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二巡目検査で早くも4人の小児甲状腺癌!? 福島県 [被曝影響、特に甲状腺]

2014年10月31日までに小児甲状腺の検査が12月25日発表された。25日の福島県県民健康調査検討委員会で公開された。資料はhttp://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-17.html
約36万7千人を対象に2011年10月9日スタートした一巡目で、約29万6千人が受診し細胞診断で109人が検出された。その内85人が手術を受け、一人が良性、84人が悪性と術後病理検査で確定している。24人が細胞診での悪性であるが、病理検査では未確定である。残念ながら85人中84人が悪性であるので、恐らく甲状腺癌であろう。
 二巡目は2014年4月2日に開始された。本年度は一巡目で2011~2013年3月末までの検査対象とされた25市町村の約22万人を対象としている。10月31日までに2011年度の飯館村、南相馬市などと福島市、二本松市などで進み、郡山市などがようやく緒についた。10/31までに60048人が一次検査結果が確定しており、二次検査は457人であった。一巡目と同じような比率である。155人が二次検査結果が確定している。それで細胞診断は11人で行われている。そして4人が細胞診断では悪性であった。1万5千人に一人の割合である。
過剰診断002.jpg
一巡目はトラ刈り 
 この4人が、一巡目のスクリーニング検査で見落とされた人らであろうか。スクリーニング検査を行えば、理論的に検査直後に検出される例は極端に減る。スクリーニングで症状が顕われる前に検出してしまうからである。これを”刈り込み効果”ともいうらしい。見落としで”トラ刈り”だったら、こうはならない。(図参照→)

 25日の検討委でその点を尋ねられた。4人は一巡目の検診を受けていた。鈴木真一・福島県医大教授は4人の「一巡目の超音波画像を再検討したが、見逃しではなかった。」つまり”トラ刈り”ではない。
 

 そうであるなら、本来、見つかるはずのない起こるはずが無い事が起きている。発症前のものも一巡目のスクリーニング検査で検出されている、Overdiagnosis 過剰診断である。約2年後では進行の遅いといわれる甲状腺癌は、検出されるはずが無いのだ。

 この事態で、一巡目の検査だけで暫く見つかるはずが無いから検査を暫く休止しようとする論議は、現実の前に敗れた。また健康調査の性格を、学問的な疫学的追跡調査とするよりは、正に県民の健康状態を調べ手遅れにならない内に医療を措置するための調査とすべきであることを示している。そのための広報、充実や医療との接続に取り組むべきである。
この4人は、一巡目では結節やのう胞を認めなかったA1が2人、5.0 ㎜以下の結節や20.0 ㎜以下ののう胞があったA2が2人であった。A2の結節やのう胞がみつかった場所とは別の場所から結節が検出されている。(のう胞が20.1mm以上の二次検査は川俣町の1例のみである。川俣町では細胞診断から悪性ないし悪性の疑いは1例も無い。従って結節が見つかっている。)だから、一巡目で見つかった結節が増殖した例はない。4人とも一巡目以降に増殖した甲状腺癌である。
大きさは7.0~17.3mm(平均は12.0±4.4mm)。2人は10mm以下の人(鈴木教授)。
一番大きい17.3mmの人は、検査間隔は2年以上から。二巡目検査のH26年度の対象は、一巡目はH23年10月から平成25年3月31日に検査の地域。
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倍加時間(DT) 
細胞分裂は1個が2個になる、倍々ゲーム。1000個の癌細胞の槐が2000個になるに要する時間を倍加時間(DT doubling time)という。細胞分裂に要する時間(細胞周期)は6から10日である。細胞周期が倍加時間と等しければ、癌細胞は約半年180日で1cm位の癌になる。約8ヶ月240日で直径3cm超になって我々は鬼籍に移っている。そうはなっていない。癌細胞が細胞分裂で増えても、免疫細胞に拠ってアポトーシスを誘導されて、アポトーシスが強制されて自死してしまうからである。免疫細胞の監視を掻い潜って、倍になる時間が倍加時間(DT)になる。凡そ30~34回のDTで1cm位になる。1mm位には約20回のDTである。
 一巡目の検査、超音波診断では、どれ位の大きさから有るとわかったのだろうか?結節超音波データは「3.0mm以下」と「なし」で整理集約されている。「3.0mm以上は大きさも言えるが、それ以下はいえない。」のだろう。「あり」も1mm程度なら大きさはいえないけれど有るのはわかる、0.1mmでは分からないこともといったところなのだろう。
 一巡目では、0.1mm程度(DT=10回)だった癌塊が、約2年でDTが20回程度、合せてDT=30回程度にふえて10mm程度の癌塊になりましたというシナリオが考えられる。倍加時間が35日程度の場合。ほかにも2011年3月11日直後の被曝で、DTが2年程度の癌細胞ができた。これは長崎広島の被爆者に被曝後60~70年後の今日も甲状腺癌のリスクが高いことから、起こりうることだ。その被曝後も年間の被曝線量が高い地域に住むことで更にDTが短縮する、2年が24日になる突然変異が起きてしまった。などが考えられる。
高線量環境で暮らすリスク 
このような甲状腺の細胞での影響だけではない。アポトーシスを癌細胞に強制する免疫系、免疫細胞での被曝影響が考えられる。発災後も高線量の地域で暮らすことで、免疫細胞の働きが低下する。発災時の高い被曝の後、年間に1mSv以下の被曝環境では強制アポトーシスが働いてDTが1年程度の甲状腺癌が、5mSvとか19mSvといった高線量の環境下では強制アポトーシスが低下してDTが短縮してしまうことが想定される。チェルノブイリ事故では年間5mSv以上では強制移住が採られたが、東電核災害では採られていない。

チェルノブイリ事故では、被曝被害に調査に甲状腺の超音波検査の機器は1986年4月の発災から3~4年後になってから導入された。もともと超音波検査は検査者の手技・技能によって結果が大きく食い違うから、欧州や米国では一般的ではない。89年から90年にかけて寄贈や日本財団からの支援などで機器が入っている。日本財団は最初の3か月は日本から医師、臨床検査技師、放射線技師を派遣して現地の医師、技師に扱う技能・手技を教えている。それまでは触診である。精度が全く違う。発災から3年、4年間の間のデータは東電核災害の方が精度は高い。

 また「韓国を含む東アジアの国民が遺伝的に甲状腺がんを発症しやすい」ことが知られている。
東アジア01.jpg 

チェルノブイリの経験から「発災から4年後、5年後に小児甲状腺癌は増大する。だから東電核災害でも2011年3月から2015年3月、2016年3月までの間には発災での被曝影響での増大は起こらない」という見解が、健康調査検討員会などの公式見解で述べられている。この見解は、被爆者の遺伝的背景の違い、発災後の環境の違い、調査精度の違いを無視した非科学的、非論理的なものだ。
論理的に考えれば 「何らかの要因に基づく過剰発生」
調査結果を虚心にみれば、小児甲状腺癌は多発している。被曝の影響かどうかは別にして、小児甲状腺癌は多発している。東電核災害後に多発している。放射能が流れた福島県以外の地域はどのような影響が顕れているか。福島県でこれだけ多発しているのだから、健康状態を調べ、手遅れにならない内に医療を措置することが必要である。被曝の影響であると確定できなくても、社会的に必要がある。
 しかし、事態を直視せずに非科学的な見解を基にして対応している。多発は被曝の影響でないと理屈付けをしている。検討委員会の津金委員(国立がんセンター)は、「現在診断されている甲状腺がんの多くは、非常にゆっくりと大きくなる、そのままの大きさで留まる、あるいは、縮小して行くなどのシナリオが想定される。」と放置を提言している。
 津金委員は国立がんセンターがん統計研究部の推計から「新たな甲状腺がんは検出されない(将来診断される甲状腺がんを全て検出した)と仮定」すると、次のような見解を導いて、11月に公表している。
⒜「今回の検査がなければ、1~数年後に臨床診断されたであろう甲状腺がんを早期に診断したことによる上乗せ(いわゆるスクリーニング効果)だけで解釈することは困難である。」推計からは福島の28歳までの甲状腺がん有病者は、女性26人、男性7人で33人。しかし検出は100人以上。

 だから80~70人は⒝「何らかの要因に基づく過剰発生」か、(C)「将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることがないがんを多数診断している(いわゆる過剰診断)かのいずれかと思われる。」
 そして、同日に鈴木真一福島医大教授の説明で(C)は覆る。教授から55人の手術について説明があった。このうち「甲状腺外浸潤 pEX1 は37%に認め、リンパ節転移は74%が陽性であった。」つまり多数の74%は「将来的に臨床診断されたり、死に結びついたりすることがないがん」ではない。
従って、論理的には⒝「何らかの要因に基づく過剰発生」である。次の課題は学問的には要因の解明、社会的には過剰発生している癌患者への医療への提供と新たな発生の予防である。
 
脳が硬化症? 
 しかし「過剰発生については、・・がんの要因と発生との間には、ある程度の年数を要することが明らかになっている」発災から4年後、5年後に小児甲状腺癌は増大するので、「2011年の震災以降に加わった何らかの要因が、2014年迄に診断された甲状腺がんの発生率を高めていると解釈することは困難である。」と否定している。潜伏期間4年から5年はチェルノブイリ1986年の経験による。その後の研究成果も取り入れたCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のWTC Health Programは、「被曝による甲状腺癌の最小潜伏期間は2.5年。小児甲状腺癌は1年。」という値を採用している。http://togetter.com/li/726797
小児甲状腺癌の最小潜伏期間は1年とすれば何の不思議もない。潜伏期間4年から5年間に拘って、その観念で頭が硬直して事態を直視しようとしない。

 
 そして津金委員は何の根拠も示さずに「現在診断されている甲状腺がんの多くは、非常にゆっくりと大きくなる、そのままの大きさで留まる、あるいは、縮小して行くなどのシナリオが想定される。」という。名指しこそしていないが、手術を受けてリンパ節転移を除いた74%の子供、親御さんに何の根拠も示さず、無責任に手術不要をいう。津金委員は、何の根拠も示せないのに、二巡目に見つかった4人の子供らや親御さんに言える事か。この無責任ぶりには、開いた口が塞がらない。親御さんらにぶちのめされないかと心配である。
 12月25日に検討委員会でも、6万人検査で4人、つまり通常は10万人単位、100万人単位で表すからそれに表現を直すと10万人当り6.7人、100万人当たり66.7人であり、全国では年間で100万人当り1~2人だから、明らかに異常な状態である。しかし鈴木教授は「まだ4名ですので」と軽くいなしている。星座長は「放射線の影響とは考えにくいという見解を変えるつもりはない。」。それならば過剰発生の要因を考え、必要な対策、医療体制の充実や予防策を考え、提言することこそ福島県県民健康調査検討委員会の役割ではないのか。


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戸谷 浩史

「東電核災害後に多発している」 資料が示されていなかった。
多発という比較の言葉が入れられた以上 「東電核災害前」 の特定地域の全数検査、しかも同基準の検査の資料が必要。

「高線量環境で暮らすリスク 」 という 「高線量」 とは何を基準にしたんですかという説明が必要。中線量はどれくらいで、低線量はどれくらいで、その根拠は何ですかという。

「韓国を含む東アジアの国民が遺伝的に甲状腺がんを発症しやすい」
は 「21-23 Feb. 2014, the International Workshop on Radiation and Thyroid Cancer was held in Tokyo.」 の資料だろう。
東アジアだとみんな同じなんですかという疑問もあった。

年間 19 mSv で 「強制アポトーシスが低下してDTが短縮してしまうことが想定」 というのは、だれが想定して、その動物実験でもあったんですかという疑問もあった。
まさか人でしか、かくにんできないはずはない。それなら何十年間も関係なく、ねずみの実験でも確認できるはずなので。

ちなみに
『Ivanovらは、ロシアのBryansk地域の1986年から1998年までの
データを解析し、男女ともに甲状腺癌の罹患率が上昇し、特に女性
で顕著であるが、線量依存性が認められないことから、甲状腺癌罹
患率上昇の原因として放射線を除外している(放射性ヨウ素の内部被ばくをのぞく)』
https://www.nsr.go.jp/archive/nsc/senmon/shidai/hibakubun/hibakubun029/siryo2-3.pdf

東電核災害では 「精度」 を理由として、検査の信頼性が高いものと評価されたが、それなら、その精度の低かった、その前と比較されたその記事は、他者を 「非科学」 「非論理」 と一方的に批判しておきながら、そもそも記事自体に矛盾があり論理として成立していない。
by 戸谷 浩史 (2015-01-18 11:33) 

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