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高レベル廃棄物の分離・核変換と地層処分の関係に関する議論の抜書き [使用済核燃料、再処理、廃棄]

加速器によるTRU核変換処理 (ATOMICA、07-02-01-03、2004年01月更新記事)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=07-02-01-03

「高レベル廃棄物から有用核種とともに長寿命放射性核種を分離(群分離)して核反応により、安定または短寿命核種に核変換することで、長期にわたる環境への負荷を低減することができる。これが分離変換技術である。産業廃棄物においてごみの分別収集、リサイクル、埋設により処分量を低減する考えと同様である。」

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安 俊弘「高レベル放射性廃棄物地層処分:概念発展史と今日の課題」より抜書き

科学 2013vol,83 N0.10 1152

 高レベル放射性廃棄物に含まれる放射性核種のうち、長寿命で放射性毒性の高いアクチニド、なかでもプルトニウム、ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムを分離し、それらを中性子によって核分裂させることによって他の毒性の低い寿命の短い核種に変えるという分離・核変換(Partitioning and Transmutation, P&T、パーティショニング・アンド・トランスメディション)のアイデアは197O年代から繰り返し提案されてきた。

初期のP&Tは廃棄物処分の方法として考えられたが、197O年代後半にその有効性が否定された(*35)ことも同時期に地層処分の研究が本格化した理由の一つであった。

1990年代に入り、地層処分の代替法としてではなく地層処分を補完しより安全性の高いものにするオプションとして、P&Tを再検討する動きが広がった(*36)

0ECD/NEAが国際的なプロジェクト、オメガプロジェクト(*37)を立ち上げた背景には、日本からの提案があった。当時、日本原子力研究所で核変換分野の研究をリードしていた向山武彦らを中心として、日本のP&T研究は世界を主導する位置にあった。米国でも金属燃料高速炉と乾式再処理を組み合わせたALMR計画が進められた。

これらの研究の特徴的な点は、地層処分が社会的合意を形成できない状況を、P&Tの適用により解決しようとしたことである。

 P&Tで毒性の高い長寿命のアクチニド核種を低毒性・短寿命の核分裂生成物に変えることにより、廃棄物として残る物質の毒性は、数十万年から数百方年という長さではなく数百年程度で、使用済み燃料のもとになったウラン鉱石に含まれた毒性を下回るようになる。

しかし、ここで注意しなくてはいけないのは、P&Tを用いたとしても廃棄物がすべて短寿命の核種に変換されるわけではないことである。核分裂生成物の中にはTc-99(テクネチウム、半減期は21万1100年)、Cs-135(セシウム、230万年)、Se-79(セリウム、6万5千年)、I-129(ヨウ素、1570万年)のように数十万年から1700万年という長い半減期をもつ核種が依然として含まれているため、P&Tを用いても地層処分はやはり必要となる。

したがってP&Tをした場合としない場合の地層処分の性能を比較し、その効果を確認しなければならない。P&Tを行わない場合の使用済み燃料や高レベル廃棄物を地層処分した場合、長期の健康リスクをもたらす核種高いアクチニド核種ではなく、これら長半減期の核分裂生成物であることが多様な地層と人エバリアの組み合わせで確認されている。

 これはアクチニドが還元性雰囲気で水に非常に溶けにくいという性質に起因する。また、鉱物によく吸着するためたとえ水に溶けたとしても移行速度が非常に遅くなる。それに対して、上記の核分裂生成物は溶解度が高く吸着性が低いので地下水に乗って比較的遠く動く。そのため人間の生活圏に到達する。このように地層処分によってもたらされる放射線学的リスクの低減という意味からは、P&Tの効果は限定的である。つまり、アクチニドを核変換してもしなくても地層処分の性能にはあまり影響がない。(*38)

 地層処分のサイト選定において困難に直面している状況において、地層処分の性能向上の効果が目に見えて現れないP&Tを適用したとしても社会的合意が進むはずがなく、むしろ社会的合意促進を掲げてP&Tを勧めるのは工学者の信頼性を損ねるどの主張が地層処分コミュニティからなされた。(*39)

その後出された種々の報告書や論文においても、どのようなP&Tを行っても地層処分が必要であることは変わらない、ということが強調されるようになった。

 そのような中、P&Tが有効となる理由になりうる論点として浮上したのが、処分の持続可能性である。すなわち、今後原子力利用を続けたとき、長半減期核種を含むがゆえに、最後の段階である地層処分施設に収容される放射性廃棄物の量は増え続ける。

たとえば米国が今の発電容量を維持した場合、ほぼ30年ごとにヤッカマウンテン級(7万トン収容)の処分スペースを増設しなくてはならない。日本の場合には、50基の原子力発電所が運転すると年間約1000本の高レベル廃棄物が発生するので、4万本収容の処分場であれば1世紀に2つ半の処分場が必要になる。

現在のサイト選定の難しさを考えれば、これは非現実的なペースである。P&Tは処分施設の稼働年数を飛躍的にのばす技術的オプションとしてみるべきであるという論が登場した。(*40)

*40・・ヤッカマウンテンのように坑道を埋め戻さない場合には,廃熱の換気、廃棄体の配置換え、「多階]だて、あるいは坑道離間距離の調整のように処分場の設計の変更で処分場の容量を拡大することが比較的容易である。たとえば(略 下図参照)

花崗岩処分場のように埋め戻しをする場合はP&Tによる処分前の処理が有効になる可能性がある。たとえば(略 下図参照)

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