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memo 戦略爆撃 原爆へ至る道 東京大空襲「火災旋風」(9) [原子力損害賠償制度]

 東京大空襲の火炎旋風

1944年6月から9月のマリアナ諸島の戦いで得た、飛行場からの日本本土への戦略空爆は1944年11月24日に始まった。ヘイウッド・ハルセン准将率いる第21爆撃軍で、米国の公式方針「精密爆撃」に従った爆撃を行った。連日のように工業地帯の航空機工場、特に航空機エンジン工場へを狙った高度8000m~10000mでの高高度昼間編隊による通常爆弾の爆撃を行った。しかし、その精度はドイツ戦で実証済みの“ばら撒き”。攻撃目標の工場よりも周辺の市民や民家の被害が大きく戦果は少ない。

 45年1月21日にハルセン准将は解任され、ドイツで無差別爆撃を指揮したカーチス・ルメイ少将が着任する。彼は、陸上の物流の主役であった国鉄を始めとする鉄道網、炭田という産業構造の中枢(hub)を、主目的にした空爆は殆ど行っていない。航空軍参謀総長のローリス・ノースタッド少将は民家焼夷攻撃論者であり、少将の焼夷弾による無差別攻撃を命令に従って、無差別の焼夷弾空襲、焼殺(ホロコースト)を行った。まず、焼夷弾の効果を確かめる地域爆撃(area bombing、市街地域を面として攻撃)を、2月4日の神戸など行った。
 ルメイは都市工業地域に対する2000m程度の低高度夜間焼夷弾攻撃および中高度昼間攻撃法も併用することにした。3月中旬から6月15日までの、5大都市(東京、名古屋、横浜、神戸、大阪)への大量焼夷弾による地域爆撃を行った。3月10日の東京大空襲は、午前0時8分から空襲開始。高度1500~2800mの低高度夜間焼夷弾攻撃で最初は東京中心部下町を囲むような形で巨大な火の輪を作り上げた。次に、その火の輪の中に焼夷弾を投下した。1943年7月のハンブルグ空襲の再現、「火災旋風」炎を伴った竜巻の発生を狙った。空襲は午前2時半まで続き、火災は6時間続いた。
 26万8千戸が全焼又は半焼し、罹災人口100万人。逃げ場を絶たれた多くの人が焼き殺されたり、呼吸困難、一酸化炭素中毒で死亡、死者約10万人、負傷者4万人以上と推定されている。

井上78205mc_yokokawa.jpg

井上img_0.png 

 参照・・神戸空襲 http://www.city.kobe.lg.jp/information/institution/institution/document/kushu/kushutop.html

 神戸など港湾への機雷投下が行われている。物資の流通、海運による物流を止める爆撃。神戸は6月5日の空襲で、焼け野原にし終えたので、目標リストからはずされることになる。
5大都市への焼夷弾、絨毯爆撃が6月上旬まで行われ「全市の四割前後」が焼失する。

流れ出る都市民 

【大都市に対する無差別絨毯爆撃が始められると「四大工業地域より無計画恣意的に各地方各府県に転流せるもの約八百万人」(六月一日現在)となり、地方に深刻な「食料問題、インフレ激化問題」を引き起こした。
しかも、この大量の罹災者、疎開者の移動と共に空襲被害に関する情報は全国へ広まっていった。他方、疎開のあてもなく罹災により壕舎生活を余儀なくされた人は東京都内で約六万七千世帯、二十二万七千人、横浜で約十万人、大阪九万人と推定された。】
(川島高峰、日本の敗戦と民衆意識、http://www.isc.meiji.ac.jp/~takane/ronbun/haisen-minsyu.htm

戦略爆撃理論では、「最小限の基盤である民間人に決定的な攻撃が向けられ戦争は長続きしない」空爆で民衆にパニックを起こせば自己保存の本能に突き動かされ戦争の終結を要求するようになる。ところが、そうした動きは見られない。
【東京の罹災者の戦意は低く、「敗北主義的厭戦的気運即ち『戦争に勝つても敗けてもこれ以下の生活に落ちることはない。敗けても勝つてもどうでもよい』と云ふが如き風潮を一部に醸成する処多分」】
【罹災地では「『スパイ』横行シアリトノ流言多発」し、「一般民心ノ不満対象ヲ『スパイ』視スル傾向」があった。国民の一部に特異言動ではあるが、「アンナニ東京ヲ焼イテ了ツテ天皇陛下モ糞モナイ戦ニ勝カラ我慢シロト言ヤカツテ百姓ハトツタ米モ自由ニナラヌ骨ヲ折ル丈ケタ」といった「『皇室ノ戦争責任』又ハ『皇室ノ生活様式ヲ羨望憶測』等ヲ云為スルカ如キ自棄的厭戦不敬造言ノ発生増加ノ傾向」が見られるようになった。】



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  • 出版社/メーカー: 新日本出版社
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 大型本



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