SSブログ

「仏陀のなげき」 劣化ウラン 2001年1月紙版の再録 [被曝管理]

紙版、2001年第3週の再録
一月二十日「仏陀のなげき」が上映されます。
 昨年末から欧州ではバルカン半島の旧ユーゴ地域での紛争で、米英が使用した劣化ウラン砲弾による放射能汚染、従軍兵士の健康被害「バルカン症候群」や環境汚染、住民の健康被害が問題になっています。
 劣化ウランとは?
 原子力発電はウラン235の核分裂反応から出る熱を利用してお湯を沸かし、水蒸気で発電タービンを廻しています。そのウラン235は、天然ウラン鉱石のから精錬されます。ウラン鉱山から採掘した天然ウラン鉱石は、濃縮過程の中で、まず核兵器や原子力発電所用の燃料となるウラン235(U235)と、
ウラン238(U238)に分離されます。U235は、全体の一%にも満たず、残りはほとんどがU238で放射性廃棄物となります。この金属物質を「劣化ウラン」と言います。

rekkaurann.jpg 劣化ウランは、①主要にはアルファ線を放出し、半減期は四十五億年(地球の歴史にも匹敵する)です。強い化学的毒性もあります。②劣化ウランは非常に重い。比重は鉄の約二・五倍、鉛の約一・七倍と重い。③強い衝撃や摩擦で高熱を発して燃焼といった性質があります。
 主に出す放射線がアルファ線ですから、直接触れている物に強いエネルギーを及ぼす、つまり問題なのは劣化ウランの微粒子を吸い込んで肺の組織が被曝したり、飲み込んで消化器から体内に入りおこす体内被曝や化学的毒性を顕わす場合です。米国原子力規制委員会(NRC)は、U238の一日の体内摂取限度量を、一般人0.19ミリグラム、原子力施設関連従業員二ミリグラムと定めています。
 非常に重いため、航空機のバランスをとる重りに使われたりします。この点に目をつけて1960年代から、砲弾の材料に使う研究を米軍が始めました。戦車の120ミリ砲や105ミリ砲で発射できる砲弾の大きさ、体積は上限があります。同じ体積・速度なら材料の比重が大きく、重いほど強くぶつかります。劣化ウラン弾は鉄製砲弾の約二・五倍のエネルギーでぶつかり、防御の装甲を破り頑丈な戦車や装甲車、壁を貫通できます。そして貫通時の衝撃で自然発火し高熱を発して燃焼し、高熱の酸化ウラン微粉末や砕片が戦車内の兵士をも焼き殺してしまいます。その上、劣化ウランは「廃棄物」ゴミですから、原料費はタダです。
 米軍は湾岸戦争で初めて劣化ウラン弾を使用し、少なくとも戦車から一万個、戦闘機から九十四万個の劣化ウラン弾を発射しました。そして戦争後の砂漠には劣化ウラン弾の高熱で黒こげになったイラク兵の死体が累々と放棄されていました。そのさまは、ヒロシマの惨状を思い出させます。劣化ウラン弾はアメリカのほか、イギリス、フランス、ロシアなどでも製造されアメリカはいくつかの国に輸出しており、劣化ウラン弾は世界に拡散しています。
 さて、戦車などに命中し衝撃で燃焼した劣化ウラン弾は微粒子や砕片となって大気中、周辺に飛散します。
戦車の120ミリ砲弾の場合、劣化ウランは約四千七百グラム、戦闘機の30ミリ砲だと約三百グラムです。このうち70%~20%が微粒子になります。微粒子は40キロ離れたところまで飛散可能と言われます。こうなると、前述のように健康被害や環境汚染が問題となります。一日の体内摂取限度量は0.0019グラム。放射能が半分になるには45億年かかります。
 UNEP(国連環境計画)の調査団が昨年11月、コソボ自治州の11地点で現地調査を実施、1月5日に中間報告書を公表。11地点のうち8地点で劣化ウラン弾による高い放射線反応を確認。その上で、同弾が兵士の健康に影響を及ぼした可能性に、強い懸念を表明。さらに、同弾の攻撃を受けた地域の住民に対する健康検査を実施するよう勧告。UNEPのドハリック広報官は「まだ中間報告の段階だが、劣化ウラン弾による攻撃を受けた地域に注意を呼びかけるに十分な証拠が見つかった」と話しています。現地からは、放射能レベルは自然状態の1100倍とか住民400人以上がガンで死亡などという情報もあります。
 さて、同様の問題がウラン鉱山周辺に起きています。昨年の畑の便り№41でもお伝えしましたが、ウランの含有量が少ない鉱石が野積みにされ、風化して飛散したり、鉱山から出る放射性の排液が捨てられたりしています。日本では、岡山県と広島県の県境の人形峠付近で採掘されたウラン鉱石の廃棄物が敷地内や周辺に放置されています。
 インドの釈迦誕生の地にあるウラン鉱山周辺地域の現状のドキュメンタリーが「ブッダの嘆き」です。環境庁、外務省などが後援する地球環境映画祭で大賞を受賞しています。これが1月20日(土曜日)午後2時より、万代市民会館(視聴覚室)で上映されます。(約1時間、会場費500円)是非ご覧下さい。

紙版、2001年第3週の再録


タグ:劣化ウラン
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0