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新潟県技術委、田中三彦委員の指摘 検証課題2 意思決定② 2014/8/27 [東電核災害の検証・新潟県技術委]

新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会(平成26年8月27日開催)
http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356793671967.html

課題2 意思決定での田中委員のコメント・・IC・非常用復水器の自動作動設定値

田中三彦委員から、MSIV・主蒸気隔離弁とSRV・主蒸気安全逃し弁とIC・非常用復水器の自動作動の設定値の違いから、地震時の機器の作動や運転員対応についてコメントがありました。

東京電力は2010年7月7日から、原子炉圧力が高くなった場合のスクラムする炉圧設定値とIC・非常用復水器の動作する炉圧設定値を下げています。第26回定期改造で施工されています。(事故時手順書・事象ベースの履歴-16頁)

原子炉圧力が高くなった場合、7.07MPaでスクラムする。7.27から0.2MPa下げた設定値に変更。

IC・非常用復水器の動作する炉圧は7.13MPaに設定。7.27MPaから0.14MPa下げています。

SVR・主蒸気安全逃し弁は、炉圧6.27~7.06MPaで手動制御。6.37~7.26MPaから下げています。
1号機のSVRは、約7.3MPaで電力で弁が開く「逃し弁」機能と約7.7MPaで弁が開く「バネ式安全弁」機能がある。

1号機 事故時運転操作手順書(事象ベース)(PDF形式:3,761KB)
http://www.meti.go.jp/press/2011/10/20111024003/20111024003-3.pdf
1号機 事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)(PDF形式:1300KB)
http://www.meti.go.jp/press/2011/10/20111024003/20111024003-4.pdf
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これを事故時手順書(事象ベース)の1-1(B)で読み解いてみます
地震で原子炉に制御棒を全て押し込んで核分裂反応を抑えるスクラムが作動します。
それが、原子炉スクラムベーシング放送で広報される。
MSIV・主蒸気隔離弁の全閉鎖を確認。
原子炉モードのスイッチを「RUN」から「SHUT DOWN」に手動切り替え。
SRV・主蒸気安全逃し弁の作動を確認する。
タービン発電機を止め、電源の切り替えを確認。

原子炉の水位と圧力を確認。

PCIS・ 一次格納容器隔離系が作動し、格納容器からの放射性物質放出ルートを閉止させ、格納容器内に閉じ込めるように作動し「隔離」されている確認(一次格納容器・・いわゆる格納容器、建屋が二次格納容器)
SGTS・非常用ガス処理系、換気系が通常から切り替わり、排気筒から外部へ排気がでる前に高性能の粒子フィルター、活性炭フィルターを通して放射性物質を除去する処理系の「起動」確認
給復水系が健全であることを確認、「自動」水位調整。

SRVによる原子炉圧力制御指示。 
原子炉圧力上昇時は、SRV・主蒸気安全逃し弁を順次「手動開」または非常用復水器使用により、原子炉圧力を6.27~7.06MPaに維持。(SRVを開くと原子炉水位は急上昇後低下する)

給復水系の水源となるホットウェル(復水器ホットウェル)の水位が下がったらHPCI・高圧注水系を「手動起動」して復水貯蔵タンクを水源にして原子炉水位を維持。

SRVを開いて炉から熱を水蒸気で送り込むS/P・圧力抑制プールの水温を確認して冷却を実施。

このように原子炉の圧力の制御には、①SRV・主蒸気安全逃し弁の手動での開くこと、②IC・非常用復水器を使う事故時手順が設定されている。BWR訓練センターでの模擬では、SRVを使う訓練が実施されている。しかし、IC・非常用復水器の使用は訓練していない東電マネジメントであり、運転員は作動の際の挙動、水蒸気の噴き出し方などは知らない。だから、手動操作ではSRVを選び取る方が無理がない。しかし、1号機の運転員はICを、それもA系のみを使っている。

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 3.11では地震でスクラムし、14時47分にMSIVが全閉して原子炉圧力容器の圧力が運転時の約6.8MPaから上昇する。7.13MPaでIC・非常用復水器が自動起動する。東電によれば、初めての起動だ。
 運転員は「炉圧が下がっているので漏洩がないか確認したい。炉圧の下がりが速く、このままだと圧力容器の健全性が保てない。一度止めて他に漏洩がないかも確認したいので、そういう操作を行っても良いか」と当直長らに相談して15時3分に止めている。

 停止後に炉圧が上昇する。事故時手順では6.27~7.06MPaに維持です。6.27MPaを超えたら下げる準備です。SRVは、訓練を受けて、挙動も読める。ICは訓練は受けてないし「炉圧の下がりが速く」と挙動も読めない。ですから、SRV・主蒸気安全逃し弁の手動操作が無理のない選択だが、運転員は操作していない。慣れない「炉圧の下がりが速く」と扱いにくいICを選んでいる。それは定められた事故時手順から逸脱はしていないから、運転員のミスではない。

 合理的にはSRVが手動操作できなかったことが考えられる。SRVが閉固着して手動で開かなかったので、ICを手動作動することを選ばざるを得なかったと考えられる。そうなら、津波襲来後にもSRVが閉固着しているので約7.7MPaで弁が開く「バネ式安全弁」機能も作動しなかったと考えられる。

 しかし、1号機の圧力容器は加圧破損していない。地震直後(MSIVが閉じる直前または直後)に、なにがしらの原子炉系配管が損傷した。圧力の高まりに応じて、その損傷個所から冷却材が噴出。それで圧力上昇が抑制される事故シナリオ、国会事故調の報告書241頁の<事故シナリオ2>に類似する事故進展が合理的に導かれる。

東電のマネジメント部門のミス
 また、東京電力は2010年7月7日のICの自動作動設定値の7.13MPaに変更した。これによって、SVRの「逃し弁」機能が作動する約7.3MPaに至る前にICが自動起動することになった。これが、事故時手順書と運転員教育に反映していない。東電のマネジメント部門のミスである。

手順書(事象ベース)の1-1B-4頁には原子炉モードのスイッチを「RUN」から「SHUT DOWN」に手動切り替え、その後、SRV・主蒸気安全逃し弁の作動を確認する事になっている。しかし、設定値の関係から作動しているのはIC・非常用復水器のはずである。確認すべきはICの作動である。
 運転員へのICの扱いも畳の上の水練である。このようにICが自動起動するのだから、炉圧の下がり方や蒸気発生音、蒸気の噴き出し方など挙動の知識や模擬訓練は不可欠だと考えるが、東電のマネジメント部門がそうしなかった理由を明らかにすべきである。2010年7月7日の変更に伴って、検討されたのか、そうした詳細を明らかにすることを望む。


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