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なし崩しに石棺化?”転進”へ・・NHK報道(2)の2、東電シナリオの指鹿為馬ぶり 加筆 [東電核災害の検証]

NHK報道の怪

2015年3月11日、東電核災害発災から4年後、「NHKが水で満たさず核燃料を取り出す 方法検討」と題するニュースを報じた。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150311/k10010011951000.html これには、水無月さんのツイートのまとめがある。http://togetter.com/li/794420

「水で満たさず核燃料を取り出す 方法検討」と、取り出す作業の時期まで冷却の水を入れ続けること暗黙の前提にしている。しかし既にデブリの冷却・除熱は、熱の力学的には水を使わなくても可能なのだからが、間違いである。そのことを「NHK報道(1)」で触れた。http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-03-17

東電事故シナリオは妄想 
 東京電力のMAAPを使った事故シナリオでは、デブリが水平に移動して格納容器を水平に横方向から破っていること(メルトアウト、シェルメルトスル)を説明できない。東京電力は、TIP(移動式炉心内計測装置)の案内管と主蒸気配管フランジのガスケット部からの漏洩、それによる炉圧の減圧を仮定、前提条件にしてMAAPコードを使った解析を行い、それを基にして事故経過、事故シナリオを組み立てている。
 地震後約3時間15分(18時頃)にメルトダウンが始まり、TIP(移動式炉心内計測装置)の案内管の損傷による漏洩口が地震発生から約4.4 時間後に120から140平方mmの漏洩口がD/Wにでき、減圧され格納容器が炉圧で破損(過圧破損)しない。それから、約1時間後の地震後約5.6 時間後にガスケット損傷が生じ1380から1500 平方mmの大きさの漏洩口ができる。ガスケット損傷で増えた漏洩口からの漏洩で炉圧は下がる。炉圧を7MPa(a)にしていた蓄積された崩壊熱が原子炉RPVから格納容器PCVに移る。それで、メルトスルーは地震発生後約 15 時間(3月12日5時40分頃)になり、直後からの消防車による注水などの水によるデブリ冷却があって、メルトアウトはおきない。それは、間違っていた。悪く言えば妄想であった。詳しくは http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15
 東電の唱えるTIP(移動式炉心内計測装置)の案内管の損傷と主蒸気配管フランジのガスケットの確からしさを見てみる。
TIP(移動式炉心内計測装置) 
原発運転に必要な原子炉内の出力の様子や分布を探ることは、起きている核分裂の様子を探ればよい。核分裂の様子は、生じる中性子やガンマ線の強さを測ればよい。そのための計測器(局部出力領域モニタ)は原子炉内に多数設置してあるく。これらの計測器は、使用と共に中性子やガンマ線を浴びて感度が減衰する。その感度の変化具合を調べ、測定値を正す(ゲイン校正)が必要になる。感度が既に分かっている測定器を原子炉外から原子炉内に送り込んで、局部出力領域モニタと同じ場所を同じ時刻に測って、両方の測定値を較べてみる。その装置が Traversing in-Core Probe 移動式炉心内計装装置、略してTIP。その計測器を炉心内の各位置に設置された校正用導管までの移動を導く管を案内管という。(2号機の調査時の資料などからの抜粋を見てください。)
TIP概略.jpg

NRCも取り上げたTIP損傷
 TIP(移動式炉心内計測装置)の案内管は、原子炉格納容器・PCVの外にある中性子モニター装置室(通称・TIP室)から原子炉・RPVに直接入っている管である。原子炉内の端は閉じられている盲管で、TIP室側は格納容器隔離弁(ボール弁)などがあり端を開閉して、原子炉側と隔離するようになっている。この管が原子炉内の部分が溶融核燃料で溶けて破れると原子炉内の水蒸気・放射能・水素などのガスが管内を通る。隔離弁などで隔離される仕組みになっているが、不完全なら直接PCV外の中性子モニター装置室(通称・TIP室)に放出される。NRC米国原子力委員会のシビアアクシデント研究SOARCAは、TIPの案内菅を通じた漏洩を考えて発生するとして漏洩量などを評価している。
 東京電力は、「炉心最高温度が1427℃(SUS 融点)に達するタイミング(地震発生から約4.4 時間後)」に、格納容器PCVのD/W 内に120から140平方mmの損傷から漏洩が生じると仮定している。(SUS・・Steel Used Stainless の頭文字から 錆の少ない錆びにくい用途の鋼材の略記、サスと読む)ちなみに1円玉の円の面積は314平方mmあるから、1円玉の半分以下の面積の損傷である。

ここがおかしい
 平均温度が融点の1427℃になるのは約4.4 時間後だろうが、炉心の様々な場所にある案内菅付近がそうなるのはバラバラで早く損傷するところがあるだろう。東京電力も平成24年3月19日の原子力学会や2012年3月の解析では700℃も低い「炉心部の温度が727℃(1000K)に到達した時点で、漏えいが発生する」と設定して報告している。 http://www.aesj.or.jp/information/2012spr_spsession/3-3miyata.pdf

融点を損傷温度と設定することは、熔解による破れだけを考えることになる。高温に晒された時にはクリープ破損がおこる。クリープ(creep)とは、高温下において(一般的に材料の融点・絶対温度 Kの1/2の温度以上)、物体に一定の荷重(応力)を加えることで、時間とともに物体が変形していくこと。TIP案内管は沸騰する水からの圧力変化で生じる力、揺れを常に受けている。577℃(850k)以上ではクリープ破損の可能性がある。2012年3月の解析条件「炉心部の温度が727℃(1000K)に到達した時点で、漏えいが発生」がより妥当である。

漏出個所は案内管の出口であるTIP室に放出・漏洩すると考えるれるし、実際起きて2号機、1号機でそれによる高い汚染が確認されている。

 しかし、その中間の格納容器PCVのD/W 内に漏洩口が生じるというのはどうだろう。非常用復水器・ICの原子炉への戻り配管は、再循環ポンプに接続している。再循環ポンプは数十トンもあり、なおかつ、空中にぶら下げられている。地震時にポンプが揺れる。それで、戻り配管に微小な損傷、ヘアークラックが生じる蓋然性は高い。全てのヘアークラックの損傷面積が30平方mm以下であれば、原子炉圧力及び原子炉水位の測定値と解析は、良い一致を示している。しかし、東電は否定している。
 TIPの案内管は格納容器PCVのD/W 内を通過しているだけである。ポンプなどはない。損傷する可能性はもそり配管に比べ極めて低い。地震時に再循環ポンプが揺れ動いてもIC戻り配管に30平方mm以下の微小な損傷が生じていないと東京電力は評価しているのだから、ポンプなどが無い格納容器PCVのD/W 内のTIPの案内管にその4倍強の120から140平方mmの傷が生じたと言えるのだろうか。論理的科学的に道筋の通った考え方をするのなら、無理だろう。
 格納容器内の案内管接続部のシール材損傷による漏洩を考えているが、シール材損傷は次に検討する主蒸気配管フランジのガスケットの損傷と同様の理由でその程度、損傷面積が判らない。
LPRM案内管
 TIP案内管の内径は約7mmで断面積は約38平方mm、それを外包する局部出力領域モニタLPRM案内管の内径は約16mmで断面積は約200平方mm。それが各々31本(2号機)ある。TIP案内管が溶融核燃料で熔けて穴が開き損傷するなら、TIP案内管を外包しているLPRM案内管も同様にTIP案内管より前に溶けている。LPRM案内管は格納容器外には通じていないが、原子炉PRVの底から格納容器内に出ている、外径約25㎜、肉厚は約4mmである。その中に約7MPaの高圧高温ガスが入ることになる。

MAAPの新バージョンMAAP5.01では、 原子炉圧力容器PRVと格納容器PCVの圧力差・差圧による貫通管の逸脱・脱落をメルトスルーの発生するモデルに組み入れている。逸脱しなくても、その圧力にLPRM案内管の底部は持ち堪えられるであろうか。約7MPaは水深700mの海底の水圧である。微細な割れ目が生じるのではないか。そこから漏洩が起きるだろう。(NRCのSOARCAは格納容器PCV外への漏洩に着目しているので、LPRM案内管は外へ通じていないから取り上げていない。)

 こうした事を考慮すると、どれ位の損傷・漏洩口が何時に生じると予測できるのだろう。東京電力はどうやって何を根拠に「炉心最高温度が1427℃(SUS 融点)に達するタイミング(地震発生から約4.4 時間後)」に、格納容器PCVのD/W 内に120から140平方mmの損傷から漏洩が生じるという設定条件を引っ張り出しきたのだろう。

ガスケット
主蒸気配管フランジのガスケットは、4 つの逃がし安全弁(SRV)と3 つの安全弁(SV)にある。仕様ではSRVガスケット.jpgSRV の蒸気の最高温度は302℃であり、その302℃までの密閉機能、シール機能は試験され確認されている。それ以上の温度ではどうなるか。東京電力は使われている膨張黒鉛ガスケットの耐熱温度が約450℃程度であるから450℃程度の温度環境でシール密閉機能を喪失する、燃料溶融で高温化した「炉内ガス温度が450℃程度となったタイミング(地震発生から約5.6 時間後)」で、1360から1500 平方mmの損傷が生じると主張している。ちなみに、500円玉の丸い面積は550平方mmだから、2から3個分の面積である。

 東京電力は逃し安全弁SRVや安全弁SVの入口フランジと出口フランジに各々付いているガスケット計14個を漏洩個所として挙げているが、出口フランジには弁が開いた時にしか高温高圧ガスは流れず高温にさらされない。対して入口フランジは常時晒されている。「炉内ガス温度が450℃程度となったタイミング(地震発生から約5.6 時間後)」で入口フランジのガスケットは7個すべてが損傷し漏洩箇所になり得る。出口フランジは偶々その時に弁が開いていた箇所しか高温高圧ガスは流れず、ガスケットもその箇所のものに限られる。1号機のSRV 1台当たりの約260トン/時(定格蒸気流量の約10%)を吹出する性能だから、弁が開いていたのは多分1ヵ所である。東京電力は8個のガスケットに1380から1500 平方mmの損傷が生じると主張していることになる。1ヵ所平均で180平方mm。

 JNES原子力安全基盤機構(経産省系) は、漏洩面積800平方mm以上の蒸気漏えいが発生すれば、SRVの作動に至らないとしている。JAEA日本原子力研究機構(文部科学省系)の解析では9トン/時(1秒間に2.5kg)の水蒸気が漏洩すると炉圧が約7MPa(a)、SRV の安全弁モード設定値付近に維持される。これは漏洩面積では約300平方mm。

 どちらの数字を見ても、この「炉内ガス温度が450℃程度となったタイミング(地震発生から約5.6 時間後)」からは、炉圧の上昇はない。下図は平成25・2013年に作られたはガスケット損傷を仮定した場合の炉圧の推移グラフである。赤丸で示される2回の実測を巧妙に結んでいる。

SRVガスケット破損場合の炉圧.jpg

判らぬものを判ったふり
 しかし、損傷・漏洩の程度は不明である。東京電力は損傷するとしているSRVやSVの入口フランジと出口フランジに各々付いているガスケット、計14個のガスケットは個々の使用開始時期、使用期間も違う。仕様の最高温度302℃まではシール機能を保つだろうが、それよりも高温では性能は個々バラバラである。435℃程度でシールが破れるもの、440℃程度の物、445℃程度のもあろう。460℃まで持つものもあろう。加わる内外の圧量差に対する反応も違うであろう。約7Mpaの格納容器との圧力差がかかる400℃でも破損するが、6Mpaに戻るとシール機能が回復するものもあれば、元に戻らないものもあろう。その程度、面積もバラバラであろう。仕様よりも高温域での14個あるガスケットの個々の性能を把握して無ければ、損傷程度、漏洩面積の算出は無理である。

 東電は、どのような理由で「炉内ガス温度が450℃程度となったタイミング(地震発生から約5.6 時間後)」に「1360から1500 平方mmの損傷が生じる」としたのであろうか?それで、上のグラフをえがいたもであろうか?

指鹿為馬な東電シナリオ
 東京電力が挙げた漏洩ルート、TIP(移動式炉心内計測装置)の案内管と主蒸気配管フランジのガスケット部から漏洩は生じたろうが、それらの発生時刻、程度を東京電力はご都合主義的に決めて評価している。その都合とは、国会事故調の「SRVが作動しなかったのは地震による配管破損で生じた冷却材漏えいのために原子炉圧力がSRV の作動設定圧以下に維持された可能性がある」の指摘を否定することである。地震による配管破損は生じてはならないからである。原発の耐震性が不十分である事を意味し全原発に波及するから、疑問を持たれてもいけない。そのご都合に合わせたのである。黒を白にしたのである。

 この二つ、TIP案内管と主蒸気配管フランジのガスケット部から大量の水蒸気の漏洩を前提とする東電事故シナリオでは、メルトスルーは12日5時40分頃になる。しかし格納容器のD/W圧力推移から12日の5時14分頃にメルトアウトしたとみられる。東電シナリオの鹿をさして馬とした結果である。
水素爆発
 NRC米国原子力委員会のシビアアクシデント研究SOARCAは、メルトアウトすると原子炉建屋に漏れた水素が爆燃を起こし、最上階のブローアウト・パネルと天井が爆圧で壊され、大物搬入口の扉がこじ開けられるとの解析結果が記されている。この報告書のドラフト(原案)は2010年10月の発行されている。4か月後に福島第一の1号機はメルトアウトし、その後の水素爆発で最上階が吹っ飛んでいる。

 それでは、どのような事故経過が考えられるか。続く


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