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1979年のアメリカで起きたスリーマイルTMI島原発事故での、汚染水処置 [フクシマ第一原発事故炉]

報道の烏賀陽(うがや)弘道記者のTwitter[X]@ugaya2023年9月2日 より、文責は虹屋ツルマキで纏める



①大切なこと。1979年のアメリカ・ペンシルバニア州で起きたスリーマイル島TMI原発事故でも、汚染水は出た。 事情の違いを述べると、メルトダウンした原子炉=TMI:1つ 福島:3つ、デブリ=TMI:130t  福島:800t、汚染水の量=TMI:9000トン。福島第一:137万トン。つまり同じメルトダウン事故でも、事故のスケールが桁違いに大きい。

そして日本のALPSと同じようにEPICORという核種除去装置をくぐらせて核種を規制値以下にまで除去した。
しかし電力会社はサスケハナ川(同原発は河川の中洲にある)への排水はしないことに決定
自然蒸発に転換した。
自然蒸発させた後、高レベルの放射性物質ヘドロが残った。
ワシントン州のハンフォードサイトで処理された。


②最初は電力会社(GPU)はEPICOR処理後の水をサスケハナ川に放出する予定だった。しかし、下流に上水道の取水口を持つランカスター市が川への排水の差し止めを求めて裁判所に提訴した。


③ランカスター市と電力会社の裁判は和解で終わった。しかし「たとえ環境基準を満たす水であっても、スリーマイル島原発由来の水はサスケハナ川に流さない」という和解条項を電力会社が受諾した。


④これがTMI原発事故で、電力会社がサスケハナ川へのEPICOR処理水の放流を取りやめて、自然蒸発に転換した大きな理由のひとつ。


⑤もうひとつは、電力会社、地域住民、エネルギー省などの同席する対話の場が13年間に80回以上開かれたこと。Citizen Advisary Boardという市民委員は12人。その中には反原発運動家・市民も入っていた。


⑥このCitizen Advisary Boardは、あくまで「対話」の場であって、日本政府や東京電力の「説明会」のような「政府・東電の方針を説明する会合」とは性質がまったく違う。Citizen Advisary Boardは合意を形成するための対話の場所だった。


⑥に付言。

日本政府や東電は「地元関係者の『理解』なしには処理水の放出はしない」と終始一貫言っている。「合意」とは一言も言っていないのだ。これは最初から「地元の合意など必要ない」という官僚話法・レトリックである。なぜ誰も(マスコミも)それを指摘しなかったのか


TMI原発事故の場合は政府・電力会社が地元住民の「合意」を作ろうと努力した。日本政府はあくまで「理解を求めた」だけで「合意」が必要とは最初から一言も言っていない。だから地元漁業者が反対するなかALPS水を排出しても「え?合意が必要なんて約束してませんけど?」と逃げることができる。


⑧13年間に約80回の「対話の場」を重ねるうちに、住民と電力会社・政府の間にも信頼が成立するようになった。EPICOR・放射能・核種除去装置をくぐらせて核種を規制値以下にまで除去したEPICOR水の自然蒸発処理が始まったのは、事故発生後12年目の1991年。93年に完了。これは対話の後半で合意が形成されたから。


⑨この「市民アドバイザリー委員会」との対話の場は1993年、78回の会合を経て役割を終えた。1979年の事故発生から14年後である。


⑩事情の違いを述べると


汚染水の量=TMI:9000トン。福島第一:137万トン。
メルトダウンした原子炉=TMI:1つ 福島:3つ
デブリ=TMI:130t  福島:800t
つまり同じメルトダウン事故でも、事故のスケールが桁違いに大きい。


日本政府のミスはもっと早期に汚染水の処理方法を検討しはじめなかったこと。2013年12月まで汚染水タスクフォース(原子力工学者10人)は始動しなかった。事故発生から2年9ヶ月である。崩壊熱を冷やすために汚染水が大量に出ることは事故直後からわかっていたのに、時間を浪費しすぎた。


⑫事故直後にヨーイドンで処理方法を検討し始めていれば、陸上処理の可能性やその用地確保などもする余裕があったはずだ。またTMIのような地元住民との「合意形成」の場もできたかもしれない。


⑬そして重要なことを追記。TMI原発事故では、EPICOR,EPICOR2というALPSに似た核種除去装置を通した水を自然蒸発させた後のヘドロに、高レベルの放射性物質がまだ残っていた。たった9000tの汚染水でも100%除去は無理なのだ。


⑭ひとつ訂正。この汚染水をEPICOR処理したあとに残ったヘドロの高レベル放射性物質は、ワシントン州のハンフォードサイトで処理された。アイダホ州の砂漠にある国立研究所(INL)に保管されているのは取り出したデブリだった。


⑮ TMI原発事故は、私も現場に2回行って当時の住民に話を聞いて回り、英語の資料もかなり読んだので、重要なことを書いた。日米の汚染水処理の違いである。


こうしたスリーマイル島原発事故を現地で取材した報告は「フクシマ2046」(ビジネス社)にまとめた。興味があればどうぞ。



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 また徹夜で非常に重要なことを書いて公開しましたよ。


このスレッド、ちゃんと全部読んでね。

番号ふってあるから。


こういう汚染水処理の先例を見ているから、今回のALPS水の海洋排水がいかにアホらしいかわかるのですよ。




2023.8.26  福島第一原発 ALPS水・海洋排水に関する12のディスインフォメーションを指摘する


ALPS水の海洋排水に関する政府のディスインフォメーションがあまりにひどいので、12点にまとめました。


ぜひご一覧ください。

2023.8.26  福島第一原発 ALPS水・海洋排水に関する12の誤りを指摘する



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2023;0414規制庁・監視評価検討会 より ⓶ [東電核災害の検証]

原子力規制委員会 第107回特定原子力施設監視・評価検討会(2023年04月14日) より 覚書


 3時間12分より東京電力の《1号機原子炉格納容器内部調査の状況について》資料5-1 の審議
 原子炉を収めている圧力容器を載せて下支えしてる、格納容器内のペデスタル・pedestal(台、基礎〉の論議が注目された。



下図の下部画像を見ると、ペデスタル内壁は1号機と2号、3号機は全く、全然違う。何故だろうか?

000426814-p10a縮.jpg
⇩ 本来の姿
p08-FtqMB86-01.jpg
1号機は、ウラン装荷量は69トンを長さ4.35mの核燃料集合体400体(図の黄色)に入れてあった。その下の緑色部分の制御棒は97本。全重量 440トン。
 それらが、炉心シュラウド(炉心槽)(Core shroud)という、水の流れを分離する仕切り板の役割を果たす円筒状の構造物に囲まれ、厚さ30cm、内径 約4.8m、全高 約20m(7階建ビル)で全重量 910トンの鋼製の圧力容器(RPV、Reactor Pressure Vessel)に入れてあった。
 その圧力容器の440トンが、1号機では高さ 約8.5m、外径 7.4m、厚さ ⒈2m、内径 5mの鉄筋コンクリート製の土台(ペデスタル・pedestal)に載っていた。
 その全高 約20mの圧力容器は、1号機では高さ 約8.5m、外径 7.4m、厚さ ⒈2m、内径 5mの鉄筋コンクリート製の土台(ペデスタル・pedestal)に440トンが載って。格納容器(PCV primary containment vessel )
内に収まっていた。
2_pedestal_pcv-768.jpg
2号機・3号機のウラン装荷量は94トンで長さ4.47mの核燃料集合体548体に入れてあった。その下の制御棒は137本。全重量 500トン。
 それらが炉心シュラウド(Core shroud)の円筒状の構造物に囲まれ、、厚さ30cm、内径 約5.6m、全高 約22m(8階建ビル)の圧力容器に入れてあった。
 その全高 約22mの圧力容器は土台(ペデスタル・pedestal)に載って、全高 約33mの格納容器に収まっていた。
fig_16.gif
圧力容器
 それらで、核燃料中のウラン235の核分裂反応が連鎖し、発生したエネルギーの一部で電気エネルギーが発生し、発電が進行していた。そこに、2011年3月11日14時46分に震度6強の地震が襲った。
続く

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2023;0414規制庁・監視評価検討会 より ① [東電核災害の検証]

原子力規制委員会 第107回特定原子力施設監視・評価検討会(2023年04月14日) より 覚書


 3時間12分より東京電力の《1号機原子炉格納容器内部調査の状況について》資料5-1 の審議
 原子炉を収めている圧力容器を載せて下支えしてる、格納容器内のペデスタル・pedestal(台、基礎〉の論議が注目された。

https://www.nra.go.jp/data/000426855.pdf 

東電の説明が、3時間30分まで 

ついで

規制庁の見解を、東京電力福島第一原子力発電所事故対策室・1F事故対策室 室長 :竹内 淳が39分頃まで述べてる。。

注目したのは、36分頃の、「ペデスタル(台、基礎〉の耐震性少ないと言っても、判っても、何もできない。

『仮に原子炉・圧力容器を重力から支持する機能を喪失したとしても、その際に取り得る方策については検討』する論議を進めるべき」旨の発言し資料の12頁と21頁を挙げた。

発言部分 

12頁

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21頁
000426855--資料5-1:p21-縮.jpg
続く


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2023;0414規制庁・監視評価検討会 より ⓪ [東電核災害の検証]

原子力規制委員会 第107回特定原子力施設監視・評価検討会(2023年04月14日) より 覚書
理解する前提知識
2011年3月11日午後2時46分、宮城県三陸沖を震源としたマグニチュード(M)9の地震が起きた。東京電力の福島第一原子力発電所は、発電所の原子炉を稼働するための電力を、外部発電所から受け取るための送電線を通す送電搭が倒れ、外部電力を失った。そうした外部電力喪失に備えていた非常発電装置・機は直ちに稼働し、原子炉に稼働を停止し炉から熱を除く・炉を冷却するための電力を供給した。地震から約50分後に高さ約15メートルの津波が来襲し、1号機から4号機の敷地まで遡上した。これにより海水が非常発電装置・機にかかりました。
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1号機と2号機は非常用ディーゼル発電機やバッテリー(直流電源)、電源盤等すべての電源を失い、3号機は発電機は津波がかかり交流電源は失われたがバッテリー(直流電源)、電源盤など直流電源設備は1号機、2号機と異なり、少し高い位置にあったことから浸水を免れ非常用炉心冷却装置のRCIC・原子炉隔離時冷却系や高圧注水系などの運転・制御に電力を供給した。
3号機は1日半の13日に炉水の水位が低下し、核燃料が熔けメルトダウン・炉心損傷に至りました。
2号機ではRCIC・原子炉隔離時冷却系が全電源を失った後でも動き続け、約3日間炉水が注水され続けた。12日午後1時25分にRCIC・原子炉隔離時冷却系が停止し、炉水の水位が低下、メルトダウン・炉心損傷
1号機は、地震から約50分後の11日15時半頃に全電源喪失・ブラックアウトし、それで炉水注水が無くなりました。原子炉・圧力容器内の水は核燃料の崩壊熱で蒸発し続け、約4時間後、燃料が水面から露出して、炉心損傷が始まり、やがて溶融した炉心が圧力容器の底を貫通(炉心貫通・メルトスルー)し格納容器のコンクリート床面に堆積した。

続く

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原子炉のコンクリート躯体の中性子照射脆化 ③ [廃炉]

原子炉は、鉄筋コンクリートの土台で(垂直方向)縦方向に支えられる。コンクリートは、100℃以上の熱に晒されると、含む水分が沸騰し水・蒸気で内部から膨らんくる。

そして、稼働中=核分裂発電中には中性子とベータ線、ガンマ線で、停止中は使用中のウラン燃料からのガンマ線に照射される。

日本原子炉工学構造力学協会(JASMiRT)が、2018年にまとめた 放射線照射がコンクリート特性に及ぼす影響
 では、


原子力発電所では、鉄筋コンクリート壁は放射線環境下にあり、遮蔽機能 、 支持機能が要求される
2-2鹿島紺谷-05.jpg
 
 中性子照射で、コンクリートの長さ変化が明確に膨張がみられた。照射量の増大に伴い、圧縮強度・剛性は大幅に低下した。コンクリート強度低下は、中性子による砂または砂利など(骨材・こつざい)の膨張とペースト・セメントに水を入れて練った物の放射線発熱による収縮に起因する。
 これまで行われた研究を含めたデータの分析し、どのような骨材を用いても放射線影響が発生しない、累積中性子照射量の目安値として1×10の19乗 n/㎠(平方センチメートル)を提案する。【1平方センチメートルに10の19乗個の中性子・記号n】
実際の原子炉を検討する。
各プラントの照射量は高経年化対策に関する報告者(公開資料)に基づく。
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この表には、福島第一原発の1号機・1F-1はないが、6号機・1F-6をみると、概ね累積高速中性子照射量は提案目安値と従来の目安値以下で、ガンマ線照射量も従来の目安値以下であろう。
2023年3月の東電公表資料は、3月29日にロボットが1号機・1F-1の開口部から圧力容器の真下に入り、土台内部の損傷状況などを詳しく調査撮影した画像。核燃料が熔融し熔け落ちている。その段階では、核分裂は終え・中断しているから、高速中性子は出ない。
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2011年3月の核燃料溶融の際に出たエネルギーは、ペデスタル開口部付近を90度ほど(約4分の1ほど)全て,鉄筋コンクリートの鉄筋とコンクリートの全て溶融させている、と推定されていた。実際に内部調査ロボットno ROV-A2で撮影すると、コンクリだけ抜けて、鉄筋だけ残っていた。熱量は、どこにいったのか?ひょっとして、ペデスタル開口部付近の90度に集中したのではなく、ペデ内側の内周を溶かしてしまった?そうするとペデスタルの健全性は? 重さ190トンの圧力容器を支えられるのか?
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 続く

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