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炭酸ガス、陸のバイオマス利用で増加を食い止め、海のバイオマス増加で減らす 2005 [地球温暖化]

2005年7月12日小針店で印刷・配布した「畑の便り」に加筆

  梅雨前線は、本来は日本列島の真ん中に位置し、南北に上下することで各地に雨をもたらします。ところが今年は6月は南海上に停滞し極端な少雨・乾燥。6月末から7月にはいると豪雨で災害とメリハリの付きすぎた動きです。 

温暖化でフィリピン沖の海水温上昇が遠因

 梅雨前線は、本来は日本列島の真ん中に位置し、南北に上下することで各地に雨をもたらします。ところが今年は6月は南海上に停滞し極端な少雨・乾燥。6月末から7月にはいると豪雨で災害とメリハリの付きすぎた動きです。気象庁気候情報課によると「フィリッピン沖の対流活動の異常によるもので、温暖化の影響も否定できない」
 
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  梅雨前線の動きは、フィリッピン沖の上空にある空気の対流活動で左右されます。対流が活発なると、太平洋高気圧の勢力が強まり北へ張り出し、列島上空に梅雨前線がかかります。そしてオホーツク高気圧との押し合い圧し合いで前線が南北に上下します。逆に対流が弱いと、前線は本州の南海上にとどまります。このフィリピン沖の大気の対流を形作るのは直下の海水面の水温です。
 
  地球温暖化の影響でフィリピン沖の海水温度が全体に上がりバランスが崩れ、対流活動が弱くなった。そのため前線が本州の南海上に停滞し、梅雨入りが九州では平年に比べ2~17日遅れました。問題は、その後も本州南の前線は動かず停滞を続け、26日には消滅してしまいました。
 
  次に、梅雨前線が現れたのは北陸・東北地方に27日。新潟も梅雨入りしました。そしてこの前線は4日間も停滞し洪水などの被害をもたらしました。7月にはいってようやく四国、西日本に梅雨前線が移動したものの、南から暖かい空気が入ってここでも集中豪雨。
 
  その大本は、地球温暖化によるフィリピン沖の海水温度の全体的上昇。気象庁は温暖化が進めば、大気の対流活動が弱まり太平洋高気圧が北へ張り出さなくなり、梅雨前線は北上しない傾向が強まると見ています。そして列島にかかってもそこで停滞し集中豪雨となる??
 
  気象庁の「アメダス(地域気象観測システム)」のデータを分析すると、地球温暖化の影響が主な原因とみられる「短時間強雨(1時間に50ミリ以上の雨が降る)」や1日の降水量が200ミリを超える「大雨」の回数が近年、大幅に増えています。
  また近年は年ごとに、湿った空気が流れ込む「水蒸気の通り道」が一定の場所に固定され、同じ地域で大雨を繰り返す傾向が強まっています。昨年7~9月に新潟県や福井県を繰り返し襲った集中豪雨や、今年6月28日と7月2日に新潟県や富山県などの北陸地方で相次いだ大雨も、この傾向の表れで、理由ははっきりしないが今後も同様のケースが多くなると考えられると気象庁は警告しています。 
 
高CO2濃度で、稲ばかり大きくなって米が稔らなくなる

  温暖化の原因は、いわずと知れた二酸化炭素CO2などの温暖化ガス。一方、CO2は植物作物の肥料栄養分でもありますから、大気中の二酸化炭素の増加が作物収量を増加させる、CO2濃度が上がると光合成などが活発になり、穂の成長が促進、収穫量も増えるといった見方、実験もあります。実際のところどうなのでしょうか。
 
 
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「稲ばかり大きくなっても、コメは稔(みの)らない」夏の開花時期の気温が高くなると受粉ができなくなり、穂の中に稔らなくなります。34度以上になると減り始めて、36度で半分になります。研究者は、二酸化炭素の濃度が約1.5倍(550ppm)になると「気温が32度程度でも稔りが悪くなる可能性が高まる」と指摘しています。(農業環境技術研究所の長谷川、吉本さんら)
 
  植物の葉には気孔という窓があり、水や二酸化炭素などを出し入れしています。 その葉の気孔は、CO2濃度が高まると閉じてしまいます。余計なCO2を吸収しないようにするためですが、水分の蒸発量も少なくなります。いわば「汗」をかけない状態になり、葉や穂の温度は上がり、湿度は下がり乾燥します。気温が32度程度でも穂の回りは34度以上と同じような状況になり、稲は大きく育ってもコメが稔らなくなる恐れが出てくると指摘しています。
  欧州や日本は温暖化対策で、21世紀中に大気中の濃度上昇を550ppm程度までに抑えようとしています。しかし、この目標を達成するだけでは植物・作物の生育への影響を避けることができず、様々な被害が出ることが指摘され始めています。
 
陸のバイオマス利用で増加を食い止め、海のバイオマス増加で減らす

  CO2濃度を高めているのは、石油、石炭などの化石燃料を使うことで過去に蓄積・固定されていた二酸化炭素が放出されるからです。この点、廃材や生ごみなどのバイオマス(生物資源)は、新たな二酸化炭素の放出がありません。木材や作物が、光合成で大気中から固定した二酸化炭素が出るだけですからプラス・マイナス・ゼロです。
 
  しかし、生ごみや廃材の収集・分別の手間、発電所への運搬費用、発電効率の低さから高コストになり、実用化が難しいと言われていました。技術開発が進み道が開けつつあります。
 
  それは、生ごみや廃材などを、まず「蒸し焼き」にします。熱分解しガス化を行います。それで出てくる可燃性ガスを集め、それでガスタービン発電を行います。ガスを取ると炭ができますが、それを蒸し焼き=ガス化の際の燃料として使います。ガスータービンからの排気ガスも高温なのでガス化の熱源に使われます。発電効率も高く、全体としてのエネルギー利用率も高い。
 
  廃材・間伐材など木質バイオマス発電は、従来のそれらを燃料にして水蒸気を作り発電機を回すやり方ですと発電効率は10%程度でしたが、中外炉工業が開発したプラントは20%超。化石燃料は使わず、高効率なため従来よりも発電で使う廃材は三分の一です。同様の原理で生ごみやか紙くずプラスチックなど様々な廃棄物でも発電できるプラントが開発されており、発電効率は30%程度です。
 
  現在ある実証プラントは製材所から出る日量5トンの廃材チップを燃料としています。電力需要の多い昼間は180kW、需要の低い夜間は原料を絞ることで48kWの発電を行っています。小規模ですが、廃材の収集・分別の手間、火力発電所への運搬費用が高コストの原因でしたから、小規模な方が製材所など廃材発生場所に建設でき便利なのです。
 
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  日本で林の中に放置される間伐材などは年間300万トン余り。発電に使えば150万世帯分の電気をまかなえます。日本のバイオマス資源全体では、石油換算2100万トン程度が使用可能といわれています。上の技術革新が進めば、日本の年間エネルギー全使用量では4~8%程度がバイオマスでまかなえます。
 
  日本では、バイオマス利用はこれ以上化石燃料使用量を増やさない、二酸化炭素排出量を増やさない効果が期待できます。また、これから化石燃料の使用が増えるであろう開発途上国に目をやると、この小規模であることが逆に利点になります。
 
  既に開発途上国では薪などバイオマスが使われています。総量で日本の石油消費量と同じくらいのエネルギー量です。この部分をバイオマス発電に転換すれば、化石燃料の使用増加を防げますし、導入規模によりますが現在発電用に、途上国で燃やされている化石燃料を減らすことができます。途上国の村々町々で使われている=収集できるバイオマスの量は限られていますから、小規模であることが利点になります。
  また、温暖化対策として効率の良い火力発電所や水力発電所、原子力発電所を建設し従来に比べて減ったCO2量を売買するやり方(排出権取引・クリーン開発メカニズム(先進国-途上国間))が行われていますが、これらの大規模発電所では、発電所だけでなく消費地・家庭まで電気をおくる大規模な送電網と運用システムが不可欠です。小規模バイオマス発電では、設置された近隣に送電網を建設するだけですみます。
 
  陸のバイオマス(生物資源)は、二酸化炭素濃度ではプラス・マイナス・ゼロです。積極的に減らすには、海の活用が不可欠です。海の植物プランクトンなどバイオマスからできるマリンスノーは海底に沈殿蓄積し、深海底に固定された二酸化炭素は大気中に出てきません。純減少になり、そこが陸のバイオマスと違います。近年、以前に比べプランクトン量の減少した海域を研究し、その原因を探り、海のバイオマスを増やす研究が行われていますが、それ別の機会に。
 
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