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原発事故は生きている町そのものを破壊してしまう。 函館市の大間原発訴訟 訴状抜き書き [核のガバナンス・裁判]

函館市の大間原発訴訟の情報公開ページ
http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014031100330/

 訴状の概要

請求の趣旨


経済産業大臣が、平成20年4月23日付けでなした、大間原子力発電所原子炉設置の許可処分は無効であることを確認する。

2(1)主位的請求
被告国は、被告電源開発株式会社に対し、大間原子力発電所について、その建設の停止を命ぜよ。

(2)予備的請求
被告国は、被告電源開発株式会社に対し、大間原子力発電所の設置について、原告が同意するまでの間、その建設の停止を命ぜよ。


被告電源開発株式会社は、青森県下北郡大間町において、平成20年4月23日付け原子炉設置許可に係る大間原子力発電所を建設し、運転してはならない。

4訴訟費用は、被告らの負担とする。

との判決を求める。

 請求の原因

第1章はじめに

本件訴訟は、平成23年3月11日の福島第一原発事故を受けて、人口約27万5千人を擁する北海道南部の中核自治体「函館市」がみずから原告となって提起したという点で、これまでの原発訴訟と大きな違いがある。

大間原発の建設工事を停止してほしいという声は、函館市だけでなく北海道南部の自治体と住民の総意となっているといえる。本件訴訟はこのような総意に基づいて提起されたものであり、裁判所は地方自治体と地域住民総体の意思を十分認識し、これを尊重しつつ慎重に審理に臨むべきである。

第2章本件訴訟の法的根拠

第1 設置許可無効確認(請求の趣旨1項)

1 自然人が原告である設置許可無効確認訴訟における「法律上の利益」

・付近住民らが、原子炉の設置許可処分の無効確認を求めたもんじゅ訴訟における最高裁判決は、「上告人らは本件原子炉から約29キロメートルないし約58キロメートルの範囲内の地域に居住している・・起こり得る事故等による災害により直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域内に居住する者というべきであるから、本件設置許可処分の無効確認を求める本訴請求において、行政事件訴訟法36条所定の「法律上の利益を有する者」に該当するものと認めるのが相当である。」として、その原告適格を肯定した。

2 本件原告にも設置許可無効確認訴訟における「法律上の利益」が認められる

事故時には、原子炉施設の近くの者ほど直接的かつ重大な被害を受けるものと想定されるのであり、これは、自然人だけではなく法人や地方公共団体にも等しくあてはまる。

・原告函館市は、大間原発から23キロメートルないし50数キロメートルの範囲内の地域に位置している。

・防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲は、福島第一原発事故を受けて、30キロメートルに拡大された。

・本件原子炉は世界で初めて100%MOX燃料を装荷する商業炉であり、炉心内において半減期24、000年という極めて強い毒性を持つプルトニウムが用いられる。

・かかる事実に照らすと、原告は、本件原子炉の設置許可の際に行われる平成24年改正前の原子炉等規制法24条1項3号所定の技術的能力の有無及び4号所定の安全性に関する各審査に過誤、欠落がある場合に起こり得る事故等による災害により直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域内の地方公共団体というべきである。

・したがって、原告は、本件設置許可処分の無効確認請求において、行政事件訴訟法36条所定の「法律上の利益を有する者」に該当することは明らかである。

3 伊方発電所原子炉設置許可処分取消訴訟判決

・伊方発電所原子炉設置許可処分取消訴訟では、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、
現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、
被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」と判示した。

4 大間原発の設置許可は無効である

・大間原発の設置許可申請において用いられた安全設計審査指針類は、福島第一原発事故の発生を防ぐことができなかったものであり、その不合理性が明らかになった。

・現在の科学技術水準に照らし、大間原発の設置許可の調査審議に用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、大間原発の設置を許可した経産大臣の判断がこれに依拠されたことが明らかであるから、経産大臣の判断に不合理な点があるものとして、大間原発の原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。

・安全設計審査指針類の不備、欠陥は深刻であるところ、これによって大量の放射性物質が環境に放散されるような事態の発生を招きかねないものであり、その違法は重大であるから、当該処分は無効である。

第2 義務付け訴訟(請求の趣旨2項)
1平成24年改正後の原子炉等規制法の規定

・本件原子炉は、国会事故調の報告書の指摘する事故原因を前提として改訂されなければならない安全設計審査指針、耐震設計審査指針、安全評価審査指針等により設置許可がなされたものであり、未だ、改訂原子炉等規制法及びこれに基づく新規制基準による評価はなされていない。

・本件原子炉は、新基準による規制項目である「位置、構造及び設備が災害の防止上支障がないもの」、「技術上の基準に適合する」、「保安のために必要な措置を講じる」という要件をクリアしていない原子炉であり、新基準による安全性判断がなされていない原子炉である。

・発電用原子炉は最低限新基準をクリアすることにより設置、運転が許容されるものであるから、本件原発の建設を継続することは許されないものである。
・したがって、原子力規制委員会は、改訂原子炉等規制法43条の3の23第項の規定に従い、本件原子炉の建設・運転の停止を命ずべきである。

2 義務付け訴訟の要件

・改訂原子炉等規制法の定める規制項目とこれに係る規制基準を満たさない原子炉は重大な事故を起こす可能性が高く、事故を起こした場合には、原告らを含む極めて多数の人々に多大で回復不可能な損害をもたらすことが明らかであり、行政事件訴訟法37条の2第1項①一定の処分がなされないことにより重大な損害が生ずるおそれがあること(重大な損害)の要件を満たしていることは論を待たない。
 
・そのような損害を避けるためには、無効確認訴訟以外には適当な方法はなく、行政事件訴訟法37条の2第1項②その損害を避けるため他に適当な方法がないこと(補充性)の要件も満たしていることは明らかである。
・よって、原告は、被告国に対し、主位的に、被告電源開発に対して大間原発の建設の停止を命じることの義務付けを求めるものである(請求の趣旨2項(1))。


3 原告が設置に同意するまでの間、被告国は上記命令を義務付けられる

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原発の建設にあたっては、平成16年の閣議了解に基づき、立地市町村及び立地都道府県の同意が得られていることが要件となっている。その趣旨は、原発建設によって、事故時に災害を被る危険性や防災対策に協力しなければならないことなど種々の不利益が立地自治体に課されるためであると考えられる。

・一方、福島第一原発事故により、ひとたび原発事故が起これば少なくとも30キロ圏までは壊滅的被害が及ぶことが明らかとなったことから、30キロ圏内の自治体に原子力防災計画策定が義務づけられた。この原子力防災計画策定とその実行、準備(訓練など)は、多大な財政的、人的負担を自治体に強いている。現に原告はその対策に苦慮している。

・このように、原発建設による不利益と負担は少なくとも30キロ圏に及ぶことが明らかとなっている現在において、原発建設の際の同意手続きの対象を立地自治体に限定することは、上記閣議了解の趣旨に合致せず、また、立地自治体と30キロ圏内にある周辺自治体とを不公平に取扱うことにもなる。

・以上からすれば、原発建設の際の同意手続きの対象となる自治体は立地自治体に限られず、少なくとも30キロ圏の自治体をも含むと解すべきである。

・よって、原告は、被告国に対し、予備的に、原告が大間原発の設置に同意するまでの間は、被告電源開発に対して大間原発の建設の停止を命じることの義務付けを求めるものである(請求の趣旨2項(2))。

第3建設差止(請求の趣旨3項)
1差止請求の根拠となる権利について

(1)地方自治体の存立を維持する権利(地方自治権)に基づく差止請求
・自然人が生命、身体、名誉等の重大な保護法益を現に侵害され、又は将来侵害されようとしている場合には、これらの人格権に基づいてその侵害の排除又は予防のために当該侵害行為の差止めを求めることができるのと同様、地方公共団体も、その存立自体が危険にさらされ、地方自治が根本的に破壊される事態に対しては、憲法上保障された地方自治の本旨に基づく地方自治権すなわち地方自治体の存立を求める権利に基づき、その侵害の排除又は予防のために、当該侵害行為の差止めを求めることができるというべきである。

(2)所有権に基づく妨害予防請求としての差止請求

2大間原発建設により原告の権利が侵害される具体的危険性

(1)原告の地方自治権の侵害 
 略 
(2)原告の所有権の侵害

第3章原発の仕組みと放射能の危険
第4章福島第一原発事故の原因と被害
 
・フルMOXを採用する大間原発に事故が起きた場合には、炉心に大量のプルトニウムを内蔵することから、福島第一原発事故と比較にならないほど深刻に、函館市民の生命、身体、安全な生活、財産が脅かされ、さらには家族、地域社会(近隣住民同士のコミュニティのほかに、生産者と消費者との間の食の安全に裏付けられたコミュニティ)が破壊される。そして、自治体としての機能を喪失させられるなど、途方もなく甚大な被害を生ずることは明らかである。
 
第5章福島第一原発事故による自治体の被害
・放射性物質が多く降り注いだ地区は浪江町のように、帰還困難な地区となり、長期にわたって住民は元の居住地に戻ることができず、その地域に住んでいた住民は仕事と住居を奪われるだろう。自治体は主要な機能を停止し、支援のための情報の発信と帰還の準備を続けるしかないこととなるだろう。

・仮に放射性物質がそれほど降り注がなくとも、南相馬市の小高区のように、一定期間の避難を余儀なくされた地域は生活インフラが破壊され、人々が帰還して通常の市民生活に戻ることには深刻な困難が生ずるだろう。自治体は除染や町の機能の回復のため、長い闘いを強いられることとなるだろう。

原発事故は生きている町そのものを破壊してしまう。函館市が自治体の生存を賭けて、大間原発の建設差し止めを求めることは住民の生命と生活を守ることを任務とする地方自治体として当然のことであり、また正当な要求である。
 
第6章 旧安全設計審査指針類にも新規制基準にも、重大な不備・欠陥があり安全性は確保されない。
・万が一にも起きてはならない福島第一原発事故が現実に起きており、この悲惨な事故が起きたということは、従前の安全設計審査指針類に不合理な点があったか、或いは、安全設計審査指針類に適合するか否かの判断の過程に看過し難い過誤・欠落があったからである。

福島第一原発事故を踏まえて、従前の安全設計審査指針類を検証すると、特に立地審査指針、安全設計審査指針、安全評価審査指針、耐震設計審査指針、重要度分類指針に関して、重大な不備、欠陥があり、現行の安全設計審査指針類では原発の安全性が確保されないことが明らかである。

・大間原発も含めた全ての原発は、これらの安全性を確保できない指針類に基づく審査を経て設置許可がなされているものであるから、設置許可は無効とし、また、建設・運転を差し止めて、深刻な災害の発生を未然に防止しなければならない。

原子力規制委員会は新規制基準を策定した。しかし、これらの新規制基準によっても、従来の安全指針の重大な不備・欠陥を放置したままであり、このような基準にバックフィットしても、大間原発の危険性は除去することができない。

第7章 大間原発の具体的危険性(その1)想定地震の問題点
 
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・さらに、本件敷地内には、被告電源開発がシーム S-10と称する断層が存在し、明らかに逆断層と認められる様相を呈している。
・これらについて、被告電源開発は、耐震設計上、全く考慮しておらず、大きな地震動に、本件大間原発が安全性を保てないおそれは極めて高い。
 
第8章 大間原発の具体的危険性(その2)テロ対策は不可能である

・福島第一原発事故が示したことは、交流電源が失われれば、炉心溶融に至るということである。そして、交流電源の喪失は、機器の故障ではなく、人為的な破壊活動によっても、引き起こされうる。

・人為的な破壊活動としては、たとえば、原発外における送電線鉄塔などの破壊、原発敷地内のディーゼル発電機の燃料タンクの破壊、受電設備の破壊、特に配電盤の破壊、海水冷却系(最終ヒートシンク)の破壊など、様々な事態が容易に想定できる。

・また、我が国の原発は、すべてが海岸線に沿って立地しており、海からの侵入を完全に防ぐことが容易ではない。

・津軽海峡は国際海峡であり、中心の公海から大間原発までの距離は、約8ないし9キロメートルしかない。時速数十キロの能力を有する高速艇であれば、公海から数分で到達できる。

・日本の原発は、平成13年9月11日の同時多発テロ後にアメリカで導入されたテロ対策措置と比較しても、全くといって良いほど対策がなされていない。航空機についても自然墜落の想定までであり、意図的に向かってくる航空機テロに対する対策は全く想定されていない。

・国は、テロによる原発の安全性への影響に関する基準を定めておらず、合理的な審査基準の定立を安全審査の前提とする伊方最高裁判決の判示に照らして、本件許可処分は違法であり、策定されようとしている対策でも全く不十分である。


第9章大間原発の具体的危険性(その3)シビアアクシデント対策には限界がある
・シビアアクシデント対策は、今回はじめて基準とされるものであり、大間原発も含めたどの原発もこの基準による審査を経ていない。

シビアアクシデント対策は必要ではあるが、シビアアクシデント対策は設計における安全確保策が功を奏さなかった場合の対策であって、本来の安全確保策に対して補助的な地位を占める対策であり、その効果も、本来の安全確保策に比べれば限定的である。

・新規制基準の施行に際し、特定重大事故等対処施設および常設直流電源設備(第3系統目)について5年間の猶予を認めたが、それだけで原発は明らかに5年間は法の要求する設備を備えない違法状態にあることになる。

第10章 大間原発で過酷事故が発生した場合の函館市の損害
第1 函館市と大間原発との位置関係

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・人口約27万5千人を抱える函館市は、大間原発からほぼ真北に位置し、遮蔽物のない津軽海峡を隔てて大間町と対面している。函館市の戸井地域は大間原発から北方僅か23キロメートルにあり、函館市街地までは直線距離で30キロ余である。
・日本の原発において、こうした遮蔽物のない位置関係で27万人余の人口を抱え、原発と向き合う都市は、函館市以外にない。

第2 大間原発で過酷事故が発生した場合の函館市の被害

原発においては炉心溶融などの過酷事故が万が一にもあってはならないものであるが、福島第一原発の事故をみても明らかなように、過酷事故が発生しないと言う保証は全くない。とりわけ、世界で初めてのフルMOX燃料による実験的とも言うべき大間原発の操業は、函館市の住民にとって、常に「死の恐怖」を抱えての日常生活を余儀なくされることになる。

1 大間原発が抱える「死の灰」とその毒性の強さ

・100万キロワットの原発は、年間1000キログラムのウランを燃やすとされ、計算上は年間広島型原爆の1250倍の死の灰を発生させることになる。
・これを大間原発についてみると、同原発は138.3万キロワットであるから、同様に計算上は1年間で同原爆の1700倍の死の灰を抱えることになる。
・一方、計算上プルトニウムの毒性はウラン235の4万倍にも当たることになり、ウランとプルトニウムとの混合燃料を基本とする大間原発が抱える「死の灰」の毒性が如何に強いものであるかを先ず知る必要がある。

2 チェルノブイリ原発事故及び福島第一原発事故との比較

・仮に、大間原発においてチェルノブイリ原発事故級又は福島第一原発事故級の重大事故が発生したと仮定した場合、地元大間町・下北地域はもちろんのこと、毎秒10メートルの風速で、約30分前後に死の灰が道南地域に到達する危険がある。
・その場合、27万余の函館市は短時間に壊滅的な被害に遭い、廃墟と化すであろうことは言うまでもない。

3 小出裕章氏による大間原発重大事故発生時のシミュレーション
略 
4 住民の避難が極めて困難であること

・仮に、大間原発で過酷事故が発生した場合、函館市中心部からの主な避難経路は、
①国道5号を利用して森町方面に向かう経路
②国道227号を利用して厚沢部町方面に向かう経路の二つとなる。
・①の経路については、平時においてすらも、行楽シーズンなどには大変、混雑し渋滞となる。大間原発で過酷事故が発生した場合、数十万規模での避難が予想されるが、交通事情からして、大規模な避難には耐えることができず、大規模の渋滞が予想される。

・②の経路は、渡島中山峠を経由する山地横断道路であり、その大部分が片側一車線の一般国道となっている。国土交通省北海道開発局の作成した「道路の走りやすさマップ北海道版平成18年度」でも、渡島中山峠の走りやすさは、夏季および冬季のいずれとも5段階評価の下位2段階目とされており、避難経路としては、不適合である。

・そして、①の経路も②の経路も、冬期間には、風雪の影響によって、全ての避難経路が大規模な避難に全く適さない状況が生じ得る危険がある。

5 原子力規制委員会は、避難計画も含めて立地審査すべきである

原発を稼働させれば過酷事故を起こす可能性がゼロではない以上、過酷事故が起きた場合の避難計画の策定可能性についても原子力規制委員会において責任をもって検討するべきであり、計画が立てられない原発立地はそもそも立地審査の段階で却下されるべきである。

6 函館市の存立の危機

・福島第一原発の事故が原因で、周辺自治体の市域は放射能によって汚染され、町民の散逸による家族の離散が生じ、公共機関も機能できなくなり、周辺自治体の崩壊が生じている。

・大間原発で過酷事故が発生した場合、函館市の市域が汚染され、住民の土地は奪われることとなる。そして、函館市民の離散が生じ、公共機関も機能を果たすことができなくなり、函館市の有形固定資産は、無価値となる。函館市の地方自治体としての機能は、著しく損なわれることとなり、函館市は壊滅状態となる。

第3 チェルノブイリ原発事故級又は福島第一原発事故級の過酷事故に至らなくても函館市の被害は甚大である
1 放射性物質による被害

・大間原発において事故が発生すれば、そこで放出されるヨウ素131などの放射性物質は函館市周辺に生息するコンブ等の海草類に蓄積される。万が一日本全国に出荷されることになれば、函館のみならず日本全国に被害をもたらす可能性がある。

・さらに、放射性物質は、海藻類を主食とするウニ、アワビ等のほかプランクトンに取り込まれ、食物連鎖を通じて拡散し、その被害は数十年、数百年に及ぶ。

こうした被害は農産物においても同様であり、被害は一定期間の「風評被害」に留まらず、長期間に亘って函館市の水産業、農業に壊滅的な被害を与え続けることになる。

2 風評被害

・函館の産業は観光に支えられており、他の原発立地地域とはその規模も異なるのであって、さらに、函館市周辺海域は、豊富な海の幸に恵まれ、道南の海産物は観光客を引きつける一つの要素となっている。

・仮に、大間原発でトラブルが発生し、一定期間多くの観光客を失うことになれば、函館市及びその周辺の地域経済全体に回復しがたいダメージを与えることになることは容易に予想できる。

・また、海産物、農産物は「放射能汚染」のおそれが疑われるだけで、需要は激減し、価格が暴落するという事態に常に追い込まれる。

・道南の水産業は地域経済の柱とも言える産業であり、その品質・ブランド力に支えられているにもかかわらず、原発の事故による風評被害により打撃をうければ、その売上高は激減し、漁業経営体に与える被害の深刻さは計り知れないものとなる。農業においても、同様である。

・以上のとおり、道南の産業構造は、観光や漁業・農業に支えられており、風評被害に極めて弱い産業体質を持っているという特性があることを銘記すべきである。

第11章 結論
このように、大間原発で過酷事故が発生した場合、函館市の地方自治体としての機能は、著しく損なわれることとなり、函館市は壊滅状態となる。大間原発の設置許可は無効であり、国は電源開発に対し、(函館市が同意するまでの間)大間原発の建設の停止を命じなければならない。また、原告函館市は被告電源開発に対して自らの所有権と自治体としての存立を守り、函館市民の生命と安全を守るため、大間原発の建設停止の判決を求めるものである。




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