原子力災害対策指針(改定2015年4月)(番外②)屋内退避での換気で放射能侵入 [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]
窓を閉める、換気扇を止める、エアコンを切るという他に、通気口や隙間に目張りをすることが必要になる。屋内退避(籠城)は「最も簡便だ」と言われるが、目張りは結構時間がかかるし目張りテープやら資材も人手も要る。これを測定しシュミュレーションしたデータは見たことがない。少なくとも、事故炉からの放出開始見込み時刻よりその時間分は早い時刻に屋内退避(籠城)の指示は出され、住民に伝わらなければならない。東電・柏崎刈羽原発の事故想定なら事故発生から2時間後に格納容器PCVが過温破損する。その前だ。
この気密性の問題は新鮮空気の確保する必要から深刻だ。呼吸で必要な酸素は成人が静かに腰掛けてる状態で1人・1時間あたり1立方mの空気供給が必要。二酸化炭素濃度を作業環境基準1000ppm(0.1%)以下にすることを目標にすると成人が事務作業程度の活動状態で新鮮空気は1人当たり1時間に約30立方mが必要。建築基準法施行令(第20条の2(ニ)および第129条の2の2の3)で換気は20/立方m(1人・1時間あたり、静かに腰掛けている状態での二酸化炭素排出量を想定)が必要として要求。また、ストーブで暖房したら換気が必要になる。
屋内退避(籠城)での健康被害リスク
避難には、事故による追加被曝をゼロにし「被曝による健康影響等のリスクの低減するプラスの効果もあるが、避難中の事故のリスクなどのマイナスの効果もある。総合的考えてに実施する必要がある」という考えがある。思慮が足りない。屋内退避(籠城)には、追加被曝を減らした分だけ「被曝による健康影響等のリスクの低減するプラスの効果もあるが、屋内退避(籠城)による健康影響等のリスクなどのマイナスの効果もある。」これも考慮に入れなければならない。被曝の確定的影響は避けるために設定されたPAZでは次のように言える。
「避難には被曝による確定的影響を免れる効果と確率的影響を免れる効果と屋内退避(籠城)による健康影響等のリスクを避けるプラスの効果があるが、避難中の事故のリスクなどのマイナスの効果もある。」
「屋内退避(籠城)は、確定的影響を免れる効果と追加被曝を減らした分だけ確率的影響を低減する効果と避難中の事故のリスクを免れるプラスの効果があるが、追加被曝を減らした分だけ小さくなった確率的影響を被るリスクと屋内退避(籠城)による健康影響等のリスクなどのマイナスの効果もある。」
屋内退避による健康影響等のリスクと屋内退避で被曝を減らした分だけ小さくなった発癌などの確率的影響の合計より、避難中の事故等の道中のリスクが大きい場合である。これは避難中の事故等のリスクが余程大きくないと成立しない。それに道中の危険は、要救護者への人手を確保する配慮などを入れた事前の詳細な計画の立案、交通規制で減らせる。
それで、米国や欧州では「第一選択が避難、第二が屋内退避」となっている。日本では要救護者への配慮のない避難計画で避難中の事故等が多かった東電核災害の例を挙げて、避難中の事故等のリスクが大きいと印象付けている。要救護者への配慮などのない計画を立案していた事実、立案指示者の責任は隠蔽される。そして、今も屋内退避(籠城)でのリスクを取り挙げないから、誤った議論に成る。
避難路を移動中、あるいは渋滞で車中にいる間に放射性物質が放出されて道中にプルーム放射能雲に長時間曝されると、結果として大きな被ばくをしてしまうから避難は慎重にと言われる場合を考える。
結果は「屋内退避(籠城)による追加被曝を減らした分だけ小さくなった確率的影響を被るリスクと屋内退避(籠城)による健康影響等のリスク」よりも「ブルームでの追加被曝による確率的影響の"二分の一"と避難中の事故のリスクの合計」が大きいという条件になる。
日本の様に家屋はγ線素通し状態、病院、介護施設、学校、公民館等の避難所として活用可能な施設は低減係数に無頓着、御構え無しに選定しているから屋内退避による追加被曝の減少量は小さいだろう。確定的影響もそれほど小さくならないだろう。低減係数と意味は同じ線量透過率で見ると、コンクリートの厚さ50mmのALCパネルを用いた家屋でも0.97である。
この新鮮空気の確保するための換気で、原発事故時には放射能入りの大気が入る。
粒子状のエアゾル状の放射能の摂取を少なくしたい。方法の一つは、屋内退避(籠城)の家屋での1人当たりの気積を大きくする。大きくなれば濃度が薄まる。日本では30坪程度の住宅の気積は約240立方m、ここに8人が屋内退避(籠城)すると必要新鮮空気量=約30立方m/時×8≒240立方mだから1時間に1回換気が必要だが、4人なら0.5回と少なくなる。アパートなど借家は特に小さく約110立方mだから、日本では使えない方法だ。(床面積は持ち家は124平方m、借家46平方m。高さは建築基準法で2.1m以上、住宅公庫の融資では、マンションなど共同住宅は平均2.3m以上)
もう一つが、マスクなどを用いる。その尺度が防護係数(protection factor:PF)。
防護係数(PF)=環境中濃度(C0)/呼吸保護具内濃度(Ci)
あるマスクの防護係数が40であれば、そのマスクを着けないときに比べ、着けたときの摂取量は1/40に低下することを意味する。この係数が大きいほど防護効果は大きいことを表す。
ただ、事故炉から出てくる放射性微粒子の大きさが問題。チェルノブイリ事故で日本まで飛んできた微粒子は、セシウム137の場合0.4μm ~0.8μm。PM2.5は2.5μmだからかなり小さい。逆にこれより大きい微粒子は途中で落下沈下したとみられている。
参照・・http://www.mri-jma.go.jp/Dep/ap/ap4lab/recent/ge_report/2005Artifi_Radio_report/Chapter2.htm
「避難には被曝による確定的影響Aを免れる効果と確率的影響(b1+b2)を免れる効果と屋内退避(籠城)による健康影響等のリスクDを避けるプラスの効果があるが、避難中の事故のリスクCなどのマイナスの効果もある。」
「屋内退避(籠城)は、確定的影響Aを免れる効果と追加被曝を減らした分だけ確率的影響を低減b1する効果と避難中の事故のリスクCを免れるプラスの効果があるが、追加被曝を減らした分だけ小さくなった確率的影響b2を被るリスクと屋内退避(籠城)による健康影響等のリスクDなどのマイナスの効果もある。」
屋内退避(籠城)>避難
(A+b1+C)-(b2+D)>(A+b1+b2+D)-(C)
(A+b1+C)-(b2+D)-(A+b1+b2+D)+(C)>0
A+b1+C+C-(b2+D+A+b1+b2+D)>0
2C-2(b2+D)>0
C>b2+D
避難途中でブルームに襲われた場合
「避難途中でブルームに襲われて追加被曝αを受けた場合は、確定的影響Aを免れる効果と避難しなければ受けた確率的影響Bを免れる効果と屋内退避(籠城)による健康影響等のリスクDを避けるプラスの効果と避難中の事故のリスクCと追加被曝α確率的影響bαを被るマイナスの効果もある。」
「屋内退避(籠城)は、確定的影響Aを免れる効果と追加被曝を減らした分βだけ確率的影響を低減bβする効果と避難中の事故のリスクCを免れるプラスの効果があるが、追加被曝を減らした分だけ小さくなった確率的影響[B-bβ]を被るリスクと屋内退避(籠城)による健康影響等のリスクDなどのマイナスの効果もある。」
屋内退避(籠城)>避難
(A+bβ+C)-([B-bβ]+D)>(A+B+D)-(bα+C)
(A+bβ+C)-([B-bβ]+D)-(A+B+D)+(bα+C)>0
A+bβ+C+C+bα-([B-bβ]+D+A+B+D)>0
2(C+bβ+bα/2)-2(B+D)>0
bα/2+C>[B-bβ]+D
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