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PCVスプレイが行われてからのベントの可能性、水源制限を加筆 水素ガスとベント 試論⑮ [AM-ベント、排熱]

2時間後からPCVスプレイ、炉注水、3時間後にトップフランジ水張したら
東電シナリオでは、2時間後からPCVスプレイ、炉注水、3時間後にトップフランジ水張する手はずである。それで水素爆発は25時間防げるか?東電核災害を顧みると、そうは言えない。福島第一のPCV格納容器には約400ヶの小さな貫通部があるそうだ。その多くは1階の部分、PCVのシェル部分(フラスコ状の下部の丸い区画)にあるそうだ。TIP(移動式炉心内計測装置)の案内菅、RPV原子炉内部とPCV格納容器外部を直接結ぶ4本の案内菅もその一つ。柏崎刈羽6、7号ではどれくらいあるだろうか?

漏洩01c.jpg 東電核災害では1号機で後日の調査で、原子炉建屋1 階南東のTIP(移動式炉心内計測装置)室周辺で高線量汚染が確認されている。TIPの案内管がメルトダウンの際に炉内側が損傷して開口しておこるTIPリークは、東電シナリオでも起こり得る。TIP案内管リークを織り込んで評価しなければならない。

 11日21時頃、運転員がIC 胴側の水位と原子炉水位の確認のため原子炉建屋に向かい、入域したところ、警報付きポケット線量計がごく短時間で0.8mSv を示したため21時51分原子炉建屋への入域を禁止。
 11日23時、タービン建屋内での放射線量の上昇が計測。PCV圧力は0.6MPa(23時50分、実測)で設計圧力0.4111MPa(a)の約1.45倍。この圧力で12日02時30分頃に0.84MPaを計測した後、12日14時30分頃のベント操作による圧力減少まで、0.7MPa~0.8MPa程度の圧力で推移した。PCV温度の実測データは入手していない。
 1号機のRPV原子炉には圧力を落とす2種類の弁が主蒸気管に付いていた。一つはSRV逃し安全弁 Safety Relief Valve 、原子炉圧力が設定圧力を超えると強制的に弁を押さえつけているスプリングを押し上げるガスを電気制御で送り込み弁を開け炉から蒸気をS/Cプールに逃がす逃がし弁機能と原子炉からの蒸気圧力がスプリングの押さえつける圧力に打ち勝って弁体を押し上げる開き蒸気をS/Cプールに逃がす安全弁機能をもつ。もう一つはこのSRVのお隣に着いているSV安全弁safety valve で、これはスプリングとの力比べで開く安全機能だけで、蒸気はPCV格納容器のD/Wに出される。
 SRV逃し安全弁は「事故時、必要なときにそれが実際に作動したことを裏づける弁開閉記録が存在しない(2、3 号機には存在する)。」「弁の作動音を耳にした者は一人もいない」(国会事故調)SRV逃し安全弁が故障で閉固着していてると、安全弁が開く。D/Wドライウェルに直接蒸気が放出される。

 仮にSRVが作動可能であったとしても「スクラム後約4.4 時間(19時30分頃)で原子炉圧力容器の気相部(蒸気分)が 450℃に到達し、逃がし安全弁フランジガスケット部から原子炉圧力容器・・ドライウェル区画に直接蒸気が放出される」(東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会、平成25年11月、https://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/jiko_bunseki/data/0005_07.pdf

漏洩01f.jpg つまり、1号機は津波来襲から間もなくからか、遅くても19時30分頃以降は炉からの高温高圧のガスがPCVのD/Wドライウェルのシェル区画(フラスコ状の下部の丸い部分)に直接噴出する状態であった。それは、新潟県技術委での論議のまな板に乗っているLOCA配管破断による噴出に似ている。LOCAは破断口から継続的持続的に噴出するが、安全弁の場合は炉が高圧化すると開き(安全弁は8.5MPa以上)噴出するが、それで炉圧が下がると閉じてしまう。崩壊熱などで炉圧が上がると再び開く。間欠的な噴出だ。津波来襲時点の崩壊熱の時間当たり発生量は、スクラム直後より落ちているから、その高温高圧化の進展は東電シナリオに較べてゆっくりしたものになる。

 噴出である程度D/W圧力が上がるとS/Cプールに流れ込み、熱はプール水に吸収される。しかし、噴出ガスが直接でるシェル区画部分に多いペネトレーションや上部のトップフランジは高温化に晒される。特に水面が下がり炉心が露呈すると18時10分(推定)以後は水素ガスが大量発生し始める。透過性が強く、比重が小さく軽い水素ガスが高温高圧で噴出する。放射性の希ガス類もギャップ放出、それに続く溶融で大量に核燃料から出てくる。これもPCVのシェル区画に高温高圧で噴出する。

 このような高温状況で、11日21時頃、PCV圧力が設計圧力付近(先の検討会資料)でも、原子炉建屋への入域を禁止しなければならないほど放射能が出て来た。水素ガスも出てきている。ペネトレーションや上部のトップフランジから出てきている。それは、2時間後の23時には、お隣のタービン建屋内で放射線の上昇が計測される位大量に出て来ていた。しかし、圧力上昇を食い止められないリーク漏洩量である。PCV圧力は0.6MPa(23時50分、実測)で設計圧力の約1.45倍に上がっている。圧力上昇が止まったのは、RPV原子炉圧力容器がメルトスルーして、溶融物デブリが直接PCVを加熱して、高温化が亢進した12日02時30分以降である。気体容積は熱で膨張するから高温化は高圧化になるのが物理的道理だが、それが上がっていないのだから、リーク漏洩量が増えたのだ。

 メルトスルーまでの間、炉圧が設計圧力程度から1.5倍程度でもリーク漏洩が発生した。放射能で原子炉建屋に入って収束作業が行えないほどのリーク漏洩が生じる状況は、東電シナリオでの状況ではないだろうか。東電シナリオでは2時間後にSBOを脱却しPCVのD/Wスプレイが始まる。その後もPCV圧力は設計圧力を超えている。15時間位まで1.35倍を超えて一時1.7倍になっている。15時間後はスプレイの効果で下がるが、1.35倍を上下する。格納容器温度は設計温度171℃を上下する。そうした環境にずっとある。これは福島第一1号機の11日夜の状況ではないだろうか。

 放射能が漏れて、水素ガスも漏れてくる。TIP(移動式炉心内計測装置)案内管からの30kgとペネトレーションからリーク漏洩分の水素。分厚い横壁を吹き飛ばすほどでなくても、ブローアウトパネルを吹き飛ばし天井を落とすに足る量ではないだろうか。幸い1号機では11日夜、12日朝、午前中は爆発は起こらなかった。僥倖と言わざるを得ない。幸運に頼らず爆発を避けるには「格納容器の中の水素を排出する」ベントが、メルトスルー前のベントが一つの回答だ。

このように「大LOCA+全ECCS機能喪失+SBO」の事故では、SBOが2時間で終える(東電シナリオ)、PCV頂部に3時間後水張り(東電シナリオ)としても、リーク漏洩の具合、TIP案内管の損傷の有無、ペネトレーションの損傷程度によっては、ベントが最悪の水素爆発を招かないための選択になる。

また東京電力は、注水の水源は復水貯蔵槽としている。水源の正味の使用可能量を東電は201年3月に割り出して国に報告している。それでは運転中における復水貯蔵槽の正味の使用可能量は、6号機は約1050m³、7号機は約1130m³である。
(「柏崎刈羽原子力発電所7号機における安全性に関する総合評価(一次評価)の結果について」平成24年3月、http://www.meti.go.jp/press/2011/03/20120312005/20120312005-6.pdf

今回の事故時のシュミュレーションでは約1700 m³としている。

7号機では約570m³も正味の使用可能量よりも多く過大に見積もっている。もう200m³増やして約1900m³と置けば、25時間後にベントは行ずに済む。「スプレイ用の水源枯渇は発生せず、ベント時間は事象発生後約40時間後まで延ばすことが可能」と東電は評価している。

それでは、正味の使用可能量の約1130m³では概ね10時間後にPCVスプレイを停止、ベント実施と読み取れる。東電の作成したグラフで、約570m³をゼロ点としてみると10時間後にゼロ点に達する。

水源量01.jpg

この発災からPCVスプレイが行われてからのベント、それはSBOが継続しPCVスプレイがないベント、先回検討したベントや東京電力が柏崎刈羽6、7号機では有り得ないとしている福島第一原発と同様の状態の極限ケースでのベントとどう違うのか。 続く


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