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核燃料は数年にわたって国内保有燃料だけで供給が維持できる? 新エネルギー基本計画のパブコメ・めも  第9節、1、(2) [使用済核燃料、再処理、廃棄]

日本はウランを自給できず、ウラン鉱石全量を海外に依存している。2009年3月現在、約330千tU、2010 年の国内需要6.7千tの49 年分を確保している。
ウラン鉱石は酸化ウラン(イエローケーキ)に製錬する。これを六フッ化ウランへ転換する。
この製錬と転換工程は国内ではおこなわれていない。全てを外国企業に依存している。

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次に気体化した六フッ化ウランを濃縮する。100万kWの原子力発電所での1年間に必要となるウラン濃縮の仕事量は約120トンSWU(Separative Work Unit)であるが、日本原燃の青森六ヶ所濃縮工場の能力は年1050トンSWUである。この濃縮工程も大半を海外に依存している。

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濃縮されたウランを粉末状の二酸化ウランに再転換する。
さらにこの二酸化ウランを焼結しペレットをつくり被覆管の中に収納して燃料集合休とする「成形加工」の工程を経て、原子炉で用いられる。
再転換は日本では三菱原子燃料(0.45 千 tU)のみで、三菱原燃料(PWR 用 0.44 千 t)の成形加工向けに行われている。
成形加工を行うグローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン(GNF-J、BWR用 0.75千 tU)、原子燃料工業(PWR 用 0.284 千 t・BWR 用 0.25 千 t)が用いる粉末状の二酸化ウランへの再転換は、アメリカの二社が行っている。

日本原燃の青森六ヶ所濃縮工場の原料や三菱原子燃料の再転換原料としての六フッ化ウラン、GNF-Jや原子燃料工業の燃料成型加工向けの二酸化ウラン、あるいは出来上がった燃料集合体としてウランは輸入され国内保有されている。これらの保有量が 国内保有燃料になる。

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国内保有燃料ウランの85%は劣化ウラン

文部科学省「わが国における保障措置に係る核燃料物質量一覧」の2010年のウランの量、天然ウラン、劣化ウラン、濃縮ウランの合計量では、加工工程の保有量は13433トンで原子炉での使用量は20007トンである。

核燃料は約1年3ヵ月毎に原子炉の約1/4~1/3が交換されるので原子炉使用量の2万トンの約1/4の5~4千トンが1年間の核燃料供給に必要なウラン量と見られる。濃縮、再転換、成形加工の加工工程にある保有量・13433トンは約3倍であるから「数年にわたって国内保有燃料だけで供給が維持できる」ように見える。

しかし13433トンの内訳を見ると、核分裂を起こすウラン235を抜き取った劣化ウランが11393トンと約85%である。これは核燃料原料には使えない。
以前国産のウラン鉱石を採掘して、精錬、転換を試みた岡山県人形峠、その夢の跡の人形峠環境技術センターに約2千6百トン、日本原燃の青森六ヶ所濃縮工場で六フッ化ウランをウラン235の割合が3~5%に濃縮で発生する残渣、割合が0.2%程度に減少した六フッ化ウランで約7千5百トン(劣化ウラン)などである。「将来の活用の方向を十分に検討」と備蓄扱いだが、実態は廃棄物。

それで、核分裂を起こすウラン235でみると原子炉に346トン、加工工程に58トンである。使用中の約七分の1程度しかない。これでは「数年にわたって国内保有燃料だけで供給が維持」できない。「ウランは、エネルギー密度が高く備蓄が容易である」が、数年分は国内保有していない。

石油では「備蓄制度によって、需要の189日分(2013年9月末時点)の備蓄が確保されており、供給途絶に至る事態が発生した場合でも、輸入が再開されるまでの国内供給を支えることが一定程度可能」(第1章、第2節、2)とあるが、ウラン核燃料も同様ではないか。国内保有分では「供給途絶に至る事態が発生した場合でも、輸入が再開されるまでの国内供給を支えることが一定程度可能」が妥当な評価である。

原子力発電の燃料となるウランを準国産エネルギーと位置づける根拠は、(ア)エネルギー密度が高く備蓄が容易であり、国内保有燃料だけで数年にわたって供給が維持できるること、(イ)使用済燃料を再処理することで資源燃料として再利用できるである。

しかし、(ア)は物理的に貯蔵できる可能性はあるが、現実にはそうなっていない。石油のように備蓄制度が整備されていない。数年分の国内保有分、備蓄はない。需要の189日分(2013年9月末時点)の備蓄がある石油を、準国産エネルギーとは扱わない。したがってウランを準国産エネルギーと扱うことは不当である。物理的貯蔵の可能性は準国産の根拠にはならない。

(イ)の根拠、「使用済燃料を再処理することで資源燃料として再利用できる」は現実性が有るのだろうか。
続く

2013/12/24 加筆修正


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