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KK原発の原子力防災/避難計画・原子力防災の評価にケース4のブルーム通過後の空間線量率を使う [柏崎刈羽原発の防災計画]

東京電力の柏崎刈羽原発(㏍原発)、事故時の住民避難計画を評価してみる。これまでに避難期間に対しし避難所・面積が国際的標準に比し過小であり、不足であること、災害弱者、中でも要介護の高齢者、障碍者、病院入院者の避難がケア・介護・看護に当たっている人々に過重な負担を強いており実質的に機能しないだろうこと、などが明らかになった。
3.11フクシマでは避難先がブルーム風下の方向にあり、逃れたはずが放射能の汚染地になった例があった。避難計画では、避難先が風下に計画されており、かつUPZ30km圏の境界付近に設定されている事が多かった。

その当否を検討するために、新潟県と東電が昨年2015年12月16日付で公表した放射性物質の拡散シミュレーションの結果、影響評価を利用することにした。
平成27年度第3回新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会
http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356829346997.html

このシミュレーションを利用するため想定条件を検討してみた。
これの性格は、「フィルタベントの性能と効果について」「防護対策を行う上でどのようなことを考慮したらよいのかについて」議論するためのシミュレーションしたもの。

ケース4を避難計画・原子力防災の評価に使う

「ソースターム(放出量)が単純にソース源で2倍になったり、10倍になったり、100倍になったりという場合に、計算結果を大体2倍とか、10倍とか、100倍にしてみれば評価できる」(鈴木委員 議事録 P31)。フィルタベントなどの性能で大気中への放出量が10分の1になるのなら、計算結果を10分の1にしてみれば「大体、評価できる」。たとえばA地点は20を、10分の1の2と評価できる。

「防護対策を行う上でどのようなことを考慮したらよいのかについて」議論するためには、フィルタベントなどが機能していない条件でのシミュレーション・影響評価が適していると言える。参考ケースとかケース4と名付けられた格納容器が過温破損し大気中に直接出るケース「格納容器のウェットウェルを通らないでのベントなし」のケースのシミュレーションが適している。

放出量では 

次いで、放出量(ソースターム)を検討した。それでは原子炉停止から短期間で数回の半減期をむかえる放射能の扱いが問題となった。
 放出想定されている放射能はクリプトンKr(陽子数)の4つの同位体、キセノンXeの5つの同位体、ヨウ素Iの5つの同位体、セシウムCsの3つの同位体。
 シミュレーションは放出から72時間を試算している。放出放射能雲・ブルームはUPZ30km圏を1~4時間で吹きぬけ、PPA(50km圏・屋内退避計画地域)る。弱風の秒速2m=時速7.2㎞なら4.17時間・250分で、中風の風速5.0m/秒=時速18㎞なら1.66時間・100分、強風の風速10.0m/秒=時速36㎞なら0.83時間・50分でUPZを吹きぬける計算になる。

[PPA とは、Plume Protection Planning Area(プルーム防護措置実施地域)の略称で、新潟県地域防災計画(原子力災害対策編)では、「屋内退避計画地域」と定義づけている。]

それで先ず、72時間の半減期の回数、崩壊量を試算する。
 クリプトンKrでKr85mが16回(10万分の9万9998はγ線をだし崩壊してKr85・半減期10.77年に)Kr87は56回(β崩壊しβ線とγ線を出し安定元素のストロンチウム88へ)Kr88は25回(β崩壊しβ線とγ線、できるルビジウムRb89は半減期15分でβ線とγ線しストロンチウム89・半減期50.53日に)である。これら3同位体は放出量ではクリプトンの約9割である。
 キセノンXeでは、Xe133mが1.3回で約60%がγ線を出しXe133へ。Xe135mが283回むかえγ線をだしXe135へ、Xe135は7.8回むかえ235分の1に減る。運転中ではなく中性子を獲得することもないので、β線とγ線をだしセシウム135・半減期230万年に。これら3つは放出量のキセノン5種の30%弱に当たる。放出量の70%を占め、Xe133mの崩壊でも生成するXe133は、半減期5.25日でβ崩壊しセシウムCs133(安定核種)になる。
 ヨウ素Iの5つの同位体の内は、I-135は10.9回β崩壊、I-134は82回β崩壊、I-133は3.4回β崩壊、I-132は31.4回β崩壊。セシウムCsの3つの同位体はいずれも半減期には達しない。
 
 風速が時速10㎞(毎秒2.7m)の風の時にUPZ内での半減期・崩壊量を試算してみる。クリプトンKrでKr85mが0.67回で37%崩壊、Kr87は2.36回で80%崩壊、Kr88は1.05回52%崩壊。キセノンXeでは、Xe135mが11.7回で1万分の9997は崩壊、Xe135は0.2回むかえ崩壊量は20%。ヨウ素Iは、I-134は3.4回90%崩壊、I-132は31.4回。セシウムCsはいずれも半減期には達しない。

UPZ内に残留する放射能核種
 ブルームのクリプトンKrとキセノンXeは化学的に反応性がない、化合物が希にしかできないガス状の元素。だからUPZを吹き過ぎる時に放射線を出すが、72時間後にはUPZ内外に残っていないだろう。ヨウ素IとセシウムCsは化学的反応性に富み多くの化合物をつくる元素だ。だからUPZを吹き過ぎる時に放射線を出し、72時間後もUPZ内には多くの化合物として沈着、付着しているだろう。

「空気吸収線量率」=「空間線量率」のシミュレーション結果を使う。

No.12,1-04c.jpgシミュレーションでは、結果を「外部被曝による実効線量」「空気吸収線量率」「吸収による甲状腺等価被曝線量」、東電は「空間線量率」「地表からの放射線による空間線量率」「外部被ばく(実効線量)」「よう素による甲状腺等価線量」を出している。空気吸収線量率と空間線量率は同じである。
 避難行動の採否を判断するOIL(運用上の介入レベル、Operational Intervention Level)の1、2は「空気吸収線量率」=「空間線量率」である。

 先ほどの風速の試算では1~4時間ほどでUPZをブルームは通過するから、その範囲の全住民がブルーム到来以前に避難することは、道路の通行可能量等から見て無理である。だから、自治体などが避難の手を差し伸べる優先順位を付ける必要があるが、本稿の避難先の適否を検討するとの目的からは脇道に外れるから脇に置く。同様の理由で「よう素による甲状腺等価線量」の検討も脇に置き、後で取り扱う。


OIL1、2に注視
ケース4、参考ケースでは、通過後は先に検討した残存する放射能核種から通過後の「空気吸収線量率」=「空間線量率」≒「地表からの放射線による空間線量率」。この値がOILを超えているか否かが問題である。OILはSvシーベルトで表記され、シミュレーションでは㏉・グレイで表記されているが、出る放射線はβ線とγ線だから㏉・ぐれい値=Sv・シーベルトの値である。OIL1=500μSv/h=500μ㏉/h(マイクログレイ・パーアワー、100万分の1グレイ・1時間)を超えていれば、数時間以内に避難開始。OIL2=20μ㏉/hを超えたら1週間以内に避難。 続く

参考
1μ㏉/hは年間(/y)では24×365=8760μ㏉/y=8.76m㏉/y=8.76mSv/y。
1mSv/y=0.114μ㏉/h。20mSv/y=2.28μ㏉/h。
OIL1=500μ㏉/h=4380mSv/y。OIL2=20μ㏉/h=175.2mSv/y。


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