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原発と子供の甲状腺がん 2002年17週紙版の再録 [被曝影響、特に甲状腺]

紙版、2002年17週の再録
原発と子供の甲状腺がん
1986年4月のチェルノブイリ原発事故から16年が経ちました。事故で大量に出た放射性ヨウ素による甲状腺の被曝で、甲状腺がんの子供が事故前の33・6倍に増加し、大人の甲状腺がんも事故前より2・5~2・7倍に増えています。(ベラルーシ共和国のオスタペンコ保健相の4月17日の発表)
 放射能汚染の影響による甲状腺がん患者は登録された数だけで1677人。事故時に18歳未満だった人から、さらに1万2500人が甲状腺がんになると専門家は分析しています。

 福井県敦賀市にある原子炉「ふげん」の冷却水から放射性ヨウ素が通常の約50~20倍の濃度で検出されたと4月18日発表されました。放射性ヨウ素は核燃料の核分裂で生じます。通常は燃料の金属容器の内部に封じこめられていますが、ふげんのように容器に穴が開くと出てきます。事故時には大量に出ます。
 放射性ヨウ素は、呼吸により気管支及び肺から、また口から食道を経て消化管から吸収され、体内に入ります。取り込まれた放射性ヨウ素の約10~30%は、24時間以内に喉にある甲状腺に選択的特異的に集積し、残りは尿中に排泄されます。集積した放射性ヨウ素は、新陳代謝で排出されるまで甲状腺内に留まります。その間中、甲状腺は被曝しつづけます。

 広島、長崎の原爆被曝の調査などから甲状腺がんの発生は、被ばく時の年齢が20歳までは、被曝した放射線量に応じて増加する。20歳以上では、発生は極めて低い。40歳以上では、発生リスクは消失。20歳以下でも特に5歳未満では、10~14歳に較べ約5倍の発生リスク。若年時に被ばくした者の甲状腺がんの発生は、被ばく後5~9年で増加し、15~19年で最大となり、40年後でも可能性がのこる。

 最も良い防御策は、吸わない事、汚染された食べ物を食べないことです。東海村の臨界事故のとき、住民は放射性ヨウ素が漂う空気を吸いながら避難していました。次善の策は、放射性ヨウ素が吸入・体内摂取される前又は直後に、ヨウ素剤を服用することです。高濃度のヨウ素が血中にあると放射性ヨウ素の甲状腺への取り込み、集積が抑制されます。
 放射性ヨウ素摂取の前または直後にヨウ素剤を服用すると90%以上を抑制することができ、また、4時間以内の服用であれば、約50%の抑制効果が期待できます。しかし、6時間以降であればその効果は激減します。また、この効果は、服用後約1日しか持続しません。甲状腺の病気を持つ人などには服用は害作用が強く出ます。

 つまり、放射能雲が到達する前か、少なくとも4時間以内に、最低でも、甲状腺に病気を持たない子どもたちや妊婦にヨウ素剤を服用させることが肝要です。このたび纏まった原子力安全委員会の防災専門部会の案では、「あらかじめ事前に各戸配布するのではなく、周辺住民等が退避し集合した場所等において、ヨウ素剤を配布・服用すること」。
 東海村の臨界事故は日中に発生したにもかかわらず、住民に知らされたのは約2時間後。当時、2mの風が吹いていましたから、放射能雲の前線は約14キロ風下に到達していました。風は海向きでしたが、逆に陸地向きなら、多くの人たちが、放射能雲の下にいます。その住民等に2時間から4時間以内に避難場所でヨウ素剤を配布、服用が可能だったでしょうか。

 青森県六ヶ所村には再処理工場など原子力施設が集中していますが、宮川隆美氏(青森県十和田保健所長)によれば「どこの住民がどこに避難するかなど、何も決まっていない。事故時にヨウ素剤を保管場所から六カ所村に運ぶのに約1時間半かかる」。
 ドイツは、事前に5km以内は戸別に家庭にも配布、5~12kmでは学校、病院、役場、職場などに備蓄
 フランスは事前に5km以内は戸別に家庭に配布、5~10kmでは学校、保育園、保健所などに備蓄と薬局で無料で予防的に入手可能、それ以外の地域では無料で予防的に入手可能です。(日本の薬局では入手は困難です)
 日本の対策は本当に被曝を防ぐ、子らを護ることを目的にしたのか疑わしいと虹屋は考えますが、如何ですか。また以前、とろろ昆布などを子供らに食べさせることを奨めました。専門部会は「咀嚼・消化過程が必要でヨウ素の吸収までに時間がかかり、・・集団的に、摂取することは現実的に困難」などの理由から、不適切としていますが、何時配られるかわからないヨウ素剤よりも、我が子を護るために家庭で実行可能な対策ではないでしょうか。ところで甲状腺に病気を持つ子ども等は、案ではヨウ素剤より「避難を優先」。しかし他の子らより早く遠くに避難させる事が可能とは思えません。つまるところ、見捨てられていると思えてなりません。
 
原子力安全委員会の防災専門部会の案については
            http://nsc.jst.go.jp/box/bosyu020304/youso_b.htm
http://www.u-tokyo-rad.jp/data/ninpuyouso.pdf
紙版、2002年17週の再録

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