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日本と投票制度を比較 台湾の公民投票⑫ [日々の雑感]

文芸評論家の斎藤 美奈子氏が、筑摩書房のPR誌ちくま2019年4月号に「住民投票にはどんな意味があるのか」と題したコラムを載せている。
http://www.webchikuma.jp/articles/-/1695

台湾の住民投票と比較してみよう。
台湾の住民投票(全国性公民投票/国民投票)は、当プログの2019年01月22日の《台湾の公民投票で、脱原発政策の破棄を求める案が59%を超えたそうだ》 と29日の《台湾の公民投票で、脱原発政策の破棄案が賛成票589.6万で、放射能汚染地域からの農産物輸入禁止案が779万の賛成票だ》を見てもらいたい。
https://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/archive/20190122
https://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/archive/20190124

巻町住民投票、.jpg
さて斎藤氏が採り上げている日本の住民投票は4例。「条例に基づく住民投票は、九六年以来、全国各地で四〇〇件を軽く超えるほど実施されている」なかの4例。2019平成31年2月4日の、沖縄県での名護市辺野古の新基地建設にともなう埋め立ての賛否を問う県民投票。1996平成8年8月4日の新潟県巻町(現新潟市西蒲区)で行われた東北電力・巻原発の建設計画の賛否を問う町民投票。2000平成12年1月23日の徳島市の吉野川可動堰建設の賛否を問う住民投票。2006平成18年6月12日の、山口県岩国市の米空母艦載機の岩国基地への移駐案受け入れの賛否を問う住民投票。出版社のPR誌のコラムだから、各々の件を扱っている本を紹介している。
 結果は1例目の沖縄県の名護市辺野古の新基地建設では「知事が投票結果を尊重する(安倍晋三首相とトランプ米大統領に結果を報告する)義務を負う(反対票が)投票有資格者の四分の一を超え(72.2%・43万4273票)、昨年の知事選で玉城デニー知事が獲得した39万6632票も上回った。」「安倍政権は、(反対の)投票結果は無視して工事を続行すると述べている。」。1996平成8年の新潟県巻町での巻原発の建設計画の賛否を問う町民投票は、計画反対が61.22%で「東北電力は巻原発建設計画を断念した。」2000平成12年の徳島市の吉野川可動堰建設の住民投票は「堰の建設に反対が91.6%」で計画を断念させた住民投票。2006平成18年の岩国市の米空母艦載機の岩国基地への移駐案受け入れを問う住民投票は、反対が87.42%。「国による新市庁舎建設補助金カット、岩国基地の民間空港再開にともなう県の圧力などによって市政はズタズタになり」「市長は方針を一八〇度転換、空母艦載機部隊の移駐を受け入れた。」


 各々の件を扱っている本《三冊を読んでの私(斎藤)の結論》は《投票率が五〇%を超えなければ住民投票は成立せず(条例によっては開票すら行われない)、もちろん思い通りの結果になるとも、投票結果が尊重されるとも限らない。》が《住民投票には意味がある。・・住民投票は人々の意識を変える。世論調査やアンケート調査とはちがう。住民投票に至るまでには多くの説明会や勉強会が開かれ、住民は真剣に事実と向き合う。(住民投票がみんなの意識を変える)》
《住民投票運動は反対運動とも選挙とも別物なのだ。自分たちの意思を示す。それは民主主義の原点により近い。何より印象的なのは、いずれの住民投票にも、熱気が感じられることである。沖縄の県民投票は、本土の意識も変えつつある。住民投票はけっして無駄ではないのだ。》
20181126ー.jpg

台湾の全国性公民投票/国民投票は、2003年の「公民投票法」成立から、2009年までに3回、議題六項目で実施された。いずれも成立しなかった。成立する条件が⑴「投票総数が有権者過半数」投票率が50%以上必要で、かつ⑵「賛成が有効投票の過半数」と、日本の条件とほぼ同じだ。国民投票の投票率が低く、未だ成立しなかった。台湾では総統選挙や立法委員(国会議員)選挙などでの投票率が7割強に達するから、5割以下は特異的現象だ。また地方性公民投票/住民投票と呼ばれる地方レベルの案件は5件投票されて1件は成立している。

 投票率が50%以上必要としていたから、投票案に反対であれば、この50%条件制度を生かして投票を棄権する投票ボイコットが投票率を下げ投票の成立を阻止し、賛成派勝利を阻むことが出来る。わざわざ反対票を投じれば、むしろ投票の成立に貢献し、賛成派を利することになる。そうしたインセンティブ動機が働いて、低投票率なったと考えられた。


 2017年12月の改正では、⒜公民投票年齢が18歳に引き下げられ有権者が増えた、⒝成立条件は㈠「賛成票数が反対票を上回る」と㈡「有権者数の4分の1以上」となった。数勘定の理屈上は賛成票だけで得票率25%以上で反対票や無効票が数%で、投票率が50%以下でも公民投票は成立する事になる。だから《大幅に発議・立案・成立要件が緩和》と評されている。


 2018年11月24日、10項目の全国性公民投票が行われた。有権者は1975万7067人、その有権者の4分の1・25%は493万9267人。最低投票総数は第②案の約1076万票で投票率54.5%だから大幅に緩和されてからが、50%条件は満たされている。 7項目は賛成票が上回り成立した。最低投票率54.5%だから、成立している項目は「有権者数の4分の1以上」である。

 理屈上は投票率が50%以下でも、得票率25%以上で賛成票だけで公民投票は成立する。だから賛成者は熱心に投票行動を働きかける、反対者も同様であろう。だから投票行動が活発になり、結果的に「投票総数が有権者過半数」投票率が50%となるのだろう。だから日本も台湾に学び、同様な条件で成立し、結果尊重を条文化したらどうか。

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