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東京電力のフィルターベントの性能評価は、空想的条件での実験データで信頼性に乏しい。 [AM-ベント、排熱]

2014年2月11日、第4回新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会が開催された。

東京電力のフィルターベントの性能評価は、空想的条件での実験データで信頼性に乏しい。

東京電力は格納容器の雰囲気温度が200℃(??聞き間違えた)、最高使用圧力の2倍をベント実施の要件としている。これまでの破壊実験などから最高使用圧力その2倍位から格納容器上部のトップフランジの取り付け部から漏れが始まると考えられている。最高使用温度は、ドライウェルは171℃、圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)は107℃であるが、電気ペネトレーションなど貫通部の充填物の耐熱性から200℃としていると説明していた。

東京電力は「防災において想定する事故シナリオについて」でベント実施を最高使用圧力の2倍の限界圧力到達の時点、基本ケースで約25時間後、追加シナリオ(1)で約20時間後、追加シナリオ(2)で約22時間後、追加シナリオ(3)で約18時間後としている。「フィルターベント装置の除去性能の整理」では圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)からベントガスを取り出すとしている。

ベント操作によって圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)は減圧される。圧力抑制プールの温度、つまり水温が大気圧の沸点100℃を超えていると減圧沸騰が起き水蒸気が生じる。またエントレインメント(微細な水滴)が生じる。この圧力抑制プールの温度、つまり水温が全く検討されていない。水蒸気やエントレインメント(微細な水滴)が考慮されていない。

原子力安全解析所の研究から

発災から約18~25時間後であり、その間の崩壊熱を蓄えた圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)は最高使用温度104℃を超えていると考えられる。減圧沸騰が起き水蒸気が生じる。

平成9年度に㈲原子力発電技術機構 原子力安全解析所が行った耐圧強化ベントに関する研究を参照すると、圧力抑制プールの温度が約350K(約77℃)では、エントレインメントの割合は0.0、温度が約373K(100℃)を超えるころからエントレインメントによる放出が生じ、プール温度が436K(約163℃)で0.12までの範囲でおおむね線形に、水温と正比例で増加する。380K(約107℃)では0.018となる。
1382370952.jpg
㈲原子力発電技術機構 原子力安全解析所
平成9年度
アクシデントマネジメントに係る放射性物質挙動の評価
=耐圧強化ベント=
に関する報告書
H09.3.83
なかなかDLできないので参照の画像を下記に置きます

発災から約18~25時間後の圧力抑制プールがこの107℃程度とすると、柏崎刈羽原発6号機、7号機の圧力抑制プール水量は約3600トンだから、その0.018つまり約60トンのエントレインメント(微細な水滴)が、生じる。圧力抑制プールの水には、通過した原子炉水の水蒸気に含まれていた放射能が捕獲されているから放射能で汚染されている。そのプール水から生じるエントレインメント(微細な水滴)は、当然にその放射能を含んでいる。捕獲される率は低く見て99%(DF100)とされている。その0.018、約60トンのエントレインメント(微細な水滴)には事故炉から水蒸気と共に出てきた放射能の約1.7%が含まれている。

配管の閉塞

減圧沸騰で発生する水蒸気は、格納容器からフィルタベント設備に至る配管のなかで冷やされ凝縮しエントレインメント(微細な水滴)化する。その際に周囲の放射能を取り込むであろう。また放射能の微粒子にエントレインメントが付着する。これらや100℃に近い膨大なエントレインメント(微細な水滴)などのエアロゾルは、通過する管の管壁に付着する。

原子力安全解析所の研究によれば、エアロゾルの数十%が付着する。約60トンのエントレインメント(微細な水滴)のエアロゾルの数十%、数十トンの放射能水が配管部に付着する。これによって管は閉塞状態化する。東京電力はフィルターベント系統の第二弁を「中間開」の開度にする運用で、ベントガスの流量を調整するとしている。配管に付着する数十トンの放射能水によっても同様の効果、ベントガス流量の減少が起こるであろう。屈曲部やU字管のような構造になっている配管部では特に付着、放射能水が溜まりやすい。それで全閉状態になるのではないか?付着した放射能水で配管部が全閉状態になれば、弁を開操作してもベントは起きないことになる。

1392385459.jpg

東電フクシマ核災害では、圧力抑制プール点検にいった作業員の靴の底が融けたと報告されている。靴の底は何℃で融けるであろうか。靴をお湯に漬けても融けないから100℃以上ではないか?またベント操作を実施し弁を開けても、ベントが起きたか、つまりベントガスが配管部を通過し出たか不明である。エントレインメント(微細な水滴)などのエアロゾルにより配管部が閉塞し全閉状態になったとすれば、弁を開けてもベントガスが出なくても不思議ではない。

東京電力は「防災において想定する事故シナリオについて」で交響した解析で、ベント実施を最高使用圧力の2倍の限界圧力到達の時点として基本ケースで約25時間後、追加シナリオ(1)で約20時間後、追加シナリオ(2)で約22時間後、追加シナリオ(3)で約18時間後としている。圧力を決める要因である格納容器温度を解析し導出しなければ、この時刻は割り出せない。

格納容器の一部である圧力抑制プール(サプレッション・チェンバ)の温度、つまり水温は当然解析して出している。「想定する事故シナリオ」P21の「熱バランスに基づくフィルタベント実施時間について」で水温と水量の積である「格納容器内初期水量の顕熱」を取り上げているから、水温は解析してある。

東京電力は基本ケースで約25時間後、追加シナリオ(1)で約20時間後、追加シナリオ(2)で約22時間後、追加シナリオ(3)で約18時間後のベント開始時刻での、圧力抑制プールの水温の解析値から減圧沸騰の有無、発生するとみられる水蒸気量、エントレインメント(微細な水滴)量を割り出せる。

その量から、柏崎刈羽原発6,7号機のフィルターベント設備の配管部、格納容器からフィルターまでの配管部での、これらのエアゾルの管壁沈着・付着量が見積れる。算出式は原子力安全解析所の研究で平成10年には公表されており、公知である。配管部の配管の長さや形状は東京電力だけが知っている。恐らく機密事項である。その見積値から配管部の閉塞の程度、半分しか開いていないとか、10分の一しか開いていないとか全閉とかがわかる。全閉状態になるのなら、それ以降はベントが起こらない。

フィルタベント設備の性能評価を、専らフィルタのDF(濾過係数、放射能の捕捉率)で行っている。いくらDFが高くても、配管部がベントガスに含まれるエアロゾルで閉塞してベントガスがフィルタまで届かなければ宝の持ち腐れである。まず、ベントガスがフィルタまで継続的に届くのか確認すべきである。

フィルタの性能低下につながる水温上昇

さて、減圧沸騰で発生する水蒸気やエントレインメント(微細な水滴)などのエアゾルのうち管壁に付着しなかったものがフィルターベント装置に到達する。この装置は直径:約4m 高さ:約8mで中心を直径0.4mのベントガス通過管が通っている。だから12トン(12㎥)の水が入ると水面が約1m上昇する。東電資料の「フィルタベント装置の除去性能の整理」の8Pの実機挙動評価の評価図からは通常の水位1.0mから1.5m上方の2.5mが上限水位となっている。東電は、この以上の水面高ではベントガス噴出による水の吹き上がりなどにより金属フィルターが水に包まれ濡れて、放射能エアロゾルの捕捉力が低下することを懸念している。

だから、水蒸気やエントレインメントなど約20トン弱がこのベント装置に捕えられ溜まると水位が1.5m上がり上限水位に達する。約50トンなら金属フィルターの下端に水面が達する。東京電力は「上限水位に到達、排水作業を実施」と記している。東電資料ではFVタンクドレインラインとある配管、弁による排水と思われる。この水は放射能で汚染されているから、どのように処理するのであろうか?

放射能汚染水タンクに貯留となら、その容量がどれ位かで、このフィルターベント装置の稼働能力が制限される。

この排水量を決める要因は、一つはベント開始時の圧力抑制プールの温度である。それによって減圧沸騰で発生する水蒸気量、ともに発生するエントレインメントが左右される。この二つとベント開始後に崩壊熱で発生する水蒸気によって、フィルタベント設備の水に崩壊熱が持ち込まれます。その熱量で設備の水の水温が上がります。東電によれば「水温が高いほど,水蒸気の凝縮効果が小さくなるためDF(捕獲効率)は小さくなる」。100℃になれば沸騰し、設備に捕えられた放射能が再放出することになります。熱水の排水と消火系による給水が行われることになります。
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東京電力は「防災において想定する事故シナリオについて」でベント開始時を解析しています。同時に解析できる温度を公表していません。フィルタベント設備の性能試験の際には「事故シナリオ」で基本ケースとした場合で行ったとあります。(P8、補足2)。発災から25時間後にベントとなる基本ケースで、25時間後の圧力抑制プールの温度で想定されるベントガスの水蒸気量、エントレインメント(微細な水滴)の微粒子・エアロゾルを含んだ試験用ガスを用いなければ、結果に実用的意味がありません。
ところがP5には「試験用微粒子は,TiO2粒子(密度4.23g/cm3),Fe2O3粒子(密度5.24g/cm3)PSL粒子(密度1.0g/cm3)を使用(CsI粒子の密度は4.5g/cm3)」とあります。水蒸気量やエントレインメント(微細な水滴)の微粒子の記載はありません。無視しています。
この二つ形態で主にフィルタベント設備の水に崩壊熱が持ち込まれ、その熱量で設備の水の水温が上がり「水温が高いほど,水蒸気の凝縮効果が小さくなるためDF(捕獲効率)は小さくなる」。このDF減少は、圧力抑制プールのプール水でも同様の除去効果があり、スクラビングといいます。

スクラビングは、最初は水温が低い、常温だからDF1000(千分の999)はあるが原子炉からの水蒸気流入で水温上昇するから減少するから、全体としては全期間的にはDF100と置いて、いや10の方が適切など論議されています。ですから、水蒸気量、エントレインメント(微細な水滴)などによる水温上昇はDFを考える、評価する上で欠かせません。

東京電力は、「除去性能の整理」P3で性能試験では「水温としては常温として設定」としています。水蒸気量やエントレインメント(微細な水滴)の微粒子はここでも無視されています。DFに大きな影響を与えるこの二つによる水温上昇を無視し除いた試験データには、何の実用的な価値はありません。実用機器であるフィルタベント設備の性能評価には全く使えません。

水温的に最も除去性能の高い時が継続するという有り得ない空想的条件で実験して、性能評価しています。全く信頼性に乏しい。


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