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米国、TMI事故から教訓のIVR原子炉容器内溶融保持 [AM-メルトスルー、CCI]

1979年3月のTMI事故では、炉心の少なくとも45%(約62トン)が熔融した。その内約19トンが炉心溶融物コリウムとなって炉の下部ヘッド(半球の底部)に落下したとみられている。それまでは、落下すると下部ヘッドは破損し溶融物デブリはPCV格納容器に出ると考えられていたが、TMI事故では起きなかった。これで、事故時の放出放射能の種類、量が大幅に減った。
 このような状態、溶融炉心がRV原子炉内にとどまる状態、In-Vessel Retention 内―容器―保持、IVR原子炉容器内溶融保持、この状態を人為的に作り出せれば、TMIのように事故時の放出放射能の種類、量が大幅に減らせるだろうと考えられた。
 1985年からの米国のDOE(エネルギー省)とEPRI(米国電力研究所)が共同で進めた改良型軽水炉(ALWR Advanced Light Water Reactor)開発計画では、TMI事故の解析、研究をもとに新たな原発の設計から米国原子力規制委員会(NRC)からの設計証明、最終設計承認(FDA)取得までが計画された。それでは、電力やデーゼルエンジンなどの動的なポンプ、モータなど機器を制御系で能動的に動かすシステムに代って重力等の自然力を用いたタンク、熱交換器、弁等で構成される受動的(静的)システムでの安全系「受動的安全系」の採用設計が柱の一つであった。
 これはシステム・機器の単純化による大幅な建設費低減と運転性、保守性の向上という目標達成のためでもあった。重力等の自然力を用いた受動的(静的)安全系は、原理的に電力等の動力供給途絶による不稼働の確率はゼロ、弁など機械的故障に不稼働の確率が極めて少ない。
14-0416-417.png

PWRでは、ウェスチングハウス社(WH社)が進めたAP:Advanced Passive 600 に米国の国費が投入された。AP600のシビアアクシデント対策には、IVR原子炉容器内溶融保持が導入された。それは、メルトダウンが起こったらその熱で溶融弁が開きタンクから重力で水を送り、RV原子炉を水に漬け状態にする策である。従来のタイプ、例えば日本のPWRはRV原子炉の周辺はガラガラに空いている。炉を金属壁で囲み、更にコンクリート壁で囲む配置設計で水漬を実現した。
 WH社は、IVRを採用した理由を3つ上げている。一つはシンプルな原理、受動的作動システム。一つは、溶融炉心によるPCV格納容器の浸食が起きない。つまりMCCIコアコンクリート反応が起きない。一つは、確率論的リスク評価PRAと確率論的安全評価PSAでRV原子炉の外に溶融炉心が出た場合のリスクが重大であることが示されている。原子炉容器内に溶融物が保持されれば放出放射能の種類、量が大幅に減らせる。
AP1000 Refueling Water Storage Tank.jpg
1998年9月にはAP600は最終設計承認(FDA)を取得した。電力会社からの受注は無かった。その後、ブッシュ(子)政権の原子力2010年計画を受けて、大型化により経済性の向上を図ったAP1000(電気出力1000MW)の設計を進め、2006年1月には米国原子力規制委員会(NRC)からの最終設計承認(FDA)を取得した。2007年に中国国有の国家核電技術公司(国家核電、SNPTC)が4基発注した。その後も多数発注しており、2014年4月段階で建設中と計画中のAP1000を単純に数えただけで97基もある。しかし、最初の浙江省三門の2008年着工の三門Sanmen原発1号機は、福島第一原子力発電所の事故を受けた安全検査のため2015年末まで稼働を延期している。
 米国でも、計画されNRCの認可が出ている。着工されて物もあるが、まだ稼働していない。
改良型軽水炉(ALWR Advanced Light Water Reactor)開発計画で採り上げられたBWRは、E社のSBWR(Simplified BWR、簡易化したBWR)である。これは、米国原子力規制委員会(NRC)からの最終設計承認(FDA)を取得していない。この設計を基にしたESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor )が開発設計され、NRCの認証を受けている。このESBWRには、コアキャッチャーが設計装備されている。

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