SSブログ

7月29日吉田調書、(4) 水素爆発とSGTS 11頁 [東電核災害検証、吉田調書]

 吉田 昌郎 2011年7月29日付 事故時の状況とその対応について  (PDF:7,170KB)
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/hearing_koukai/051_koukai.pdf

格納容器・PCVの性能
Primary containment vessel; reactor container (nuclear reactor)

Primary プライマリー 第一の
containment コンテインメント 封じ込め.抑制.
vessel つぼ・コップ・瓶・なべ・バケツなど液体を入れる通例丸形の容器

引用、烏賀陽道弘、ヒロシマからフクシマへ、より=
海外の報道を見て「格納容器」を英語で "container" ということを知って、疑問が氷解した。"contain" は「漏れて来ないように封じ込める」という意味である。つまりその役割は「万一事故があっても原子炉から放射能が漏れてこないように封じ込めるバリア」である。「原子炉の容れ物」ではない。

20110404-3.jpg「格納容器」という専門用語を "container" という英語から翻訳したのは豊田だった。(豊田正敏、元東電副社長、1955年に東電が原子力発電の導入を決めてから、福島第一原発を立地するまで、担当。)

豊田に聞いてみたら "container" の元々の意味は「放射能が漏れてこないように封じ込める容器だ」とあっさり認めた。設計された目的が元々そうなのだとも言った。昭和32、33年ごろ、アメリカのイリノイ州にあるドレスデン原発の文献から言葉を翻訳したという。
 私は「放射能を封じ込めるための容器というと、皆が怖がるから、格納という言葉にしたのではないんですか」と尋ねた。
「いや、そうかもしれない。『封じ込め容器』とした方が良かったかな?いや、封じ込め容器はちょっとね・・・・。コンテーナーというから、やはり格納と言った方がぴったりするからね。豊田はそういって笑った。
=213-214頁
Amazon ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅 烏賀陽弘道

漏洩率
格納容器は巨大なので一体物ではない。多くの鋼板、鋼管を溶接している。その壁には多くの配管が貫いている。点検などでの人や機材の出入口もある。従って漏れ、漏洩が生じる。沸騰水型軽水炉BWRでは常温・最高使用圧力の0.9倍の空気圧力で格納容器空間部容積の0.5%/日以下(柏崎刈羽6、7号機のABWR型格納容器(RCCV)の場合0.4%/日以下)、加圧水型軽水炉PWRでは納容器内空気重量の0.1%/日以下になるように設計を求め、定期検査時に試験している。

BWR・・http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php/dat_detail.php?Title_No=02-03-04-02
PWR・・http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php/dat_detail.php?Title_No=02-04-04-02
試験・・http://www.engy-sqr.com/kaisetu/topics/cv.htm

二次格納容器とSGTS
漏れ出るのはすぐ外の原子炉建屋である。それで原子炉建屋にも、放射能が建屋外に漏れてこないように封じ込める機能を求める。それで原子炉建屋を2次的な格納容器「二次格納容器 secondary containment 」ともいう。

sn_220_SGT加工済2010.112-2.jpgこの二次格納容器 secondary containment 機能のために原子炉建屋の換気に、非常用ガス処理系(SGTS Standby Gas Treatment System)を設置し、格納容器から漏えいした放射性物質をフィルターした後、排気筒から、大気に排出するシステムを設置している。この非常用ガス処理系・SGTSは交流電力を用いてヨウ素及び固体状核分裂生成物の97%以上を除去するシステムである。

SGTS・・http://iwamin12.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/34-6964.html
http://www.shinwatec.co.jp/products/detail/168/
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2013-08-24

SGTS不稼働に気付かなかったから水素爆発 吉田調書14頁

質問者 「建屋の非常用の排気の系統で、SGTS、あれというのは、このときは使える状況ではないんですか。」

吉田回答 「ないです。非常用系の電源がないですから、SGTSがもし生きていれば、水素爆発はなかったですよ。絶対にないです。そこから非常用換気しているわけですから、そこから原子炉建屋の中の気体が全部フィルターをかまして外に出ていくわけですから、これは建屋の中の非常用の換気が生きていれば、水素爆発は起こっていません。」

そして、この使えない事を1号機の爆発前は気付かなかったと告白している

吉田回答 「我々がちょっと意識で抜けていたのは、何か換気して、SGTSは止まっている、通常換気系も止まっているんですけれども、換気してくれているような勘違いしている部分があって、そこで水素がたまって爆発するという発想になかなか切り替えられていなかった。」

質問者 「それは、1号機の爆発前ということですか。」吉田回答 「前です。」

気付きのチャンス
事実

放射能封じ込め容器のPCVから、建屋内に漏れ出した放射能。それによる被曝線量の上昇で11日23時45分頃に建屋立ち入りを吉田所長は禁止している。これだけの放射能は核燃料の損傷により放出される気体の放射能、その損傷の際には水素ガスが大量に発生する。放射能と水素ガスはセット。放射能が二次格納容器の建屋に漏れ出しているのだから、セットの水素ガスも建屋に漏れている。SGTSが稼働していれば滞留しない。それが放射能は滞留しているのだから、水素ガスも同様と気付けたろう。

発電所対策本部の検討
 政府事故調の中間報告書によれば、11日夕刻から「発電所対策本部は、フィルターを介して放射性物質を含む気体を大気中に排出可能な非常用ガス処理系(SGTS 系)を用いたベントについても検討した」140頁
この検討にはSGTSの稼働条件も当然考慮されたろう。非常用系の交流電源もなくなっているSBOなのだから、不稼働に気付けたのではないか。

本店の緊急時対策本部 NRCの「SBO下のBWRは建屋に漏れた水素が爆燃を起こす」知見を生かせなかった
 もっとも不思議なのは、人員的にも余力の有ったろう本店の緊急時対策本部のサポート、アドバイスがない事である。
 NRC米国原子力委員会は東電核災害前の2010年10月、最新の事故研究をもとにして核災害解析の"the State-of-the-Art Reactor Consequence Analyses (SOARCA)"(最先端技術に基づく原子力災害解析)のドラフトを発行した。そして意見公募、パブリックコメントを求めた。それではSBO・全交流電源喪失で「BWRでは、格納容器から原子炉建屋に漏れた水素が爆燃を起こし、最上階のブローアウト・パネルと天井が爆圧で壊され、大物搬入口の扉がこじ開けられると予想しています。」(佐藤暁、雑誌「科学」2014年9月号0964頁、このSOARCAは2012年11月に最終的な版が出されている。http://www.nrc.gov/about-nrc/regulatory/research/soar/overview.html
 こうした情報はBWRオーナーズなどで当然入手したろう。東京電力には原子力災害・核災害の研究動向を探り、東電の対策、例えば事故時手順書などに反映する役割の部門や人はいないのだろうか。こうした情報を知り、事故時対応に生かせるスペシャリストが、少なくても本店の緊急時対策本部にいて本店本部長(社長)に助言したり、発電所対策本部をサポートする体制が採られなかったのだろうか。
 しかし東電は不要としていた。(新潟県の技術委員会への回答、課題2のⅠ-3-④-b)そうであるなら、吉田所長が気付かなったというよりも、東京電力が組織として気づこうとしなかったといえる。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0