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memo 戦略爆撃 原爆へ至る道 industrial web theory(4) [原子力損害賠償制度]

 米国の参戦

1941年12月に真珠湾攻撃とそれによるドイツの対米宣戦布告によって、米国が欧州戦線に参戦します。陸軍航空軍(Army Air Force)第8航空軍が1942年2月に編成され、7月には英国に派遣。8月から本格的な作戦行動を開始。当初英空軍はこの航空軍も自らの指揮下に置くことを望むが、英国がそれまで行ってきた“夜間無差別爆撃戦略”に対する拒絶反応、在欧州アメリカ戦略航空軍司令官は、ドイツ国民に爆撃を加えることで彼らの士気阻喪を狙うという戦略に反対した公史に記されている。この将校は爆撃にともなう道義的責任を繰り返し提起し、ワシントンの航空軍司令部は司令部で、こうした作戦は航空軍政策と国家的理念に反するという理由で彼を強く支持したとも記されている。

1941年7、8月に航空戦計画部(Air War Plans Division/AWPD)が立案した、 米国の戦略爆撃理論では、敵国の産業構造を分析して全体の中枢(hub)、つまり輸送網、製造網の中心となる場所、輸送網なら鉄道の車両や路線が一箇所に集まる操車場、大都市の駅などが中枢(hab)をみつける。ここを叩くと、全体がマヒしてしまう心臓部(vital point)である。そこを繰り返し相手が修復したら再び爆撃、ひたすら爆撃を繰り返す。

PhysRevE.90.022806b.png当時、アメリカ都市部の鉄道で列車の遅延、運行の乱れが頻繁に発生していた。その原因を調査すると、鉄道ネットワークでは、路線上の一箇所に故障した列車が立ち往生し、線路をふさいでしまうだけで、次々と後続の列車が停止に追い込まれ、連鎖的にシステム全体がマヒしてしまう事がわかった。ここから、巨大なネットワーク(Web)でも、たった一箇所の破綻で、システム全体の崩壊につながる、という理論を導き出し、これを国家の産業構造、軍需産業を含む産業構造全体にも拡張適用した。ここを叩くと、全体がマヒしてしまう心臓部(vital point)になる産業の中枢(hub)を見出す。そこを繰り返し相手が修復したら再び爆撃、ひたすら爆撃を繰り返す。戦闘の目的を、敵国軍隊の殲滅から、「敵国家の直接破壊」に変えた。
全体の中枢(hub)はエネルギー産業、製鉄、輸送網。

「ドイツの場合、その国内輸送量の72%が鉄道、25%が運河を利用した水運だったため鉄道の心臓部、つまり弱点となる操車場や貨物駅施設、鉄橋などを徹底的に叩かれ、さらに水運の心臓部、運河の港湾施設も破壊されてしまい、お手上げ、となるのです。
 これでは、どんなに工場で兵器をガンガン作っても、それを前線に送ることができないし、そもそも工場に材料が入って来ないので、たとえ工場を直接叩かなくても、事実上、その生産能力を奪ってしまう事になりました。」

ドイツ国内の27の石油関連施設、窒素(nitorogen、火薬や化学肥料の原料)生産工場などは選ばれている。
http://majo44.sakura.ne.jp/planes/F22/F22-6/01.html

このように米軍の戦略爆撃理論は、イタリアのドゥーエ将軍の理論を爆撃目標の選定方法をブラッシュアップ・洗練して、産業構造全体の中枢(hub)を爆撃、攻撃目標にした。それは、ドゥーエ将軍の理論では攻撃、爆撃標的としていた人口密集地を標的から除くことでもある。

 ドゥーエ将軍の理論では高性能爆弾、焼夷弾、毒ガス弾などによる人口密集地の住民への爆撃、無差別爆撃は、兵士、民間人に区別はない総力戦であるから当然の攻撃である。「基盤である民間人に決定的な攻撃が向けられ戦争は長続きしない。」空爆で民衆にパニックを起こせば自己保存の本能に突き動かされ戦争の終結を要求するようになる。「長期的に見れば流血が少なくするのでこのような未来戦ははるかに人道的だ」とドゥーエ将軍は正当化している。
 米軍は、そのような正当化が必要な無差別爆撃を理論的には除いた。

新装版 アメリカの日本空襲にモラルはあったか―戦略爆撃の道義的問題

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  • 作者: ロナルド シェイファー
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