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関西は大飯原発3、4号機(各118万kw.)が再稼働しても電力不足「安定供給は困難だ」関電 [電気料金制度・稼働率]

4月3日の畑の便りで昨年11月の資料から「関西電力は平年並みの暑さでも200万kW余り不足、2010年並の猛暑では450万kwあまり不足。」と書きました。最新の5月4日の大阪府市のエネルギー戦略会議に関西電力がだした資料では、2010年夏並みの猛暑だった場合、一定の節電をしても8月に495万kw.の供給不足、発電機のトラブル停止などに対応するため供給予備を過去のトラブル停止の最大値の155万kw.を乗せると650万kw.が不足です。

国や関電が、再稼動を急いでいる大飯原発3、4号機は各118万kwの発電です。つまり再稼動しても、昨年11月時点でも450-236=214万kw.、最新の見通しでは495-236=279万kw.から650-236=414万kw不足します。これへの関電の対応策が見つかりません。私は、4月の時点では関電が需要を吹っかけている、不足を大げさに言っていると疑っていました。

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4/24の大阪府市のエネルギー戦略会議で関西電力は「需給の必要ではなく、絶対安全でもないけど、政府が安全と認めてくれた原発から再稼動したい」とか「ある程度の大きさの地震が起きれば緊急自動停止で原発は止まり、再稼動までに長い時間がかかる。再稼働後万が一の場合大飯原発抜きでどうまかなえるか、社内検討し、計画を次回(5/4)までに用意」という旨の発言をしていました。

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 その5月4日の大阪府市のエネルギー戦略会議で質疑されました。「大飯原発が再稼動しても、不足分の半分くらいではないか。残りの不足分の手当ては?」と府市側委員が質問。関西電力側は、「再稼動するとその電力で揚水発電に夜間により多く水を蓄えられるので、昼間の供給力が増す」と回答。再度、「どれ位増すか、試算数字を示せ」と問われると「手元に、確たる数字はありません」「大飯が動いても足りない分は、節電で需給のギャップを縮めていく努力をする」と無責任な回答。

 委員が堪らず「この(5月)段階で、大飯原発が動いても電力足りませんよという需給計画を出すというのは、供給責任が関電にあるのに全く理解できないんですがね」と問い詰めると、終には「大飯原発を再稼働しても安定供給は難しい」と岩根茂樹副社長。地域独占と引き換えに負っている安定供給責任を放棄する姿勢を示しました。

 前日の3日には枝野・経済産業相が今夏の関西電力管内で、「計画停電の計画を立てないといけない」と表明しています。経産省の安定供給への監督責任を放棄しています。原発ゼロは1年も前から予測されていた事態なのに、電力安定供義務を持つ関電、監督する経産省電力会社も想定してこなかったのです。そして、両者とも案的供給と引き換えに持っている権力や地域独占という特権を手放さずに、責任だけ投げ捨てると、談合したのです。

停電弱者にシワ寄せ?

枝野大臣は、枝野さんは、官房長官時代に東電の計画停電対応の際に電力不足は病気の方の犠牲を強いると認識した「急な停電、電力不足は病気の方や対応が困難な皆さんなど、社会的弱者に大きなしわ寄せを与える」から再稼動をさせると4/14に表明しています。人工呼吸器が必要なALS患者や人工透析患者、高齢者など電動車いすユーザーなどの「停電弱者」の方への非常用電源の配備は済んでいるのでしょうか。

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 昨年の東電の計画停電時には、大混乱しました。小さな病院では、自家発電気がなく朝の4時から人工透析を行ったりしました。在宅で人工呼吸器を使って生活する人は全国で約1万2800人(2009年度)。人工呼吸器内臓のバッテリーは約1時間しかもたないそうです。予備バッテリーは3~10時間。規則正しくシューシューと音を立てる人工呼吸器に耳を澄ませながら、いつ停電が終わるのか、電気が回復するのか、それまでバッテリーが持つのか、心めぐらすのです。4月の余震での停電で窒息で亡くなられた方もいます。

 非常用の発電機が10~20万円、予備バッテリーが数万円。全員が自前で用意しておくのは難しい。3.11後に国は、これらを医療施設や保健所に備えて患者に貸し出す事業を東京電力と東北電力管内で始めました。台風などでも長期の停電はおこりますから、この二つの管内だけでは不十分です。全国で約1万2800人(2009年度)、関電管内には1700人以上が在宅で人工呼吸器を使って生活する人がいます。十分な対策を関電管内に指示しているのでしょうか。昨年9月21日の読売新聞大阪版には、停電弱者への早急な対応をもとめる報道があります。電力安定供義務を持つ関電、監督する経産省電力会社も原発ゼロ想定せず、義務を放棄しましたから心配です。

関電の節電発電所

 枝野大臣は「もし(大飯)原発が再稼働しない場合、今年の関西の方が昨年の関東より相当無理な節電をお願いしないといけない」と強調したそうです。それは、人工呼吸器が必要なALS患者や人工透析患者、高齢者など電動車いすユーザーなどの「停電弱者」のしわ寄せ、不便や窒息死という無理な節電でしょうか。

 東電によれば昨年の関東の節電発電所は870万kw.、これは
1、照明の間引きや適正な照度への変更、
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2、事務所などの冷房の設定を上げる例えば28℃、
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3、生産工場の夜間などへの勤務シフト、
4、土曜、日曜への工場の操業シフトなどでの節電です。
ことし2012年夏は3、4のハードな生産工場での節電はせず、1,2のソフトな無理のない節電で昨年の70%の610万kw.の節電発電所と国に申告しています。

 関西電力と東京電力の電力需要の構造、家庭向け、事務所など業務向け、工場など生産向けなどの割合はほぼ同じなので、同様なやり方1、照明の間引きや適正な照度への変更、2、事務所などの冷房温度の28度設定での同様の効果があると見込まれます。それで試算すると、314万kw.節電できると政府の需給検討委員会の資料にはあります。工場の勤務操業シフトまでやると449万kw.の節電発電所と試算されています。

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 大飯原発で236万kw.節電で314で合わせて550万kwになります。この数字は、発電所トラブルが平均値63万kwで済むなら停電は起きないことを意味します。

 しかし、節電効果、節電発電所の規模はこの程度でしょうか?

東京都は昨年の実態調査から冷房設定の実施が不十分だったので、徹底すれば更に節電可能としています。電力中央研究所試算では、11‐18時の間だけ、冷房の設定温度を1℃上げる、各家庭でエアコンは1台で163万kw節電、病院・福祉施設は実施せず、オフィス・小売店舗・ホテルなどの10%が1℃上げを実施するだけで172万kw節電ですから、1℃上げを実施する事業所増えるほど節電発電所が大きくなります。東京都の目論みは根拠があります。 東京都報告書

 関電ではオフィス・小売店舗・ホテルなどの10%が冷房設定1℃上げを実施するだけで70万kw節電と試算できます。東京都のように大阪府市、関西連合など自治体が徹底に取り組めば、より大きな節電発電所ができます。家庭や病院・福祉施設を除く、オフィス・小売店舗・ホテルなどの100%が冷房1℃上げを実施すると約700万kw超の節電発電所ができます。これで不十分なのでしょうか?

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 関電も経産省も、大飯原発が再稼動しても必要な、昨年よりも大規模な節電発電所を作る努力をした跡がないのです。例えば、企業や事業所に夏場のピーク時など使用量が供給力を上回る時に電力消費を控えてもらう、代わりに電力料金を割り引く「需給調整」の契約が少ないのです。猛暑時の最大需要に対する需給調整の契約電力の割合は、9社平均で5・1%、関電は3・1%で東北(2・7%)、北海道(2・8%)の両電力に次いで低く、下から3番目。お隣の中国電力の13・2%で関電とは大きな差があります。
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 関電は、大阪府市のエネルギー戦略会議などで迫られていたピーク需要抑制の料金体制を泥縄で出してきました。

 家庭向けの「時間別料金」です。九州電力のそれは、1kwhの基準料金を20円に設定。午後1時から4時のピーク時は2.5倍の50円とする代わり、午後10時~翌午前8時は6割引きの8円とする。これまでは、どの時間に使っても同額ですが、ピーク時を高くする代わりに、それ以外の時間帯を安くしてピーク時節電へ取り組みに金銭的報酬を付加して促す料金制度です。
 需給が厳しい場合は電子メールなどで連絡し、ピーク時の料金を6倍の120円に上げ、それ以外の時間帯の割引幅を拡充します。経産省の2010~2011年の2年間での調査では、電気代を7~9月の午後1~4時、ほかの時間帯より2~3倍高く設定すると、電気代が一日中同じの家庭よりも、使用量が約10~17%減っています。関電は、4日に新プランの導入を大阪府市のエネルギー戦略会議で公表しましたが、詳細は不明です。スマートメーター(次世代電力計)が必要で、無料ですが、取り付けに時間がかかります。正に泥縄です。

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 大口需要企業には、節電した分の電力(ネガワット)を関電が買い取るネガワット入札制度を導入する。買い取り単価で効果が左右されますが、今後検討ですからどこまで本気なのか?そのれは、関電が需給逼迫している今でも調理や給湯などをすべて電気でまかなうオール電化住宅の販売促進を続けていることに顕れています。東電は昨年の原発事故直後に新規営業を中止しています。関電は3.11後もオール電化を約7万戸新規契約してますから、約32万kw.分の電力消費能力が増えた可能性があります。

 監督官庁の経産省も同様です。4月23日に開かれた政府の電力の需給検証委員会では、金属大手、住友電気工業の松友俊雄・省エネルギー推進室長が「昨年は国難ということで協力したが、今年は震災から1年以上経過している。具体的な(節電要請などの)計画がないのはどういうことか」と言っています。

 野田政権は「新規建設は実質的に無理である」と「原発は原則40年を経過したら廃炉にする」と表明しています。この二つの原則を適用すると、2030年時点で稼働できる原発は、福島原発10基を廃炉にし、40年廃炉の原則を守れば2030年には25基が廃炉になり、残るのは19基(年頭で20基、年末で18基)に減ります。野田政権の脱原発方針では2030年時点で、原発依存度は12~13%台に落ちていきます。

 ところが、枝野大臣ひきいる経産省は原発の比率が10%、20%、25%、35%、新増設がなし、1基、2基、稼動年数は40年、50年、60年でのシミュレーションを行っています。政権の政治的判断を蔑ろにした条件設定のシナリオです。この原発の維持の「選択肢」の中から総合資源エネルギー調査会基本問題委員会で、将来図を選ぶという議論を行っています。経産省の官僚、特に資源エネルギー庁が政権の政治判断を審議会を隠れ蓑に覆そうとしているのです。

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 原発維持が経産省・資源エネルギー庁の方針であり、関電流には「需給の必要ではなく、絶対安全でもないけど、政府が安全と認めてくれた原発から再稼動したい」となります。監督するエネ庁が、原発再稼動に力を、時間と人を注ぎ込んで電力会社が安定供給責任を果たすよう指導責任をおざなりにしたのです。

 再稼動に持ち込み難い原発は、BWR沸騰水型は東電フクイチ原発と同じタイプだからダメ⇒東電と東北電力、中国電力、中部電力、北陸電力はペケ、古い原発はダメ⇒関西電力なら大飯原発3号機(20年)4号機(19年)、四国電力なら伊方原発3号機(18年)、九州電力なら玄海原発3号(18年)4号機(15年)は○。玄海原発は昨年夏に再稼動に失敗しているので、3基の原発が再稼動の候補。この3基は一次のストレステストは、原子力保安院の手続きは終えています。大飯原発は原子力安全委員会も通過していますが、伊方はたな晒し状態。

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 この3基を再稼動を国民に納得させるには需給での必要性が口実に良いので、需要を増やすオール電化は推進、需要を減らす「需給調整」の契約は手抜き。計画休止中の火力発電所の補修・再開は取り組まない=供給力増加はしないと監督官庁と業者がタッグを組んで国民を嵌めたのだと陰謀説をとなえたくなります。違いますよね。


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