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モラルハザードを懐胎させる制度は導入すべきではない。 「原子力発電所の廃炉に係る料金・会計制度の検証結果と対応策(案)」に対するパブコメ [電気料金制度・稼働率]

①資本主義における企業経営の基本原理に沿って処理をすべきである。
②稼動期間が40年を満たない早期廃炉などで解体引当金が廃止措置に要する総見積額に不足する場合、その不足分は国が補填する。
③廃炉費用が想定されていた総見積額を超えた場合は、それは発電原価に組み入れることなく事業者が事業による収益で負担すべきである。

資本主義における企業経営の基本原理は、「事業にかかる費用を全て事業者が負担し、それで得られる利益・収益も事業者が得るである。」原発の事業の特殊性は、原賠法に顕われているように合法的に費用を事業者が全て負担しない点にある。これは、事業者の企業経営におけるモラルハザードを招く。

現に東京電力は福島第一原発の1号機を、設計上の寿命40年を過ぎて核災害のリスクが高いにもかかわらず、リスクが現実化した時の補償負担が最終的に国にある原賠法によって企業経営上のリスクが小さいことから、稼動を継続する経営判断を下している。1号機は、最初にメルトダウン、水素爆発を起こし、2号機、3号機の事故収拾作業の中断、遅れをもたらし、結果、両基はメルトダウンした。

従って、電気料金という電力事業者の経営の根幹に、そのようなモラルハザードを懐胎させる制度は導入すべきではない。

平成元年1989年に原子力発電施設解体引当金に関する省令が出される前は、原発の廃炉・廃止措置費用をどのように負担する制度、構想であったか省みる。1977年にサイクルの要となる再処理工場と高速増殖炉の常陽が稼動を始めた。当時は核燃料サイクルが順調に廻ることによって、将来の電気代で捻出、負担することとなっていた。再処理に要する費用は、使用済核燃料の再処理によって回収される”有用物質(減損ウラン、プルトニウム)”の価値で賄われることを前提とした会計処理を行っている。廃炉費用や放射性廃棄物の処理費用も、核燃料サイクルで将来の電気代で捻出、負担する構想であった。

それが再処理費用が考えた想定していたよりも高くなる、実際に要する再処理費用が減損ウラン、プルトニウムの”回収有用物質”の価額を大きく超えることが明らかとなったことから、昭和57年1982年から使用済核燃料再処理引当金制度が設けられた。注意すべきは、それが発電原価、料金算定上の料金原価に組み入れられたのは、4年後であり、その間は事業者が収益から拠出していた。廃炉費用や放射性廃棄物の処理費用も同様の流れで原子力発電施設解体引当金、特定放射性廃棄物に関する拠出金が制度化されている。核燃料サイクルの実現目標時期が繰り返し先延ばしされるようになって、その実現性が怪しくなってから制度化されている。

その際に「収益・費用対応原則に基づいて発電時点の費用として取り扱うことが世代間負担の公平を図る上で適切である」と理由が付けられているが、それは、原子力発電が始まった時から適用されるべき原則であって、核燃料サイクルの夢に酔いしれ、適切な料金原価設定をしてこなかった、事業者や監督官庁の責任である。

当時から「トイレなきマンション」など核燃料サイクルへの批判が行われていた。仮にこれらの批判を真摯に受け止め、事業者が再処理費用などを原発稼動時から積み立てようとしたとしよう。しかし監督官庁の通産省、現在は経産省が、発電原価、料金算定上の料金原価に組み入れることや会計処理を認めなかったら実現は困難である。この点は監督官庁の通産省、現在は経産省に責がある。

しかしながら、事業者は民間会社であるから収益の中から経営判断で積み立てることは可能であった。使用済核燃料再処理引当金は、昭和57年から昭和61年までの間は収益から捻出されている。だから、事業者にも責がある。

電気料金という電力事業者の経営の根幹に、そのようなモラルハザードを懐胎させる制度は導入すべきではないという事と監督官庁の通産省、現在は経産省と事業者の責任からみて、次のようにすべきである。

国の制度変更、政策変更など事業者の責によらない稼動期間が40年を満たない早期廃炉などで解体引当金が廃止措置に要する総見積額に不足する場合、その不足分は監督官庁の通産省、現在は経産省つまり国が補填する。減価償却、2012年3月末時点の未償却分は、同様に補填処理する。再稼動を目指すか否かは、いわゆる「損きり」をして原発から撤退するか否かは、事業者の経営判断による。だから、防波堤など再稼動を目指して行われた投資は補填から除く。

廃止措置に要する総見積額は、事業者が算定している。その不足が生じても、それは事業者の先見性のなさに由来する。さらにそれは、将来の発電に要する費用ではない。従って、事業者がその収益で負担する。


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