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7月29日吉田調書、(10)東電のアーリーベント 爆発⑤ 13-14頁 [東電核災害検証、吉田調書]

 吉田 昌郎 2011年7月29日付 事故時の状況とその対応について  (PDF:7,170KB)
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/hearing_koukai/051_koukai.pdf
 

米国のアーリーベント

発災から約1年半後、2012年8月に米国原子力発電協会(INPO)は「福島第一事故からの教訓」という特別報告を公表している。
http://www.gengikyo.jp/report/tohoku_F1jiko_INPO_report.html

その和訳の15、16頁で
「日本の BWR では、米サンディア国立研究所で実施された格納容器の健全性試験の結果の検討により、ベント実施前に格納容器圧力が設計圧の2倍に達することを許すような手順ガイダンスが決められた(NUREG/CR-6906/SAND2006-2274 [2006 年7 月発行]を参照)。」
「燃料損傷が発生した場合、アクシデントマネジメントガイドでは、原子炉格納容器(PCV)の最高運転圧力の2 倍に達すると予測され、格納容器スプレイの復旧が見込めず、注水量がトーラスベントラインに及んでいない場合には、ベントが許されるということが記載されている。格納容器のベントには発電所長の許可が必要である。」
「ベントを遅らせる戦略を採用することが決定された際、格納容器圧力が高い状況下での水素漏洩量の増加の可能性については十分に対処されなかった。」

「概して、日本の電力会社が 1980 年代以来用いている原子炉格納容器(PCV)のベント計画は、放射性物質の放出を避けるため、できるだけベントを遅らせるよう考えられている。この戦略に沿って、ベントラインには、格納容器圧力が最高運転圧力に達するまで破裂しないように設計されているラプチャーディスクが備えられている。」

「比較として、米国の BWR は、一般的に早期ベントを妨げるラプチャーディスクは備えておらず、非常時の運転手順では格納容器の設計圧力に到達する前にベントを開始することが要求されている。燃料損傷が起こった場合には、手順書ガイダンスにのっとり、PCV 内での爆発の可能性を減らすため、格納容器内の水素濃度に基づき早期ベントが要求されている。サイトERC(発電所対策本部) と相談し助言をもらった上で、当直長によってベント開始が決定される。」

Enformable-BWROG-Recommendation-5-input-rev-12-14-2011_Page_01-150x112.jpg28頁には
「1980 年代以降、日本の事業者及びベンダーが米BWR-OG(Owners Group )で作成されたアクシデントマネジメント戦略から外れる意思決定を行った。この決定は、技術的解析結果や異なる戦略の関連リスクに対する異なる見方に基づいている。たとえば、燃料損傷が起こった場合、原子炉格納容器圧力が最高運転値の2倍になると予想されない限りベントを実施しないというように日本の格納容器ベントに対するアプローチは、米BWR-OG ガイダンスとは異なっている。
この早期ベントに関する米BWR-OG の戦略からの逸脱は、希ガスを含む放射性物質を早期に放出することを防止するためになされた。」

「手順では、爆発の可能性を減ずるために水素ガス制御に可燃性ガス制御系の運転を実施することになっているが、この系統は電源がなかったので運転できなかった。EOP でもAM ガイドでも水素制御のためのPCV ベントといった他のアプローチは含まれていなかった。他の国々のBWR で使っている手順では、低い格納容器圧力で格納容器の水素を大気へベントすることができる。
ベントを遅らせることは、PCV における水素爆発の可能性を大きくすることに加え、(例えば、高圧で漏洩しやすいドライウェルのガスケットなどを通って)原子炉建屋への水素漏洩量を増加させ、炉心に注入できる低圧注水量を減らすとともに、大気への崩壊熱放出を減少・遅延させ、大きな漏えいを伴う原子炉格納容器の損傷の可能性を増加させる。」

この報告を承けて「ベントによる放射性物質の放出を嫌った日本の社会事情に合わせて運用しようとした。その点に根源的な誤りがあったとも受け取れる。」という方、日本経済新聞編集委員の滝順一氏のような方がいた。http://www.nikkei.com/article/DGXNZO46247170Y2A910C1000000/?df=3

東京電力のアーリーベント (低い圧力でのベント)

しかし、格納容器の設計圧力に到達する前の早期ベント手順を事故前から東京電力は整備していた。東電は新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会に次のように答えている。
「ベントについては,当社としても米国と同様アーリーベント(低い圧力でのベント)を実施する手順を整備しており,格納容器圧力が圧力開放板の設定圧力に到達したタイミングでベントする仕様としておりました。しかし,福島事故で経験したようにベントのタイミングについてはプラントの状況にあわせて柔軟にコントロールできるような設備であるべきであったと考えます。」
(圧力開放板とは、ラプチャーディスク・破裂弁のこと。福島事故検証課題別ディスカッションの6シビアアクシデント対策
http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356771524701.html

東電核災害で、福島第一の2号機、3号機ではアーリーベント(低い圧力でのベント)の作業が行われている。ラプチャーディスク・破裂弁が設定圧力、格納容器の最大使用圧力で破裂しなかったのでアーリーにはなっていない。この手順、発災時アーリーベントの東電手順が米国の様に『燃料損傷が起こった場合には、PCV 内での水素爆発の可能性を減らすため、』ベントするものなのだろうか。東電のアーリーベントはメルトダウン、メルトスルーの時でも行うような手順なのだろうか。

スイスのアーリーベント系設備

下図は2011年12月27日の第5回東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会での資料である。奈良林 直 北海道大学 教授は、このスイスの原発を次のように説明している。
「ベント系の周到な準備がされているんです。東電さんのプラント、我が国のプラントは停電すると先ほどのSGTSのバルブをたくさん操作しなければいけないんですが、こちらは系統図にございますように、バルブを1つ操作すればいいんです。更にラプチャーディスクが今回割れなかったわけですけれども、なかなか割れなくてやきもきする状況でしたが、その場合にはラプチャーディスクと並列にバルブが入っていて、もっとラプチャーディスクが割れる前でもベントができる。つまりアーリーベントができるという構造になっています。」
「この系統、配管は放射性物質を含んだ気体が来てしまいますので線量が上がってしまいます。上の写真のとおり、バルブとラプチャーディスクの配管のところなんですけれども、四角い箱みたいなものがずっと伸びていますが、これは実はバタフライ弁の駆動軸につながっていまして」「バルブを本当に手で、このハンドルを開けなさいということで、勿論電気があれば遠隔操作で電気があるんですが、こういうベントしなければいけないというのは大体SBOのときですね。だから、そこまで考えてベントの機能が設けられています。」

 sankou5-3-11b.jpg


柏崎刈羽原発では、次のように変えたと東電は公表している。
全体のベントのシステムは、耐圧強化ベント系とフィルター系の2系列。耐圧は米国と同じく破裂弁ラプチャーデスクを除いた。フィルター系、スイスはヨウ素ガスを捕集し、放出率を100分に一以下にする薬液があるが、東電にはない。

131031_sa01_vento,2.jpg
バルブも遠隔から手動で開閉できるようにしてある。
131031_sa01_vento,2-9.jpg
131031_sa01_vento,2-11.jpg
つまり、ベント系は早期ベント、アーリーベントが可能。それも核燃料が損傷、溶融メルトダウン、溶
融貫通メルトスルーしても可能になっている。

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