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スマート(賢い)メーター、スマートグリッド、熱ネットワーク [電気料金制度・稼働率]

家庭のエネルギー消費量は照明や家電など電気が36%ですが、給湯30%、暖房25%と大半が100℃以下の熱です。最新の発電技術でも、化石燃料の持つエネルギーの60~40%は使われないまま100℃以下の廃熱で捨てられます。つまり、この廃熱で給湯、暖房できます。ジェネリンク(排熱利用ガス吸収冷凍機)で地域冷暖房やホテルなどの冷房も現在可能です。電気を同時に供給・使用するシステムをコージェネレーションといいます。このコージェネ普及で総合熱効率が向上し化石燃料・CO2を削減でき、光熱水費をへらせます。

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コージェネ装置は今は2タイプ。「電気も出る湯沸器」はガスエンジン・コジェネレーションで家庭用はガスの100のエネルギーのうち26が電気、66が熱で利用し、総合熱効率は92%です。飲食店、ホテル、福祉施設、温浴施設、ゴルフ場などの業務用では、発電効率は29~33%、熱で50~52とあわせ総合効率は約80~85%。
ある中華料理店では、店内の照明と店頭にある看板のネオンに電気を供給し、42℃のお湯を作って炊事場に給湯。光熱費の節減で2年間でコージェネ設備の元が取れたそうです。

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「お湯も出る発電機」タイプは、ガスから水素を取り出し使う燃料電池。家庭用エネファーム(固体高分子型PEFC)では発電40%、熱50%。固体酸化物型(SOFC)は発電44%、熱回収は34%。発電所の電力は発電所、変電所および送配電線で約9%が失われています。それがないので発電効率44%は非効率ではありません。

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現在のコージェネ技術では、電気の作る量とお湯の量の比率を自由に変えられません。熱が必要な時には不要でも発電、逆に、発電すると不要でも熱発生をすることになります。現在は、必要な熱量に合わせて設備をつくり、不足する電気は買う運用が多いのです。電気を電気会社に売電したり不足な時に買電できる仕組みや、地域で熱のやり取りをする熱のネットワークを作るとより無駄がなく効率的です。

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 長期的な取り組みで

デンマークでは1979年に自治体に対し特定地区に地域熱供給を整備し、当該域内の家庭や建物の需要家に対し接続義務を課すことができる法律Heat supply actを制定。1984年に首都コペンハーゲン市は熱供給ネットワーク(高温水と蒸気)の計画を策定し、市内の建物にネットワークへの接続を義務化しました。ネットワークの拡大とともに清掃工場や分散立地したコジェネレーションが接続され供給元になり、現在コペンハーゲン市の98%の熱需要をカバーしています。2009年からはジェネリンク(排熱利用ガス吸収冷凍機)などによる地域冷房が開始されています。このように熱のネットワークは建設までに時間がかかりますが、部屋毎に冷暖房した場合に比べ、20%省エネできます。地熱、清掃工場、下水道、河川などの温熱や冷熱を利用することで、投入したエネルギー以上の冷暖房も可能です。

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電気を自由に売買電し、その上で需給を調整する通信/IT技術を駆使した電力網がスマートグリッドです。家庭にとりつける新型の電量計・スマート(賢い)メーターという通信・制御機能をもったもの、それと送受信して需給を調整する制御センターなどからなります。

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EU欧州ではイタリア、スウェーデンはほぼ100%、EU指令で2020年までに80%をスマートメーター化。米国は2013年に約30%、2020年には100%を目標。中国は2011年に5000万台、2020年には100%切り替える計画です。

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 日本では約5000万世帯と事業所に約8000万個の電気メーター・電量計が設置され、計量法の定めから、約10年で全て更新されます。そのうち通信機能をもつものは約60万個。それは、30分単位の電気使用量を電力会社の光ファイバー網をへて電力会社に送信する機能しか持ちません。

供給逼迫時に消費電力を絞り込むなどの節電発電所機能、太陽電池や風力発電の自家発電量に応じ、効率的に電力を制御・売買電する機能、様々な発電業者から選んで受電する機能などの賢い・スマート機能はありません。検針員を削減できるスマート(賢い)メーターです。しかし、請求書を作成送付する経費に比べ検針員が検針と請求書発行を同時にする現行のやり方が安く、設置する経済的合理性が不明です。

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 それは電力会社の光ファイバー網専用にあります。東京電力は子会社を使い光ファイバー網を約1100億円で「国道16号線の外側を中心に、その総距離は5万キロメートル以上に上る見込み」。このお金は、何処から出るのでしょう?東電は、国につまり国民に1兆円の出資(資本注入)を求めています。そして総括原価方式で1100×3%=33億円の利潤(事業報酬)が保証されます。NTTなど既存の光ファイバー網を使えば直ぐに、安くできますが、それに接続しない通信仕様になっています。

そしてネジ1本まで仕様が各電力会社でバラバラで高価です。世界平均では1万円程度。中国では既に5000円程度なのに、低機能なのに3万円以上もします。電力会社は独占ですから、いくらたかくても電気料金に転嫁できます。

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この日本型メーターは電力会社の独占を守り、発電効率の良くない=発電原価の高い電気でも大量に売る殿様商売に適しています。殿様商売ができるのは電力会社が地域独占しているからですが、それは安定供給義務の見返りです。

デマンドレスポンス、節電発電所

節電発電所機能(デマンドレスポンス)、電力需要のピークカットやピークシフトで発電所を効率的に稼動させつつ安定供給義務を果たせます。
例えば、東京電力の総契約数は約2870万件、そのうち事業向けの動力契約は約240万件。こうした事業需要者で病院・福祉施設を除くオフィス・小売店舗・ホテルなどの10%が冷房の設定温度を1℃上げ実施すると172万kwの節電、家庭でエアコンは1台・
1℃上げ実施すると 163万kwが可能との試算されています。節電発電所機能があるスマートメーターが設置してあれば、真夏の電力需要が最大を迎える年間に数時間に供給が150万kW足りないならば、冷房設定温度を1℃上げる指令をスマートメーターにおくって節電発電所を設置できます。A社⇒B社⇒C社・・・と順繰りにやれば、ほとんど不便はおこりません。

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 この数時間の不足分をリアルな発電所で満たそうとすると、原発なら建設・設備費だけで約5000億円かかります。そして、その供給力・発電設備はその数時間しか必要がない、年間では遊休能力です。経営的には発電原価を押し上げる非効率な不良資産です。節電発電所機能のあるスマートメーターで、発電所を効率的に稼動させ発電原価を下げてつつ安定供給義務を果たせます。

グリッドパリティ

新しい発電方法のコストが既存の電力会社の電力のコスト(電力料金、発電コスト等)と同等かそれより安価になる点(コスト)をグリッドパリティといいます。再生可能エネルギーによる太陽光発電や風力発電などでは、これを目指して様々な技術開発が行われしのぎを削っています。

東京電力、東北電力のの家庭向け契約(従量電灯)はkWhあたり約24円です。事業者向けの低圧電力では約13円。

ガスエンジン・コジェネレーションでは、熱の価値を考慮しない場合、発電コストは20円程度の水準で、熱を全量利用した場合は、10円程度となっています。ですから、熱を利用できる場合は、発電した電力を自家消費して不足なら買電、余剰なら売電できる仕組みがあれば、総合的エネルギー・熱効率をよくできます。


南ドイツでは、太陽光発の普及⇒装置の低価格化で自宅での太陽光発電の発電コストはkWhあたり15~20ユーロセント(±2セント)。対しての家庭向けの電力料金は、現在kWhあたり22ユーロセントで、今後も毎年5%ほど値上りする見込みです。既に電力会社から電気を買うよりも、自家消費した方が安くなっています。

東京電力は家庭用の電気も10%程度の値上げを7月に予定しています。kWhあたり27円程度になります。千葉の会社が19円の太陽光発電システムを1月から販売しています。太陽光発電装置は、軽く(屋根置き拡大)安くする技術革新が急激に進んでいます。日本は政策・制度次第で、こうした成果を上図に取り込めます。

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こうした技術の動向を踏まえて総合的熱効率・エネルギー効率を高い、そして快適に暮らせるシステムの将来像を建てて、実現する長期戦略が必要です。「経済産業省は、・・エネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保を図ることを任務とする。」「電気、ガス及び熱の安定的かつ効率的な供給の確保に関すること。」(経済産業省設置法、第三条、4条)それは経済産業省に課せられた義務です。ところが、日本型殿様商売用のスマートメーターの普及、節電発電所機能、太陽電池や風力発電の自家発電量に応じ、効率的に電力を制御・売買電する機能のない装置を今後5年間で4000万台設置に補助金を経産省はだしています。 続く

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