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最高裁研究会での原発裁判の立証などのH24資料 [核のガバナンス・裁判]

平成25年2月12日の最高裁事務局主催の特別研究会(複雑困難訴訟)の議論の取り纏めの抜書き
court_004-001.jpg 講師 大学大学院教授 2名
     弁護士
     法務省大臣官房審議官 中山 孝雄
     新聞社論副委員長

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NPO法人(特定非営利活動法人)
情報公開クリアリングハウス
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第1問 原発訴訟等関係
 2 高度な科学的、専門技術的知見が必要とされる事件において中立的な立場の専門家の確保が困難な場合に、的確に争点整理を行うための審理運営の工夫について【提出問題4~7】
  (1) 理運営上の工夫【提出問題4、5】
  (2)当事者の主張立証のあり方【提出問題6、7】
(講師) 科学的知見が対立するという場面は、原子力規制委員会でも当然想定されるが、そのような場合多数決で決するようであり、科学的知見をめぐって専門家間でも大きく意見が対立する場合には、おそらく、今まで多くの裁判官が悩んできたと思う。原爆症認定に関する訴訟の高裁判決で、被爆者の疾病が被爆に起因するかどうかの判断において示されたことが、原発関連訴訟でも参考になるかもしれない。すなわち、この高裁判決では、放射線起因性の判断において、前提となる科学的知見については、最も権威のある公的機関である放射線影響研究所の疫学調査を中心に検討するけれども、対立する科学的知見がある場合には、厳密な学問的意味における真偽の見極めではなく、一定の水準にある学問成果として是認されたものについてはあるがままの学的状態で判断の前提とするということ、また、放射線起因性は法律判断であって、確立した不動の科学的知見に反することはできないが、対立する科学的知見があれば、それを前提として経験則に照らして全証拠を総合して判断するということ、さらに、被爆者援護法の趣旨に則るということが示された。原発関連訴訟でも、対立する科学的専門的知見のどちらかに軍配を上げる必要はなく、そのような対立があるということを踏まえて判断すればよい。その際、公的機関の判断や多数意見は踏まえるにしても、法的判断としてはそれとは別にあってよいということなので、経験則に照らして判断することになるであろう。そして、災害が万が一にも起こらないようにするという法の趣旨に留意するというごとではないかと思う。対立する科学的知見がある中で判断するということの負担は重いと思うが、このようなスタンスで判断してもらえれば、結論がいずれであっても、納得性は高くなると思う。

 審理の在り方について、証人尋問方式ではなく、ラウンドテーブルで議論を尽くすというやり方は好ましいと思う。法廷から離れて非公式な場で行うと、当事者の目が届かないところで審理が進むことになり、当事者からはかなり強い抵抗もあるので、当事者の納得には配慮せざるを得ないが、ラウンドテーブル方式で、裁判所からも法廷では少し言いにくい質問等もどんどん出してもらって、議論を深めるというやり方もあるのではないか。
 原発関連訴訟ではそもそも鑑定的な手法は採り得ないと思うので、相対立する科学的知見、双方の主張をラウンドテーブル方式でフリーに裁判所に問いてもらって、理解を深めると同時に、判断も適正にやってもらうのがよいのではないかと思っている。

(講師) こと原発に関していえば、公正中立な専門家を得ることは難しいというのはそのとおりだと思う。ただ、注意しなければならないのは、裁判所が依拠すべき専門的知見は、確立された国際的な基準でなければならないということである。例えばA説とB説が対立した場合にどちらを採るかという話であれば、どちらの見解の方が権威のある国際機関の出した見解に近いのか、査読制度を持っている学術論文に掲載された見解に近いのかという観点で知見を評価せざるを得ないのではないか。

  また、被爆者援護法における放射線起因性(因果関係)の場合は、法の趣旨を前面に押し出しながら総合認定することが可能かもしれない。しかし、原子力行政に関係する事項は、原子力規制委員会がまず専門的知見に基づいて一定のスタンスで判断しているから、それに不合理な点がないか否かという姿勢で判断せざるを得ないのではないかと思う。

 審理の在り方としては、―つの方法としてラウンドテーブル方式で当事者から説明を受けることはあり得ると思う。ただ、その揚合は、裁判所がきちんと場をリードすべきである。過去には、相互に相手方の専門家の意見を批判するだけで終わってしまう説明会があったと関くが、そのようなものにならないように、何を日的に説明会を開くのか、そのスタンスを明確にした上で、裁判所がリードする必要がある。また、どういうルールで当事者が発言して、どういうことを確認するのかといった基本的な手続の持ち方を明確にすべきである。意見が対立するのであれば、どこまでが共通で、見解が分かれる原因はどこにあるのか、そういうことを確認する過程として使うことを明確にしなければならない。さらに、質問事項については、書面に具体的に記載して事前に出すようにしておくべきである。記載していないことを裁判所が補充的に聞くのは別として、当事者にその場の思いつきの質問を自由に許すと、専門家でも答えられない場合がある。そのために専門家の地位が低められるということがあってはならない。

  なお、当事者は、準備書面で必要な知見の説明をしているつもりであっても、裁判所から見て必要と考える説明が欠けていたり、よく分からないこともあると思われるので、その場合は、遠慮なく当事者に指示していただきたい。

(講師) 説明会方式も一定程度入れるということについては特に異論はない。しかし、前提としては書面でのやり取りがあるわけで、書面でのやり取りをしっかりやった上で、裁判所としてポイントをきちんと絞った上でやらないと、時間もかかるだろうし、ある種の非難合戦みたいなことになる可能性もある。

  証拠としてどう扱うかという話もなかなか難しいと思う。証人尋問として専門家を双方から同じくらいの人数ずつ、あるいは同じくらいの時間ずつ問くということが一つの方法かと思うが、証人尋問となると、専門家をつるし上げるといった問題が出てくる可能性がある。鑑定についてもそのような問題があったところを平成15年の民訴法改正で変えたのであって、そうすると、鑑定の方式で書面を出してもらう、あるいは鑑定人質問を行う方が本当はよいというところはある。ただ、医療過誤と追って鑑定人のリストがあるわけではないと思うので、当事者双方から同数ずつ推薦してもらい、それを裁判所が鑑定人として指定するという手法は、当事者の同意を得れば、当然許されてよいだろうと思う。

(講師) メディアにとっては、どういった人選が行われるかというのは非常に大きなチェックポイントになる。それは裁判所に限らず、原子力規制委員会のメンバーの人選や、現在活断層の調査をしている同委員会の中の専門家会合のメンバーにも同じことが言える。例えば、専門家会合のメンバーが決まった時点で、どういう人がメンバーに人っているか、その人はどういう考えの持ち主かをチェックする。それと同じように、裁判所の人選は非常に大きなチェックポイントになる。仮に偏った人選が行われると感じた場合には、厳しく批判し、審理の中立性に疑問を投げかける記事を書くことになる。したがって、中立的な専門家を集めるのが困難であれば、いかにバランスの取れた人選をするかというところが、一番注意すべきポイントになると思っている。

(研究・裁判官)医療過誤訴訟では、カンファレンス鑑定や複数鑑定という手法が採られていると聞いているが、そのような手法は、証人尋問よりはまだマイルドな、専門家に負担のない方法として考えられるか。

(講師) カンファレンス鑑定も複数鑑定も、少なくとも原発訴訟において使える手法とは思えない。複数の鑑定人にカンファレンスで議論をしてもらうと、もちろん違いは出るが、一致するところも出てくる。当事者としては、そこで意見が一致したら終わりなので、カンファレンス鑑定は非常に採りにくい。

  なお、鑑定人の負担を軽くするというのが民訴法改正の趣旨だったという指摘については、専門家の関与をしやすくして、裁判に専門的知見が入りやすくするという意味ではそうなのだが、必ずしも負担の軽減が改正の趣旨だったわけではないと思う。鑑定人の負担を軽くするということを考えすぎるべきではないのでばないか。

(研究・裁判官) 専門的知見は、なるべく積極的にいろいろなところで収集し、どちらかに偏らないバランスが取れたものを得たいと考えている。電力事業者や国側は、専門家を確保しやすいと思うが、原告側はどのように対応していけるのか。

(講師) 専門家を用意できなければ勝負にならないだろうというのは強く意識していると思う。特に、現実の事故が起きた後は、起きる前と比べて学会、学者の状況が大きく違っており、専門家の協力を得られる可能性が高くなったと思われるので、今後は原告側もきちんと準備していくということになろう。ただ、原告側はどうしても同じ人があちこちの裁判所に行くということになるであろう。

(研究・裁判官) 専門技術的知見を取り入れる方法として、ラウンドテーブル等で行われる説明会方式があるということだが、訴訟の比較的早い段階で説明会方式をやることによって、その事件を審理するに当たって必要な専門的知見を取り入れることができると思う。しかし、この種の訴訟はどうしても時間が長くかかって、説明会を受けたときの裁判官が異動でいなくなってしまうということも考えられるので、例えば説明会の様子を録画して後で事実上資料として見ることができるようにするとか、何か実務上の工夫が可能なのか、実際工夫をしているところがあるのか、そのあたりを聞きたい。

(講師) 原告側の立場では、2回目などあまり早い時期に説明会を実施するのは、当事者との間係で了解を得られるかという問題があって、抵抗があるのではないか。法廷の場から離れて自分たちの見えない場所で審理が進むということには、当事者からはそう簡単には了解が得られず、十分に説明しなければならない。したがって、当事者に、こういうところが争点になって、こういうところを説明するために場所を移ると説明するためにも、ある程度公開法廷で原告、傍聴席等に見える手続を行った上で実施してもらうのがよいのではないか。また、原則は、説明会を聞いてもらった裁判所に判断してもらうつもりでやっていると思うが、現実には異動ということも当然あるので、ビデオまでやるかはともかく、裁判所なりの説明会の内容のまとめをしたらどうか。例えば、専門委員の意見については調書化するなり記録に残すことがあると思うが、説明会についても同じようにして、そういうものを引き継げばよいのではないか。裁判所によっては、後任の裁判官は前任の裁判官のものを引き継がないという考え方もあるかもしれないが、当事者からすると、判断してもらうために説明を行ったのに、裁判官が替わってそんなの知らないよといわれるのは甚だつらい話である。

(講師) 専門的な用語や原子炉の構造の説明といったレベルの話であれば、若干の準備期間を置いた上で説明することは可能であり、裁判官が替わったらまたやってもいいと思う。しかし、もっとシビアなレベル、例えば、見解に争いがあって、こちらの方が専門的知見としでの確立度が商いのだという話などは、基本的には判断する裁判体に聞いてもらいたいという思いがある。説明会に何を求めるかによって、いつの段階で当事者が対応するのかも変わってくるのではないか。なお、録画しておくという方法も、当事者がよいといえばありだとは思う。

(研究・裁判官) システム開発の事件で、用語が非常に難しかったため、ラウンドテーブル方式での説明会を行ったことがある。期日としては進行協議期日で、用語の説明やシステムを持ち込んで実演をしてもらって、当事者に撮影してもらい、後で裁判官が替わったときには書証の形で出してもらうようにしたが、非常に分かりやすかった。時期については、あまり早い時期にやると裁判官も何を質問していいか、何を実演してもらっていいかが分からないので、充実したきちんとした説明会をするためにはレあまり初期の段階に行うべきではなく、ある程度主張が整理されて議論がかみ合ってきてから本当に聞きたい点に絞って行うということになるのではないか。また、原発の問題については、一人の中立的な立場の人から意見を述べてもらったり鑑定してもらったりするのは現時点では不可能だと思うし、カンファレンス鑑定もやはりなじまないと思う。したがって、双方から同じような数の証人を出してぶつけることになるよりほかないと思うが、そのときも争点が拡散したり議論が散漫になったりしないように、どの点が共通していてどの点に対立があるのかということを裁判所が絞り込み、聞きたいところを当事者に提示して認識を共通化した上でやるべきではないかと考えている。


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