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7月29日吉田調書、(5)はやく ベントするのために格納容器スプレイ注水減圧を止めた東電 26-27頁 [東電核災害検証、吉田調書]

 吉田 昌郎 2011年7月29日付 事故時の状況とその対応について  (PDF:7,170KB)
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/hearing_koukai/051_koukai.pdf

26-27頁

●事故調質問 それで、淡水注入が(3号機に13日)9時20分に開始されるまでの間に、時系列の30ページのところに、7時39分、ちょうど海水注入の2時間弱前のころに、格納容器スプレーを開始と書いてあるんですが、
これはどういった思惑というか。

◎吉田回答 これは、やはり格納容器の圧力が上がっていますから、何とか下げられないかと、要するにベントもあるんですけれども、1つは、冷却することができないかといったら、できるという当直の方から、そういう話もありまして、当直の方からも、運転の方からも下げるためには、1回働かせた方がいいんじゃないかという話がありましたので、いいんじゃないかと、やってみろという話はしましたね。

●事故調質問 この格納容器スプレーというのは、この水源というのは。

◎吉田回答 これは、私もそのときはよく覚えていないです。ちょっと彼らに聞いてください。できるという話を聞いたので、ではやってみろという話をした。

●事故調質問 それで、その後、これはどうなったんですか、ずっと。

◎吉田回答 いや、逆に圧力を下げると、ベントに逆に、要するに、実際にベントするときに、圧力が落ちているとベントしづらくなってしまうから、逆に本店の方からスプレーをやめろという話だったと思うんです。それで、結局、それに折れてというか、ではやめろという話をしたと思います。

 ここの操作は、書いていないゾーンですから、いいか、悪いかなんでわからないんですよ。要するに、
発電からすると、圧力が上がっているんだから、落とすためにスプレーして冷やしてやれば、落ちるだろうと、こう単純に思っているんですけれども、どうも本店の方では、落ちてしまうと、圧力が落ちてしまって、ベントが阻害されてしまうから、不要だという判断をしたんだと思うんですけれども、何かそういうやりとりがあったような気がします。

●事故調質問 その点なんですけれども、ちょっとよくわからないのは、ベントというのは、格納容器の圧力を抜いて、格納容器が壊れるのを守るということなんだったら、そのメリットがある反面、大気中に放射性物質なんかが拡散されるということがあるんだったら、無理にベントで圧力を下げなくても。

◎吉田回答 格納容器がスプレーできるといったって、ほんのちょっとだと思うんですよ、大した水源があるわけじゃないですから、これをよく確認してほしいんですけれども、そんなに長時間格納容器スブレーができるような、通常の格納容器スプレーライン、普通は3号機ですから、RHR系にホンテンメットスプレーモードというのがあって、格納容器をスプレーするようなラインが引かれていて、そのラインを生かせば、格納容器に噴水みたいに水が出て、圧力を下げるという機能があるんですよ、これがそのラインで生きているんではなくて、何か流用してスプレーを生かせるラインができそうだという話があってやったんだと思いますが、これがコンスタントにそれで冷却ができれば、それはそれで、1つ結構なんですけれども、そんな恒久的に圧力を下げられるようなものではないと、これはちょっと発電斑長に、その辺は当直者に聞いていただいた方がいいと思うんですけれども、その辺のラインがどういうラインで、どう入れたか、もう記憶にはないですけれども、ちょっとでも下げられるのなら、下げてみたらという、一連の操作の中でも応用操作みたいなものですから。

●事故調質問  その後、これもずっとやっていたわけではなくて、本店の方からもいろいろ意見もあって、途中でそれはやめて。

◎吉田回答 やめました。

●事故調質問 FPIで淡水注入を開始というころには、もうやめているんですか。

◎吉田回答 やめていたと思いますね。ちょっとベントとの絡みになってくるので、それは注水とのタイミングでの議論が、今、頭の中でぼやけているので、そこは担当の方に確認してください。

吉田所長は事故時対応手順の枠組みを知っていない、事故時手順書の兆候ベースとシビアアクシデントの手順を大枠でも無理解だということが、このやり取りで判る。

 メルトダウン前で適用される兆候ベース手順書では、格納容器PCV減圧・圧力調整の手段はPCVスプレイである。メルトダウン後のシビアアクシデント手順書では、PCVスプレイによるメルトスルー前のペデスタル蓄水(ペデスタルは溶融核燃料の落下先の格納容器部位、冷却水を予め張っておく)がある。

 この日の午前2時42分には炉への注水がHPCI停止で途絶してる。崩壊熱で冷却水は蒸発して水面は燃料最上部に4時頃に下がっている。だから、この7時半頃には少なくともメルトダウンが始まっている。手順書(シビアアクシデント)では、RPV(Reactor Pressure Vessel 反応装置・圧力・容器、圧力容器)損傷前のペデスタル初期注水が手順である。格納容器スプレイによる約70立方㍍の散水注水でPRV直下のペデスタルに冷却水を張るのである。メルトスルーで落下してくる溶融核燃料・デブリを直ちに冷却する。デブリの高熱でコンクリートが1500℃以上になって化学分解反応を起こすことを抑制するのである。

 手順書では、メルトスルー前、後でもPCVスプレイで除熱、減圧を行うことにしている。メルトスルー後は水源やポンプ台数などから注水量・流量が制限・不足の場合は、格納容器に優先して入れる。そして、外部から注ぎ込む水量がベントの吸気口を水没させる量、3号機は2300立方㍍になったら注水は停止。ベントに移行して減圧する。こういう手順の大枠、戦略的な枠組みがある。

手順書にある方法を思い付き扱いする吉田所長の無知

 それで両手順書にRHR系の格納容器にスプレー(散水)するラインをつかって消火系・FPのポンプで格納容器に注水(Containment Spray)は、明記されている。 吉田所長は「一連の操作の中でも応用操作みたいなもの」とあたかも発災の日に3.11に当直の運転員、対策本部に詰めている運転部門の方の「思い付き」のような言い方をしている。これは、吉田所長は事故時の対応策、AMの手順を大枠的理解、知識を持っていないことを示している。

 指揮官として、この弁を開けるなどの具体的詳細は頭になくともよいが、戦略的な枠組みの理解は必要である。この無理解を前提にすると11日夕刻、17時頃の吉田所長の状況認識と炉への注水とベントに拘った姿勢は自然なものと理解できる。

 それは、「ベントというのは、格納容器の圧力を抜いて、格納容器が壊れるのを守るということなんだったら、そのメリットがある反面、大気中に放射性物質なんかが拡散されるということがあるんだったら、無理にベントで圧力を下げなくても。」(事故調質問)という放射能を浴びせられる側の視点を欠いている。吉田所長は「そんな恒久的に圧力を下げられるようなものではない」というが、シュミュレーションでは約1日ベントを遅延できる。また、スプレイ水で格納容器中の放射性微粒子、エアロゾルを沈着させる効果がある。つまり、ベントででる放射能を、微粒子状の放射能量を抑制する効果もある。

 「本店の方では、落ちてしまうと、圧力が落ちてしまって、ベントが阻害されてしまうから、不要だという判断」「圧力を下げると、ベントに逆に、要するに、実際にベントするときに、圧力が落ちているとベントしづらくなってしまうから、逆に本店の方からスプレーをやめろという話」が出た。これも東京電力から故意に放射能を浴びせられる側の視点が欠いた話である。本店と同様にそれが欠いている吉田所長は「結局、それに折れてというか、ではやめろ」と指示して9時20分前に「やめました。」というのも自然な流れである。

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廃炉を確定する海水注水はとことん遅くする

吉田所長は格納容器PCVスプレイを過小評価する理由に「たいした水源がない」を上げている。しかし、目前には太平洋の大海原がある。ただ海水をRPVやPCVに注水したら、その時点で廃炉=高価な資産の廃棄になる。それで「何とか真水でやれるところまでやり切らないといけないんじゃないか」「直近で淡水の水源がなくなってきてから海水の方にシフト」という姿勢が垣間見られる。

 12日の12時以降、RPV・圧力容器注水の目安は最低限で1時間に25立方㍍。淡水の入った防火水槽は40トンだから1時間半ほどで空になる勘定。空になってから海水に注水ラインを組み替える間、注水が途絶える。現に、余震で避難を余儀なくされ約1時間かかっている。そうでなくとも9時25分から12時20分と約3時間かけて40トンを入れている。目安で25×3で75トン最低限必要なところ40トンで30トン不足。注水ラインの淡水・防火水槽から海水・逆洗弁ピット組み換え作業による途絶で25トンの追加不足。炉内の冷却水水面は燃料最上部に4時頃に下がっている。この不足でメルトダウンが進んでいる。水素ガスの生成、揮発性放射能の放出が深化する。「直近で淡水の水源がなくなってきてから海水の方にシフト」という姿勢がこれを招いている。直近で淡水の水源があっても、そのときに入手利用できなければ海水を入れて冷却・減圧するという姿勢がない。

 海水系の冷却設備が津波被水で全滅したから、ベントは避けられない。しかし、ベントで東京電力から故意に放射能を浴びせられる人々の数を減らす避難時間を確保することや放射能の種類や量を減らすことを考えれば、注水、手順書に1-3号機で6300立方㍍の注水が必要となる。淡水はそれだけ入手利用できないのだから、海水、目前の太平洋の大海原の海水を利用するしかない。
 仮に利用できる淡水を炉に注水し、メルトダウンを避けても、淡水は限りがあるから、いずれメルトダウンする。

東京本店の姿勢、吉田所長の姿勢にはベントで東京電力から故意に放射能を浴びせられる人々への配慮が欠けている。深層防護の枠組みでのフェーズⅡのAMが欠けている。


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