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小児甲状腺癌を癌細胞増殖で考えた [被曝影響、特に甲状腺]

人の体は体重1k当りで概算で約1兆の細胞でできていると言われます。毎日0.5%の約50億個の細胞が生まれ、毎日約50億個死んでいくなら、総数は変わらず約200日で入れ替わります。ガンは癌細胞が分裂して増えた結果。それは、癌細胞が増えていく数と減って数の差で増えていくことになります。その癌細胞の流入、増え方は他の細胞らとどう違うのでしょうか。
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細胞分裂だけでは説明できない癌の増殖スピード。

先ず増え方。 細胞分裂は1個が2個になる、倍々ゲームです。

高校の生物レベルの知識では細胞分裂は
M(mitosis)期: 有糸分裂期・・約1時間
G1(gap1)期: DNA合成の準備期・・ 細胞で大きく変化 12~数十時間(2,3日)
S期(synthesis): DNA複製期・・6~8時間程度
G2(gap2)期: 細胞分裂の準備期・・ 1~3時間程度
G0期: 増殖休止期(増殖能力維持しながら休止)

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このように高校の生物レベルの知識では24~74時間程度が細胞分裂の間隔です。細胞分裂の周期を細胞周期時間(CCT)とすると癌細胞の細胞周期時間(CCT)は正常な細胞よりも長い、増殖速度はるかに遅いものらしいです。

「癌細胞を培養して株化を試みるときに、一番問題となるのは癌細胞より正常の線維芽細胞がどんどん増えて癌細胞が増えられないことなのである。白血病に対しては細胞増殖阻害剤が有効であるが、この場合も選択的に増殖の速い白血病細胞を殺しているのではない。正常細胞も白血病細胞も等しく抗癌剤は殺しているのである。正常細胞の 増殖能力が優るので、その後の回復時に正常細胞と白血病細胞の比率が変わるのである。これを繰り返して白血病 細胞を駆逐するのが現在の化学療法である。」(本間良夫氏の記述

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人の正常細胞は約1日、癌細胞では数日(3~10 日)と言われています。発生した癌細胞の細胞周期時間(CCT)が3~10日、3~10日で細胞分裂で1個が2個になるなら、CTやレントゲンなどで発見される直径1cm程度(細胞数約10億個)まで増殖する、倍加を30回繰る返すのに約90~300日、約3ヶ月から約10ヶ月。それが死亡に至る可能性が高い直径10センチ程度には10回の細胞分裂だから約30~100日となる。
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ところが、普通の癌では発見から約5年、倍加時間は約6ヶ月。進行が早いといわれるもので約10ヶ月、倍加時間(DT)は約1ヶ月、遅いものは倍加時間(DT)は約1から2年というのが臨床的事実です。この期間は癌細胞が増えていくことだけ、細胞分裂の間隔、細胞周期時間(CCT)だけでは倍加時間を説明できません。つまり、癌細胞が減って数、その比率や速度も着目しないと倍加時間(DT)は理解できない。

癌細胞のアポトーシス

細胞は寿命があります。白血球は30日‐50日で死にます。自然消滅します。このように、管理・調節された遺伝的にプログラムされた細胞の自殺をアポトーシスといいます。癌細胞は違います。癌細胞には寿命死がありません。栄養を与え続ければ、永遠に生き続けます。

細胞がウイルスに感染する、例えば喉の上皮細胞がインフルエンザに感染し乗っ取られる、ウイルス製造装置に換えられると、免疫細胞が感染細胞のアポトーシスのスイッチを外部から入れて感染細胞を自殺させます。癌細胞は寿命ではアポトーシスを起こさなくても、免疫細胞に因って強制アポトーシスを起こす仕組みによって癌細胞の自死が起こっている。
、無限に細胞分裂、増殖を行える癌細胞が増えて行っても、端から強制アポトーシスで自死により減っていたら、倍加時間は細胞分裂の間隔・細胞周期時間(CCT)より長くなります。

「p53 は細胞膜表面に存在し、・・アポトーシスを誘導する(Fig. 1-2)(Villunger et al.,2003)。この一連のp53 によるアポトーシス誘導が、癌抑制遺伝子としてのp53 の機能の本体であると考えられている。・・アポトーシスの全てがp53 に依存するわけではない。実際p53 が機能を失った多くの癌細胞でもアポトーシスは程度の差こそあれ誘導される。」阿部拓也

アポトーシス異常の癌・・慢性リンパ性白血病

逆に増殖速度が遅くても強制アポトーシスから逃れていれば、発がんに至ります。慢性リンパ性白血病(小細胞性リンパ腫)は、白血球のリンパ球ががん化して血中に増加して生じる癌疾患です。「発症は緩(ゆる)やかで非常にゆっくりした経過をとるため、初期の段階ではほとんど自覚症状はありません。そのために、診断される患者さんの少なくとも1/4は、定期健康診断や他の病気の検査で、白血球の増加をきっかけに偶然発見されています。自覚症状がない状態で発見されてから、症状が出現するまで平均で4年かかるといわれています。一部に進行が早く生存期間が1年未満の方もいますが、10年から20年と長い経過をとることが多く、患者さんによって経過は異なります。」 概説・国立がんセンター

この白血病の細胞はその大半が細胞周期上ではG0期: 増殖休止期にあり増殖速度はきわめて遅いのです。しかしアポトーシスから保護する細胞(Nurselike cell)などによって免疫細胞などからアポトーシス強制を回避しています。その結果、過剰な増殖というよりはむしろアポトーシスを回避した腫瘍細胞の蓄積で発症します。

強制アポトーシス率(CA)

分裂周期期間に起こる癌細胞のアポトーシスの率を強制アポトーシス率(CA)とします。これを細胞周期時間(日)で割ると図1の細胞の死滅率dに相当します。
細胞分裂する母細胞数の率は、1から強制アポトーシス率(CA)を引いた値になります。これは癌細胞から見たらアポトーシス回避率です。一分裂周期期間での増殖率は、(1-CA)×2です。だからCAが0.5、50%を上回ると癌細胞が癌にまで増殖することはないといえます。

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強制アトポーシス率(CA)から20代30代のガン発症を検討してみる。

この数理的表と進行の早い癌は臨床的には倍加時間が約一月・30日であること考え合わせると、細胞周期時間(CCT)が3日の癌細胞は強制アポトーシス率は46.4%位を下限、10日の細胞は37%位を下限としてると見えます。またごく普通の癌の多数例では、倍加時間が半年・180日程度ですから、細胞周期時間(CCT)が3日の癌細胞は倍加時間内には60回ほど細胞分裂となります。それは表では強制アポトーシス率では49.40%の59回が近いです。生成する癌細胞タイプ別に強制アポトーシス率で見ると分布特性がありそうです。

仮に細胞周期時間(CCT)が3日の癌細胞が5歳児の甲状腺に出来たとします。それが寿命死をしない栄養があれば永遠に生き続ける癌細胞でも、強制アポトーシス率CAが50%なら増えません、そのままです。50%以上ならやがて消滅します。

強制アポトーシス率CA49.40%、倍加までの細胞分裂は59回、倍加時間(DT)は約6ヶ月の普通の癌の多数例の癌細胞なら、20歳・二十歳になるまで約30.4回の倍加時間があります。18歳半年頃には、直径5ミリ程度のシコリになってFNA(穿刺吸引細胞診)検査の適用可能で、二十歳の誕生日頃には1cm程度になっています。

これが、強制アポトーシス率が0.1%低い49.30%、倍加までの細胞分裂は50回、倍加時間(DT)は約5ヶ月の平凡な癌細胞なら、20歳・二十歳になるまで約36.5回の倍加時間があります。FNA(穿刺吸引細胞診)検査の適用可能の直径5ミリ程度のシコリには16歳頃、1cm程度は17.3歳頃です。

癌細胞が10歳で出来たとすると、倍加時間(DT)は約6ヶ月の普通の癌の多数例の癌細胞なら20歳の頃はまだ直径1ミリ程度です。26歳頃に1cm.ほどになります。倍加時間(DT)は約5ヶ月の平凡な癌細胞なら20歳の頃は約5ミリで検査すれば見つかる可能性があります。22歳頃には1cm程度です。

一般に年をとる加齢によって新陳代謝が低下します。これを、細胞分裂で言えば細胞周期時間(CCT)が延びていくとか、G1: DNA合成の準備期からM期: 有糸分裂期の時間は変わらないがG0期:増殖能力維持しながら休止する 増殖休止期が伸びて細胞分裂全体の時間が延びてるということです。癌細胞は正常細胞から生まれるのですから、その年齢特性は受け継いでいるのではないでしょうか。若い人、小児は新陳代謝が早い=細胞周期時間(CCT)が短いか休まず増殖休止期なしで分裂⇒癌細胞の細胞分裂の間隔が年長者に比べ短い。倍加時間は細胞分裂回数×細胞分裂の間隔・CCTですから、若い人、小児ガンは進行が年長者に比べ早いという臨床的事実の一つの説明となります。

免疫系などのアポトーシス指令力(率)

加齢によって免疫機能が低下します。これは誰をも体験し避けえないことです。これでウイルス感染細胞や癌細胞にアポトーシスを強いる、指示役の免疫細胞、ナチュラルキラー細胞なども活性が落ちると考えられます。

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これで、強制アポトーシス率は下がっていきます。癌細胞の性質は発生当時と変わらなくても、細胞外部からの指令が少なくなる、弱くなるから下がります。
これは癌細胞のアポトーシス回避力(率)と免疫系などのアポトーシス指令力(率)の掛け算の積が、強制アポトーシス率ということです。

仮に強制アポトーシス率CAは10代から10年で0.1%下がる、20歳代は10代より0.1%下がる、30歳代は10代に比べ0.2%と下がるとします。

先ほどの5歳児、10歳児で細胞周期時間(CCT)が3日の細胞が甲状腺に出来た例で検討してみます。強制アポトーシス率CAが49.70%で倍加には116回の細胞分裂で倍加時間は348日の癌細胞なら、20歳までに5歳児で15.7回の倍加、10歳児で10.4回の倍加です。そのシコリは直径1ミリにもなっていません。

20歳代になると細胞自身の強制アポトーシス回避能力は変わりませんが、加齢による免疫機能低下に因ってCA条件は10代より0.1%下がり49.60%なるとしますと、87回の細胞分裂で倍加し倍加時間は261日になります。これで20歳代の10年間で14回倍加します。5歳児では20代終わりに29.7回ですからFNA(穿刺吸引細胞診)検査の適用可能の直径5ミリ程度のシコリは越えて1cm近くになっています。多分30代前半で病院にいくのではないでしょうか?

10歳児では24.4回ですから2mm.程度です。30代になるとCA条件がさらに0.1%下がり49.50%で70回の細胞分裂・倍加時間は210日になります。33歳頃に直径1cm、35歳頃に2cm程です。おそらく、30代後半で受診するのではないでしょうか?

妊娠や長期ストレスの影響

強制アポトーシス率CAは癌細胞のアポトーシス回避力(率)と免疫系などのアポトーシス指令力(率)の掛け算の積。免疫系などのアポトーシス指令力(率)は加齢以外の様々な要因で変わると日常生活から考えられます。例えば、インフルエンザウイルスの治り方です。仕事などストレスで落ちている状態では治る期間が長引きます。感染細胞をアポトーシスさせる指令力(率)が落ち強制アポトーシス率CAは10%落ちる、99%/日から89%/日に落ちると、感染細胞を万分の一にするのに2日が4日に長くなります。

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さて、20歳代で免疫系などのアポトーシス指令力(率)が落ち強制アポトーシス率CAが10%程度落ちる状態が長期にあったとします。例えば、妊娠です。胎児は女性の免疫系からみれば異物で、排除、アポトーシスの対象です。これが悪阻の原因といわれます。体はアポトーシスを司る免疫系を抑制し、マクロファージ(貧食細胞)を活性化するなどして乗り切ります。そうしたことで強制アポトーシス率CAは10%程度落ちる状態が240日・八ヶ月ほど続いたとします。これは癌細胞にとって増殖のチャンスです。

細胞周期時間(CCT)が3日の癌細胞が甲状腺に出来たとします。強制アポトーシス率CA49.9%の癌細胞は倍加には350回の細胞分裂で1050日で、CA50%の癌細胞は増殖・増加できませんし、51%のものはやがて消え行く運命にあります。それが妊娠などでアポトーシス指令力(率)が落ち強制アポトーシス率CAは10%程度落ちる状態になると、CA49.90%の癌細胞はCA39.90%環境に3.75回の細胞分裂で11.3日で倍加できます。240日・八ヶ月ほど間に21回は倍加して直径1ミリ程度でなったところで、CA49.90%環境に戻ります。この環境では1050日・約2年10ヶ月で倍加です。10年後には25回ほど倍加した状態、直径3ミリほどになっています。

そして加齢でアポトーシス指令力(率)が落ち強制アポトーシス率CAは0.1%落ちて、CA49.80%環境になり174回544日・約1年6ヶ月で倍加です。癌細胞の発生から約13年後に直径5ミリ程度の検査で検出可能な大きさになり、更に5年後には1cmほどになります。癌細胞の発生が20代後半、30代前半なら40代中ごろから50代にかけて受診して発見される、ただし倍加に約1年6ヶ月のユックリとした甲状腺癌です。

CA50%の癌細胞は妊娠などで強制アポトーシス率CAが10%程度落ちている約8ヶ月の間に直径1ミリ程度になったところでCA50%環境に戻ります。細胞分裂をしても、それで新生した数だけアポトーシスで除かれるので増加できません。加齢で0.1%落ちると350回の細胞分裂で1050日で倍化します。10年で3.5回ほどの倍加です。さらに0.1%落ちると174回544日・約1年6ヶ月で倍加です。10年後に直径1cm程度です。癌細胞発生から30年後です。癌細胞の発生が20代後半、30代前半なら還暦の頃です。

さて、このような検討から東電核災害の影響を考えて見ます。被曝ストレスは(1)癌細胞の発生数を増加させる(2)免疫系のアポトーシス指令力(率)を低下させるといった影響を与えているとおもいます。東電核災害では、高被曝環境から避難せずに暮らし続けているので、被曝ストレスが継続してます。(続く)

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