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フクシマから学ぶ・・実用的な原子力防災計画を作るにはPBS活用 [AM-放射能拡散予測・SPEEDI]

1986年のチェルノブイリ事故のあと、「世界各国が事故対策を検討し始めた。技術開発もした。緊急時対策の研究をやるのは良いことだということで、国がかなりの予算をつけた。日本は比較的他の国より金を持ってたんです。大蔵省に言ったら『これは大事だ』って言うんで、開発資金は多分アメリカの10倍ぐらいつけてくれたんです。フランスの5倍くらいかな。1990年から2000年ぐらいで、そのシステムの開発だけで100億ぐらい。年間10億です。あとデータベースを作るのに20億円かけたんです」。

そのお金で開発されたデータベースがPBS、プラント・ビヘイビア・データ・システム、プラント事故挙動データシステムです。これを使うと、約1時間で安全系統が一切作動しない場合での24時間の事故進行表が得られるそうです。3.11に15条通報、原子炉が危なくなった時に課せられている通報を東京電力は16時36分に行っています。それを用意ドンでPBS・プラント事故挙動データシステムを動かすと17時40分頃に、12日の夕刻までの事故進展模様が分かりました。

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PBS開発に当たった永嶋國雄さんによれば「それを見ると『今の状態だったらいつになったら燃料破損する』『いつになったら格納容器が壊れる』っていうのが出てくるんです。」「格納容器ベントする場合とか、最終的に格納容器が破壊される場合とかの放射能放出量をPBSにより出すことができます」「壊れるのと同時に、中の放射能がどれぐらい出るか計算してある。だからいろんな放射性物質、例えば希ガスとか、ヨウ素、ストロンチウム、プルトニウム、ほとんどすべて種別に全部計算できるんですよ」「PBSが出した放射能放出量をSPEEDIに入れる。SPEEDIは、住民がどのくらい被曝するかって計算もできちゃう。簡単にできちゃうんです」

事故時の原子炉の挙動を模擬、シュミレーションする計算プログラムには、MAAP・マープというシビアアクシデントコードを使用しています。MAAP・マープは米国電力研究所開発したもので、「アメリカは、原子炉破壊実験とか格納容器破壊実験を実際にやっています。つまり単なる演算上の演習ではなくて、実際にシビアアクシデントの実験をやった結果からコードを開発しています。そうしないと、計算があてになる確証ができないんです。(永嶋)」と妥当性が確認されています。日本版は2000年に完成しました。

 これを稼動させるには「まずプラントのデータを入れれないといけない。それには膨大なデータ使いますからね。何週間もかかっちゃう。(永嶋)」それで予め原子炉の特性などの膨大なデータを入れておいて、準備しておく。さらに「事前に事故シナリオが分からないといっても、だいたい5つか6つぐらいのシナリオに分類できるんですよ。」「電源が永久になくなった場合とか、海水ポンプが永久になくなった場合とか 。冷却系配管の破断が起こった場合とか。」の事故シナリオで予めシュミレーションし、その結果の事故経過データのデータベースを作ることにしました。

 事故炉の状態、水位とかのパラメータが入手できない3.11東電核災害のような場合でも、炉操作を1~2時間の準備時間を余裕もって行ったり住民保護する避難などの指示を遅滞なく出せるようにするためです。日本の原子炉は54基ありますが、「同じ出力、同じ原子炉の型だったら同じ特性」「福島第一発電所だったら2、3、4号機はまったく同じです。1号機は出力が小さい」「だから54基全部やってたわけじゃなくて、代表するとなると20基以下ぐらいなんです」それを全部シュミレーションしました。「1つずつについていろんな事故診断をやってきました。」それをデータベース化したものがPBSプラント事故挙動データシステムです。それに20億円と約3年の時間が費やし2003年頃にできています。

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 原子力安全・保安院に担当部局がおかれました。各オフサイトセンターに担当する原子炉ごとにその事故経過データベースがDVD-ROMで配備してあり、普通のパソコン(ウィンドウズ)で使えるようにしてありました。「実際に使う時には、それまでにこういう系統で復旧するから、復旧すればその状況に入れて事故が収まるかどうかということを計算でできるんですけどね」例えば「非常用復水器戻りました」とか「電源戻りました」とかを入力して、その場で計算し直す。「データを準備して、検討して、(何時間後に復旧するなどの)大体計算結果が出るのは2時間。実際計算は1時間でできちゃうんです。(永嶋)」。

3.11にも使われています。1号機は非常用復水器が稼動と誤認され3号機は非常用注水機能が作動していて、2号機が一番危ないと認識されていました。
原子力安全・保安院は、「2号機の炉心露出は22時50分、燃料被覆管破損は23時50分、燃料溶融は24時50分、原子炉格納容器設計最高圧到達(527.6kPa)は27時20分、その場合原子炉格納容器ベントによる放射性物質の放出が必要」と22時に事故進展の予測結果をだしています。それを「福島第一2号機の今後の進展について」というペーパーにして官邸の危機管理センターに22時44分に報告しています。 時系列報告

この予測では、PBSの仕様から放出される放射能の量・種類の予測量、予測時刻が一緒に出ています。それをSPEEDIに入力すれば、被曝=汚染予測値図が出ます。ところがそうした様子は窺えません。20億円の費用と3年の時間が無駄にされました。そしてフクシマの人々は避けられた被爆を、無駄に受けさせられました。

PBSでハザードマップを作れる

さて、新潟県の原子力防災での被害規模の想定にはPBSが使えます。防災計画なのですから、考えうる最悪の事態を想定しなくては意味がありません。PBSで安全系統が一切作動しない最悪の場合での事故進行表と放出放射能の種類・量・事故発生からの放出時刻が得られます。

柏崎刈羽原発は、沸騰水型(BWR) GE社設計Mark-2というタイプで110万kw.の1号機、GE社設計Mark-2改というタイプで110万kw.の2、3、4、5号機と改良型沸騰水型(ABWR)というタイプで135.6万kw.の6、7号機があります。この3種の事故進行表と放出放射能の種類・量・放出時刻が得られます。それを新潟県の代表的気候という条件でSPEEDIに入力すれば、汚染=被曝予想いわば柏崎刈羽原発のハザードマップが得られます。長岡市から避難を終了すべき目標の事故発生から時刻や、新潟市で子供達に安定ヨウ素剤を事故発生から何時間後までに飲ませなければならないかといった情報が得られます。これを達成するように防災計画を立案しなけば、意味がありません。福島県の二の舞です。また、セシウム等地表に沈着する放射能の量も予測算出できますから、避難から自宅に職場に戻れるかも目安が付けられます。

何百回もシュミレーションをした永嶋國雄さんによれば、「1つの原子炉で格納容器が破裂すると、1つの原子炉で(避難範囲は)100キロメートル超えちゃうんですよ。」「原子炉にある放射能全部出るって仮定しちゃうと、1000キロメートル超えちゃうんです」「いくらなんだって(原子炉内の放射性物質が)全部出るなんてのはおかしな話です。物質にもよるけど、プルトニウムとかストロンチウムなんかはなかなか出にくい。実際に格納容器が破裂したって放射性物質の大部分はそこに留まってるんです。」「そういうのを正確に計算していくと、1000キロメートルの10分の1で成りたっている。100キロメートル超えるくらいに(避難範囲は)収まる」

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100kmで円を描くと、佐渡はすっぽり入り、富山県境まで、長野県方面は長野市まで、新潟市、新発田市は入り胎内市も半分ほど入り、群馬県境、福島県境を超えます。

原子力規制委員会や規制庁は、原子力防災でもPBSを活用していません。規制庁は東電核災害での放出量を使ったハザードマップで県などに防災計画を立てさせようとしています。PBSでより実際的なものにせず、東電核災害という架空の規模で誤魔化そうとしています。これは、規制委員会の意向に沿っています。

田中俊一委員長は18日、ロイターのインタビューで「シビアアクシデントを起こさないというのが基本だ。(防災計画など)事故が起きた後の対策は時間的には柔軟に考えていきたい」。 インタビュー

3.11前は事故は発生しない安全神話で、防災計画が形骸化しており福島県で避難できない、子供らにヨウ素剤は投与されない事態になりました。米国のショーラム原発は、住民が納得する避難計画が立案できず運転せずに閉鎖されてます。田中委員長は全く反省がないのです。 ショーラム原発

シビアアクシデント対策は、「起こさない」と「影響緩和」、100kmを出来るだけ小さくするなど二部構成です。田中委員長は影響緩和=国民の被曝減少の優先順位が低いのです。シビアアクシデント事故を起こさない工学的対策は万全という新安全神話の創造と定着が最優先。そういう方が監督する防災計画は、我々を護る??


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