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東京電力が撒き散らした放射能による被曝をどれくらい我慢するか? [被曝管理]

食品安全委員会が放射能に汚染された食品の健康影響評価を厚労省から求められました。厚労省は、その評価をもとに具体的な規制値、お米に○○ベクレル・Bq/kgといった規制値を決めて管理します。
 その評価、審議結果(案)は生涯で100ミリシーベルト・mSv未満で、国民からの意見を求めていました。それへ送った虹屋の意見です。

食品安全委員会は、委員会の行うリスク評価とリスク管理の関係を、ADI(Acceptable 受諾、容認できる Daily Intake 受諾、容認できる日々の摂取量、一日摂取許容量)で説明しています。(放射性物質に係る食品健康影響評価のこれまでの経緯等という配布資料)農薬や食品添加物などの毒性を科学的に評価して、毎日食べて摂取しても無害な、癌など慢性的摂取によっておこる毒性が顕れない量のADIを決めるのが委員会で、それを各食品に割り振って基準値・規制値を決め管理するのが農水省、厚労省のリスク管理機関と説明しています。
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 放射能汚染ではADIは不適切です。農薬や食品添加物は1)意図的に使用され残留、混入している、2)その食品の生産や機能に有益で、防腐性など摂取者にメリットやリターンがある。3)日本においては、発癌性が認められて物質は、農薬や食品添加物には使えない。
 これに対し、人工放射能には発癌性が認められる。放射能汚染には、摂取者になんらメリットもリターンもない。汚染する放射能は、農家や食品製造者が意図的に使用したものではない。東京電力が福島第一原子力発電所から放出したことによる環境汚染で不可避的に生じている。したがって、放射能汚染にはADI( 受諾、容認できる日々の摂取量)ではなくTDI(Tolerable Daily Intake、我慢のできる日々の摂取量、耐容一日摂取量)のほうが適切です。


ダイオキシンやカビ毒などでのTDIは、次の手順で決められる。1)科学的に動物実験などでNOEL・無作用量・無影響量やNOAEL・無毒性量という閾値を求める、2)安全係数、動物とヒトとの種の差として「10倍」、さらにヒトとヒトとの間の個体差として「10倍」などの安全係数で、NOELやNOAELという閾値を除して得られます。今回は、ウランに関してこの手順でTDIが求められている。

ウラン以外の放射能では、資料・データ不足から、一括して、被曝総量でNOELやNOAELという閾値に相当する被爆線量を検討している。この被曝量に閾値が在るか無いかは長年論争され、決着が付いていない問題である。閾値なしは、ICRP・国際放射線防護委員会、UNSCEAR・国連科学委員会、米国科学アカデミーの「電離放射線の生物学的影響」に関する委員会の見解(BEIR- Ⅶ)などがあります。閾値ありは、フランス科学アカデミー・フランス医学アカデミーが2005年に発表した報告書があります。ただ閾値のレベルは決めることは、現在のデータからはできないとされています。

 このようにNOELやNOAELという閾値に相当する被爆線量は、設定することは現在は無理です。小泉食品安全委員会委員長の以下の見解は、適切です。
「累積線量としておおよそ100mSvという値は、生涯にわたる追加的な被ばくによる線量の合計がこの値を超えた場合に、この被ばくを原因とした健康上の影響が出る可能性が高まるということが統計的に示されているもので、大規模な疫学調査によって検出された事象を安全側に立って判断された、おおよその値です。・・

・・100mSv未満の線量における放射線の健康への影響については、放射線以外の様々な影響と明確に区別できない可能性や、根拠となる疫学データの対象集団の規模が小さいことや曝露量の不正確さなどのために追加的な被ばくによる発がん等の健康影響を証明できないという限界があるため、現在の科学では影響があるともないとも言えず、100mSvは閾値(毒性評価において、ある物質が一定量までは毒性を示さないが、その量を超えると毒性を示すときのその値。『しきい値』ともいう。)とは言えないものです。」

 評価書では、この見解が十分に反映されていません。9ページの23行に「100mSvは閾値(毒性評価において、ある物質が一定量までは毒性を示さないが、その量を超えると毒性を示すときのその値。)とは言えない。」と書き入れてください。

このように閾値がない、または不明な毒物でも規制はされている。カビ毒のアフラトキシン類は遺伝子を傷つけることにより強い発がん性を有する物質で、毎日摂取し続けても健康への悪影響がないとされる量を設定することができてません。しかし、規制は行われています。日本ではアフラトキシン類を産出するカビ類の生息は認められず、食品衛生法でアフラトキシンB1が全食品から検出されてはならないとしています。(厚生労働省の通知法における検出限界は10 μg/kg) 米国は産出するカビ類が生息しています。避けることができません。それで、全食品で20 μg/kgで規制されています。避けることができないので設定された我慢の値です。


 原子力発電所から、人工放射能は通常運転時に日常的に出ています。その放出・飛散量は経済産業大臣が認可する保安規定の管理目標値で制限されている。福島第一原発の海への放出の管理目標値は、1年で約2350億ベクレル。柏崎・刈羽原発の排気筒からヨウ素131は2300億ベクレル。この平常時に放出される放射能により、原発敷地周辺での被曝線量目標は50μSv/年・発電所である。実際には放出量は100分の一から100万分の一程度。被曝線量は100分の一程度と報告されている。
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 こうしたことによる公衆の被曝の我慢の限度は、既に設定されています。それは1mSv/年です。この値は、外部被曝だけで設定された被曝限度ではありません。原発敷地周辺での被曝線量の評価、試算を見ても、食物などの内部被曝も入れての被曝のガマン限度です。

 ですから、食品安全委員会がTDIまがいのガマン値を検討する必要はそもそもありません。リスク管理機関である厚労省、農水省らが規制の基にするのは1mSv/年です。食品安全委員会に求められるのは、東京電力が福島第一原子力発電所から放射能を大量に異常放出したことによる環境汚染で、飛躍的にふえた内部被曝をリスク管理する際に、注意しなければならない点を科学的に検討し明らかにすることだと思います。

 日本では、広島・長崎の原爆症認定を求める訴訟で、放射性降下物とそれによる内部被曝は重要な争点です。その判決では、国が採用するICRPの内部被曝モデルは退けられています。
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原告側が主張し、裁判所が認めた内部被曝モデルからは、次のような疑問が提示されています。

「放射線が生体組織を通過する時、X線とガンマ線はまばらに電離作用を引き起こすのでエネルギーを減少するまでに相当の距離を走り抜けるため透過力が強い。これに対し、アルファ線はきわめて密度の高い電離作用をして、数百万eVのエネルギーを数十μm 走るうちに全部放出して止まるので、透過力はきわめて弱い。

ベータ線はこの中間で、生体内では通常数 cm走ってエネルギーを失って止まる。電離作用を行う密度が大きいと、それだけ分子の接近した箇所を切断する可能性が大きくなるので、電離作用による障害が大きくなる。こうしたことを考慮すると、国際放射線防護委員会が、内部被曝に対してベータ線の生物学的効果比RBEを1とすることには疑問がある。」(沢田昭二・名古屋大学名誉教授)

 こうした原爆被爆者から得られた内部被曝で見解、疑問を、検討し、リスク管理に生かすべきか見解を示すことを食品安全委員会に求めます。また、医療・医薬で放射能は用いられており、内部被曝に関する知見が蓄積されています。こうした知見を検討しリスク管理に生かすべきか見解を示すことを食品安全委員会に求めます。

 また、原発周辺の住民の原発による被曝線量の半分は外部被曝、半分が内部被曝です。今回の東京電力の引き起こした放射能環境汚染で、大半の日本国民がうけるのは内部被曝です。外部被曝でも、妊婦(胎児)や小児は放射線に対する感受性が高いことが知られています。内部被曝ではどうでしょうか?この点も検討し、リスク管理に生かすべきか見解を示すことを食品安全委員会に求めます。


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