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圧搾空気で蓄電、蓄エネルギー 日本 2000年代まで [日々の雑感]

発電やエネルギーの貯蔵に圧搾空気を利用とする動きは、日本では90年代までは主に昼夜の負荷平準化を目的として検討が進められていた。

余剰電力対策として
通常のガスタービンではタービンで得られた動力のうち1/2~2/3程度を圧縮機の圧縮動力として費やし、残りが発電出力となる。圧縮機とタービンを切り離してその間にクラッチを介して発電機/モータを設置する構成とし、電力が余剰な時間帯(夜間や休日)には圧縮機のみを駆動して予め圧縮空気を蓄えておく。電力負荷が大きい時間帯(平日の昼間)の必要なときに、貯蔵した圧縮空気をガスタービン発電機の燃焼器に流し込めば発電時の出力を大きくなるという火力発電技術の応用である。電力中央研究所(電中研)の末永弘氏によれば、10のエネルギーの燃料で3の電力エネルギーを取り出すガス発電システムがある。予め6の電気エネルギーでつくった圧縮空気を用いると同じ燃料で8の電力エネルギーを取り出せる。

news44-原理.jpg2011_8th_5_suenaga_HP-04.jpg


 ドイツのフントルフHuntorf発電所(29万KW、1978年から)、米国のマッキントッシュMcIntosh発電所(11万KW、1991年から)で既に実用化されていた。
 圧搾空気製造には、フントルフは近隣に設置されたウンターベーザーUnterweser原子力発電所(PWR)の夜間余剰電力を消費しておこなっていた。日本も当時の目的は昼夜の負荷平準化であったため、これに適うし、大容量化が容易で経済性の観点からも有力と考えられたので、国内でも鋭意開発が進められた。

news44-海外2.jpgHuntorf-MacI.jpg

地下に圧搾空気の貯槽
 地下貯槽は、岩盤気密方式、ライニング(裏張り)方式、水封方式の3方式がある。岩盤気密方式は岩盤中にほとんど割れ目がなく気密性が良い場所でしか建設できないため、日本では極めて困難と考えられる。
raininngド.jpgライニング方式は例えば掘削面より貯槽内に向かって裏込めコンクリート、コンクリート製覆工板、ゴムライニングシートを配した気密ライニング構造でゴムライニング方式がある。これは1990平成2~2001平成13年度に通商産業省(現、経済産業省)資源エネルギー庁が「新型負荷平準化電源技術開発調査」名で、北海道空知郡上砂川町の三井砂川炭鉱跡で実施した。このプラントは地下450mの深さに容量1600㎥の空気貯槽を建設し、約10時間かけて63,000kgの空気を4(40気圧)~8(80気圧)MPaまで圧縮して貯蔵し、この圧縮空気を用いて4時間の2000kWの発電を行うもので、106サイクルの運転試験が行われた。
https://www.jsce.or.jp/journal/contents/knowledge/vol9906.pdf

2011_8th_5_suenaga_HP-11b.jpg 空洞周辺の地下水により漏気を防ぐ水封式は電力中央研究所(電中研)で1887昭和62年から2001平成13年にかけて岐阜県飛騨市の神岡鉱山の既設の水没していた坑道を利用して水面下約180mに横坑(幅3.2m、高さ3.2m、長さ51m)を掘削し約1.9MPa(19気圧)貯蔵実験を行った。空洞の周辺の隙間水圧(約1.9MPa)よりも圧搾空気の圧力が低いと湧水が生じ、高いと漏気生じるという予期される結果が得られた。割れ目などの存在する岩盤中であっても十分な地下水が存在すればライニングを施行しなくても十分な気密を確保できることが確認されている。圧縮圧がライニングの上砂川より低くその分効率が悪いが、貯槽の建設費が安くなるので確認実験を行った。http://members3.jcom.home.ne.jp/chikasui-net/2011_8th_5_suenaga_HP.pdf

エコキュートで夜間電力需要を開拓
こうした実証試験が終わりつつあった2001年4月、エコキュートが販売開始。これは、電動の二酸化炭素冷媒のヒートポンプで空気の熱を吸熱し湯を沸かす電気給湯機の機種の総称である。従来ガスが消費されていた給湯を電力消費に替え市場を奪う市場開拓効果がある。電量料金体系を夜間電力を廉くする、昼間を高くする形にして各電力会社は販売を促進した。これは、電力の夜間負荷の増大し昼夜負荷を平準化する効果がある。市場開拓の促進に電磁調理器が大々的に販売され、オール電化が謳われた。1999年時点で日本全国には42 カ所の揚水発電所が導入されており、出力総計は2,390万kW に達した。2009年11月10日、電気事業連合会は出荷台数が10月末累積200万台に達した発表。これらの稼働により夜間電力が余剰となる懸念がほぼ消滅した。

 こうして2000年代に入り国内では圧搾空気を利用する発電の研究開発が停滞した。しかし近年再び、際施可能エネルギーの変動への対応など、新たな観点からの圧縮空気エネルギー貯蔵(Compressed Air EnergyStorage:CAES)システムの検討が行われ始めた。 続く


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