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ハリケーン・カトリーナの被害を大きくしたのは沿岸湿地の喪失と乱開発 2005年 [地球温暖化]

2005年9月6日虹屋小針店で配布した「畑の便り」の再録

  連日、ハリケーン・カトリーヌが米国メキシコ湾岸地域ににもたらした惨状が伝えられています。

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100万人がホームレスになり、ニューオーリンズは完全に水に覆われ、再建にはどれほどの時間と費用がかかるかわかりません。ハリケーンの語源はスペイン語のhuracan・暴風の神、西インド諸島付近で発生する台風・熱帯性低気圧。フロリダは緯度的には沖縄とほぼ同じで、沖縄米軍は先日の台風14号はカトリーナに匹敵と評価。)

 昨年12月のスマトラ沖地震・そのの津波からの教訓の一つは、沿岸に育つマングローブ林が波のエネルギーの一部を吸収することで影響の軽減に役立つということ。今回のハリケーンの被害も、米国の環境専門家は沿岸の湿地が保全されていたら被害ははるかに軽かった、湿地の大量の破壊と沿岸地域の乱開発こそが被害を巨大化させたなによりの原因だと指摘しています。

自然の防波堤、沿岸湿地が失われている

 昨年12月のスマトラ沖地震・そのの津波からの教訓の一つは、沿岸に育つマングローブ林が波のエネルギーの一部を吸収することで影響の軽減に役立つということ。今回のハリケーンの被害について、ルイジアナ州立大学の湿地生物地球化学研究所長のロバート・ツウィリー氏は、「ルイジアナがその沿岸湿地の3分の1を失っていなかったら被害ははるかに軽かっただろう」湿地は2.7マイル(約4.3km)ごとに嵐の波を30cmほど減らします。沿岸湿地は嵐と海面上昇に対する自然の防波堤なのです。「何か破局が起きるまで、その湿地の価値を評価しない。」。「20年から30年前には何の影響もなかった嵐が、今では洪水を引き起こしている。これは多くの人々に警鐘を鳴らしている」

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  ミシシッピ河は、ニューオーリンズを通ってメキシコ湾に注ぐ米国第二の長さをもつ大河。20世紀の初期から、洪水防止と航行の改善のために工事が行われてきまし。流れの直線化、支流の堰きとめ、浚渫、数百マイルにわたる堤防の建設などの工事が行われてきた。例えば、ニューオーリンズの大部分は海面より低く、5.3㍍から7㍍の高さの堤防に囲まれています。

  この結果、湿地そのものにミシシッピ河の運んでくる土砂などの堆積し、湿地が埋まっていきます。本来なら、河口付近に堆積し湿地を継ぎ足すはずの河が運ぶ膨大な堆積物が湿地を減少させています。また工事によって地域を巨大な港湾地域、石油・ガス・化学加工地域に変わりました。石油・ガス会社は湿地を貫く水路を掘り、底から石油を汲み上げた。そのために、地盤が沈下、海水が浸入して植生を殺した。沿岸湿地の130万エーカー(約53万ヘクタール)が失われました。現在でも年に約1万エーカー減っています。このため、地域では、洪水は定期的にやってくるようになっています。

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 この自然からの警告と多くの科学的証拠から、2002年には140億ドルを注ぎ込む30年計画ができました。これは新たな防壁を建設し、堤防を改善し、また沿岸湿地の再建のために河の3分の1の流路を変更しようとするものです。ところが、ブッシュ政府は、僅か20万ドルしか出していない。この遅れと歳出カットの理由はイラク戦争と国内安全保障(テロ対策)の費用に資金を回したからと説明されています。経済的損害額は1000億ドルを超えるだろうとのこと。30年計画の7倍以上、米軍のイラク駐留経費20ヶ月分です。


諫早湾干拓などはどうなのか

ひるがえって、わが日本を見ると諫早湾干拓が合いも変わらず進められています。国の公害等調整委員会は30日、農水省の主張を認める裁定を出しています。ハリケーン・カトリーヌのもたらした被

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害を台風がますます強大化しているにもかかわらず、沿岸湿地(干潟)潰しの公共事業に利権を持つ沿岸開発推進者は、わが国とは無関係な外国の出来事と決め込むでしょう。しかし、その事業費を現在・将来に負担し、台風の被害をこうむる私たちは、他山の石と見るべきではないでしょうか。

  先のルイジアナ州立大学のロバート・ツウィリー氏は、「我々は湿地をどのようにして保護し、回復させるかを知っている。我々が必要としているのは、資金供給の開始だけだ。さあ進もう」と語っているそうです。果たしてブッシュ政府がテロ対策やイラク戦争の経費を削ってまで、このような根本的対策に資金を廻すか疑問です。日本では、沿岸湿地(干潟)潰しの公共事業に資金(税金と国債=預貯金)が廻らないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。

食への影響 大豆の値上がり?

 ニューオーリンズは、ミシシッピ川の下流にあり、穀物の集積地であり米国産穀物の最大の輸出港。日本の配合飼料に使われる約1200万トンのトウモロコシのうち、ニューオーリンズの港からの船積みされる割合は6割強。大豆は7割。今回のハリケーンで、電力が止まるなどで輸出施設の機能が停止、船が貨物を積めなくなっています。今のところ輸出再開のめどは立っていません。楽観的な見方で1,2週間ストップ、ライフラインが復旧し作業員が戻ってこれるまで約1ヶ月かかるとの見通しもあります。

日本国内には十分な蓄えがあるため、大きな影響はないと言われていますが、復旧が長期化した場合、他の港に陸路を使って穀物の集積する手間や経費で価格が上昇する懸念が指摘されています。 虹屋では、年初からの大豆価格の上昇で、納豆の価格が変わりました。また更に大豆価格が上昇し、国産大豆の価格もつられて上がらないか心配です。


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