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清水社長(当時)ヒアリング調書、不開示 隠される意思決定過程 加筆② [東電核災害の検証]

東京電力の清水正孝顧問の政府事故調調書(ヒアリング調書)の不開示決定が出された。
http://echo-news.net/japan/govt-denied-to-reveal-ex-tepco-presidents-hearing-while-passed-f1-manager-yoshida-docs-disclosed

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清水氏は2008年6月から2011年6月まで東電の社長を務めた。2007年の中越沖地震で停止した柏崎刈羽原発の再稼働、2011年3月の東電核災害の対応に当たった電力側の最高責任者である。

海水注水の遅れと清水社長 
3月11日は関西方面に「出張中」であり、12日の09時頃に帰社している。その間、本店の対策本部とは電話連絡をとっている。福島第一対策は本店の小森明生常務が取り仕切っていたが、両者は電話で連絡を取っていた。東電福島第一では、原子炉RPVと格納容器PCVに注入する淡水が枯渇していた。

 設計では復水貯蔵タンク(1900千㍑・1900㎥、2、3号機は2500㎥)が用意されていた。これでの注水は電動のポンプによる。SBO全交流電源喪失では復水貯蔵タンクの水はポンプは動かず注水に使えない。11日16時頃にはSBOが明確になった。残るはFP・消火系のディーゼルポンプFPD/Gによる、ろ過水タンクからの注水である。ろ過水タンクは、1~6号機全体でタンク2基(800千㍑・800㎥×2で1600㎥)が用意されていた。

 ベントのサブレッションチェンバーベントラインの水没防止のため、RPVとPCVへの総注水水量には上限がある。1号機は総量1700㎥、2、3号機は2300㎥と事故時手順書(シビアアクシデント)に記載されている。1、2、3号機全体では6300m³である。2基のろ過水タンクで賄えるのは1600m³であるから、4700m³不足である。

 吉田所長のヒアリング調書によれば、11日夕方頃、ろ過水タンクから消火系配管には複数の破断箇所があり、複数の消火栓から水が噴き出していたとの報告があった。そのため、19時頃、東電社員からなる自衛消防隊は、ろ過水タンクの元弁を一つ残して閉める処置を施している。ろ過水がどれだけ漏れ出し、どれ位残っていたのか??つまり11日の19時頃には、4700m³以上の淡水が不足なのは、原子力工学の知識がなくとも自明であった。

 技術的には海水で代替できる。しかし、海水を注水すれば廃炉になる。メルトダウンは防げても廃炉になる。従って、経営的には大問題であり、現場サイド・吉田所長だけでなく経営サイドの決断を要する。東電の事故時手順書では中央操作室運転員だけでは決めず、発電所対策本部にお伺いをたてることになっている。
事故時手順書(兆候ベース)では、代替注水系にRHRS・RHR海水系が挙げられている。注意書きに「RHR海水系による海水注入は、緊急時対策本部(TSC)相談の上実施する。」とある。

 その発電所の緊急時対策本部・吉田所長が決定する手順は決められていない。海水注入の意思決定手順はなかった。1号機への注水は11日夜半には必要な状況である。原子炉建屋を入域禁止にした11日23時頃から12日の午前0時頃には放射能漏れを認識している。原子炉圧力と格納容器圧力がほぼ等しく0.8MPaになって損傷燃料で原子炉から格納容器圧力が漏れるような貫通が生じた12日の午前2時45分頃にはメルトスルーを認識している。注水の準備作業で時間がかかるからから、経営サイドの海水注水の意思決定「メルトダウンをしていなくとも海水注水を行う」意思決定は早ければ早いほど良い。

 それで、小森常務は清水社長に話した、お伺いを立てたと事故報告書にはある。(国会事故調)しかし、清水社長は話はなかったと言っている。彼は海水注水の件を帰社後に知り、12日昼頃に了解したことになっている。それから、吉田所長は海水注水の準備に着手している。海水注水に必要な消防ポンプ・消防車は午前7時には、自衛隊の消防車2台と発電所の1台で揃っている。東電福島第一原発の5、6号機側にあった消防車も点検後使用可能な状態であった。このように海水注入が12時間以上遅いタイミングで行われた。そうした結果はどうなったかはご存じのとおり。

 また12日の10時52分頃、柏崎刈羽原発の消防車1 台が到着した。これを3号機に差し向け、注水を構築ができたろう。これで炉への注水は確保できたろう。これまた遅れている。そうした結果はどうなったかはご存じのとおり。

 そして13日には吉田所長は2号機への海水注入にあたり、武藤副社長に保安院、官邸の了解を得ることを依頼している(東電TV会議、3/13の13:17)。もう既に1号機で海水注水が行われている。東京電力として意思決定がされていれば不要である。これは東電経営サイドの海水注水の意思決定が行われていない事を示している。

東電の意思決定過程が闇に中に

 本店の対策本部・小森常務が何時に海水使用の必要性を認識したのか、何時海水注水を東電経営サイドが了解したのか、何故に11日早朝に海水注水に着手されなかったのか等の疑問を明らかにする必要がある。泉田新潟県知事は、東電核災害の究明、工学的な面だけではなく意思決定の面も解明が必要と言っている。当然である。そのためにヒアリング調書は重要な手がかりである。政府は亡くなった吉田所長の調書は公開したが、清水正孝元社長(現在顧問)の調書は不開示とした。
 今回の不開示決定は、意思決定を闇の中に葬るものである。新潟県民は、このような不十分な解明では再稼働の話を聞くことさえできない。「一昨日来やがれ」

 泉田知事の発言
12月26日
【原発】東電幹部らの事故調書の公開は同意が得られず、年内公表に至らずとのことです。http://bit.ly/1BaoHdF  
東電は、事故の教訓を生かすつもりがないように見えます。
https://twitter.com/IzumidaHirohiko/status/548314121775497217

1月5日
【原発】柏崎刈羽原発:再稼働・管理強化へ原電技術者受け入れ検討 http://bit.ly/13S2aav  ←福島事故の検証なしで、対策はできません。政府事故調の東電関係者の調書の公表もせず、社内でのけじめも行わずに、技術者の受け入れを進めても理解は困難です。
https://twitter.com/IzumidaHirohiko/status/551979073430241281

1月6日
東京電力の廣瀬社長から新年の挨拶をいただきました。県技術委員会での検証に疑問が残る中、今回の面談でも、政府事故調による東電関係者の調書の公開等に否定的で、事故原因の究明に極めて後ろ向きでした。
https://twitter.com/IzumidaHirohiko/status/552356825262485506


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