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火力発電コストを過大に将来評価 追記あり 妄言『原発比率7ポイント低下で・・ 電中研試算』の続き⑤ [電気料金制度・稼働率]

技術の向上と一般化を見落としているという点を検討してみる。その4回目。
火力発電の発電コスト
燃料単価 

燃料単価は、《LNGは価格変動が大きい一方、石炭は低位安定的に推移。》と言われている。そこでLNG価格を検討してみる。2013年度の発電比率は、火力発電全体で89.6%、LNG発電41.1%、石炭火力発電33.3%、石油火力15.2%であり、影響は大きい。
なお石油天然ガス・金属鉱物資源機構JOGMECが2017年7月20日公表の「天然ガス・LNGに関する最新動向」に拠る。https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/7/7990/20170719_tamura.pdf

日本向けJLC(全日本着平均LNG輸入価格)、日本着LNG価格は2012年7月に18$/MMBtuになったのち2015年まで 17~15$にあったが、2016年6月には5.9$/MMbtuと2005年以来の安値水準をつけ、その後若干の上昇し2017年5月は8.6$/MMBtu。2013年度は現在に比べ倍近い価格にあった。
日本向けLNG契約は、原油価格連動(注・・原油価格・$/BBLの6分の一が目安)による価格決定方式が主流で全日本着平均LNG価格には約3~5ヶ月遅れて反映されるので、価格動向をよりビビットに生き生きと表すスポットLNG価格を経産省公表値で見てみる。2017年5月(契約)は5.7$/MMBtuと、油価連動の全日本着平均LNG価格に対して割安な水準で推移。中期的にも、油価連動の全日本着平均LNG価格に対しスポットLNG価格が安値の現状で推移する可能性が高い。
20170719_tamura天然ガス-3.jpg

2016年の世界のLNG取引は2.64億㌧ 、契約期間が4年以下のスポット・短期の取引は全体の28%。(日本の2016年LNG輸入量は約83百万㌧ 、スポット・短期の取引は豪州等の長期契約に基づく取引増加により前年24%から18%に減少。)天然ガスNGを圧縮し液化するLNG生産能力は、豪州・米国を中心に、2020年頃までに1.1億㌧/年の大幅な増加見通しで、2018~20年頃には需要より生産・供給が6,000万㌧/年ほど多くなる。
経済的には、この6,000万㌧/年ほどが需要増大で無くなるようになる、需給均衡が見込まれると価格が上昇する。その需給均衡の早期化、価格高騰は、「想定外」の供給障害、建設遅延で「懸念」される状況にある。そうした中、米国産 LNGのTellurian社は、2023年から5年間・2028年までの契約で日本着8$/MMBtuの固定価格で売り込んできている。


日本向けLNG契約は、原油価格連動による価格決定方式が主流だから、原油価格を見てみる。2013年度は100ドル/バーレル・BBL位から2017年は50ドル位になっている。中長期的には、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の主要閣僚の1人、イランのザンギャネ石油相の「OPEC加盟国はシェールオイルの存在を念頭に、1バレル=60ドルを超える北海ブレント原油価格の上昇を目にすることに乗り気でない」との発言が示すように、60ドルで頭が抑えられている。日本向けLNG契約の原油価格連動では、8.6~10$/MMBtuで推移すると見られる。

火力発電コストを将来評価は過大
電中研の研究の2013年は、現在の倍近い価格にあった。その2013年価格のままで2030年度の発電コストを推計、研究したのだろうか?不明である。そうだとしたら、2030年度の火力発電の発電コストは過大に推計されている。

追記 電中研の研究の12頁に「化石燃料価格も長期エネルギー需給見通しで用いられた数字を利用している。」とある。それで参考文献に記述のある経産省の2015平成27年の「長期エネルギー需給見通し」を見たが、発見できなかった。それが、資源エネルギー庁の2015平成27年7月の「長期エネルギー需給見通し関連資料」の63頁に見つけた。それでは単位が$/t で2013年度836.08、2030年度751.22とある。2030年度は2013比で89.8%、大まかには14$/MMBtuである。関連資料は http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/011/pdf/011_07.pdf

JLC日本着LNG価格は2013~2015年まで 17~15$にあったが、それ以降は安値になり2017年5月は8.6$/MMBtu。現在は2013年度比53.8%で、研究の想定より40%は安い。電中研の研究は、2017年11月に公表されているのだから、この大幅低下の流れを織り込む事は可能であったし、すべきであった。そうしなかったのは、知的怠慢・怠惰と批判されても仕方あるまい。追記終

仮に①LNG価格を2013年度の16$/MMBtuと2030年度は8.6$/MMBtu、②2030年度に原発の発電比率・2013年度0.9%からゼロに、LNG発電の41.1%が42%になった=LNG量102%になったとしても、LNG発電の発電コスト・燃料代は2013年度の54.9%になる。発電比率を政府想定ではLNG27%程度、原発22~20%としている。これを原発ゼロ%、LNG49%としても、LNG発電の発電コスト・燃料代は2013年度の64.0%である。LNG発電の熱効率・発電効率の向上を織り込めば、量が少なくなるから発電コスト・燃料代は更に小さくなる。つまり、LNG発電、ひいては火力発電の電気代は安くなる。


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