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施設敷地緊急事態要避難者は避難できるか 残存リスクと被曝防護⑬-B ヨウ素剤検討会『2001.11.13、第4回』メモ [防災‐指針・審議会]

避難行動要支援者は、特に配慮を要する「要配慮者」つまり高齢者、入院者、障害者、乳幼児などのケアが必要な要配慮者である。これらの人々は、日常生活でもケアを受けて移動/行動している。体が丈夫で健全でも乳幼児はケア無しでは移動できないし、移動には時間がかかる。体が健全でも高齢で要支援1や要支援2や自炊できる程度の健康状態・身体的機能で何らかの便宜が供与あって暮らしている人は、移動には時間がかかる。要介護1、2では立ち上がりや歩行に支えが必要であるから、介助をする人と車椅子、携帯スロープ、車両等が必要であり、移動中の排泄などの介助を要する人もおり時間を要する。

要介護3、4、5では、立ち上がりや歩行等が自分でできない状態だから、介助をする人と車椅子、姿勢を維持することができない人には背もたれの角度の調整ができる「リクライニング車いす」や背もたれと座面の角度の調整ができる「ティルト車いす」等が欠かすことができない、携帯スロープ、車両等が必要であり、移動中の排泄や水飲みなどのケアが必要だ。寝たきりの方が移送中の振動に耐えられる速度になるから、移動には時間を要する。介護療養病床に入院中の方も同様。
病状が急性期あるいは不安定な方が医療保険で利用する一般病床や病状が安定した方が治療中心でケアを受ける医療療養病床とがあります。入院者は移動中も投薬や点滴などの医療が供せられる必要がある。点滴の管理などができる医療スタッフが移動に付き添うこと、そのための機器が利用できる車両等が必要。
だから、「要配慮者」は移動に時間がかかる。「避難行動要支援者」の定義は、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に「自ら避難することが困難な者で、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの」だが、避難行動要支援者にならない要配慮者はいるのだろうか?
人は誰しも「要配慮者」になる。自立自助できる人間は、ある条件と人生の期間限定の存在
要配慮者にならない人が居るだろうか?人は生まれてから暫くの乳幼児期と年を取って高齢になれば誰かに世話をしてもらわなければならない。どんなに達者な人間でも、事故にあいもするし、病気にもなる。生まれ持ってでなくても、生きる過程で障害を抱え込むこともある。自立自助できる人間とは、ある条件と期間限定の存在なのだ。
また「要配慮者」は、移動の道中にケアが不十分だと健康に悪影響を受けるだろう。乳幼児は体が丈夫で健全でもケア無しで移動したら具合が悪くなる。点滴を受けている人も、ケア無しの移動は具合を悪くする健康リスクがある。
三条01.jpg平常時には、移動中のケアが事前に考えられて準備されて移動する。乳幼児を抱えた旅行、例えば実家への里帰りには一抱えの小山の荷物を準備している。
災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合の避難は、一時の多人数の移動する必要が発生する。そのケア介助をする人と車椅子、車両等の機器が必要となる。その人数・人手や機器が不足する。避難時の介護力(介護のマンパワーや機器など)が不足する。要配慮者は移動の道中にケアが不十分だと健康に悪影響を受ける。それは洪水や原発事故など災害や事故の種類を問わない。一時の多人数の要配慮者が移動する必要が招き寄せる健康リスクの高まりである。
 したがって、防災計画の良悪のバロメーターの一つは、避難時の介護力の準備である。どんな人間も人の世話にならずに生を初めから終わりまでまっとうすることはできないし、どんな人間も他人の世話を、直接、間接にみている。人間は互いに支え合っている。支え合いこそ社会であるのだから、災害時や発災時の要支援者へ避難時の介護力の準備(支え合い)の有り様は防災計画の要である。
三条02.jpg
原子力災害対策指針の準備する避難時の介護力
国の防災基本計画及び原子力災害対策指針では、新たに「施設敷地緊急事態要避難者」と名付ける避難者のカテゴリーを作っている。それは原発から5㎞圏のPAZ内の者で「避難の実施に通常以上の時間がかかり、かつ、避難の実施により健康リスクが高まらない災害時要援護者等(傷病者、入院患者、高齢者、障害者、外国人、乳幼児、妊産婦その他の災害時に援護を必要とする者」とされている。施設敷地緊急事態(原災法の10条通報)でいち早く避難指示を出される。
傷病者、入院患者、高齢者、障害者、外国人、乳幼児、妊産婦その他の災害時に援護を必要とする者か否かは、その人の属性による。その人が入院しているか否か年齢は幾つかにより属人的に決まる。
避難の実施により健康リスクが高まるか否かどの程度高まるのかは、避難に際しどれ位のケア介助をする人と車椅子、車両等の機器を用意できるか使えるか動員できるかによって決まる。避難時の介護力(介護のマンパワーや機器など)の大きさに拠る。避難を実施する体制によって決まる。洪水など一時の多人数の移動する必要が発生することが健康リスクの高まりを招き寄せる。災害や事故の種類を問ずに市町村域や府県域を越える大規模・広域災害発災時には、より先鋭的に健康リスクの高まりが顕れる。

洪水等では市町村域や府県域を越える大規模事は滅多になく、近隣地域・自治体からのケア介助をする人と車椅子、車両等の機器の支援が期待できる。原子力発電所のシビアアクシデントでは期待できない。被災地域は軽々と市町村域や府県域を越える。東電核災害を省みると判るように大規模・広域化する。従って避難時の介護力(介護のマンパワーや機器など)が不足することになり、高まった健康リスクが顕在化するようになる。
こうした点を踏まえて、どれ位の避難時の介護力を準備するかは原子力事故の防災計画のバロメーターである。
それによって、十分なケア介護を受けて健康リスクの高まらない避難ができる人、逆に見れば高まる要援護者の多寡が決まる。ところが、原子力災害対策指針は何も触れていない。この指針は原発立地する自治体だけが対象で、洪水等を対象とした防災対策で不足する部分を補うものだが何にもないに等しい。
その実態と有効性を玄海原発の防災訓練などから検討してみる。


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