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笹子トンネル事故から原子力規制庁の再稼働手続き前倒しを見る [柏崎刈羽原発、施設設備]

原子力規制庁が、東京電力福島第1原発事故を受けた原発の新たな安全基準を原子力規制委員会が来年7月までに決めるるのを待たず、来春に骨子がまとまった段階で既存原発が新基準に適合するかどうか事前調査に入る方向で検討しているそうです。
一体何をお役人たちは考えているのでしょうか。現在の規制庁のお役人たちは、5年後までは経産省など出向元省庁に戻れる身分ですので、戻った後のことを考えているのでしょうか?
そんなに急いで再稼動できるのでしょうか。その策定中の新基準は如何なる物になるのでしょうか?

笹子トンネルと同種のアンカーが原発で多用
笹子トンネルで崩落事故が9名の方が亡くなりました。トンネル本体上部の天井(覆工コンクリート)と、天井板を支える吊り金具をつなぐボルト(ケミカルアンカー、直径1.6cm、長さ23cm)で損傷、抜けている箇所がありました。
コンクリート劣化は原発でも大きな問題です。運転前検査を行い、運転開始後は、定期的に目視で表面のひび割れや塗装面の劣化等を点検し補修を実施しています。柏崎刈羽原発1号機の地下5階の外周壁の内側部分に、地下水の漏水跡が確認されて補修されています。壁内部の鉄筋の腐食状態(強度)などが気になります。
また元々のコンクリートの品質の問題があります。海砂を使ったコンクリートなどは早く劣化します。こうしたアルカリ分の異常に多いセメントが市場に大量に出回った時期は1969~79年の約10年間で、今回事故を起こした笹子トンネルは、1975年(昭和50年) 完成ですから、まさにこのコンクリートを使っています。この時期に建設された原発は12機現役です。

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柏崎刈羽原発では、定められた品質に適合するものとして製造された後に現場において水増して薄いコンクリート・通称「シャブコン」が使われたという告発情報があります。いずれにしろ建設から30年以上経った原発建屋のコンクリートの劣化は、新基準ではどう評価し扱われるのでしょうか?

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また今回事故を起こした笹子トンネルと同タイプのアンカーが、ケミカルアンカーが原発内の配管や機器のサポートベースのほとんどの物で使われています。

コンクリート面にボルトを定着させるべく、ボルトの径より少し大きい穴をドリルで開け、そこに云わばケミカル接着剤(エポキシ系など)を充填して、ボルトを埋め込み、中のケミカルが硬化することで接着定着させるというケミカルアンカーです。コンクリートに穴をあける際に、砂利に当たった時必ずドリルの錐先が砂利のない方へ逃げながら微妙に蛇行穿孔し、蛇行した穴の形のまま硬化するために抜けなくなります。1975年頃から製造され一般的に使われ出したのは80年ごろ。

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木造住宅では、土台を止めるアンカーを基礎コンクリートの打設前、鉄筋組とアンカーボルトをセットし、鉄筋に溶接します。このように予め埋(い)けておいてから、コンクリートを入れて基礎に固めます。たまに忘れた時、不足のときにケミカルアンカーが使われています。
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 このように床や壁に設置するより天井にケミカルアンカー打つのは難しい。天井に向けてるからボルト打ち込む時に薬液が落ちてきやすい。薬液が規定量より足りないと強度も落ちます。また一見ちゃんと固まっているようで、地下水等で固まってない場合があります。施工条件に大きく左右され、信頼性が今一と評価されています。ケミカル接着剤の30年・60年・90年などの経年劣化についてなんの実績もありません。原発内の配管や機器のサポートを吊り下げ留めているケミカルアンカーは、地震時に十分な強度があるのでしょうか?

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もう一つ、ボルトの強度の問題があります。鉄など金属ですから経年劣化のデータ、実績は豊富にあります。必要な強度を満たすボルトが使われています。しかし台湾の台北市の北23Kmにある台湾第二原子力発電所(第二核能發電廠)ではGEゼネラル・エレクトリック製造設置の原子炉で、2011年11月に炉を固定するアンカーボルト、直径10センチ、長さ65センチの120本のうち1本の破断が2号機で見つかりました。2号機は1983年に運転を開始した築30年の原発です。

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台湾電力公司は「突発事件」とし、詳細分析もおこいませんでした。そして2012年3月、定期検査に入るための停止作業中に今までにない大きな揺れが1号機で発生。この揺れは原発の自動停止の基準である200ガルよりも高い290ガルを記録してます。1号機は。調べたら、7本が破断していました。台湾電力公司は金属疲労が原因としています。原子炉格納容器を支え留めるアンカーボルトですから、金属疲労も考慮して入念に強度計算・設計され、品質検査されているはずですが、築31年で7本、築30年で1本破断してしまいました。

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原子力規制庁の審査能力
そして、こうした事を織り込んだ新基準が出来たとしても、原子力規制庁に審査能力があるのか、極めて不安です。10月に公表された原発の核災害時のハザードマップ・放射能拡散予想で見せつけられたように、原子力規制庁のお役人には工学的理学的基礎能力が不足しています。それでこうした工学的理学的な課題は、外郭団体の独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES・ジェイネス)に丸投げ委託します。

JNES・ジェイネスは、「原子力施設に関する検査や設計に関する安全性の解析、評価などを行うことで原子力安全確保のための基盤整備」のために作られた組織ですが、それにも拘らずさらに下請け、外注してます。
今回の予測では、既成の米原子力規制委員会の予測プログラムを使うので、電力会社からの提供された風向きなどのデータ入力が主な仕事。JNESは「人手がなかった」ので、シー・エス・エ-・ジャパンに「2010年度に同様の作業を発注しており、実績を重視し」外注してます。この会社、JNESや電力会社の子会社が主な取引先で、業界団体「日本原子力産業協会」会員の原子力ムラの村民です。2010年度に発注した同様の作業の正確性をJNESは評価もしていませんから、いわば馴れ合いで外注した。
 ここが、電力会社からの提供された風向きなどのデータの読み取り、入力を間違えた。それをJNES・ジェイネスは発見できなかった。JNESが見逃し、原子力規制庁も間違いを発見できなかった。規制庁のお役人は工学的理学的基礎能力が不足しているから風向きのつき合わさせという検証すら出来なかった、せずに公表し、公表後に電力会社から指摘されて気付いて、訂正に追われ見直し再予測し12月中に再公表になりました。
 原子力規制庁やJNESが規制対象の電力会社より専門的能力が劣ることが改めて明白になりました。このような規制する側が専門知識や情報の面で規制される側に劣り、優位に立つ規制される側に当局が取り込まれること、規制される側が規制する側を言いなりにしてしまう状況を経済学では「規制の虜(きせいのとりこ、英:Regulatory Capture)」といいます。国会事故調は「規制当局は電力事業者の『虜(とりこ)』となっていた」それで「監視・監督機能が崩壊していた」と指摘。それで事前対策がなく東電核災害の被害拡大を許した「根源的原因」と断じています。

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この力関係を変え規制の虜にならないため、原子力規制委員会設置法では①原子力規制庁にJNES「原子力施設に関する検査や設計に関する安全性の解析、評価など」をしてきた450人規模の人員を統合②責任感を持ち専念させるために規制庁の職員全員を出身官庁に戻さない「ノーリターン・ルール」を対策として設けています。
しかし②のノーリターン・ルールは、設置から5年間、2017年までは適用されません。2010-12年にJNESを調べた第三者委員会は、2003年の設立当初から電力会社などが作った書類を丸写しし、表紙を変えただけの検査書を作ったり、実際には行われなかった検査に合格を出したりしたずさんな業務内容を指摘しています。 第三者委員会報告
このような組織にどれ程の専門的能力があると期待できるでしょうか。JNES統合すれば規制庁の専門的能力がどれ位高まるかは、今回の核災害拡散予測の再算出騒ぎが示しました。

その原子力規制庁が、来春に原発の新たな安全基準の骨子がまとまった段階で既存原発が新基準に適合するかどうか事前調査に入ったらどうなるのでしょうか。規制される側の電力会社の専門的能力が優れているのですから、規制する側の規制庁は言いなりになるだけ、「規制の虜」を再演するだけではないでしょうか?

さて、原子力規制庁の上には原子力規制委員会があります。田中俊一委員長ら原子力関係の知識経験が豊富とされる5人の委員が、規制庁を指揮監督しています。彼らが、規制庁を補ってくれるでしょうか?これまでの会合、特に12月3日の会合を見ると、とても期待できません。 続く

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