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吉田所長調書 7月22日の メモ 加筆② 事故時手順書を外れた対処 [東電核災害検証、吉田調書]

2013年9月11日に吉田国郎東京電力福島第一原子力発電所の証言、いわゆる吉田調書が開示された。それを、[東電核災害の検証・新潟県技術委]課題2 事故対応マネジメント⑤ 2014/8/27 http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-09-21 で扱った。平成23年7月22日付の調書http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/hearing_koukai/020_koukai.pdfの検討の続き。

16頁 
IC・非常用復水器が平成3年頃、海水系の埋設配管漏洩、それで電源が塞がって、それに近いようなような事象があって、その時、ICを廻したと聞いている。記録からいうと、ICをそのときに動かした。

この事故は元東電社員の木村さんのあれか?
東電はICは1回も動いていないと説明している。この平成3年の事故は隠されている?
この時の炉圧や温度の低下は、運転員には伝わっていない。

吉田調書0722、17~19頁 津波談義
津波警報の数値の意味合い、6mというのは半分の3mから倍の12mの幅がある。これを知っていない。NHKTVで15時14分発令の6m、30分の10mの大津波警報は見ているが記憶に残っていない。それは、海岸部の冷却用海水ポンプの被水とか敷地まで津波が海水が上がってくる事を意味する。しかし全く心配していない。もっぱら潮が引いて、冷却用海水が取水できなくなる事だけが話題に上がっている。

吉田調書0722、20~21頁 正常性バイアス
冷却用海水ポンプが被水したら、水冷式の非常用DG発電機は何れ止る。敷地上まで津波があがったら地下にある1~4号機の非常用DG発電機はダメになるだろう。非常用DG発電機の機能停止が大津波警報の予測波高では二重の経路であり得る。しかし、交流電源喪失が喪失しても、非常用発電機の津波による停止に気が廻らない。
「DGを生かせられないかとまず考えるんです。それが無くなったらどうしようと。」このように、正常性バイアスに囚われてしまっている。「アイソレーションコンデンサー(IC)とかRCICがあれば、とりあえず数時間の時間幅は冷却できるけれども、次はどうするんだということが頭の中でぐるぐる回った。」
この対応策は事故時手順書(事象ベース)の12章の4の全交流電源喪失の2.5電源復旧後操作 の後の[参考事項]にある。
参照・・http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06

23頁
質問「非常用ディーゼルが使えないということになって、次にどういう対応をとろうとお考えになられたんですか。」
(A)「絶望していました。基本的には、私自身ですね。シビアアクシデントにはいるわけですけれども、注水から言うと、全部のECCSが使えなくて、ICとRCICが止まって、HPCIがありますけれども、それらが止まった後、バッテリーが止まった後、どうやって冷却するのかというのは、検討しろという話はしていますけれども、自分で考えても、これというのがないんですね。」

(B)「答えがないんです。アクシデント・マネジメントのマニュアルから言うと、先ずはFP、消火系を生かせということで、それがDD、ディーゼルドライブの消火ポンプを動かせば行くというのはわかっていて、ろ過水の方がどうも水がなさそうだという話もその辺で入ってきまして、漏れているという話が入っていって、非常に難しいなと思っていました。いずれにしても、まずはFP、DD、消火系ポンプを生かして水を突っ込むしかないという中で、水をどう入れるか考えろという話をしていまして、2号のメタクラは幾つか生きているという話がその辺で入ってきますので、それを流用して動かせるポンプはないかということを検討しろと。

 もしそれが動かなかったときには、最初に減圧して、要するに、消火系のポンプというのは、DDにしても何にしても、圧力が下がらないとはいりませんので、与圧が下がらないと入りませんので、逃し安全弁をふかして、その分、圧力を逃して、圧を下げてからするという手順になりますので、その手順をやるときに、ディーゼルドライブの消火ポンプで十分大丈夫なのかをということを確認しにいかせると、ろ過水が入るのかもわからないという話も入ってきますし、どうしようかなという状況です。

 その中で、タイミングはわからないですけれども、水を入れる他の方法はないかというときに、FPのラインを使って消防車で水を入れることはできると。これはアクシデント・マネジメントのマニュアルにも何も書いていないと思うんですけれども、確かにそのラインがあるということで、トライするということを含めて、検討する必要がある、検討しろいうことになったんです。」
(D)質問「炉心溶融などを防ぐという意味で、RCICとか、ICが、8時間だとか、何日ぐらいもつという判断だったんですか。」
「私などは8時間で死ぬと。」

(B)の最後に出てくる消防車使用のラインの検討指示は17時12分。津波来襲から1時間から1時間半ごろに発電所対策本部の話。(D)で8時間、バッテリーは止まる、死ぬから8時間と意識していた。15時40分頃非常用発電機が止まってバッテリーになって8時間だから23時半頃、11日中にどうにかして炉に冷却用水を突っ込むというタイムスケージュル。それまでに達成しなければならない事は(B)にでてくる。事故時手順書(シビアアクシデント)の2-2-1項にある、FP(Fire Protection System)消火系ラインをつかう代替炉注水。原子炉圧力が0.69MPa以下であることが条件だから「逃し安全弁をふかして、その分、圧力を逃して、圧を下げてからするという手順」になるから、逃し安全弁を開操作できること。
image134a.jpg ただし、各種保護継電器や遮断器、計器類などが収められている「2号のメタクラは幾つか生きているという話がその辺で入ってきますので、それを流用して動かせるポンプはないかということを検討」と非常用発電機など交流電源回復に力を割いている。これには23時までに電源車や非常用発電機を回復させたりした電源をメタクラに繋ぎ込む、その電力を電動ポンプを繋ぎ込み津波来襲後も無事稼働するか否か確認し、無事なポンプから炉への注水ラインを構築する3段階が必要となる。FPによる注水よりも手数が多い。
メタクラの画像や詳細はこちらで・・ http://www.anaroguma.org/komake/fukushima/dic/file/7/4/7402.htm?TB_iframe=true&width=800&height=400

こうしたマネジメントの立案は、安否確認などでてんやわんやの発電所ではなく、本店の緊急時対策本部の仕事ではないか。

24頁 FP消火系ラインの代替注水談義
まず、吉田所長による半ば意図的な、バイアスのかかった発言が多い

代替注水のFP消火系ラインは吉田所長の言うように「平成13年ぐらいに出来てる」。さらに吉田氏は設計「デザインした人は、消火栓から持っていくんだということで、このラインをつくったんだ」としている。しかし、外部からの注水を可能にする消火栓の設置は、2010年の6月である。吉田氏が所長として赴任した月である。彼はそれまではなかった、何を目的としたかはご存じであろう。仮に代替注水のFP消火系ラインの強化というなら、活用する手順がなければならない。しかし吉田氏が言うように「アクシデント・マネジメントのマニュアルにも何も書いていない」状態だった。

 消防車がなければ、注水できない。吉田氏は原子力設備管理部の部長時代の2007年中越沖地震で柏崎刈羽原発の3号機の変圧器が燃え上がった「非常に真っ黒けになって、NHKが御丁重に報道していただいたんで、全国の方が燃えているところと黒い煙を見ていらっしゃると思うんですが、あの後、原子力発電所には消防車もないのかということで、えらいバッシングに遭いまして、消防車を買った」。
 3.11の時点で東北電力の女川発電所には化学消防車があった。北陸電力も消防車があった。全国の原発では消防車、化学消防車を備えている原発が多数あった。原子力発電所には消防車もないというのは間違っているが、”東京電力の原子力発電所には消防車もない”は正しい。それを、過剰または根拠のない非難・バッシングというのは、間違っている。吉田氏は当時、設備管理部部長だったのだから、1台5千万円もする水槽付消防車を4台、約2億円も過剰・根拠のない非難で買わされたと思ったのだろうか。その消防車がなければ消火栓は付かなかった。消火栓がなければ注水できなかった。
bd-1.jpg もっとも、台数が少ない。設計・デザインで消火栓を経て外部の水源、防火水槽や復水タンクなどから冷却水を送水・注水を考えていたら、消防団が持っているような消防車で十分。送水・注水能力は消防ポンプの規格できまる。A-2で十分。火事場で消火するには川、池、消火栓などを水源として放水する。水槽が付いていないから、直ぐに放水できない。水源と接続する必要がある。水槽が付いていないから、普通自動車で安価で普通免許で運転できる。配備されている水槽付で大型免許が必要な消防車1台の代金で10台揃うそうだ。

25頁 SLCと必要注水量
SLC (Standby Liquid Control System. ホウ酸水注入系)は、本来は制御棒が入らない時などに中性子を吸収して核分裂反応を抑えるホウ酸水を炉に注水するシステム。炉が高圧でも注水する能力を持っている。高圧移送に適しているプランジャーを往復させて吸込・吐出を行う「プランジャーポンプですから、あれは多分、大丈夫だろう」「唯一生きていそう」「外部電源からメタクラを介して渡し込みしていけばできる」

 しかし「量的には大したことない」。1号機(46万kw.)のSLCの注水量は不明。手元の資料では柏崎刈羽6、7号(110万kw.)のは1時間当たり10㎥だから1号機は出力から半分くらいだろう。炉への最低注水量(時間当り)は事故時手順書(シビアアクシデント)によればスクラムから10時間まで1号機で20㎥。全く足らない。

プランジャーポンプrecipro.gif

 IC・非常用復水器が稼働していれば、炉水は炉の外には排出されない。ICに行く水蒸気、復水分だけ炉の水面は下がる。また津波前の稼働記録を見ると1分稼働で炉圧が0.2MPa下がっている。津波到達時に炉圧が7MPa位でもその後稼働し続けていれば、午後4時半頃には0.1MPa位、大気圧程度には下がるから、SCLの高炉圧時でも注水可能という特徴の出番はない。
 2、3号機(74.8万kw.)の炉への最低注水量はスクラムから5時間まで35㎥で、5~10時間は32㎥。2、3号機は高圧時には、無いよりましの注水がSCLで可能だ。

26頁 電源車手配の正常性バイアス 明白な誤判断

「交流電源というのは電源車を持ってくるしかないんで、電源車はとりあえず持ってきてくれという依頼というか、オーダーをするわけです。何処からでもいいから、まず電源車を持ってきてくれ、仕様などは後で考えるから、とりあえず持ってこいという感じでお願いして、それはこちらで調整できませんから、本店に調整してもらっています。」

 これは、明白な誤判断です。23頁の17時頃の収束ビジョンでは、対策の締切り時刻は11日の23時半頃まです。バッテリー切れまで7時間位しかない。その中で1、2、3号機、三つの原発で達成可能な対応策を選択し時間を有効に使わなければならない。

 電源車で交流電源原回復は一見魅力的だが、それが発電所に届く時間やそれを繋ぎ込む時間はどれくらいかかるだろうか。「仕様などは後で考えるから、とりあえず持ってこいという感じでお願いして」いるのだから、仕様に合わせた接続機器をそろえる手間もある。7時間で済むだろうか。また電力を回復しても注水できるだろう最有力な電動ポンプはSCLで、これは能力不足。仕様などを無視してとりあえず持ってこいというオーダーは、時間を無駄遣いするのは明白だから、溺れる者は藁をもつかむという状態、頭がパニックになっていたことを示している。

 これに対し、FP・消火系ラインでの代替注水は、やるべき作業が号機で共通している。設置されているデーゼル消火用ポンプと外部の消火栓を使えるか確認する。水源を確保する。ラインを構成する。原子炉の水位や圧力などを測る計器を回復するために、直流電源を揃える。逃し安全弁・SRVの開操作に必要な直流電源と圧縮ガスを用意する。

 外部からの調達が必要なのはデーゼル消火用ポンプのバックアップ用の消防ポンプ、消防車と直流電源のバッテリーや直流発電機と圧縮ガス。「監視機器を生かすのは直流電源です。その時点で私が電源何とかしろと言った時に、復旧班が機転を効かせて、車からバッテリーを外して中央操作室に持ち込んで、監視計器の電源に使ったわけです。・・その後でバッテリーが必要だということで、バッテリーも送ってくれというようなことを本店に要求する」消防車の消防ホースや接続口は規格・仕様が定まっていて、どれを持ってきても使える。

33頁 チェッキ弁とFPのDGポンプ 17時30分

質問「ディーゼル駆動消火ポンプの起動待機状態の意味というのは、原子炉の圧力が下がった段階で、バルブを開ければという風に確認させていただいた・・」
「炉圧が70キロ、それで消火ポンプ側が10キロですから、チェッキ弁ですから、こちらからこっちから流れないような弁になっている。こっち側が下がっていれば、自動的に圧力のバランスで注入される。」
質問「それで、弁が開いて入っていくということで、人の何かの動作は必要ないということでよろしんですか。
「はい」

fig06-1.jpgチェッキ弁・・流体の流れを常に一定方向に保ち、逆流を防止する機能を持つバルブです。流体圧によって押し開かれる状態になりますが、逆流すると背圧によってボデーのシートに密着して、逆流を防止するものです。

http://www.kitz.co.jp/kiso/type_checkvalve.html

18時25分にICの弁を閉鎖して、ICを停止させる操作を加えている。これは、原子炉圧力を上げる操作だ。消火ポンプ側より原子炉圧力が高い状態になる操作だから、チェッキ弁の働きで消火ポンプ注水を自動的に止める操作でもある。

33、34頁 原子炉圧力が20時07分6.9MPa、約6時間後の12日2時45分0.8MPa。
 間の12日1時48分にディーゼル消火ポンプの停止を確認。

「1、2号中操と、今から考えますと、(対策本部中枢の)円卓の情報伝達が極めて悪かったんですね。それは、当直長が悪いと言っているわけではなくて、何がしかの形でICの話にしてもDD消火ポンプにしても、どう動いているかという話が、その時点では、ほとんど入ってこなかったというのが実態なんです。私は、はっきり言って細かいところを聞いてないです。」

34、35頁 22時頃、メルトダウンを想定しはじめる
11日「21時51分で書いてありますけれども、この線量ですね。なんでこんなに線量が上がるのかと、現場に行った人間がはかってきた」「私はそのころ、ICは動いているね、水位は一応プラスあるねということからいって、そこと線量が上がってきていることと、だけど何かおかしいと、水位がおかしいのか、何かがおかしいんだろうという中で、」
11日午後「11時50分過ぎくらいに、そういうドライウェルの600kPaを計測」「12時前後にドライウェル圧力が高そうだということから、中はひどい状態になっている可能性が高いと、そこから思い始めたわけです。」「疑心暗鬼になり始めている。水位だけ見ているとあるんだけれども、これは何か変なことが起こっていると、ICが止まっているのか、要するに冷却源が無くなっているかなという風に思い始めている。」

 「線量が上がるということは、結局、ここに(原子炉)に放射能が全部閉じ込められていますから、結局、これが外に出るということは、圧力容器から漏れて、その漏れたものが格納容器から漏れているとしか考えられない。」
 「想像すると、要するに燃料損傷に至っている可能性があるなと、燃料損傷するということは何かというと、圧力容器の圧力がホールドできなくなって、中の放射線物質が格納容器の中に噴出するためには、圧力容器のばうんだりーがどこかでブレークしていないと出てきませんから、そういう状態を一つ想像する。」「その出ていったものが、格納容器の中でホールドできなくて出ていっているということしか考えられない。」

38、39頁 格納容器の圧力・600KPaを11日午後11時50分過ぎに計測、これを下げるためのベント

「設計圧力を超えていますから、要するに格納容器を壊さないようにするために、圧力を下げるしかないわけですね。機械屋からするとですね、だから何としてでもベントして圧力を下げるべきだと、その手順として、アクシデントマネジメントの中に、ベント手法が書いてあって、ベントしてくれと、こういう話になります。細かい手順は発電の方に。」


事故時手順書(シビアアクシデント)の「Ⅳ事故時手順書(シビアアクシデント)の全体構成」の(7)と(8)では
「格納容器の健全性を維持するとともにプラントを事故収束に導くため」の手段を上げている。その中で、SBO・全交流電源喪失時で使える手段は代替水源PCV(格納容器)スプレイのFP・消火系ラインである。具体的なPF・消火系ラインでの手順は「2‐2.AM設備別操作手順 系統名 消火系(FP)」にある。それらでは、格納容器圧力が640kPaを超えた時実施。注水流量は1時間当たり70㎥以上とし、圧力抑制が十分でない場合は量を増やす。格納容器圧力を監視して「間欠で実施する。」。サブレッションチェンバーベントライン(図のW/Wベント)の水没防止のため、注水水量1700㎥に到達したら停止する。そして格納容器ベントに移行、実施する。

1時間当たり70㎥とすると注水水量1700㎥は約24時間後。日本のBWRメーカの東芝、日立の研究では、約1日ベントを遅らせるという結果が出ている。

吉田調書では、シビアアクシデント対策AMでベントに先行する格納容器スプレイを選択しなかった理由が不明。

PCVスプレイ-2.jpg
http://www.jsme.or.jp/pes/Research/A-TS08-08/03/13hitachi-toshiba-mitsubishi.pdf
(社)日本機械学会動力エネルギーシステム部門 第18回動力・エネルギー技術シンポジウム 資料

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