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東芝が2009年出願特許で予見していた水素爆発 [AM-メルトスルー、CCI]

 東芝は2006年以降も次々と特許を出願している。特許出願は、特許法64条で原則として出願後1年6月で自動的に公開される。公開されている出願文書をみると、3.11東電核災害があたかも予見されているようだ。予見というより東電核災害は教科書的な経過をたどったのだろう。何点か採り上げてみる。
原子炉建屋での水素爆発・・2009年出願、特許№ 5238649
000002a.jpg 2009年9月に出願し、特許を取得した「原子炉格納容器およびそれを用いた原子力プラント」。出願番号2009-206761、公開番号2011-058866、登録番号5238649で特許維持状態にある。http://astamuse.com/ja/granted/
JP/No/5238649

 この発明は「長期化した全交流電源喪失(SBO)により苛酷事故が発生しても、その影響がプラントの外部に及ぶことがなく、周辺住民の退避が不要なほど安全な次世代炉」を提供するとして東芝は出願している。

背景技術
 ①
苛酷事故時に大量水素が発生すると、原子炉一次格納容器の圧力は設計圧力の約2倍に達する。
[]は虹屋の書き込み
「一般的に、沸騰水型軽水炉(BWR)は、圧力抑制型の原子炉一次格納容器を採用し、・・一次格納容器内の雰囲気を窒素ガスで置換し、通常の空気よりも酸素濃度を低くして運転を行なっている。このため、事故時に炉心燃料が高温になり冷却材と反応して水素が発生しても、原子炉一次格納容器内で爆轟ないしは爆燃するおそれがない。また、沸騰水型軽水炉は原子炉一次格納容器が小さいため、外部を原子炉建屋で完全に二重に覆い設計基準事故の場合には、放射性物質の二重の閉じ込め機能を有している。」
「苛酷事故時には、高温化した炉心燃料と冷却材との金属水反応により大量の水素が発生し、原子炉一次格納容器の圧力が設計圧力を超えて上昇する場合がある。例えば、新型沸騰水型軽水炉(ABWR)の場合は、原子炉一次格納容器の設計圧力は310kPa(45psig)であるが、苛酷事故時に大量水素が発生すると、原子炉一次格納容器の圧力は設計圧力の約2倍に達する。」
「苛酷事故時に原子炉一次格納容器の圧力が長時間設計圧力を超えた状態が継続することは安全上好ましくない。原子炉一次格納容器の圧力が設計圧力を超えると、内部の放射性ガスが設計漏洩率よりも大きな漏洩率で漏洩するおそれがある。」
「苛酷事故の際には、電源喪失等により動的な排気ファンが故障している可能性があり、原子炉建屋の二重閉じ込め機能は喪失するおそれがある。」
② 原子炉建屋で水素爆轟・ばくごう
「苛酷事故時の原子炉一次格納容器の圧力上昇を制限するためには、原子炉二次格納容器である原子炉建屋に原子炉一次格納容器内の雰囲気をベント[排気]することが有効である。
 しかし、原子炉建屋は設計圧力が低く、かつ、雰囲気は通常の空気であるため、苛酷事故時に発生した大量の水素を含む原子炉一次格納容器内の高圧ガスを原子炉建屋内に放出すると、原子炉建屋内で爆轟し、原子炉建屋が損壊し、放射性ガスが大気中に管理されずに放出されるおそれがある。この状況は、チェルノビル原子力発電所の苛酷事故時の状況と近い。
 したがって、この方法は、従来、提案されてはいるものの、・・このような危険な方法を採用している沸騰水型軽水炉は実在しない。」
事故前の水素爆発の予想 
 このように東芝は事故前に建屋での水素爆発を予見していた。米国の原子力規制委員会NRCが2005年から"the State-of-the-Art Reactor Consequence Analyses (SOARCA)"(最先端技術に基づく原子力災害解析)の研究をスタートさせた。2010年10月にそのドラフトを発行した。それではSBO・全交流電源喪失でBWRでは、格納容器PCVから原子炉建屋に漏れた水素が爆燃を起こし、最上階のブローアウト・パネルと天井が爆圧で壊され、大物搬入口の扉がこじ開けられるとの解析結果が記されている。

 この経過を見ると2005年以降には格納容器から原子炉建屋に漏れた水素が爆燃を起こすという見解が、専門家レベルでは常識化したと言える。しかし、ご存知のように原子力安全委員会の班目春樹委員長は考えもつかなかった。東電福島第一原発1号機の水素爆発を知って、頭を抱えた。暫くして、爆発のメカニズム、水素生成の経路の推定を滔々と官邸対策本部で説明したそうである。(下村健一 内閣広報室内閣審議官 談)
 結果(爆発)がわかっていると正しい答案が書ける頭脳が、官僚や日本の専門家なのだろうか。メーカーの技術者は、頭は下げていたが腹の中ではどうだったか?
提案されている対策の問題点
③ フィルターベントの問題
 「また、技術的成立性のあるものとして、苛酷事故時の原子炉一次格納容器内の雰囲気をフィルターを通し環境に放出する設計があるが、放射性希ガスと有機ヨウ素については、フィルターでは除去されずに環境に放出されるので、周辺公衆の被曝が発生する。また、周辺公衆の被曝を極力低く抑えるため、事前に一定距離内の周辺公衆を一人残らず完全に退避させる必要がある。」
④ 静的格納容器冷却系(PCCS) の限界
「最近では、ESBWRにおいて、事故時に原子炉一次格納容器内に放出される水蒸気を静的格納容器冷却系(PCCS)で凝縮し、原子炉一次格納容器の崩壊熱による圧力上昇を抑制する優れた方法が採用されている。しかし、苛酷事故時に放出される大量の水素は静的格納容器冷却系では凝縮されず、また、ESBWRの原子炉一次格納容器の体積は小さいため、苛酷事故時の原子炉一次格納容器の圧力はやはり設計圧力の2倍から3倍程度に維持されてしまう。すなわち、静的格納容器冷却系を従来の体積の小さい原子炉格納容器に設置しても、苛酷事故時の原子炉格納容器の圧力を設計圧力以下に制限することはできないという問題があった。なお、ESBWRの原子炉一次格納容器の設計圧力も310kPa(45psig)である。」
次世代炉
「次世代炉の場合、設計寿命は60年から80年と長く、プラントを建設した後、周辺住民の人数が増大する可能性がある。周辺住民の人数が増大すると、苛酷事故時の緊急時対策として全ての人の退避を完全に行なうことが困難となる。また、周辺住民の人口を制限した場合、人口が密集する大都市に近接して原子力プラントを建設することが困難となる。次世代炉の安全性は、人口が密集する大都市に近接して建設された場合であっても、プラント本来の設計によって十分に安全性を保証できるものでなければならない。

「さらに、次世代炉は世界中のあらゆる地域に建設される可能性があり、巨大地震、巨大津波、巨大ハリケーン等の自然災害に遭遇する可能性がある。巨大自然災害を原因として苛酷事故が発生した場合は、周辺住民の退避を完全に行なうことは困難である。世界の次世代炉の立地条件としては、非常に厳しい自然災害が想定される。例えば、巨大サイクロンや巨大地震、大津波などがある。巨大サイクロン等の厳しい自然災害が発生し、全交流電源喪失(SBO)が起きると、長期間にわたって復旧作業ができないおそれがある。そのような長期化した全交流電源喪失(SBO)により苛酷事故が発生しても、その影響がプラントの外部に及ぶことがなく、周辺住民の退避が不要なほど安全な次世代炉を提供する必要がある。」

東芝のアイデア・・風船・エアバッグに入れる
「原子炉一次格納容器の内部で原子炉の事故が発生すると、原子炉圧力容器から冷却材が流出し、大量の水蒸000003b.jpg気が発生する。また、炉心燃料の重大な損傷を伴う苛酷事故が発生した場合には、さらに、炉心燃料と冷却材の水との金属—水反応によって、大量の水素が発生する。これらの水蒸気と水素により原子炉一次格納容器の圧力が上昇し、あらかじめ設定された圧力に達すると、隔離連通切替え装置が自動的に連通状態になる。これにより、原子炉一次格納容器内の高圧ガスが気相ベント管を通ってエアバッグの内部放出され、エアバッグが拡張を開始する。」
「エアバッグは、原子炉一次格納容器から放出される高圧ガスの放出速度に応じて拡張する。原子炉一次格納容器の圧力が設計圧力を超える原因は、苛酷事故時に発生する大量の水素である。大量の水素を発生させる炉心燃料と冷却材の水との金属−水反応は、少なくとも数分から数十分の時間をかけて進行する。」
「エアバッグから原子炉二次格納容器内へ漏洩しなくなる。また、原子炉一次格納容器の圧力と原子炉二次格納容器の圧力も均圧化されるため、原子炉一次格納容器からも雰囲気が原子炉二次格納容器に漏洩しなくなる。」


タグ:格納容器
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