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原子力災害対策指針(改定2015年4月)新潟県vs原子力規制委員会(3)SPEEDIについて [防災ー発災直後、ヨウ素剤、短期避難・退避]

 1月、2月段階 原子力防災訓練を踏まえて
新潟県は2014年11月11日に行った防災訓練、事前にシナリオ開示を制限したブラインド訓練型の原子力防災防止訓練01images.jpg訓練を実施した。その結果を踏まえ「原子力防災訓練を通じて浮き彫りになった課題について原子力規制委員会に対し」「知事が原子力規制委員会委員長と面談し」て要請を受けるよう2015年1月19日に求めた。2月5日に、「原子力規制庁から、委員長は直接要請を受けないとの回答がありました。」それで県の危機管理監が原子力規制庁、内閣府(原子力防災担当)、厚生労働省、防衛省の担当に要請書を手交すると発表した。
 その要請書には次のようにある。
「4 SPEEDIの活用
実測値による防護措置の判断では、被ばくが前提となり、住民の理解が得られるか疑問があります。
福島第一原子力発電所事故では、線量の高い地域に避難して被ばくした人がいたこと、原子力防災訓練で地元から避難先の判断を求められたことなどを踏まえると、適切な防護措置の判断には、SPEEDIも活用すべきです。
そのために、原子力災害対策指針と関連資料を見直すとともに、関係道県が利用できるようにしてくださるようお願いします。」
3月段階 原子力災害対策指針(改定原案)とパブコメ
原子力規制委員会は、3月5日に原子力災害対策指針(改定原案)などを公表し、意見公募・パブリックコメントを4月3に締切で開始した。改定原案は「「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の運用について」(平成26年10月8日第31回原子力規制委員会)に基づいて、必要な修正を行う。」としていた。
その「運用について」では次のようにある。
「緊急時における避難や一時移転等の防護措置の判断にあたって、SPEEDI による計算結果は使用しない。」緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の運用について
https://www.nsr.go.jp/data/000027740.pdf

3月26日、県は「原子力災害対策指針(改定原案)に関するパブリックコメントへ意見を提出しました。」と発表した。それには「2.SPEEDI等の予測的手法に関すること
● 実測値のみによる防護措置の判断では被ばくが前提となるため、判断材料のひとつとして予測的手法も活用し、早め早めに防護措置が実施できる仕組みとするようお願いします。」とあった。意見の詳細は別項で規制委の回答と共に検討する。)
4月段階 規制委の正式決定と質問書
4月22日の第4回委員会でだされた原子力災害対策指針の改定の決定、パブコメ回答では「防護措置の実施にはSPEEDI等の予測的手法は不要。」というものであった。
県提出パブコメの意見の詳細に沿って、回答を検討する。
整理番号11
【改定案】・・次の部分を削除。「緊急時モニタリング結果の解析・評価においては気象データや大気中拡散解析の結果を参考にする。そのため、国、地方公共団体及び原子力事業者はその解釈の仕方について地域の特性に応じて事前に整理しておくことが重要である。」
新潟県の意見・・モニタリング結果の解析・評価にあたり、気象データ(風向、降雨、積雪等)や拡散解析(実気象等に基づく解析)を参考にすることは必要であり、また、地域の気象特性を事前に整理しておくことは重要であると考えることから、当該部分を削除しないこと。
規制委・・改定案通り削除
整理番号12
【改定案】・・これを新たに入れる。「原子力施設から著しく異常な水準で放射性物質が放出され又はそのおそれがある場合には、施設の状況や放射性物質の放出状況を踏まえ、必要に応じて予防的防護措置を実施した範囲以外においても屋内退避を実施する。」
新潟県の意見・・著しく異常な水準の基準や、屋内退避の範囲を判断する基準や手法について、災害対策を行う上で必要と考えられることから、具体的に示すこと。
  また、UPZ外の屋内退避の実施及び範囲について、誰が、どのような基準・手法を用いて判断するのか明記すること。
規制委・・改定案通り新たに入れる。
整理番号13
【改定案】・・次の部分を削除。「なお、国は、例えば緊急時モニタリングによって得られた空間放射線量率等の値に基づくSPEEDIのような大気中拡散シミュレーションを活用した逆推定の手法等により、可能な範囲で放射性物質の放出状況の推定を行う。」
新潟県の意見・・第60回原子力規制委員会の資料別添3「SPEEDIの運用について」P8において、事後の解析に拡散計算を用いることの有用性を記載していることから、当該部分を削除しないこと。
 つまり、
規制委・・改定案通り削除

整理番号14
【改定案】・・次の部分を削除「また、原子力事故の拡大を抑えるために講じられる措置のうち、周辺環境に影響を与えるような大気中への放射性物質の放出を伴うものを実施する際には、気象予測や大気中拡散予測の結果を住民等の避難の参考情報とする。」
新潟県の意見・・実測値による防護措置の判断では、被ばくが前提となり、住民の理解が得られるか疑問がある。
  福島第一原子力発電所事故では、線量の高い地域に避難して被ばくした人がいたこと、原子力防災訓練で地元から避難先の判断を求められたことなどを踏まえると、適切な防護措置の判断には、予測も活用すべきであることから、その旨を記載すること。
規制委回答・・改定案通り削除
整理番号15
防災訓練02images.jpg【改定案】・・「国は、周辺住民の住居の分布及び地形を考慮に入れ、また、原子力事故の状況及び気象予測や大気中拡散予測の結果等を参考にしつつ、速やかに緊急時モニタリング実施計画を策定し、各分野の緊急時モニタリングを統括して管理する。」から”気象予測や大気中拡散予測の結果”を削除し、次のように改める。「国は、周辺住民の住居の分布及び地形を考慮に入れ、また、原子力施設の状況等を参考にしつつ、速やかに緊急時モニタリング実施計画を策定し、各分野の緊急時モニタリングを統括して管理する。」
新潟県の意見・・緊急時モニタリング実施計画の策定について、例えば、豪雪地帯では、積雪等によって計画が変わることはあり得るので、気象予測や拡散予測も考慮する必要があることから、当該部分を削除しないこと。
規制委回答・・改定案通り削除
整理番号16
【改定案】・・「被災等によって緊急時モニタリングを十分に実施できない場合には、気象予測や大気中拡散予測の結果をモニタリング実施体制の整備の参考にすることも考慮する。」から”気象予測・・考慮する。”を削除し、次のように改める。「被災等によって緊急時モニタリングを十分に実施できない場合には、国はその状況に応じた代替措置について検討し、緊急時モニタリング実施計画に反映する。」
新潟県の意見・・効果的、効率的なモニタリング体制を整備するためには、気象予測や拡散予測も考慮する必要があることから、当該部分を削除しないこと。
規制委回答・・改定案通り削除
整理番号17
【改定案】・・「急時モニタリングの結果は、緊急時モニタリングセンターで妥当性を判断した後、国で集約し、一元的に解析・評価して、OILによる防護措置の判断等のために活用する。」から”一元的に解析・評価して”を削除して「緊急時モニタリングの結果は、緊急時モニタリングセンターで妥当性を判断した後、国で集約し、OILによる防護措置の判断等のために活用する」に改める。
新潟県の意見・・「一元的に解析・評価して」の部分を削除した理由を明確にすること。
  緊急時モニタリング結果を誰が解析・評価するのか明記すること。
規制委回答・・改定案通りに削除。削除した理由は不明なまま。
「緊急時モニタリングの結果は、緊急時モニタリングセンターで妥当性を判断した後、国がで一元的に集約し、必要な評価を実施して、OILによる防護措置の判断等のために活用する。」と解析・評価は国が行うとした。
整理番号18、19
【改定案】・・「避難及び一時移転の実施に当たっては、原子力規制委員会が、施設の状況や緊急時モニタリング結果を踏まえ、気象予測や大気中拡散予測の結果等を参考にしつつ実施の判断を行った上で」から”気象予測や大気中拡散予測の結果等を参考にしつつ実施”を削除する。
「避難及び一時移転の実施に当たっては、原子力規制委員会が、施設の状況や緊急時モニタリング結果等を踏まえてその必要性を判断し」に改める。
新潟県の意見・・⑱実測値による避難及び一時移転の判断では、被ばくが前提となり、住民の理解が得られるか疑問がある。
  福島第一原子力発電所事故では、線量の高い地域に避難して被ばくした人がいたこと、原子力防災訓練で地元から避難先の判断を求められたことなどを踏まえると、適切な防護措置の判断には、予測も活用すべきであることから、その旨を記載すること。
⑲緊急時モニタリング結果等の「等」には、気象予測や大気中拡散予測の結果が含まれるのか明確にすること。
規制委回答・・改定案通り削除し、改める。
このように整理番号17以外は、改定案通り。17の変更もSPEEDIを使うとの内容ではない。
再び質問書を出す
4月21日、「原子力規制委員会が、現行の原子力災害対策指針からSPEEDI等の予測的手法の活用に関する記述を削除することを決めた旨の報道がありました。
 新潟県では、このことに対して、既にパブリックコメントに意見を提出しておりますが、本日、改めて別紙のとおり質問書を提出しました」
質問書

原安第29号
平成27年4月21日
原子力規制委員会委員長
田中俊一様
新潟県知事泉田裕彦
先日、原子力規制委員会が、現行の原子力災害対策指針からSPEEDI等の予測的手法の活用に関する記述の削除を決めた旨報道がなされたところです。
 SPEEDI等を用いず実測値のみによる防護措置の判断では、被ばくが前提となり、住民の理解が得られるか疑問があること、福島第一原子力発電所事故では、線量の高い地域に避難して被ばくした人がいたことなどを踏まえると、適切な防護措置の判断には、予測に関する手法も活用すべきと考えます。
ついては、下記の事項について回答くださいますようお願いします。
1被ばくが前提となる防護対策について
屋内退避等の防護措置の判断をモニタリングの実測値のみで行うことは、被ばくが前提となることから、30㎞圏内の住民が屋内退避せずに避難を開始する等の事態となり、混乱することが予想されます。
どのように住民理解を得て、避難計画の実効性を確保するのかお示しください。
2予測結果を用いた緊急時モニタリングの実施について
国は、住民避難等の防護措置をモニタリング実測値のみで判断するとしていますが、通常の監視態勢では機器・人員が不足し、必ずしも十分ではありません。
 事故時に的確な緊急時モニタリング態勢を迅速に組むためには、気象予測やSPEEDI等の予測的手法が必要と考えますが、今回の指針改定で気象予測やSPEEDI等の予測的手法の記載を削除した理由をお聞かせください。
3立地地域からの意見の取扱いについて
当県のみならず原発立地地域からは、屋内退避等の防護措置の判断に際し、SPEEDI等の予測的手法も活用すべきとの意見が寄せられていると伺っております。
なぜ、防災業務の実務を担う立地地域と協議せずに原子力規制委員会のみで決めるのか説明してください。
中央統制集権型と多中心 
内容は、1の「被ばくが前提となる防護対策について」は防災訓練を踏まえた1月の要請書と同様の内容。
2の「予測結果を用いた緊急時モニタリングの実施」はパブコメに同様の趣旨があり、無くすと具体的に何処が困るかを衝いている。
3の「立地地域からの意見の取扱い」は防災方針の社会的政治的な正当性(justness)や正統性(legitimacy)を問うている。
中央統制image136_02.jpg 1月の要請書にある「そのために、原子力災害対策指針と関連資料を見直すとともに、関係道県が(SPEEDIを)利用できるようにしてくださるようお願いします。」の内容が無くなっている。パブコメ段階から消えている。この内容は、要請書の「2 複合災害時の組織体制等 複合災害時においては、国・自治体において、オフサイトセンターを含め原子力災害や自然災害の対策本部が複数立ち上がり、国のそれぞれの本部からの指示等、指揮系統が二重となって現場の業務が錯綜し、混乱を招くこととなります。」の認識に根っ子がある。福島で実際「対策本部が複数立ち上がり・・現場の業務が錯綜し、混乱を招く」ことに成った。
 混乱回避への解(回答)の一つは指示等が途絶しないようにして、指揮系統が二重にならないようにする事だ。ラスボスの指示が途絶し無い様にして中央集権統制を強化する。
広域分散images.png もう一つの解は、住民に対する指示は市町村・基礎自治体レベルの対策本部に1本化し、そうした基礎対策本部に避難などの権限を与える。道県レベル、国レベルでも複数立ち上る対策本部は基礎対策本部にアドバイス(advice 助言・勧告)やサジェスチョン(suggestion 提案・提言)を出す役割にするネットワークにすること。各レベルの対策本部での対処能力の差があるから、通信が確保されていれば、府県レベル、国レベルの対策本部のアドバイスなどが事実上コマンド(command 命令・指示)になり、中央集権統制に近くなる。福島での経験は、通信は途切れ途切れだったり、断絶することが災害時には常態であることを教えている。ネットワークで災害時の組織体制を作るのならば、情報もネットワークで収集・発信できることが必要となる。SPEEDIの予測情報もそうである。関係道県がSPEEDIを利用できるようにすることが求められる。新潟県は、地震との複合災害を想定した原子力防災訓練を通じて、そのように認識したのである。その認識が3月時点のパブコメから消えている。
 また、規制委の「緊急時における避難や一時移転等の防護措置の判断にあたって、SPEEDI による計算結果は使用しない。」方針の根拠に反論していない。一つは、予測手法や拡散予測よりも施設の状態等に基づいて判断する方が、より迅速かつ的確に防護措置を実施できる。もう一つは、この考え方は、国際原子力機関(IAEA)が定める最新の安全基準にも整合し、国際的に広く受け入れられ確立された考え方である。この二つの考えに反論していない。(稿を改めて)
 

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