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東京電力のIC非常用復水器に”覆面”ベント管があった。2015/7/13・第6回① 新潟県福島事故検証ディスカッション【地震動による重要機器の影響】 [東電核災害の検証・新潟県技術委]

”覆面”ベント管
これまでの東電の説明に無かったIC蒸気ラインベント配管が出てきました。

以前
IC_n.jpg

http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/472/454/140820_sankoutouden,4.pdf


今回
IC蒸気ベント管_.jpg

http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/759/374/150713_No.1.pdf
デスカッションの資料 http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/1356816371725.html

その意味は少なくとも二つは有ると思う。
①この箇所が破損して原子炉の高温高圧の水蒸気+水素ガスの漏洩が起きた可能性
②残留熱除去系RHRの蒸気凝縮系配管を撤去との関係


②残留熱除去系RHRの蒸気凝縮系配管を撤去との関係

BWRのECCS(非常用炉心冷却装置)は、蒸気駆動 Steam-driven です。しかし起動と運転には直流電源による制御が必要です。その制御用直流電源(バッテリー)が無い時に備えて、「電源がなくても作動する蒸気凝縮系機能」がつけられてました。3.11直後に3号機の設計者、上原春男氏(佐賀大学元学長)が指摘しています。それが残留熱除去系RHRに付けられた蒸気凝縮系です。

 平成13年11月に浜岡1号機(MarkⅠ型/BWR-4)のRHRの蒸気凝縮系配管に水素がたまりそれが水素爆発して配管破断しました。
参照・・浜岡原子力発電所1号機のおける配管破断事故について(最終報告書)<原子力安全・保安院>
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/senmon/shidai/wakingu/wakingu011/siryo1.htm
次の80-87頁http://www.iaea.org/inis/collection/NCLCollectionStore/_Public/37/002/37002403.pdf 

 この水素爆発は、放射線によって冷却水が分解されて日常的に発生する水素と酸素ガスに因ります。この破断事故を契機に蒸気凝縮系配管を撤去されました。他の箇所、同じように水素が溜まり易い箇所には経路を別にしたり排気用のベント配管を付けたりしています。参照・・http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g51123a08j.pdf

20020425_hamaoka1_pipe_rapture.jpg

「9事故の背景」最終報告書より

放射線によって冷却水が分解されて日常的に発生する水素と酸素ガスは、BWRの開発当初から知られ爆発など影響範囲が広いことからGEゼネラルエレクトリックは(a)蓄積する可能性のある熱交換器等の機器の頂部などに排気ベント系を設置する(B)復水器に蓄積するガスは水素と酸素を再結合して水に戻す再結合器を設置するという設計対応を採ったと云われています。

 この設計対応で問題が発生していないため、日本に原発が米国から導入された時には一般的に水素・酸素ガス(非凝縮性ガス)問題は技術的に対応・解決済みと認識されていた。つまり、常用、非常時用の熱交換器とIC非常用復水器の頂部に設置してある排気ベント系と復水器の再結合器で適切に対応・解決できると見られていた。

 日本での運転では、蒸気凝縮系配管の仕切弁からの漏洩、高温蒸気のRHR残留熱除去系の熱交換器へのお漏らしで熱交換器の圧力の上昇がしばしば起きて問題になっていた。これへの対応策として弁の交換などあるが、事業者(電力会社と原電)及びメーカー(GE、日立、東芝)は「配管の引き回しを改造し、仕切弁部に意図的に蒸気凝縮水を溜めるいわゆる水シールの方策を採用した。」

 水が溜るのなら非凝縮性ガス・水素や酸素も溜まるが「BWRの非凝縮性ガスの処理は、開発の進展や運転経験の蓄積とともに対応済みの問題とされ、開発当初の経験と知見は次第に形骸化し、要点や結論のみが次世代に伝承されている。」
 事業者によれば「蒸気凝縮系配管の改造については、先行他社のBWRプランでの実績があったことから」「高濃度の非凝縮性ガスが滞留する可能性や改造に伴う水シールの存在が非凝縮性ガスの対流に及ぼす影響については、対処すべき問題として取り上げることはなかった」 参照・・最終報告書の「9事故の背景」 http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/senmon/shidai/wakingu/wakingu011/siryo1.htm
こうして、水素爆発して配管破断しました。

ターンキー契約の遺産・・開発当初の経験と知見の形骸化

開発当初の経験と知見は次第に形骸化したのは、非凝縮性ガス問題だけではなかった。RHRの蒸気凝縮系はSBO全交流電源喪失の長時間化でおこるバッテリー枯渇(8時間後)など制御用直流電源の喪失やポンプ駆動用蒸気圧の低下への備えでもあった。原子力安全委員会での審議では「SRV逃がし安全弁による蒸気の排出とRCIC原子炉隔離冷却系による注水での隔離時の冷却機能で十二分」とある。
参照・・2002平成14年8月1日の第47回 原子力安全委員会臨時会議、http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/soki/soki2002/genan_so47.htm
平成14年6月24日の第38回 原子力安全委員会定例会議、http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/soki/soki2002/genan_so38.htm

RCIC原子炉隔離冷却系は、制御用直流電源バッテリー枯渇(8時間後)などで稼働しなくなる。それへの備えとしての蒸気凝縮系という開発当初の経験と知見は消えている。米国ではBWR25基のうち13基がRCIC/RHCまでも撤去しているが、代わりに追加のバッテリー(1988)や予備のジーゼル発電機(2006)など電源の手配と携行型注水ポンプを用意している。下図参照

 「浜岡1号の配管破断事故に関しましては、何かの改造をする、変更するというときに、その改造、変更の目的を達成しなければいけないのは当然でありますが、同時にほかのところに何か副次的な影響を及ぼさないということに十分な配慮を払うことが非常に大切だと。目的の達成を表の面といたしますと、裏の面として副次的な悪影響を及ぼさないということの確認が非常に重要だということを我々は痛感させられたと思っております。」という須田委員の発言は、今から思えば皮肉である。蒸気凝縮系撤去の副次的な悪影響に思いを巡らし、追加のバッテリーなど電源の手配だけでも行っておけば・・

IC非常用復水器の蒸気管排気ベントラインは、最初から改造の対象ではなく、従って撤去の対象にならなかった。しかし、それは必要性を認識したからではなかった。ICを設置し運用法を定めたGEの開発当初の経験と知見は、やはり形骸化している。それが今回のディスカッションのICベントラインの状態などでのやり取りを、傍聴していて改めて痛感した。この排気ベントラインが破損して、原子炉の高温高圧の水蒸気+水素ガスを建屋4階に漏洩した可能性に全く考えが及んでいない。 続く

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