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ベントフィルター 炉心、圧力容器への注水機能は働く場合(起)約1時間30分で冷温停止できるのに、いつ出番が? 東電vs泉田知事⑮ [AM-ベント、排熱]

東京電力はフィルタベント設備設置の目的を「福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、原子炉の注水と格納容器除熱機能を強化しているが、万一それらの機能が発揮できない場合でも、放射性物質放出の影響を可能な限り低減させ、セシウム等による大規模な土壌汚染と避難の長期化を防止する。」としています。
今回は、格納容器除熱機能はダウンしたが原子炉圧力容器・炉心への注水機能は大丈夫だった場合を検討して、どのよう場合にフィルタベントが必要となり、その際にフィルターに求められる機能を考えて見ます。
原子炉の注水機能強化策は、大まかには炉圧が高い時用に蒸気駆動のHPAC・高圧代替注水系の新設と低圧時用には消防車の配備です。スクラムして核分裂反応が止められた核燃料・炉心から発生している崩壊熱を除くに足る水量が注水される。蓄電池や直流電源などは確保され、弁の開閉操作はできる。しかしSBO・全交流電源喪失で電動ポンプ類は動かせない、格納容器に注水して温度・圧力は下げられないという状況です。
東電は、柏崎刈羽原発-6、7は非常用発電機さえ使えれば約1時間半で冷温停止と豪語

東電の柏崎刈羽原発の「外部電源喪失時の冷温停止機能について」という資料によれば「主蒸気逃がし安全弁を使用しながら減圧冷却」することで、発災から約1時間で70気圧から10気圧程度まで下げることが可能です。水温も減圧よって沸点が下がるので下がります。その資料は平成21年3月27日開催の新潟県の第17回設備健全性、耐震安全性に関する小委員会に提出した資料です。PDF、外部電源喪失時の冷温停止機能について
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それによれば、スクラムして核分裂反応を止めてから主蒸気逃がし安全弁を開操作して炉内の高圧高温水蒸気を圧力抑制室プールに送り、急速減圧冷却を行う。

炉注水は先ず放出される原子炉蒸気でポンプが駆動するRCIC・原子炉隔離時冷却系が担います。このRCICは、原子炉で崩壊熱で発生する水蒸気による蒸気駆動ですから、原子炉内の蒸気圧力が下がりすぎると注水ポンプがとまります。設計では下限は約10気圧。

資料は、非常用デーゼル発電機・DGは動くことになっているので、電動ポンプのLPFL・低圧注水系が稼動できます。蒸気圧が下限10気圧程度になったら、この資料ではLPFL・低圧注水系に炉注水が変ります。その結果、「スクラム後から冷温停止(100℃以下)まで約1.5時間」としています。

東電核災害で公表された福島第一原発の事故対処の手順書・マニュアルのやり方では、RCIC・原子炉隔離時冷却系とLPFL・低圧注水系が共に注水できる炉内圧力になったら、作動可能圧力が重なる帯域になったら、例えば15気圧になったら、RCICを稼動させたままでLPFLの運転を始めます。LPFL・低圧注水系による注水が順調に始まり、配管損傷などがないことを確認してから、RCIC・原子炉隔離時冷却系を停止します。

低圧注水系が稼動できない時

今回の検討では、SBO・全交流電源喪失で非常用発電機も機能喪失条件ですからLPFL・低圧注水系が稼動しない場合を検討します。

1379264339.jpg東京電力は2013年1月25日に公表した「当社の原子力発電プラントの安全確保に関する考え方」で、発災から12時間を「対応の裕度が小さい時間領域」として恒設設備で対応する期間としています。12時間以降に消防車や電源車など「可搬設備による柔軟な対応」をするとしています。この枠・フレームで話を進めてみます。

SBOでも稼動する炉に注水する設備は高圧系はRCIC・原子炉隔離時冷却系と新設されるHPAC・高圧代替注水系、低圧系は消火系のデーゼルポンプです。

高圧系のRCICとHPAC・高圧代替注水系は、原子炉で崩壊熱で発生する水蒸気で駆動します。駆動圧は約10気圧が下限です。消火系のデーゼルポンプの性能は、設計では約6気圧0.62MPa位で送水です。そして、3.11後の対応策でも、この性能アップ、例えば消防自動車の高圧注水の約14気圧1.4MPa性能への能力アップは図られていません。つまり、恒設設備で対応すると高圧系が蒸気圧力=炉圧力が約10気圧で停止、それから約6気圧0.62MPa位まで炉圧が下がる間は、炉注水が途絶える設定です。

注水の水源は、復水タンク、貯水池、海など格納容器の外部にある水源と格納容器内の圧力抑制室プールの二通りになります。

圧力抑制室プールの水が注水される場合は、圧力抑制室プールの約3600トンの水に崩壊熱が蓄積する形になり、水温が高くなると水蒸気の凝縮が激減、またはなくなり格納容器内の圧力がこの水蒸気で上昇します。消火系のデーゼルポンプに切替て、主蒸気逃がし安全弁を開操作し、原子炉を発災から約1時間半後にいったん冷温停止状態に持って行った場合も同じです。崩壊熱がプールの水に蓄積される=水温が上昇します。約16時間で格納容器の最高使用圧力に達します。格納容器破損は、最高使用圧力の2倍が目安とされています。

外部水源から冷水を注水している場合は、崩壊熱はその冷水を熱水にして圧力抑制室プールに蓄える形になります。水蒸気にくらべ熱水は体積が千分の一以下ですから、格納容器の圧力上昇は緩やかになります。ベントが必要になる時刻が遅くなります。柏崎刈羽6、7号機の出力から、この時期に炉への最低注水量は約60トンですが、それの熱水で入る圧力抑制室の気相部は約6000㎥、下部ドライウエル(ペデスタル部)は約1900㎥あります。

東電予定で12時間位後の「可搬設備による柔軟な対応」がかなり遅れた場合に、フィルターベントが必要となります。

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この場合、核燃料は常に水面下にありますから、核燃料は損傷せず放射能は被覆管のピンホールから急速減圧で出てくる放射能になります。ソースターム・NUREG-1465では、揮発性放射能の希ガスが炉心内蔵量の3%、ヨウ素もセシウムも3%程度としています。ベントした場合、希ガス類はベントまでの時間で崩壊で減った量がガス状で出てきます。セシウムは微粒子状ですから、水に溶けたものがベントによる減圧沸騰で再放出される分が出てきます。ヨウ素では、炉からでる放射線でヨウ素が有機物(塗料など)と結合して有機ヨウ素ガスが増えています。

従って、フィルターに求められ性能は、減圧沸騰で生まれる水蒸気を再凝縮して微粒子状の放射能を高効率に捕獲できる水量と、有機ヨウ素ガスを捕獲する性能です。東電が設置しようとしているフィルターは、その2点で足りません。

さて、東京電力はLPFL・低圧注水系の代替には、消防車を準備しています。消防車での注水を行うには、ベントが必要、必須と誤解している方が多くいます。消防車の機能性能を把握して、主蒸気逃がし安全弁で炉圧を減圧すれば、ベント無しで大量注水を継続できます。 続く

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