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7月29日吉田調書、(8)放射能放出よりも水素ガスが怖い東電 爆発③ 13-14頁 [東電核災害検証、吉田調書]

 吉田 昌郎 2011年7月29日付 事故時の状況とその対応について  (PDF:7,170KB)
http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/hearing_koukai/051_koukai.pdf
 

11日の17時頃に吉田所長は課題は二つとしていた。一つは格納容器の減圧、一つは炉への注水。
 2号機は「11 日16:39,復旧班は,地震・津波後の電源設備の現場状況確認を開始。直流電源設備が設置されているサービス建屋地下階は,高さ約1.5m の浸水が見えたことから点検を断念した。」炉に注水している蒸気駆動ポンプの原子炉隔離時冷却系RCICは、制御電力が直流電源・蓄電池。設計では8時間で枯渇。津波来襲から8時間後は12日の23時40分頃。それで炉に注水しているRCICの稼働確認に、12日1時頃と2時頃に地下のRCIC室に向かいう。
 1時頃は「扉を開けたところ,水が流れ出てきたので直ぐに閉めた。入室することは出来なかったが,その時にキーンという金属的な音を確認」がその稼働確認の内容。
 2時頃は「扉を開ける。RCIC 室よりゆっくり水が出てきたが入室。入ってすぐそばにあるRCIC 入口圧力計装ラックにてポンプ入口圧力計の針が小刻みに振れていること及び再度運転音を確認した」「1階のRCIC 計装ラックにてRCIC吐出圧力が6.0MPa,原子炉建屋2 階の原子炉圧力容器系計装ラックにて原子炉圧力が5.6MPa であることを確認。RCIC 吐出圧力が原子炉圧力を上回っていることから,RCIC が運転(機能)していると考えた。中央制御室へ戻り,2:55,発電所対策本部へ報告。」(H23/12対応状況の49頁、http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111222p.pdf

炉へのディーゼルポンプ・消防車注水の準備状況

 このように何故かどうして動いているのか判らないが、とりあえず稼働して注水している。何時止っても不思議ではない状況である。3号機も蓄電池の枯渇を遅らせる操作をしているが、こちらも何時止っても不思議ではない状況である。
 炉への注水を確保できれば水素が大量発生するメルトダウンを防げる。11日の17時の時点では淡水水源の不足、炉への注水のデーゼル注水ポンプ、消防車が1台で不足、注水ラインが出来ていない、デーゼルポンプでの注水には原子炉圧力容器の減圧が必要だがそのための電源とガスが確保されていない状況であった。

1号機の爆発は12日の15時36分頃。17時半には吉田所長は2号機、3号機のベント準備を所長指示している。
19時4分、1号機への炉注水は再開。
 その頃、20時頃の2、3号機の炉への注水を確保するための準備の状況は
(A)炉への注水の水源には逆洗ピットの海水が使用できる。
(B)注水ラインは2号機は11日中に構成済。3号機は直流電源と建屋立ち入りで何時でも構成可能、
(C)注水手段 3号機のDDFP、消防車(消防DDポンプ)は柏崎刈羽原発からの水槽付の1台は待機中、福島第1第2原発共用の化学消防車1台が待機中。構内道路が復旧し5,6号機側にあった1台が要点検状態。福島第2に柏崎刈羽原発からの化学消防車1台が待機(1時間で到着する、化学消防車の主な装備は水ポンプ・水槽・泡原液槽・泡混合装置でポンプ車として使用できる)、
(D) 消火系・FPのディーゼルポンプ、消防車での注水には炉の減圧が0.6Mpa程度までの減圧必要。減圧操作に必要な電源と圧縮ガス 2号機は11日も12日も手配、調達の動きがない。減圧操作に必要な直流電源・蓄電池は「12V のバッテリーが10 個」(H23/12対応状況の51頁)

 このように、最後の問題、12V のバッテリーが10 個で合わせて20ヶの確保、圧縮ガスの点検確保さえ進めれば炉の注水を確保することができる。炉への注水を確保できれば水素が大量発生するメルトダウンを防げる。しかし、「12V のバッテリーが10 個必要な状況。13 日7:00 頃,発電所対策本部は,免震重要棟にいる社員に自動車のバッテリーの提供を呼びかける。」(H23/12対応状況の51頁)とベントの準備を優先している。

格納容器の過圧破損の危険性はないのも関わらず、ベントを行おうとする

 2号機は13日の10時15分にはベントを実施するよう発電所長指示。11時にはベントライン構成完了。最後にある破裂弁・ラプチャーディスクは破裂せず開通していない。この弁は格納容器の圧力が427kPa、格納容器の最高使用圧力以上になると破ける、破裂する設定。当時は390‐400kPaだったので、破裂しなかった。ベントは始まらず。14日の22時頃まで427kPa前後。格納容器の過圧破損の危険性はないのも関わらず、ベントを行おうとした。
 炉注水はこのベントライン構成後である。13日の12時5分に原子炉への消防車による注水、水源は海水しかないので海水注水の準備を吉田所長は指示。13時10分に炉注水に不可欠な減圧操作を行えるように自動車のバッテリーの繋ぎ込み完了。

 2号機のRCICの炉注水は何時止っても不思議ではない状況。それで12日のRCIC最終確認21時の後、22時に注水停止したと仮定してみる。ベント準備中に炉への注水が止まったとし思考実験してみる。東電の最新の解析をもとに時刻表をつくると水面の低下傾向が13日1時頃に明確になる。
 6時頃に水面が核燃料の頭より下になり、燃料の損傷が始まる。水素ガス、放射性希ガスなどなどが発生開始。7時20分に熔け出す温度1200℃に到達。メルトダウンが本格化する。水蒸気、希ガスや水素ガスらが格納容器に移行して圧力が上昇するのは10時ごろ。2号機は11時にはベントライン構成完了。破裂弁・ラプチャーディスクが破れて放射性希ガスや水素ガスがベント放出される。
 東電の最新の解析ではメルトダウンから約4時間で、水素ガスは約420㎏(1kgの水素ガスは常温常圧下では11.2立方㍍、総生産量は約520kg)、放射性希ガスは燃料に含まれていた量の1万分の一(総放出量は100%)、放射性ヨウ素は千万分の一(総放出量は5%?)放射性セシウムは千万分の2(総放出量は6%?)。11時にベントされれば水素ガスは排気塔から出ていく。放射能も出ていく。

東電の最新の解析・・「福島原子力事故における未確認・未解明事項の調査・検討結果~第2回進捗報告~」 http://www.tepco.co.jp/cc/press/2014/1240099_5851.html

2号機放射能.jpg2号機水素.jpg

水素ガスは分子が最少で、物理的に封じ込めが非常に難しいガスである。鋼板などを透過してしまう。また格納容器内が高圧になれば漏れ出ていく。設計では最高使用気圧の0.9倍、約0.36MPaで格納容器の空間体積の0.5%/日の漏洩である。
 メルトダウンの過程では水蒸気も大量に出てくる。それを格納容器スプレイの散水で凝縮すれば、体積が2千分の一以下に減る。格納容器の圧力は下がる。放射性ヨウ素ガス、希ガスは分子が大きいから、格納容器の鋼板などを透過して出ることはすくない。圧力の低下に応じて漏洩量が減る。水素ガスは透過量が多いから、希ガスほどは減らない。だから、水素ガスだけを問題にするなら、とにかくベントが正解になる。発電所外への放射能放出、つまり周辺の被曝抑制という点では失格である。水素爆発だけを考えた視野狭窄的合理である。
 
視野狭窄的合理性は3号機でより明確になる。次は3号機を検討する。続く


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