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圧搾空気で蓄電、蓄エネルギー 日本 2015年現在 [日々の雑感]

2015年、「断熱圧縮空気蓄電システム」という新顔が加わった。

16061503_2koube.jpg㈱神戸製鋼所、早稲田大学(スマート社会技術融合研究機構)、一般財団法人エネルギー総合工学研究所(IAE)は共同で開発に取り組むと6月19日に発表。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「電力系統出力変動対応技術研究開発事業」の一環として実施する。
プレスリリース http://www.waseda.jp/across/news/1069/

ようやく追いつけるか
「断熱圧縮空気蓄電システムは、電力を圧縮空気と熱の形で貯蔵し、必要に応じて貯蔵された圧縮空気と熱を使って発電するシステム」(発表文)だから、ドイツのADELE(Adiabate Druckluftspeicher fur die Elektrizitatsversorgung)断熱式圧縮空気式電力貯蔵、米国のベンチャー企業 LightSail社で開発中のシステムと同じ性格のシステムである。

機器
「汎用機器で 構成されているため信頼性が高い、長寿命、希少物質を使用せず廃棄が容易、出力とエネルギー貯蔵量の組合せが自由、といった特長」これらの諸点は圧搾空気利用では、何時も、利点に挙げられる。規模が小規模、乗り物なら一人乗りのバイクや自転車なら汎用機器の組み合わせでできるが、4人乗りの自動車となると専用の機器が必要となるようだ。圧縮時の熱を貯蔵し、膨張時に戻す仕組みや貯蔵時に流出拡散する熱を補填する装置が必要になる。

貯蔵タンク
電源としての発電可能時間は圧搾空気の貯蔵タンクの性能で左右される。
 欧米のように岩塩層に溶解採鉱法で岩塩を取り除いた空洞を最大耐圧10MPa(100気圧)のタンクに貯空槽に使う安い建設法は、日本列島に岩塩層がないからできない。
 日本では地下の貯空槽を作るのに岩盤気密方式は採れない。岩盤中にほとんど割れ目がなく気密性が良い地盤でないと建設できないが、比較的軟質岩盤が多い日本では困難と考えられる。
 ライニング(裏張り)方式、水封方式は廃坑を利用するなら掘削費を安くできるが、サイトが限られる。軟質岩盤で鋼管を利用し、空洞建設する立て杭方式など新たに地表から掘削することは技術的には可能だが、地上に容積や耐圧性を自由にとれる大きな貯空槽を安価する方が実現可能性が高いのではないか。

 原子炉の圧力容器は、鋼鉄製で耐圧性は約175気圧位で厚さは概ね15-30cmある。ドイツのプラントモデルで岩塩層ドームに100気圧で蓄えている。大規模例では数百気圧。圧縮空気を蓄える100気圧など数百気圧にも、鋼鉄製なら圧力容器並みの厚さが必要だろう。もっと薄く、軽くする必要がある。

A-33炭素繊維タンク-15b.jpg 米国のベンチャー企業 LightSail社では、より安価にするために炭素繊維を利用するタンクに開発方向を変えている。日本国内で使用されているLPガスなど高圧ガス用ボンベも炭素繊維を使っている。日本では、帝人エンジニアリング㈱が製造販売している。
 「アルミ合金でできたSeamless 円筒[ライナー]を内筒とし、其の外側をエポキシ樹脂を含浸させたガラス繊維又は炭素繊維などの高強度繊維で多層に巻き付けた繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic(FRP))構造」で「万一の場合にも破裂が起こらない様にライナーからのガス漏れが先行し 内圧を安全に低下させる構造になっております。(Leak Before Burst構造)」。
http://e-wei.co.jp/sustainable-tecnology_seminar/pdf/A-33.pdf
 販売されているタンクの最大は、151リッター24.8MPaであるが、同社は約500リッター70MPaまでカスタムメイドできるとしている。製造法を見るとアルミパネルをプレス加工して作られるシームレス(継ぎ目のない)ライナーが容積を決める最大の要因であり、耐圧性は高強度繊維を多層に巻き付ける事で得られている。

シームレス鋼管は神戸製鋼の得意分野。容積の大きなライナーを作れるだろう。「日本の炭素繊維生産は品質、生産量共に世界一の実績」。地上に容積や耐圧性を自由にとれる大きな貯空槽を安価に作れるだろう。
http://www.carbonfiber.gr.jp/material/

参考にドイツ機械工業連盟(VDMA)の資料では「1MWh の貯蔵量は(幾何学的に)150m3 以上から開始することができるかもしれないし、そのコストはおよそ1kWh あたり400 ユーロ程度からである。」最大100気圧10MPaで150m3≒1MWh=1000kWh=400,000ユーロ、ユーロ/円を140円で5600万円。

不明瞭な開発目的
「今回の開発は、再生可能エネルギー(特に風力発電)の出力変動の抑制や電力需要のピークシフト等の平滑化・平準化を目的としています。」(発表文)。これの文意意味を私は読み取れない。
 風力発電や太陽光発電の出力は、その場所や時刻・瞬時の風や陽光により決まる。風や陽光をためて置けず運転者が操作で出力を上げることができない。適当なバッファ(緩衝)装置を発電機と電力網・グリッドの間に設置してグリッドに渡す、給電する電気、電力の量的変動の抑制は技術的に可能だ。”出力変動"では問題課題を的確に表していない。

 電力需要のピークシフト等の平滑化・平準化は、需要構造の問題で発電システムで左右できる問題ではない。変動する需要に適合・マッチできる発電の仕組みを作る事が供給側の問題・課題だろう。


予備力03_.jpg 電力系統の予備力 reserve margin 、予想される最大電力需要に対してもつ発電能力の余力の観点からは、太陽光発電PV、風力発電は、風や陽光をためて置けず運転者が操作で出力を上げることができないから予備力にはならない。原子力発電も、予備力になりえない。予備力は需要変動への対応の時間的幅から対応時間が瞬時から秒単位、おおむね10秒以内の極短期から数分程度の変動に対して即座に対応できる瞬動予備力 spinning reserve、分単位のおおむね10分以内に起動から負荷接続までが可能な運転予備力 hot reserve、時間単位の待機予備力 cold reserveに大別される。
 
新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の資料では従来のガス火力発電と一体化したCAES「起動・停止に要する時間は 20 ~30 分とやや長い。」とある。
http://www.nedosv.org/wp-content/uploads/2014/05/Energy-Storage-.pdf

しかし1978年稼働のフントルフ発電所は、ブラックアウトスタートで起動して6分以内に全出力に達する。
The gas turbine can be started without any additional energy and can be run up to full load within six minutes.

1991年稼働のマッキントッシュ発電所は14分である。
The CAES generator is capable of producing up to 110 megawatts of electrical power within 14 minutes of startup during periods of high peak demand.

従来型のガス混焼型CAESでも運転予備力 hot reserveとして対応可能である。

ドイツのADELE断熱式圧縮空気式電力貯蔵
ドイツ機械工業連盟(VDMA)の資料では、ADELE断熱式圧縮空気式電力貯蔵では、これまでの圧搾空気技術の蓄積・経験から「7bar(0.7MPa)から15bar(1.5MPa)の圧力範囲と400kW から1,500kW までの出力範囲」ではブラックアウトスタート、停電など外部からの電力無しで起動が可能で「起動シーケンスは起動指令から最大出力まで30 秒以内、停止シーケンスはさらに短い。」。より大規模な2000kW(2MW)~数百MW 程度のADELEでは1分以内を開発目標にしている。

ADELEは数分程度の幅で変動に対して即座に対応できる瞬動予備力 spinning reserveとしても用いることができる。

日本の開発目標の検討 続く


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