ごと赤ちゃんをながすようなもの。

また斉藤氏はSPEDDIに直接次のように述べています。
「SPEEDIについては、今回のように、放出率、放出の場所や高さの条件設定が非常に不確かで、放出の初期の放射性物質の拡散はその場所の局所的な建家形状や地形に左右されることを考慮し、元々、気象パラメータも連続的に変化すると、核種濃度を予測することは極めて困難と言わざるを得ないと思う。」

気象パラメータの連続的に変化は、気象庁、日本気象協会の予報データGPVを使うことで、変化に対応している。天気予報が100%当たらないのは誰もが知っている。それで困難というのは、朝の天気予報を見て傘を持っていくか否か決めるのは「極めて困難」というのと同じだ。
その場所の局所的な建家形状や地形に左右されというが、建家形状や地形はそう変化はしない。今のSPEEDIは、地形情報を入れて演算している。放出の初期条件で演算に織り込むように改良すれば済む話ではないか。PBSが各原発、原子炉の特性を織り込んでいるのだからSPEEDIでここの原発の建家形状や地形を織り込めないとは思えない。

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放出の高さは、確かに影響を与える。それは原子力安全基盤機構(JNES)安全研究センター長の本間俊充氏の試算では、事故炉から10km以内では大きな違いをもたらすが、それ以遠、特に20kmを超えると顕著な差はない。したがって、格納破損前や直後の初期段階での避難や安定ヨウ素剤投与などを決めるのに全く使えないほど、核種濃度の予測を困難にするとは考え難い。また、SPEEDIに直接に格納容器からでる高さ、原子炉建屋の高さ、排気筒の高さなどを設定して、もっとも実際に近い高さでSPEEDIを使えばよいのではないか。

ERSS、APS、PBS、SPEEDIは、避難や安定ヨウ素剤投与などを決めるのに使う防災のための道具であって、100%正確な科学的予測をする研究の道具ではない。斉藤氏は防災対策部審議役でありながら、科学的正確さに拘泥し産湯ごと赤ちゃんをながしている。

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