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癌細胞の被曝での変異で多発状態?? 福島の小児甲状腺癌 [被曝影響、特に甲状腺]

(癌細胞が被爆したら?の続き)
ナチュラルキラーNK細胞は抹消血のリンパ球の10%~30%あり、成人では約50億個あるそうです(内1割程度、1から5億個程度が血液にあり体内を回っている)。体重1kg・約1兆個の細胞に約1億個ですから1万分の1の割合です。極めて少ないのでウイルスに感染した細胞は、NK細胞を活性化し呼び寄せる情報伝達物質(インターフェロンα/β)を出します。普段の正常細胞は、この情報伝達物質(インターフェロンα/β)を微量産出しています。いわば車のアイドリング状態です。ウイルス感染すると、アクセルを踏み込んで産出・放出量を増やします。
1386625216.jpgまた細胞表面には蛋白質・MHCクラスⅠを数万分子ほど出しています。
蛋白質・MHCクラスⅠは、その細胞「自己」で作られているタンパク質のペプチド断片、アミノ酸で9個くらいの断片を結合・内包した蛋白質です。2本のα鎖(αへリックス)やその間の溝に内包されたペプチドはその人の遺伝DNAを反映しており、指紋と同じように一人ひとり違います。蛋白質・MHCクラスⅠを「表札」と喩える方もいます。NK細胞は、細胞のα鎖が自分のα鎖と同じなら、抑制性レセプターからの抑制性シグナルがでます。

 ウイルス感染細胞では蛋白質・MHCクラスⅠの発現量が減ったり、内包される蛋白ペプチドがウイルス由来に変ることによりα鎖が変性したりします。その結果、抑制性レセプターからの抑制性シグナルが減ります。

 また感染細胞表面にでたウイルスのつくる蛋白質の小片によって活性化レセプターから細胞傷害活性を活性化するシグナルが増大します。そして、NK細胞は感染細胞をアポトーシスに誘導するように働きます。

 感染細胞は情報伝達物質(インターフェロンα/β)を多く産出・放出して、NK細胞を活性化し呼び寄せます。NK細胞は、感染細胞のMHCクラスⅠの変化やウイルス抗原に因って細胞傷害性を顕します。

NK細胞表面に発現するアポトーシス誘導分子は、感染細胞のデスレセプターに付き刺激します。
デスレセプターはアポトーシス誘導シグナルを細胞内に伝達する受容体で、感染細胞では発現が亢進しています。デスレセプターのだすアポトーシス誘導シグナルは、アポトーシスの活性化された酵素が細胞内の細胞が形を保ち生存していくために重要な役割を持つ蛋白質を切断する仕組みを発動させる制御系を刺激します。
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 癌細胞では、この誘導・強制アポトーシスの仕組みが損傷して制御シグナルの損傷・破綻してアポトーシスの抑制が起きている。それは、情報伝達物質(インターフェロンα/β)の産出・放出量が上がらない、MHCクラスⅠの発現量が減らない、デスレセプターが減る、増えないとか、慢性リンパ性白血病のように近傍の細胞から分泌されるBAFFの刺激での抗アポトーシス蛋白が高発現してアポトーシスの回避など色々な形態があって、連続的に誘導・強制アポトーシスを起こり難くしている。

癌細胞は被爆すると変異が顕われやすい??

さてこのような癌細胞が放射線被曝をしたらどのような変化を起こすのでしょうか?正常な細胞が被曝で癌細胞になるには、多段発ガン説でも染色体不安定説でも複数個の損傷・変異が重なるためには時間がかかりますが、既に癌細胞になっていますから、被曝によるDNA切断が何らかの変異・異常で顕われ易いとおもいます。
癌病が進展すると、遺伝子の変異か蓄積して転移できる癌細胞が現れたり倍加が速くなります。こうした変異・変化が起こるのではないでしょうか。

 その放射線被曝への抵抗性は「アポトーシスが出にくい、アポトーシス出現率が低い細胞は放射線や制癌剤に抵抗性」細胞周期の「遅延が長ければ長いほど放射線抵抗性」。逆に言えば、遅延が短く細胞周期が3日とか4日と短く、アポトーシス出現率が高い=アトポーシス回避率が低い癌細胞ほど放射線被曝に高感受性で影響が出易い。

 北海道大学の桑原幹典教授の研究によれば、放射線被曝した細胞ではアポトーシスを阻害する蛋白質の発現量が増大します。この蛋白質・サバイビン(survivin)はアトポーシスを制御したり細胞蛋白質分解を起こす酵素蛋白質に結合してその働きを邪魔する、アポトーシスを抑制する作用があります。

 この蛋白質・サバイビンは胎児期に各臓器で強く発現していますが、成人臓器では精巣や胸腺以外の正常組織では発現していません。各種の癌で強く発現しています。胃がん、大腸がん、乳がん、膀胱がんなどでは、サバイビン(survivin)の発現量と予後不良に相関が認められています。

 染色体が納められている核内ではサバイビン濃度が高いと生存率が良好ですが、細胞質内で高いと再発リスクの有意な増加が前立腺癌で認められています。

 このアトポーシスを抑制する蛋白質は放射線被曝した細胞で増大しますから、放射線被曝した癌細胞でも増大して更に過剰発現し、アトポーシスを抑制すると考えられます。

 このような変異が、放射線感受性の高い細胞周期が短く、アポトーシス出現率が高い=アトポーシス回避率が低い癌細胞を中心におきると考えられます。

 例えば、細胞周期が3日でアトポーシス回避率が50.29%(NK細胞に出会うと49.71%の確率でアトポーシス出現)では倍加の必要な細胞分裂は120回ですから倍加時間・3×120=約1年です。
回避率が50.145%(出現率49.855%)なら240回で約2年。回避率が50.1%(出現率49.9%)なら350回で約3年。回避率が50%(出現率50%)なら細胞分裂して2個に増えても1個はアポトーシス誘導で減り増殖できない。

 こうした細胞周期が短くアポトーシス出現率が高く放射線被曝に高感受性の癌細胞でアポトーシス出現率が約9%低くなる、アポトーシス回避率が約9%高くなる変異がおきたとします。それで回避率が59%になると倍加の必要な細胞分裂は4.2回ですから倍加時間は3×4.2=12.6日、1年で直径5mm強の癌塊に増殖します。

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福島の子供らの甲状腺に3.11の朝に細胞周期が3日で倍加時間・約1年の癌細胞が有った場合は、5mm.増殖に約27年、2cmに約34年ですから三十代から四十代に現れました。倍加時間・約2年なら六十代・還暦前後です。
こうした癌細胞が東電核災害で吸入した放射性ヨウ素による甲状腺内部被曝で、アポトーシス出現率が約9%低く回避率が約9%高くなる変異をとげると、約1年で甲状腺検査までに直径5mmの癌塊に増殖できます。そして二次検査対象になり発見される。
 倍加時間が3年とか出現率50%で増殖できなくて生涯姿を現さないはず癌細胞も、同様の変異をとげると、約1年で甲状腺検査までに直径5mmの癌塊に増殖できます。そして二次検査対象になり発見される。

 その被曝した癌細胞で先ほどの変異がおきて、増殖する癌細胞が数的に増大した。それで平常時には年間100万人当り1~2人が受診発見が、149人も異常な多発になったと説明できます。

 今回検査対象になっていない発災時18歳以上でも同様の変異が起こっていると考えられます。放射線被曝の感受性が子供より低いとされますので、こうした変異を起こす癌細胞の数や変異の程度は小さいでしょう。そうした癌細胞を抱えた大人の発見発症も今後出てくると思われます。

倍加時間が短い癌に従来どおりの「長期経過観察」は妥当か?

 この被曝した癌細胞という視点からは、検査で発見された小児甲状腺癌はアポトーシスが出にくい、アポトーシス出現率が低く倍加に必要な細胞分裂回数が少ない、そして細胞周期が癌細胞としては短い例が高感受性故に多いと思われます。つまり元々は倍加時間1年、2年、3年、倍化しない癌細胞で、仮に発見したとしても長期経過観察していたものが、倍加時間が短く直ぐに大きくなる癌塊になっているわけです。従って、従来の治療方針は当てはまらない。実際に診ている医師と患者・患者家族が相談して、次々と手術しています。

 また、今後、1年間で5mm.まで大きくならない程度の変異を生じた癌細胞が増殖して発見発症レベルの癌塊を作るでしょう。それは2年後の2回目の検査を待ちません。発見治療を手遅れにしないためには、もっと検査間隔を短くする必要があります。

 発災した2011年から2013年度の検査は「原発事故の影響は出ていない」という予断をもって始められました。それで検査結果の解釈・評価もそうした「原発事故の影響は出ていない」というバイアスがかかっています。科学に限らず、事実に基づかない判断、評価は、何の役にも立ちません。そして、予断をもって行った評価は事実を説明できません。そして対応を誤らせます。

 「原発事故の影響は出ていない」という予断を持った福島県の検査結果を検討する甲状腺検査評価部会。その西美和委員は、16歳以下の100万人当り千人が癌細胞を有している、東電核災害後の全員検査では「現在の精巧な超音波検査」で千人中から直径5mm.以上の癌塊を149人も発見したと評価しています。「原発事故の影響は出ていない」とするなら、有病期間・200年説の100万人当り400人とか、西委員の千人としないと数的には辻褄があわなくなります。

 倍加時間を考慮すると149人は遅くても4~5年後には直径2cmの癌塊を持つことになります。つまり20~24歳時に149人発症します。日本でのこの年齢の発症は西美和委員の資料によれば、男性が10人、女性が31人です。「原発事故の影響は出ていない」という予断を持っていては、事実を説明・解明できません。それだけでなく、必要な対策を提起できず、発見治療を手遅れにします。有害です。

予断を捨てて、事実に基づいた判断、評価でなければ、何の役にも立ちません。

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