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「犠牲区域」のアメリカー③-2020/09/24刊行 [核のガバナンス]

「犠牲区域」のアメリカ 核開発と先住民族   著者 石山 徳子 著  岩波書店

刊行日 2020/09/24  ISBN-13 : 978-4000614221
内容紹介 続き ③

「犠牲区域」と呼ばれる地域を回りながら、つねに思い起こしていたのが、患者に寄り添いながら、高度経済成長の負の遺産、水俣病と炭塵爆発被害の不条理と闘いつづけた医師、故原田正純医師の言葉だ。晩年の原田医師は新聞社のインタビューに答え、福島原子力発電所の事故がもたらす環境被害と水俣病のつながりについて次のように語った。
「僕も最初は病気のせいで水俣病患者が差別されていると思っていた。だが、世界各地の公害現場を歩くうちに、差別されている場所に公害というしわ寄せがくるとわかった。原発も都会で使う電力を地方でつくり、廃棄物まで押しつけられる」(出田 , 2011)。汚染された土地に生きる患者の心と身体に向き合いつづけた医師による告発は、アメリカ核開発の現場でも説得力がある。
辺境に生きる先住民が核開発の最前線に置かれ、何世代にもわたる生態学的リスクを負うのを拒否するのか、または、国や企業からの助成金を受け入れるのかという、究極の選択を強いられる日常がある。大半の市民はそれを認識せず、先住民の葛藤や苦しみを共有していないのが現実だ。これは、アメリカ社会に内在する格差と分断に起因しているが、先住民族がすでに滅びてしまったかのような誤解が一般化され、現代に生きる彼らが視えない存在に追いやられているからでもある。

著者紹介
石山徳子(いしやま のりこ)
1971年東京都生まれ。日本女子大学文学部英文学科卒業。ラトガース大学大学院地理学研究科博士課程修了(Ph.D. 地理学)。専門は人文・政治地理学、地域研究(アメリカ合衆国)。明治大学政治経済学部、大学院教養デザイン研究科教授。
著書に
豊かさと環境
秋元 英一/編著 -- ミネルヴァ書房 -- 2006.10 -- 332.53
新潟市図書館収蔵 中央・ホンポート館自動書庫 /332.5/ユタ/
アメリカ先住民と環境保護 石山 徳子/著 109-130頁
『米国先住民族と核廃棄物――環境正義をめぐる闘争』(明石書店、2004)、
県立図書館収蔵 /539/I83/
米国先住民族と核廃棄物41.jpg
『震災・核災害の時代と歴史学』(共著・青木書店、2012)
新潟市図書館収蔵 白根館 、/369/シ/
原子力発電と差別の再生産 石山 徳子/著 161-173頁
『「ヘイト」の時代のアメリカ史――人種・民族・国籍を考える』(共著・彩流社、2017)などがある。
県立図書館収蔵 /316/Ka53/
先住民族の大地 石山 徳子/著 49-70頁

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