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フクイチ1号機の再循環系の損傷→耐震性の再検討を 核災害への備え⑯-1 [東電核災害の検証]

東電フクイチ核事故の解明が進んでいますが、東電・柏崎刈羽原発の設備的危険性を暗示するようなことが出てきました。一つが、再循環系の地震での損傷。一つが、再循環ポンプのメカニカルシールからの炉水の漏洩です。原発の圧力容器内にある核燃料と接している、つまり放射能で汚染されている炉水が地震・津波で漏れ出すのです。一つは、消防車で注水する消火系の耐震性や耐圧性が低い。

BWRの泣き所 中空に吊り下げられた約60トンのポンプ

東京電力、東北電力などの沸騰水型原発・BWRでは、原子炉の冷却&中性子減速用の水を強制循環させて炉心(核燃料)で発生する熱を取り出すため、原子炉圧力容器内に収納したジェットポンプと原子炉圧力容器外部に設置した再循環ポンプとを組み合わせた再循環系統設備(再循環系ループ)があります。再循環系統は、東電フクイチや柏崎刈羽の1~5号機では再循環ポンプ2台(2ループ)とジェットポンプ20台で構成されています。(柏崎刈羽の6、7号機はABWRという再循環系が原子炉圧力容器内に内蔵されているタイプ)
 炉心を循環する水のうち、約3分の1はこの再循環系ループに取り出され、再循環ポンプで昇圧された後、ジェットポンプの再循環水入口ノズルからジェットポンプに押し込まれ、残りの約3分の2の水をジェットポンプで吸引し、混合されて炉心に流入します。

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 圧力容器外部にある再循環ポンプはポンプ本体とその内のスクリュー軸を回転させ駆動する電動モーターからなります。合せて約60トンあります。4本ほどのコンスタント・ハンガー(バネ付きの支持材)によってこの巨大なポンプは中空に吊り下げられています。固定できないのです。ポンプ配管には運転中には約290℃の炉の熱水が通りますから、熱で伸びます。鉄道の線路のレールはそうした延び縮みを、レールとレールの間に隙間を作って吸収しています。再循環系は中空に吊り下げて対応しているのです。

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 地震の際には中空に浮かんでいる数十トンの再循環ポンプがユラユラと揺れます。上下に左右に前後に動きます。メカニカル防振機が各箇所に設置されていますが、設計想定を超える地震動がおそった場合には、このメカニカル防振機の性能を超えることとなります。その際、吊り下げているコンスタント・ハンガー(バネ付きの支持材)が持つだろうか。設計想定を超える揺れ幅で、配管にヒビが入る、切断されるのではないか。傷ついた、破れた配管から炉の熱水が70気圧の高圧で噴出し、約290度もあるから高温の蒸気になります。放射能を帯びた高温水蒸気が格納容器内に満ちるし、原子炉圧力容器の冷却&中性子減速用の水が減ってしまいます。

設計想定内の地震で重要機器に損傷

 今回の東電フクイチ核事故でも、1号機ではデータから小破断が起きていると指摘する専門家がいます。
 3.11の大地震で振動だけでなく、地盤沈下、フクイチの地盤は概ね水平方向に 2メートル20センチ(東に変動)、垂直方向に 40センチ(沈下)しています。これらで、原発の建屋は無数のヒビが入って、その証拠に1日に300~600トンの地下水が地下階に流入しています。建屋内部の機器もそれで、破損していると考えられます。
 1号機では、地震後に2,3号機に比べ原子炉格納容器内の温度が急上昇しているので、微細な傷から原子炉圧力容器内の高温高圧の炉水が漏れていると原子炉専門家の田中三彦氏は指摘しています。

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 この指摘を受け国の保安院が行った評価では、亀裂などで炉水が漏れでる「漏えい面積が0.3平方センチ以下の場合は、原子炉圧力や原子炉水位の応答の実測データとの差はほとんど無い。」と田中氏の指摘を否定できず、事実上認めました。0.3平方センチというとごくわずかですが、炉水は約70気圧ありますから1時間に約7.2トンの約290℃の炉水が噴出するのです。 
東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会(第4回)及び建築物・構造に関する意見聴取会(第5回) の資料3-2 福島第一原子力発電所1号機非常用復水器(IC)作動時の原子炉挙動解析

 圧力容器の高圧高温の炉水・蒸気が流れる配管・ポンプは原発の世界でも特に注意される部分で圧力バウンダリ(境界)と呼ばれます。「ヘアクラック(髪の毛のひび)」が注意される機器です。高圧高温の炉水はヘアクラックでも大量に噴出し、その際傷口を広げることもありますし、炉水が減り水面が下がり核燃料棒が水面上に出れば溶融が始まるからです。

 圧力バウンダリは建築基準法に基づく一般建築物の3倍の地震にも耐えるよう設計されています。3.11の大地震の揺れは、想定内に1号機では収まっています。その想定内の地震で、重要な圧力バウンダリに亀裂が入ったことになります。今回は0.3平方センチ以下でしたが、次回がこの程度で済むとは限りません。これを東電や保安院が認めると、全ての原発で設計想定内の地震で亀裂が入る可能性があると認めることになります。設計想定以上の地震にどれだけ耐えられるかというストレステストは全く無意味になります。定期検査後の再稼動は、夢のまた夢。

 それで、東電も保安院も今回の核事故の原因は、地震ではなく津波。みんな津波が悪い、東電も保安院も悪くない(だから補償も見舞金程度で十分)という姿勢です。

 東電は2、3号機のメルトスルー時には格納容器のドライウエルの下部に大量の水が溜まっていた。この水は津波で再循環ポンプから漏れ出た炉水だとしています。これも、みんな津波が悪いという偏向した評価推定で、詳しく検討すると中越沖地震後に再稼動した柏崎刈羽1、5、6、7号機の耐震性に疑問符が付く事態に思えます。
 続く


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