SSブログ

新潟県設定の事故シナリオ 水素ガスとベント 試論⑰訂正 [AM-ベント、排熱]

新潟県が設定した発災時の条件は、従来のシビアアクシデント研究でTQUVと略号がある設定、過渡事象(T )と給水喪失(Q)と高圧注水系喪失(U)と低圧注水系喪失(V)が組み合わさった設定を基本に、SBO全交流電源喪失で、対応策にECCS非常用炉心冷却装置といった設計段階から設けられている対策設備とガスタービン発電機(DEC対策設備)及びMUWC復水補給系の復水移送ポンプ、FP消火系の電動ポンプ、ディーゼルポンプが使えないという東電核災害時に類似した条件を設定している。

柏崎刈羽原発6、7号機はABWRという型の軽水炉である。ABWRのシビアアクシデント研究に、JNESの「平成18年度シビアアクシデント晩期の格納容器閉じ込め機能の維持に関する研究報告書」がある。この研究をもとに新潟県が設定した条件での推移を検討してみる。
https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/atom-library/seika/000007877.pdf

JNES研究は、3つの対策、AMアクシデントマネジメントを仮定している。約6時間後の圧力容器RPV破損直後のペデスタル(下部ドライウェル)注水・格納容器PCVスプレイ・事故後24 時間でのRHR復旧である。溶融炉心は、炉が低圧なので「RPV原子炉破損、ペデスタル床に溶融炉心が落下」するLPMR low pressure melt releaseのパターンでメルトスルーする。破損・落下直後からのペデスタル(下部ドライウェル)注水・PCVスプレイで過圧、過温を防げる。研究では24時間後にRHR復旧する仮定になっている。RHRで崩壊熱が排熱さるので格納容器は壊れないし、ベントも不要となる。

ABWR、AM02.jpg

  県の設定では、4時間後からペデスタル(下部ドライウェル)注水となっている。ペデスタル(下部ドライウェル)注水は溜まった水とデブリによる水蒸気爆発の危険性があるが、それは別に検討する。溶融炉心・デブリは、2時間の間にペデスタルに溜まった水の中に落下していく。格納容器圧力は0.2~0.6MPa(a)だから沸点は約120~158℃。落下して発生する水蒸気は、この温度帯の中にある。JNES研究のようにデブリにスプレイ散水では水に触れていないデブリで、その温度以上の過熱水蒸気が発生する。それで、落下=注水直後はペデスタルの温度の急上昇が見られる。水中に落ち入る県の設定では、水に触れていないデブリが極小だから過熱水蒸気の量も極少ないからJNES研究のような温度急上昇はない。
 また、JNES研究では直後はスプレイされた水はデブリの冷却、蒸発による除熱に先ず回り、その水蒸気を凝縮する量は少ない。水中に落ち入る県の設定では、デブリの冷却、蒸発による除熱は2時間前から溜められた水が行い、落下後のスプレイ水は水蒸気の凝縮=減圧を行う。従って、JNES研究のような圧力上昇もないと考えられる。

注水量が不足なら増やせばよい

 東京電力は、県の設定ではPCV格納容器への総注水量が少ない分、PCV内で受け止められる熱量がその分小さく、初回のベント時刻が7時間早まり18時間後としている。東電シナリオでは、RPV原子炉圧力容器への注水があり、PCVへのスプレイ注水も2時間早く始まる。総注水量が少ないのなら、増やせばよい。

 県の設定では42台の消防車のうち2台を使うことになっている。(東京電力、平成26年3月24日、「防災において想定する事故シナリオについて」、6頁)東電の消防車の消防ポンプはA-2という規格である。これは吐水圧力1.4MPaでは84立方㍍/時以上、0.85MPaでは120立方㍍/時以上をクリアしたポンプである。それを2台使うことになっている。これで不足ならA-1という規格に替える。これは吐水圧力1.4MPaでは120立方㍍/時、0.85MPaでは168立方㍍/時以上をクリアしたポンプである。それを2台使うようにする。

この台数が少なくて注水量を増水できないのなら、使う台数を増やせばよい。東電は送水口を送水箇所を増やせばよい。

 消火系FPはタンク容量5千立方㍍のろ過水タンク№1、1万立方㍍のタンク№2などの淡水を水源にしている。電動の消火ポンプやD/DFPはむろん消防車も、これらろ過水タンクを水源にしている。水源の正味の使用可能量を東電は201年3月に割り出して国に報告している。それでは全号機で共有するろ過水タンクは13,630m³。注水量を増水しても不足することはない。

このように、東電の言う18時間後ベントの根拠は弱い。では何時になるだろうか。これは、水素ガスと放射能の放出を如何にするかと深くかかわる。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0