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最高裁推奨の3.11後の原発裁判の在り方① H23研究会資料抜書き [核のガバナンス・裁判]

平成23年2011年12月22日付の最高裁事務局主催の特別研究会(複雑困難訴訟)の資料の抜書き
court_001.jpg 講師 大学大学院教授 2名
     弁護士
     法務省大臣官房審議官 中山 孝雄
     


ここから入手
NPO法人(特定非営利活動法人)
情報公開クリアリングハウス
http://clearinghouse.main.jp/wp/

第1問 原発関連訴訟にかかわる問題

【提出問題1】
(提出問題)
 原子力発電所のように、先進的科学技術を用いているが、その制御ができなくなった場合の危険性が極めて高い施設に関し、その設置等を許可する際の安全審査の適法性が争われる訴訟において、裁判所の採るべき判断枠組みやその審査密度についてどのように考えるべきか。

(提出理由)
 上記のような施設の設置許可における安全性審査の適否に関しては、その専門技術的裁量等を考慮し、裁量統制型の司法審査手法が採られてきたところである、しかし、東日本大震災に伴う福島第一原発事故等の経験に鑑み、社会的には、実体的判断代置型の司法審査をすべきであるとか、審査密度を高めるべきであるという声が高まっている。そこで、この機会に、従前の判断枠組みや審査密度について再検討しておく必要があると思われる。

(意見)
 伊方原発訴訟等において最高裁判例が示した判断手法は、安全性審査が、将来予測事項を含む多方面の科学的、専門技術的知見を結集した総合判断であること等を考慮して、裁量統制型の司法審査の枠組みを採るというものであり、これは、安全性審査に係る法令が、施設の社会的有用性との関係で我が国の社会がどの程度の危険性であれば許容するのかという観点も踏まえて策定されたことをも考慮したものと思われる。もっとも、一方で、行政庁の判断に不合理な点があるか否かを現在の科学技術水準に照らして検討するものとし、当該判断に不合理な点があることの主張立証責任は原告が負うとしつつも、被告が相当の根拠、資料に基づき不合理な点がないことについての主張立証を尽くさない場合は、不合理な点かおることが事実上推認されるとするなど、安全性審査に関する司法審査の審査密度が低くなりすぎないための工夫もしていた。したがって、その基本的な判断枠組み自体を否定するのではなく、それを活用して十分な司法審査をするために、現在め科学技術水準に照らした検対等を慎重に行うという姿勢で臨むのが適当ではないかと考える。

【提出問題2】
(提出問題)
 既存の安全性に関する基準を満たすとして原子炉の運転がされている原子力発電所の近隣に居住する個人が電力会社を被告としてその運転の差止めを求めて提起した民事訴訟において、差止めの可否を判断する場合に考慮すべき事項及び考慮の在り方等について、御意見をうかがいたい。
(提出理由)
上記のような民事訴訟においては、一般にいわゆる人格権に基づき差止めの請求がされ、受忍限度論に従って各要素及びこれに係る事項を総合的に考慮して判断がされるものと想定されるところ、考え方の枠組み等について、概括的なりとも論点の整理をしておくのが有益であろうと考えた。

(意見)
 例えば、次のような要素及びこれに係る事項等が問題となると考える。
 1 差止めによる保護を求める具体的な利益の内容
 ①原告の生命又は健康から、②専ら精神的な意味における「平穏に日常生活を送る」利益(参考:最三小判平成22年6月29日判例タイムズ1330号89頁)まで、多様なものが挙げられようが、他にどのようなものが考えられるか。

 2 侵害の有無又はそのおそれの大きさ及びそれらの立証(審査密度等)
 各利益の侵害の有無等については、主張された利益の内容等のいかんに応じ、原告の居住地の原子力発電所からの距離や周辺の地形等を踏まえつつ、①当該基準の前提とする事情に照らしての当該基準の相当性、②当該基準の前提とするところを超える事態(以下「想定超事態」という。)の発生する蓋然性の程度、③想定超事態が発生した場合等に予想されるいわゆる放射線審放心内容及び程度等(事故対策の内容等も含まれよう。)といった事項が問題となるものと考えるが、他にどのような事項が対象となり得るか。

 それらの事項に係る主張立証責任の分配又は事実上の立証の負担の負わせ方については、どのように考え(参考:最一小判平成4年10月29日民衆46巻7号1 1 7 4頁(伊方原発事件))、専門的・技術的な知見に係る証拠を的確に収集するには、どのようにすべきか。
 また、例えば放射線被ばくによる健康への影響のように、過去の事故等を対象に疫学的調査等がなお継続してされているものもあるが、訴訟上の因果関係等の証明の有無の判断に当たって(参考:最二小判昭和50年10月24日民衆29巻.9号14 1 7頁(ルンバールショツク事件))、そのようないねば途中経過的な性質を含む資料に係る情報の証拠としての評価等をどのようにすべきか。

 3 原子力発電所の公共性ないし公益上の必要性の評価等
 差止請求における上記の要素の評価等については、損害賠償請求を認容すべき違法性があるかどうかにつき考慮する場合とは、「各要素の重要性をどの程度のものとして考慮するかにはおのずから相違がある」(最二小判平成7年7月7日民集49巻7号2599頁(国道43号事件の住民側上告事件))とされる。
 その上で、上記の要素の評価等に当たっては、①原告及びその周辺の住民が当該原子炉の運転により日常生活等において受けている便益に内容及び程度等のほか、②他の地域の個人又は法人等に当該原子炉の運転により提供される便益の内容及び程度等や、③当該便益の提供に当たる他の施設の有無等、④原告以外の個人又は法人等に同種の被害が及ぶおそれの程度等をも踏まえた上での被害の防止に関する措置の内容及び効果等も考慮されると考えるが、他にどのような事項が考慮の対象となり得るか。


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StepFep

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