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コアキャッチャー core-catcher は、1986年のチェルノブイリ事故の教訓。 [AM-メルトスルー、CCI]

チェルノブイリ事故時、融けた炉心が地下に溶け落ちて行く「チャイナシンドローム」の懸念があった。発電所の冷却水池(約22㎞²)の水位は、Pripyat川における平均水位の6-7m上に保たれている。発電所敷地から川への地下水の流れがある。南にある森の地下水位は、1.5~2mである。地下水との反応で水蒸気爆発を起こしたり、地下水を放射能で汚染するという危機が想定された。

 当時のソビエト・ロシア政府は、この危険を排除するために、サイズ30x30m、厚さ約2.5mの鉄筋コンクリート製水冷却型基礎下プレートを敷設することを決めた。その構造はサンドイッチのように上部は厚さ1mの鉄筋コンクリート、中間に黒鉛に覆われた冷却水管の0.5mの層、下部は厚さ1mの鉄筋コンクリートというものだった。これを考案したのはLeonid Bolshov(2012年現在、ロシア科学アカデミー原子力安全研究所所長)らのチームで、約140mのトンネルを掘らなければならなかった。すでに爆発や上空から落とされた多量の鉛や砂によって損傷している原子炉など構造物を壊さないようにするため、地面を揺らす恐れのあるような重機など機械が使えない。400人近くの地下鉄工事と炭坑の労働者が集められ、スコップや鶴嘴など手持ちできる道具だけで24時間8交替で掘削作業にあたった。作業は、1986年6月28日に完了した。
トンネル内の放射能はそれほどではなかったが、放射線防護が不適切だったため多くの鉱夫たちは死亡した。
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 その後の調査で、溶融燃料の大半は床上を水平に拡がり、垂直に落下、熔融沈降した割合は少なかった。
また「地質調査によって判明したことは、地表から30メートル下に耐水性の粘土層があることだった。原子力発電所の周囲に、深さ32メートルを越す巨大な堀が建設され、特殊な耐水性のベントナイト・コンクリートやその他水に対して不溶性の化合物が詰められた。この堀は、予備の排水制御系をともなう巨大な耐水性仕切りの役目を果たした。水文学的環境から隔離しなくてはならない地区は、原子炉を封じ込めることになる石棺からはるか遠くまで広げねばならなかった。・・・・
 作業が開始されたのは、86年6月だったが、春の雪解けまでに、作業が完成したかどうかは明らかではない。いわゆる地下障壁・・・建設関係者が言うシチュー鍋を作ろうという事で、それによって汚染水が原子力発電所の境界線を越えて外部に浸透できなくなる・・・・

 このプロジェクトは、四号炉を囲むように建設され、石棺に比べて、人目につかなかった。これについての報告が唯一現れたのは、世間ではあまり知られていない大衆向け週刊誌NTR誌だけであった。IAEAに提出されたソ連側報告や後になって公表されるIAEAの国際原子力安全諮問グループ(INSAG)の議事録には言及されていない。おそらく、これは見落としではなく、この当惑させられる問題を避けて通ろうとする意図的な試みだったと思われる。・・・・ ・・・」 (以上「チェルノブイリの遺産」Z・A・メドヴェジェフ (著), 吉本 晋一郎 (翻訳) みすず書房より抜粋)
Tianwan (ASE).jpg この反省から、溶融炉心デブリを受け止め冷却する装置を建設・設計段階から装備する発想が出て来た。それがコアキャッチャーでインドのクーダンクラム原子力発電所Kudankulam Power Plantの1号機(1997年着工)、2号機と中国の田灣核電站Tianwan nuclear power plant の1号機(1999年着工、2006年営業運転)、2号機(2000年着工、2007年営業運転)のVVER-1000から設計にコアキャッチャーが設計装備された。今は、出力増大改良版であるVVER-1200がある。2014年現在、設計でコアキャッチャーが標準設計の原発は、ロシアのロスアトム PocAtomのVVER-1000と1200、フランスのアレバAREVAのEPR、AREVA社と三菱重工業合弁会社であるATMEA社のATMEA1であるが、実際に営業運転しているものはVVER-1000と1200である。

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